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うだるような暑さが続いた夏もいよいよ終盤といった今日このごろ。読者の皆さんは、どんなお盆シーズンをお過ごしになられたでしょうか?お盆といえば先祖の墓参りをしたり、墓に思いを馳せやすい季節ですよね!
そういえば、読者の皆さんの中に墓守になりたいと思ったことがある方はいらっしゃいますか?そういう人は決して多くはないと思いますが、それはともかく、墓守になれるシミュレーションゲーム『Graveyard Keeper』がSteamなどでPC向けに発売されました!職業体験ものゲームの極北といった感じの本作にめちゃくちゃ興味をそそられている方も多いはず。と、いうことでさっそく遊んできましたよ!
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ゲームを開始すると、ストーリーパートであらすじが紹介されます(日本語化されているので安心です!)。あらすじをざっと説明しますと……「主人公は恋人が待つ家に帰る途中にトラックにはねられ、中世風の異世界で強制的に墓守として働かされることになったのだ……果たして主人公は元の世界に戻れるのか!?」という感じです。いわゆる“異世界トラックもの”ですね!普通に「中世に産まれた青年がひょんなことから墓守になった」というだけでも良さそうなものなんですが、謎のストーリー性がついているあたり、開発元であるLazy Bear Gamesの作家性が色濃く出ています(前作である『Punch Club』にも、本来ボクシングものに必要とされている以上の複雑怪奇なシナリオがついていました)。
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喋る骸骨「ジェリー」の助けを借りて少しずつこの世界のルールを学ぶ主人公。真面目に働いていれば元の世界に戻れるかもしれないっぽいのでいやいやながら墓守の職務も覚えます。
最初から怒涛の展開すぎて若干めまいを覚えてきますが、これぐらいのことに耐えられなければ「人間の死」を扱う墓守は務まりません。墓守にはすべてを受け入れるほどの強い精神力が必要なのです。ご覧の通りドット絵によるグラフィックスは非常に美麗なので、木でも見て心を落ち着けましょう。
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ここで読者の皆さんにクイズです。墓守のおじさんのお仕事の中で、もっとも重要なものとはなんでしょう?難しく考えなくて大丈夫です、普通に考えればわかるはず……そう、正解は「死体の埋葬」です。主人公もまずは死体の埋葬方法から教わることになります。運ばれてくる死体を解剖して、肉を切り分けてから墓に埋めるのです。
切り分けた肉は(肉の認可印を偽装するなど少々の工作が必要ですが)食肉として売却することが可能ですし、なんだったらハンバーガーやサンドイッチの材料にすることもできます。ここまで読んだ読者の皆様ならお気づきのことかと思われますが、このゲームは少々クレイジーです。まあ不安がらないでも大丈夫、すぐに慣れますよ!
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墓守の仕事はなかなか大変です、というのも、単に死体を埋めてればいいわけではなく、いくつもの作業が複合しているからです。埋葬だけではなく、墓地の整備もしなければなりませんし、自分が食べるものも自分で調達し、調理しなくてはなりません。すべての行動で経験ポイントのようなものが貯まり、それによってテクノロジーをアンロックすることで新しいことができるようになります。
養蜂や農業、釣りなどの要素もあるようで、なにから手をつけたらいいのか途方にくれること請け合いです。幸いなことに、時間制限のようなものはあまりなく、ゲームオーバーになるようなことも(おそらく)ないので、じっくりいろいろなことを試せます。
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そういった各種作業の中で、特に序盤において優先度が高いと思われるのは「墓地の整備」です。というのも、墓地の整備がメインクエストのようになっていて、そうすることでいろいろ新たな要素を解放できるためです。
墓地にはクオリティポイントのようなものがあるので、十字架や縁石を設置しながらそのポイントを上げていきます。そのためにはまず木や石や鉄を採取することが必要で、次にそれらを加工するスキルが必要になり、加工するための設備などを作る必要もあって……と、一口に「墓地の整備」といえば簡単ですが、付随する作業量は膨大です。
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やることが膨大ゆえに、ゲームの進行速度は非常に遅いです。特に徒歩しか手段のない長距離移動にはなかなか苦労することになります。また、ゲーム全体を通して、行動に対するインカムが少なめなところも特徴。一般的な農業ゲームであれば、作物を収穫すれば種も同時に増やしていけることが多いのですが、このゲームでは「種を4コ消費して育てた作物から回収できる種は2~3コ」という感じなので、きっちりと農業をするためには、定期的に遠くまで歩いて種を買いにいかなければならないわけです。
成長しないスタミナやアイテムインベントリの狭さなどもあって、最適解を出せないとじれったい思いをさせられるかもしれません。とは言え前作『Punch Club』もなにをするにも時間がかかるようなバランスのゲームだったので、ゲームの欠陥というよりは意図的にこうされているのでしょう。開発元の作風であるとも言えますが、このあたりはプレイする人をかなり選びます。
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しかしながら、世界観は魅力満点でダークかつ不謹慎な笑いに満ちています。暗黒の中世で墓守としてスローライフを送りたい人にはうってつけ。筆者もじれったく思いながらもグイグイプレイさせられてしまい、長く楽しめる一本であると感じています。アップデートも頻繁に当たっているようなので、今後の進化にも期待できます。みなさんも『Graveyard Keeper』で、ちょいワル墓守としてデビューしてみてはいかがでしょうか?
今作は公式WebサイトおよびSteamで販売中。価格は19ドル/1,999円で、インターフェイス/字幕表示において日本語に対応しています。海外ではXbox One向けにもリリース中です。