
かつて『ディビジョン』を手掛けた開発者たちが独立したスウェーデンのスタジオSharkmobが送る新作『EXOBORNE』のクローズドベータテストが実施されました。
当記事ではクローズドベータテストを終えた開発メンバーに、『Escape from Tarkov』という圧倒的強者がいるジャンルに挑む秘訣や、実際にプレイしてみたうえで生じた疑問をまじえたメールインタビューをお届けします。
今回のメールインタビューに応じていただいたのは以下の3名となります。
ブリンリー・ギブソン - エグゼクティブプロデューサー
マーティン・ハルトバーグ - CMCO兼共同創設者
ペター・マネフェルト - クリエイティブディレクター

――『ディビジョン』のダークゾーンを発展させたような感覚を覚えましたが、なぜあえて有料の脱出シューターというジャンルを選んだのでしょうか?
ハルトバーグ:『EXOBORNE』をF2Pではなく有料モデルにした主な理由の一つは、不正行為(チート)への対策です。 私たちは『Bloodhunt』(同スタジオの過去作)での経験を通じて、チーターがPvPゲームに与える深刻な影響を目の当たりにしました。有料モデルにすることで、BANされたプレイヤーが新しいアカウントを簡単に作成し、すぐに戻ってくることを防ぐ壁を作れます。これはF2Pゲームにおいて大きな課題の一つです。
また、このモデルを採用することで公平な競争環境を確保できます。本作に「Pay-to-Win(課金勝利)」要素は一切ありません。進行や成功は、純粋にプレイヤーのスキルと戦略に基づくものです。私たちはこのゲームを長期的に進化させていくことを目指しており、リリース後のコンテンツ開発に専念する専用チームもすでに編成されています。
――脱出シューターのジャンルでは『Escape from Tarkov』や『Hunt: Showdown』が圧倒的な人気を誇っていますが、どのように差別化を図り、どのようなターゲット層を想定されていますか?
ハルトバーグ:本作はハイリスク・ハイリターンの脱出型ゲームプレイをダイナミックに変化する世界と組み合わせることで、独自の体験を提供しています。“Exo-Rig”と自然の力が相互作用することで、状況が常に変化し、新たな戦術的なチャンスが生まれます。これにより、プレイするたびに異なるストーリーが展開され、毎回新しい体験が楽しめるのです。
また『EXOBORNE』はハイリスク・ハイリターンのスリルを提供しながらも、よりアクセスしやすい設計を取り入れています。明確なミッション目標を設定することでチームがまとまりやすくなり、ゲームの進行をスムーズにしています。
マッチメイキングもより公平な戦いを実現するよう調整されており、異なるマップがPvP中心のものからハイリスクのPvEチャレンジ向けのものまで、多様なプレイスタイルに対応しています。新規プレイヤーから熟練の競技者まで、あらゆるプレイヤーが楽しめる脱出シューターを目指しています。

――現在新たに始まったクローズドテストにも参加していますが、前回のテスト結果は反映されていますか?約3GBのアップデートがありましたが何が変わったのでしょうか。
ギブソン:大規模なプレイテストとクローズドテストの間でいくつかの変更を行いましたが、それらは主にコンテンツと機能の追加に関するものでした。クローズドテストではプレイテストよりも多くのコンテンツが追加され、バグ修正も行われています。
ハルトバーグ:最新のクローズドテスト中に行われたアップデートは、主にパフォーマンスの向上とバランス調整に焦点を当てたものであり、大規模テストのフィードバックを直接反映したものではありません。とはいえ、以前のフィードバックに基づいて確実にいくつかの変更を加えています。
例えば、ルーティング(アイテム収集)の仕組みについては改善が必要だと認識していましたが、2024年初頭のテスト後に受け取った直接的なフィードバックにより、プロセス全体を見直しました。その結果、大幅な調整を行うことになりました。
さらに、プレイヤーからのフィードバックを受け、グラップリングフックをすべてのExoに標準装備として追加しました。当初は消滅する可能性のあるアイテムでしたが、プレイヤーからの評価が非常に高く、移動と戦闘の両方において重要な要素となったため、プレイヤー体験をより良くするために永久装備にしました。

