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2024年では珍しくないパッケージ版とダウンロード版ゲームの同時リリース。ソニー・コンピューターエンターテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が2004年に発売した携帯ゲーム機「PlayStation Portable(PSP)」にもダウンロード版ソフトは存在しました。
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しかし現行ハードと大きく違う点として、同ハードで利用できたオンラインストア「PlayStation Store」のサービス開始が2006年のため、“ハード本体の発売から後になってダウンロード版が遊べるようになった”というポイントがあります。
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当時はパッケージ版と比べ需要が少なかったのか、本ハードではダウンロード版が発売されなかったソフトも多数あり、これらは後に発売されたデジタルコンテンツのみを遊べる姉妹機「PSP GO」や、ダウンロード版限定で後方互換機能のある後継機「PlayStation Vita(PS Vita)」ではプレイできません。
本記事ではそんなPSPの“ダウンロード版が販売されなかったソフト”に加え、おまけで“かつてはダウンロード版が販売されていたソフト”、あわせて3作をご紹介します。
シリーズ高難度タイトルがより難しく『アーマード・コア ラストレイヴン ポータブル』キーアサインから見える無茶移植
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『アーマード・コア』とは、パーツを自由に組み合わせて「アーマード・コア」と呼ばれる機体を構築し、ミッションを遂行するメカアクションです。2023年には前作から約10年の時を経てシリーズ最新作『アーマード・コア 6 ファイアーズ オブ ルビコン』がリリースされ、執筆時点で世界累計出荷本数300万突破を成し遂げています。
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様々なハード向けに発売されてきた本シリーズですが、PSP向けには外伝的な作品である『アーマード・コア フォーミュラーフロント(以下、フォーミュラーフロント)』のほか、“あの名作を、ポータブる”という触れ込みで3タイトルがリリース。
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うち3タイトル目となる『アーマード・コア ラストレイヴン ポータブル(以下、PSP版、またはラストレイヴン ポータブル)』は、“PS2向け『アーマード・コア』最終作”となった『アーマード・コア ラストレイヴン(以下、PS2版、またはラストレイヴン)』の移植版です。
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企業たちによる連合統治組織「アライアンス」に対し、“レイヴン(アーマード・コアのパイロットの意)による秩序の創出”を唱える武装集団「バーテックス」が宣戦布告。「バーテックス」が「アライアンス」に予告した決戦となる襲撃日時まで残り24時間…というストーリーが描かれます。
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ゲームでは決戦までの24時間、レイヴンの一人であるプレイヤーは「アライアンス」や「バーテックス」といった依頼主から受けたミッションを遂行していくことで進行。どの依頼を受けたかによってルートが変化する、マルチエンディング制を採用しています。
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24時間という密なタイムリミット内で展開されるシナリオや、難度の高いミッションの数々に加え、過去作のパッケージやOPを飾った機体たちとも戦えるVRアリーナなど、PS2向け最終作な点も含め印象的な作品です。
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そんなオリジナルのPS2版をPSPへ移植した『ラストレイヴン ポータブル』は、過去作からの復刻パーツや新規パーツが追加されたり、アリーナで小説「アーマード・コア レトリビューション」などから参戦したゲストと戦えるようになったりと、ただの移植には留まらない作りとなっています。
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PSPゆえに携帯して遊べる点も本作の利点ですが、PS2版の上位互換と呼ぶにはどうしても無視できない問題として“操作性の悪さ”が存在。『アーマード・コア』シリーズは全体的に操作が複雑かつ、ボタンを多く使用する傾向にあり、『ラストレイヴン』もその例に漏れません。『ラストレイヴン ポータブル』では、元のPS2よりボタン数が少ないPSPに移植してしまった結果、“攻略難度に影響しかねないレベル”で操作がしづらくなってしまっています。
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例えばPS2版はミッション中、左右のスティックの押し込み(L3/R3)を含め、十字キー以外のボタンをフル活用していますが、PSPというハードはL2/R2も無ければ、スティック(アナログパッド)は左側にしかなく、スティックの押し込みボタンもありません。PSP版はこのボタン不足を解決するためか、PS2版でデフォルトで使われていなかった十字キーにも操作が割り当てられています。
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その結果、PSP版のデフォルト操作では、視点移動や武器の発射といった操作が十字キーと○×△□ボタンで混合しており、クセはかなり強め。PS2版ではボタン2つ同時押しで行えた「武装解除」操作に至っては5つ同時押しになってしまっています。
