閲覧にはご注意ください。
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The Future Fragments Teamが贈る、性的な要素を備えつつもアクション部分も注目のSFメトロイドヴァニア『Future Fragments』。筆者が確認している限り、最低でも2015年から開発されていた本作ですが、開発チームの心身の問題やSteam審査での否決など、様々な困難を乗り越えついにSteam/itch.ioでの発売を迎えました。
発売からわずか3日でSteamレビュー“非常に好評”(175件中、82%が好評)になるなど好調なスタートを切った本作ですが、本記事では“ゲームとして面白いのか?”という点に主眼を置いたプレイレポートをお届けします。
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なお本記事は主に、本作発売直後のバージョン1.0.0でのプレイをベースとしています。掲載されているスクリーンショットなど、記事公開後のバージョンとは異なる部分がある場合もあるほか、ゲーム後半の内容にも触れていくのでご了承ください。
もはやビジュアルノベル?膨大なボイス&テキスト量
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まず、本作にはストーリーが存在しますが、他のメトロイドヴァニアと一線を画すのはそのボイスとテキスト量。ゲーム開始直後のプロローグだけでも5分ほどのボリュームとなっています。
プロローグでは、舞台が西暦1,000年の「スペルキングダム(Spell Kingdom)」であり、かつての栄光を取り戻すため国王が主人公「タリア(Talia)」とそのライバル「フェイ(Faye)」を、強力な兵器の「フラグメント(Fragment)」があるとされる遥か未来西暦3,000年の世界へ送り込んだことが語られます。
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国王は最も多くの「フラグメント」を集めた者に国軍のリーダーとしての地位を約束したものの、平和主義の「タリア」は兵器を破壊するため、そして野心的な「フェイ」は国王の座を奪い世界を支配するため、それぞれの理由で破片を追い求める…というのが大筋のストーリーです。
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プロローグ後は軽いイベント(カットシーン)を挟み、ポータルから本作のメイン舞台となる西暦3,000年の未来世界へ移動。ついに本格的にメトロイドヴァニアとしてのゲームが開始…と思った矢先に、マップ上で拾えるゲーム内文書についてのチュートリアルが挿入されます。
これらの文書は収集済みであればメニューからいつでも読めることに加え、一部以外は収集しなくともゲームクリアに支障は無いものです。しかし、内容はディストピアと化した未来世界の背景を説明するものからあまり関係なさそうなオーディオブックまで、本作の雰囲気を最大限に味わうには欠かせない要素となっています。
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これ以外にも、道中でイベントが挟まるほか、会話中の選択肢や行動がエンディングに影響するNPCがマップ中に配置されています。全てを見ようとした場合、ストーリー中盤までは“体感で数分に1回は文章を読むことになる”ため、人によってはビジュアルノベルのように感じてしまう点は、好みが別れる部分かもしれません。
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しかし、これらの多くは直接的な性的描写を含まず大半がボイス付きとなっており、コミカルで魅力を感じさせるキャラクター描写や、元反乱軍リーダーであり「フラグメント」を世にもたらした男「シーバー(Seeber)」にまつわる謎など飽きさせない要素が盛りだくさん。さらに重要な情報は青文字で強調されるため、適度に読み飛ばしながら話を追っていけます。
また本作は記事執筆時点(2024/03/01)で英語のみ対応となっていますが、外部ツールである「Textractor」と連動してゲームを自動的に翻訳する機能が実装されているため、日本語ローカライズが待てないユーザーでもある程度ならダイアログを楽しめます。
革新的ではないが驚くほど堅実なアクション要素
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次に本作のメトロイドヴァニアとしての出来ですが、その作りは驚くほど堅実。攻撃手段は一直線に飛ぶショット、アクション部分はジャンプを基本としており、“しゃがみ”や“すり抜け床”といった要素も登場しますが、『スーパーマリオブラザーズ』シリーズをプレイできれば概ね問題なく適応できるシンプルさです。
ゲームは大きく5ステージに分かれており、各ステージでは“レーザーパズル”や“上下が反転する装置”といった固有ギミックが用意されています。ゲーム進行に応じて手に入る「アビリティ」では“空中ダッシュ”などのアクションが追加されるため、同じことの繰り返しになりにくく、最低でも三面クリアまでは飽きにくい設計です。
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レベルアップの概念は無いものの、装備アイテムとして「パワーアップ」が存在。それぞれユニークな効果を持っており、通常攻撃である“ショットの挙動を変更する”ものから“ステージ踏破率や会話で選んできた選択肢や行動で効果量が変わる”ものまで、一般的なステータスバフとは一味違っているため攻略に幅が生まれていることもポイントです。
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また、マップ画面からは未回収のゲーム内文書や「パワーアップ」を確認できるほか、ゲーム内実績として簡単に達成できる「Easy」と制限プレイなどが要求される「Hard」が実装されており、やり込み要素も充実しています。
途中から露になる未完成感と唐突なゲーム性の変更
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ここまでは主に肯定的な側面に注目してきましたが、本作には無視できない点として、“多くのイベント&ボイスが未実装”かつ“極端な難易度曲線”が挙げられます。
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本作は起動時、“目下コンテンツを追加中”であり、“プレイ中に時おり問題を経験するかもしれない”という旨の告知が挟まりますが、実際にゲームではステージ4から話しかけられないNPCや開始できないイベントが散見されるようになり、ボス戦前の会話に至ってはテキストすら表示されず、キャラクター達が無言でリアクションを取るのみ。