――上昇気流で浮き上がる感覚がとても気持ちよかったです。操作性やこだわった部分について教えていただけますか?
ハルトバーグ:このテーマだけで一つの記事が書けるほどですが、簡潔にお答えします。『EXOBORNE』は、移動と戦闘を形作る相互作用するシステムの上に成り立っています。風はその最も顕著な要素ですが、プレイヤーが意図的に操作できる仕組みもデザインされています。
例えば、学校で習ったように、火は暖かい上昇気流を生み出します。プレイヤーはこれを利用してグライダーで高度を稼ぐことができます。一方で雨が降ると滑空が難しくなるため、素早く適応する必要があります。
本作では垂直方向の移動と戦略が重要であり、ほぼすべての環境要素がこれらのシステムと連動するように設計されています。プレイヤーが試行錯誤し、適応し、マスターしていく過程を見るのは、開発チームにとって最高の報酬です。また、将来的なシーズンアップデートではさらなる環境要素が加わるかもしれませんが、今はまだ詳しくお話しできません!

――この手のゲームでは、ソロプレイヤーがパーティと戦うのは厳しい場面が多いですが、ハンディキャップを埋めるような調整を検討されていますか?
ハルトバーグ:『EXOBORNE』はチームプレイを基盤として設計されていますが、ソロプレイヤーの参加も可能です。ただし、一人で挑む場合リスクが大幅に高まるため、より緊張感のある体験となります。これは脱出シューターのコアな魅力の一つです。
とはいえ、私たちは最近大規模なテストを実施し、プレイヤーのフィードバックを詳しく分析しています。今後のアップデートでソロプレイヤーに向けた調整を加える可能性もあります。

――せっかくキーを育てても、死亡した際にすべての手間が失われてしまうのは残念に感じます。保険システムなどの導入を検討されていますか?
ハルトバーグ:ハイリスク・ハイリターンのスリルは脱出シューターの核心部分であり、それを損なうことはしたくありません。しかし長期的に見ると、何度も全てを失うことはストレスの原因になり得るため、バランスを取るための仕組みを導入しています。
例えば、基本のExo-Rigにはセーフロックが備わっており、一部のリソースを保存できます。また物語に基づいた進行システムを実装し、プレイヤーが時間をかけて装備を取り戻せるようにしています。これらの要素により、ゲームのスリルを維持しつつ、過度なフラストレーションを軽減しています。

――ハイリスクエリアに入っても、既に漁られたあとだとガッカリ感がすごいのでフォローする考えは?
マネフェルト:もし戦闘後にロボットを倒したのに戦利品がなかった場合、それは確かに期待外れでしょう。こうしたバランス調整のためにプレイテストを実施しており、プレイヤーの体験をより公平にするための変更を検討しています。
――日本ではPvEモードの実装を望む声もありますが、その予定はありますか?
ハルトバーグ:現時点で『EXOBORNE』はPvPを軸に設計されており、専用のPvEモードを追加する予定はありません。私たちはプレイヤー同士の緊張感ある戦闘を軸にゲームを設計しており、開発の重点もそこに置いています。
とはいえ、私たちはコミュニティと密接に連携し、フィードバックを常に評価しながらゲームを進化させています。現段階ではPvEに関する発表はありませんが、ゲームの進化に伴い、新しいアイデアを模索する可能性はあるでしょう。
――ありがとうございました。
開発チームの熱意とプレイヤーからのフィードバックを重視する姿勢は、今後に大きな期待を抱かせます。有料モデルの採用によるチート対策や公平な競争環境の確保など、長期的な視点に立った開発方針も評価できるでしょう。
一方で、PvEモードの実装やソロプレイヤーへの配慮など、プレイヤーの多様なニーズにどう応えていくかは今後の課題となりそう。しかし開発チームの柔軟な姿勢を考えると、これらの課題も時間とともに解決されていく可能性が高そうです。
『EXOBORNE』は、PC/PS5/Xbox Series X|S向けに2025年のリリース予定です。