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『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』(以下、ドラクエモンスターズ3)は、22年ぶりのナンバリング作品ということで、大いに注目されています。
今作の主人公は、「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」のピサロ。彼の少年時代に焦点を当てた補完的ストーリーですが、それにしても若い! なお、今回のピサロは呪いをかけられてしまっているため、自力で戦うことはできません。
そんな新作を、初代『ドラクエモンスターズ』にハマっていた筆者の過去を振り返りつつプレイしたいと思います。
◆『ドラクエモンスターズ』シリーズ登場の“時代背景”
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『ドラクエ』でお馴染みのモンスターを仲間にして、自分の代わりに戦ってもらう。シリーズ初代の『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』が発売された1998年当時、主人公となるキャラクター自身が戦うのではなく、自分の所有するモンスターや動物を育てて活躍させるという方向性のゲームが数多く登場しました。
『ポケットモンスター 赤・緑』の発売日は1996年2月27日。この当時の子供はポケモン、大人は『ダービースタリオン』を始めとする競馬ゲームに熱中していたことを筆者はよく覚えています。
1996年あたりからの時代は、決して明るいものではありませんでした。
かつての高度経済成長期を支えていた金融業界の「護送船団方式」は、90年代後半になると一気に破綻の兆しを迎えていきます。名の知れた地銀や証券会社がドミノのように次々と倒産し、さらに生命保険会社も呆気なく倒れていきます。
1998年当時、筆者は中学2年生。周囲の大人はティーンエイジャーに対して「手に職をつけろ」「今のうちに社会人としてのマナーを」「ゴルフと麻雀は必ず覚えろ」「PCを扱えるようになれ」と、自分自身の不甲斐なさを隠蔽するような小言を連発していました。子供たちの趣味や将来の夢に対して「そんなんじゃ食っていけない」と、目先の損得勘定だけで良し悪しを判断していた大人が跋扈していました。
出口の見えない不況。そんな暗い時代の只中、それでもゲームだけは「自分の理想の競走馬やモンスターを育成できる」という果てしない夢、そして護送船団方式とは全く無縁の「クリエイティブな競争が繰り広げられる世界」を提供してくれました。
◆「配合」で強いモンスターを生み出せ!
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初代『ドラクエモンスターズ』の基本的なルールは、それまでの『ドラクエ』シリーズとあまり違いはありません。見下ろし型マップを探索し、エンカウントしたモンスターと戦います。
しかし、実際に戦うのは主人公ではなく彼が所有しているモンスターです。
さらに、仲間にしたモンスター2匹を競馬ゲームのように「配合」させて、子供を作らせることが可能。能力もちゃんと引き継がれます。これは広大なやり込み要素を創出し、強いモンスターを持っていることは一種のステータスでした。
ただ、「強いモンスター」は見かけによらないというのも『ドラクエモンスターズ』の特徴。元気な男の子ならみんな大好きドラゴン系モンスターは、実はのちのちの成長速度が遅いという難点がありました。筆者もこの成長速度にイライラした当時中学2年生の一人です!
◆モンスターたちの様子に注目!
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さて、そんなシリーズ最新作となる『ドラクエモンスターズ3』は時代の進化と共に、広大な世界でモンスターたちが生活を営んでいる様子が描写されています。
そう、今作はエンカウントするモンスターが完全可視化されています。従って、バトルが面倒なら逃げることも可能(ただし、狭い細道にモンスターが絶妙に配置されていることも!)。ただ、それよりも「こんな可愛い生き物を倒していいのか……?」という罪悪感が込み上げてきます。
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マップは広大ではありますが、一度訪れた場所はルーラを使って再訪できます。ピンチになってもキメラのつばさがないせいで拠点の村に帰れない、ということはありません。
ただ、やはり1枚のマップがだいぶ大きいため、バトルしながらの進行はそれなりの時間がかかります。そのテンポを阻害しないため、戦闘は極力自動化するのがおススメ! もちろん今作も「ガンガンいこうぜ」「いのちだいじに」等の作戦指示は健在です。
また、筆者が非常に気になったのはピサロの哀愁。ゲーム開始時点で彼は既に天涯孤独であり、しかも出自のせいで人間から差別されています。ここから展開されるストーリーは、「人間の貪欲さ・傲慢さ」を我々に思い知らせてくれます。
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シリーズ過去作品よりも、そのあたりでやや高年齢向けの作品だな……とも筆者は感じました。
◆年末年始はモンスターを育てよう!
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今回ご紹介した『ドラクエモンスターズ3』、そして初代『ドラクエモンスターズ』はどちらもニンテンドースイッチ向けに配信されています。
これから年末年始を迎え、まとまった休暇に胸躍らせると同時に「どうやって暇を潰そう?」と思案している人も少なくないはず。とりあえずこの2作品があれば、大人も子供も年末年始を楽しく過ごせるのではないでしょうか。
てか、自分を慕ってくれる元奴隷のエルフと同居&一緒に冒険って、羨まし過ぎるぞピサロ!?