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キーアサインの変更はできるため、各々にとって操作しやすい方法を模索できますが、操作性と引き換えに何らかのボタンが使えなくなったり、ボタンは全て使えてもプレイヤーの指の負担が増えたりと、“彼方立てれば此方が立たぬ”状態になりがちです。
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また「武装解除」の操作に必要なボタンもキーアサイン変更と連動するため、うっかり同時押し出来ないボタンを割り当ててしまうと、“実質的に使えない機能”に。『ラストレイヴン ポータブル』では機体を構築する際に考慮する要素として、ミッション内容や自身の好みだけでなく、“キーアサインで行える操作”も加わるため、PS2版よりプレイヤーを悩ませる機会が多めです。
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この操作性の悪さは、当時『アーマード・コア』シリーズをプロデュースしていた鍋島俊文氏も“仕方のない部分”と前置きしつつも「もうちょっと何とかならないかなとは思います(笑)」とコメントしていることから、開発チーム間でも苦慮していた問題だったのではとうかがえます。
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なお、PSPのDL版ソフトも遊べるPS Vitaは左右にスティックだけでなく、背面タッチパネルを備えており、PSPソフトをプレイ中はこれらにボタンを割り当て可能なため、DL版『ラストレイヴン ポータブル』が発売されれば操作性の問題が緩和された状態で遊べる…と思われましたが、PS Vitaのアフターサービス終了となる2024年になってもついぞ発売されず。
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何故か外伝的作品の『フォーミュラーフロント(インターナショナル版)』の方はDL版が販売されているため、従来シリーズのように機体を操作できる「マニュアル操作」モードでPS Vitaの恩恵を受けられますが、筆者個人としてはぜひ本編の移植版である本作も同ハードで遊べるようにしてほしかったところです。
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ちなみに、PSP向けには他にもPS2で発売された『アーマード・コア 3』と『アーマード・コア サイレントライン』も移植されており、復刻・新規パーツといった追加要素、操作性の問題、そしてDL版未販売という点は『ラストレイヴン ポータブル』と共通。問題点こそありますが、これらの “PSPで遊べるPS2向け『アーマード・コア』本編”という魅力は代えがたいのも確かです。仮に今からプレイする場合は、セーブデータの連動要素もあるため、3作まとめて揃えるのをオススメします。
2024年でシリーズ25周年を迎える『どこでもいっしょ』リメイク版!クラシックカタログに来て欲しい…
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PSP発売元であるソニーには、社名がソニー・コンピュータエンタテインメントだった頃から、マスコット的なキャラクターの1人(または1匹)として「井上トロ(トロ)」がいます。
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「トロ」は、1999年に発売の『どこでもいっしょ』に登場したポケットピープル(ポケピ)と称されるキャラクターの1人であり、同作から続く様々なタイトルが発売され、テレビ番組「めざましテレビ」では長らく専用コーナーが用意されていたほか、2024年にはシリーズ25周年を迎えました。
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今回紹介する『どこでもいっしょ』は、同名タイトルである初代をPSP向けにリメイクした作品となっています。
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本作は「トロ」をはじめとするポケピたちから1人を選択し、コトバを教えながら一定期間の交流を楽しむ、お話しゲームとなっており、原作から画質が向上したほか、“おでかけ”や“部屋の模様替え”といった要素も追加されました。
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教えた「コトバ」は蓄積されていき、日常会話でも登場するようになるため、プレイヤーに合わせてポケピの語彙がチューニングされ、時には「○○(地名)で○○(行為)をした」のような形で、知っているコトバが思ってもいなかった形で登場する楽しさもあります。
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なお、同じくPSP向けに発売された完全新作『-どこでもいっしょ- レッツ学校!(以下、レッツ学校)』と比べると、“コトバをポケピに教える”という要素は共通しますがゲームの楽しさは一長一短。
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具体的には、『どこでもいっしょ』はPSP本体と時間が連動するほか、舞台が自室中心になり、選んだポケピ1人と1対1のコミュニケーションを楽しむゲームですが、『レッツ学校』はポケピ5人と同時に交流し、PSP本体時間に囚われず、事前に用意されたシナリオに沿って話が進行していきます。
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『どこでもいっしょ』はお話も雑談中心で“共同生活をしている感覚”が強い一方、『レッツ学校』は“ゲーム”感が上回っているものの、ストーリーの密度は高めです。前者から後者に教えたコトバを引き継ぐ機能も有るため、プレイするなら両ソフトを揃えて遊ぶのもいいでしょう。