ストーリー全体としては起承転結の転にあたる部分と思われるため、重要であろう部分を想像で補わなければいけません。なお、イベント未実装の余波はゲーム内実績にも及んでおり、イベント閲覧が条件となっている実績が未実装分だけ達成できない状態となっています。
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ステージ5でも同様の問題が引き継がれていますが、そこに加えてゲーム難度が急上昇。本ステージには固有のギミックとして、“地形を変化させるスイッチ”と“マップ構造がガラリと変わる裏世界に飛べる時空ポータル”が登場します。
その結果マップ画面を見てもどの経路からどのエリアに行けるのか分からなくなっており、ゲーム配信当初に「ブレーン迷宮(Brane Maze)」と名付けられていた通り(アップデート後は「終焉/カタコンベ(The End/Catacombs)」に改名)、“迷路構造”が特徴のステージに仕上がっています。
普段からレトロゲームや高難度なメトロイドヴァニアを遊んでいるプレイヤーなら恐らく問題なく踏破できる程度ではあるものの、それまでのステージでは導線が分かり易く、マップ画面を確認するだけで次の目的地を把握できたことを考慮すると、ある種の“不親切さ自体”をメインギミックに据えた本ステージに対し、唐突な“ゲーム性の変更”のように感じる人もいるかもしれません。
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さらに、本作には各ステージに固有のギミックを備えたボスが登場しますが、ステージ5で戦えるボスに関しては“純粋に難しい”という点が特徴になっています。その強さは批判の声が多かったためか、開発元が公式Discordサーバーで本ボスの攻略法を動画付きで詳細に解説するほどです。
ステージ4までのボスはギミックも明確で、アクション部分も道中と大して変わらない、ミスを繰り返してもクリア猶予がある易しめの難度ですが、ステージ5のボスはハードコアな仕様となっており、プレイ当時の筆者はその攻撃の苛烈さのあまり全く違うゲームを遊んでいるのではと感じてしまいました。
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しっかり行動パターンを覚え、必要であればダメージを軽減したり、火力を上げる「パワーアップ」を装備し、攻撃を欲張り過ぎずヒット&アウェイを徹底すれば攻略は可能。ですが道中のギミックも含め、ステージ5は全体的にゲームから浮いている印象を受けます。
記事執筆時点での本作は、一応エンディングまで到達することは可能なものの(筆者プレイ時は「Ending #2」を確認)、ステージ3までは非常に丁寧な作りだったこともあり、却ってそれ以降の未実装コンテンツや調整不足と思われる点が目立ってしまっている状態です。
公式Discordサーバーでは“Steamのルールに違反していると見做され、早期アクセスにしようとしたが出来なかった”事情が語られており、実質的に早期アクセスの段階であると伺えます。
本作は発売前に“今後1カ月の間の頻繁なアップデート”が告知されており、リリースから4日で配信されたバージョン1.0.1では様々なバグの修正やイベントが追加され、ゲームバランスに関しても“フィードバックを受け続ける”とされているため、今後の改善が期待されます。
余談…Steam Deckでの対応状況は?
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最後に余談として、本作におけるSteam Deckの対応状況について紹介します。記事執筆時点のSteamストアページでは対応の有無について記述されておらず、Steam Deck側でも「不明」と表記されていますが、プレイ可能(ステージ1途中まで検証)”です。
本作はデフォルトではSteam Deckにインストール不可能ですが、以下の方法で解決できます。なお、実行は自己責任でお願いします。
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ライブラリ画面から『Future Fragments』を選択、画面右の歯車のマークから「プロパティ」を開き、「互換性」という項目内にある「特定のSteam Play互換ツールの使用を強制する」にチェック。
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チェック後に現れるタブから「Proton」を選びます。「Proton」には様々なバージョンが存在しますが、基本的に最新(数字が大きい)のものを選べば問題ありません。もし不具合が起きた場合は、別バージョンに切り替えると解決する可能性があります。
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今回、筆者はLCD版Steam Deckの256GBモデル、OSはSteamOS 3.5.17、Protonは8.0-5、そしてゲームバージョン1.0.1の環境で検証しましたが、元々要求スペックが低めな為か処理落ちも起きず、オプションから「ダイナミックライティング」を有効にしていても消費電力は抑えめでした。
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Steam Deck本体で「サーマルパワー(TDP)制限」等の調整もしていませんが、「予想されるバッテリー駆動時間」が5時間以上となっています。デバイスのディスプレイサイズに対しテキストが小さめな点が気になるものの、充電環境が無くとも1、2ステージクリアする程度であれば余裕を持って遊べるでしょう。
おわりに
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『Future Fragments』のプレイレポは以上となります。記事執筆時点の本作はゲームとして完成とは言い難い状態ですが、記事本文で触れた通りアップデートの予定が告知されているため、諸々の問題点が気になる方はSteamのゲームニュースハブをチェックしながら様子を見るといいでしょう。
ただし、本作は2024年1月に“予算を用意でき次第、英語以外の30言語をサポートする”意向もアナウンスされているため(本作のストーリー等を担当したHentaiWriter氏は「完全な日本語ローカライズをしたい」とも発言)、邦訳も含めて待ちたい方は“応援する気持ちで先に買っておく”のも選択肢の一つです。
※UPDATE(2024/3/08 21:03):記事本文のイベント未実装の「ゲーム内実績」に対する影響の説明を明確にし、記事執筆時の日時を追記しました。