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いまの30代以上にとっては、日本のRPGの黄金期とは90年代の半ばまでだったのではないか、と考える方は少なくはないのでしょうか。まだビデオゲームの表現媒体が16bitの2Dだったころ。『クロノトリガー』や『ファイナルファンタジー6』といったタイトルは、制限された表現力のなか、限界まで独自の世界観をプレイヤーに体感させるように、描きこまれたピクセルアートを披露していたものでした。
全てが懐かしい #ドット絵 で描かれたオープンワールドRPG「#エレマスタ 」鋭意製作中です。
— 小林 光(Hikaru Kobayashi) (@65535dot) November 27, 2022
収集要素満載、様々なキャラと共に自身で物語を紡いでいく自由度の高いRPGです!
設定資料集を兼ねたドット画集もBOOTHにて販売中です。https://t.co/aULlPPQU0E#pixelart #RPGツクールMZ pic.twitter.com/6oEbpLdnr4
先日、開催された東京ゲームダンジョン2にて、そんなJRPG黄金期を思わせる描きこまれたピクセルアートと、どこまでも冒険できるオープンワールドRPGを打ち出した一作が出展されていました。それが『ELEMASTA -エレマスタ-』(以下、エレマスタ)です。ゲームのベースはRPGツクールMZ製として、作りこまれたビジュアルと圧倒的な自由度こそを魅力としたタイトルとなっています。
精微に描かれた世界をどこまでも冒険しよう
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今回の試遊では、とある町で主人公のルシスと仲間のシャックスがふたり旅をしているところからスタート。特別なイベントだとか、ストーリーから始まる形ではありません。まずはしっかりゲームの世界に飛び込んでプレイしてみろ! これはオープンワールドRPG、自由度のあるせかいなのだから。ということでしょう。
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というわけで街の人々と話しかけると、次々とみんなサブミッションを依頼してきます。特定のアイテムを集めてきてくれ! とかあのモンスターを討伐してきてくれ! といったオーソドックスなものですね。
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さっそく依頼をこなそうと、街の外に出てバトルを行っていきます。基本はオーソドックスなコマンドバトルであり、パーティのスキルを選んで様々な戦略を練って戦っていくものとなっています。
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しかしいろいろな依頼をこなすのに、一人だけでやっていくのもしんどいもの。そこで酒場に行けば、主人公ルシスを手伝ってくれる仲間も何人か飲んだくれています。
仲間は組み合わせによっては戦闘では協力技まで放ってくれたりと、とても心強いヤツらには違いありません。彼らの力を借りて、洞窟の奥に潜むモンスターを討ち取るぞ! そう意気込んで暗い洞穴の中へ入った途端「ごめん! 私暗いところ苦手なんでパーティ抜けるね!」はぁ? なにそれ? ちょっと待てよ……あ、あなたユニークな行動取ってくれますよね(マイルドな表現)。
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ともあれ、自由な旅とは思わぬ出会いと別れのくり返しです。しかし別れ方もほかにあるだろう、とも思わなくはないですが。このように様々な仲間がいることがわかる『エレマスタ』。道中の占い師に話しかけてみますと、なんと本編ではどうやら300人を越す仲間の候補が存在しているということではありませんか。本編ではもっとドラマティックな出会いがあるに違いありません! (そして「暗いとこがイヤ」という理由で別れる脱力感もある気がします。)
開発の小林光氏はゲーム業界歴27年。様々な時代の経験から、自分だけのゲーム作りへ
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こうしてひと通り試遊してみて、「そういえば90年代のJRPG黄金期で、こういうタイプの自由なRPGの可能性も少なからずあったよな」といろいろ思い出していました。自由度といえば『ロマンシング サ・ガ』シリーズが思い浮かぶかもしれませんが、当時のスクウェアやエニックスのようなメジャー企業とは別の、マイナーな企業による自由度の高いゲームもあったわけです。バンプレストが1996年にリリースした『トラバース スターライト&プレーリー』みたいなRPGですね。
『エレマスタ』には、華やかな歴史の影に隠れた、そういった野心的なRPGの匂いがする……ということで、開発者の小林光氏に簡単に開発秘話を伺ってみました。なんと小林氏は、ビデオゲーム業界のキャリアは約27年にも及ぶ大ベテランとのこと。
セガサターンのゲーム開発からドッターとして多くのピクセルアートを手掛けてきたのが、キャリアの初期とのことです。2000年代には仕事をしつつ、RPGツクール2000などで『エレマスタ』に近い自由度の高いRPGの構想を練っていたそうです。やがて時代は圧倒的に3Dが優勢となり、小林氏もドッターから3Dとしてロールを変えていったのですが、まだまだ本人の中ではピクセルアートを作りたい思いのほうが上回っていました。スマートフォンの時代になると、2Dのピクセルアート表現があるプロジェクトにはドッターとして参加していたとのことです。
そうして小林氏はゲーム業界にて様々な経験や仲間との出会いによって、着実に開発の力を蓄積し「思い切り自分が好きだったゲームデザインと、ビジュアルによるゲームを作ってみたい」ということで始まったのが、「エレマスタ」というわけなのです。
小林光氏のTwitterはこちらから。『エレマスタ』の開発の進捗が、彼の端正なピクセルアートとともに更新されています。また、本レポートの写真にも登場した設定資料集もBoothにて1000円で販売中。本記事で興味を持った方はこちらもいかがでしょうか。