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ちなみに、このPSP向け『どこでもいっしょ』と『レッツ学校』は共にDL版が販売されておらず、PlayStation4/PlayStation5で旧世代作品が遊べる、「PlayStation Plus プレミアム」内包のサービス「クラシックスカタログ」向けにも配信されていません。
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しかし、リメイク元の原作版『どこでもいっしょ』とアペンドディスク『こねこもいっしょ』をセットにしたゲームアーカイブス版と、『レッツ学校』からミニゲーム要素を抽出し、単体の作品に仕上げた『-どこでもいっしょ- レッツ学校! トレーニング編』はDL版が販売中なため、PS Vitaでプレイできます。
まさかのヒールキャラが主役に!『イレギュラーハンターX』シリーズ新生なるか
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『ロックマンX』とは、アクションゲームの金字塔『ロックマン』の派生作品でありながら、本家にも負けない歴史と人気を誇るシリーズ作です。『イレギュラーハンターX』はその初代タイトルをリメイクしたPSP向けアクションシューティングとなっています。
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本作は「X、再始動」と謳われ、設定面からもリブート作とも言える作りとなっており、スピーディなアクションはそのまま、グラフィックが2Dから3Dに一新。シナリオを掘り下げるカットシーンやアニメが追加されただけでなく、なんと新プレイアブルキャラクターとして主人公「エックス」の宿敵「VAVA」が選べるようになりました。
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ゲーム部分も全体的にオリジナルの雰囲気を崩さない範囲でリファインされ、原作にもあった一部ステージ同士がクリア状況に応じて相互作用するギミックなどを備えつつ、パワーアップパーツの配置が変わっているほか、終盤のステージ構成にやり応えのある改変が加わっています。
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また各ステージBGMはボスのイメージに合わせたようなアレンジがされており、例えば「スパーク・マンドリラー」ステージは聞いているだけで痺れそうなエレキギターが鳴り響き、「ランチャー・オクトパルド」ステージは水中のイメージが湧きやすい、どこか透明感のある音源が使われています。
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本作の特色の一つである追加プレイアブルキャラクター「VAVA」は、プレイ感ががらりと変わり、ステージ構成が攻撃的かつ高難度に変わっているほか、「Xバスター」中心に戦っていた「エックス」とは違い、腕、肩、脚の3部位に装備した兵装で戦う仕様です。
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この兵装は「エックス」の特殊武器とは違う特殊な挙動のものが多く用意され、ミサイル、ロケットパンチ、キャノン、レーザー、ナパーム、バーナーなど、クリア状況によって解放されるため、試行錯誤しながら好みのビルドを探す楽しさがあります。
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さらに「VAVA」のモードには専用のカットシーンや会話に加え、専用ボスまでもが実装。終盤以外のステージBGMが同じものに固定されてしまっている欠点がありますが、それを差し引いても十分な魅力があるモードです。
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なお、本作はもともとダウンロード販売されており、2021年には500円に値段が改定されるなど、“手に取りやすいタイトル”だったのですが、2024年時点では何故かPS Storeで表示されなくなってしまっています。この件について告知は出ておらず、公式サイトの作品一覧からも除外されているのが現状です。
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本作に収録されたアニメ「The day of Σ」は、後に発売された歴代作品を復刻・セットにした『ロックマンX アニバーサリー コレクション』でも視聴できますが、ゲーム部分に関してはラインナップに含まれていません。
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筆者としては、続編『イレギュラーハンターX2』もぜひ制作して欲しいため、“まずは本作が現行ハードで遊べる環境になれば…!”と願います。
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ちなみに、本作は当時発売を控えていた初代『ロックマン』のリメイク版『ロックマンロックマン』の体験版も収録されていますが、効果音など製品版と違う点があるので、両タイトルを所持している方は比べてみるのも一興です。
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これにてDL販売されていない/されなくなってしまったPSP向け名作3タイトルの紹介は終わりとなります。今回取り上げたのは筆者がたまたま所持していた、手に入れられたソフトのみです。
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紹介できなかったタイトルには『Her Story』で知られるサム・バーロウ氏が手掛けた『サイレントヒル シャッタードメモリーズ』PSP版といったDL販売が停止され、執筆時点でパッケージ版の中古相場が高騰傾向にあるソフトも存在します。
レトロゲーム全般にも言えるかもしれませんが、“PSPのアレ、そういえば遊びたかったな…”と思う方がいれば販売状況や相場を調べ、今のうちにプレイ環境を整えるといいかもしれません。