■「映画とゲームの融合」の時代を大きく先へと進めた『メタルギアソリッド』
プレイステーションやニンテンドー64、そしてセガサターンの3組が覇権を争った90年代後半のゲームシーンでは、当時のスクウェアを中心に「映画のようなゲーム」という概念の下、様々な形で映画的表現が取り込まれました。
例えば、以前20周年を迎えた作品としてご紹介したスクウェアのゲーム版『パラサイト・イヴ』も、日本のゲーム開発者だけでなくCMなどでのCG映像制作経験を持つ海外スタッフと協力し、映画的な演出やプリレンダリングのCG映像を沢山取り込んだことで、ジャンルを“シネマティックRPG”として自らを定義付けています。
この1998年という年には、1月に『バイオハザード2』が、3月に『パラサイト・イヴ』が、そして9月に『メタルギア ソリッド』が発売されたことにより、洋画チックなゲーム演出やグラフィック表現が飛躍的に向上した時代でもあります。
今日における「映画のようなゲーム」と「映画とゲームの融合」という概念は、本作を始め、この20年余りの時を経て様々なタイトルが果敢に挑戦したことで、普遍的な存在になったといえる状態です。しかし20世紀末の当時は、ゲームという媒体が映画のような映像演出と物語展開、感動を手に入れてきたことに驚きと称賛、そして戸惑いが現れていた時代でした。

その中で『メタルギア ソリッド』は、無線やカットシーンがフルボイスで表現されたことに加え、状況説明のための実写映像取り込みシーンもありますが、プリレンダリングの映像を用いらず、キャラクターモデルをそのままにリアルタイムレンダリングで映像を表現しました。フルボイス、3Dのリアルタイムレンダリングのカットシーン(TVでの洋画放送のような登場人物紹介字幕付き)、実在の兵器を登場させると共に細かな遺伝子工学とミリタリー寄りの政治劇など、後の時代に必須となった要素をバランスよく全て表現したことに、本作の特筆すべきものが詰まっています。
■3DCGが主流となった90年代までのゲームにおける集大成である『メタルギア ソリッド』
『メタルギア ソリッド』へ至る前に、80年代から90年代前半にかけてゲームはグラフィックの向上だけでなく様々な要素が盛り込まれました。例えば小島監督作品だけに絞ると、『スナッチャー』はPC-88版からPCエンジン版へ移植された時には一部の音声化とADVとしてのシナリオの完結(PC-88版はACT2のJUNKER本部襲撃が終わるまで終了し、MSX2の『SDスナッチャー』でのストーリー完結を経て、ADVとしての事件の真相と解決はPCエンジン版で語られることになった)で、『ポリスノーツ』ではPC-98版から3DOへ移植されたときには新たにアニメーションが加えられました。

ゲームは、ワイヤーとドットから始まり、そしてテキストから音声、音声からアニメーション(映像)、そして3DCGと順当に様々な表現方法がハードの進歩とともに足し算をする形で可能となりました。そして、90年代後半からは主流に躍り出た現代的な世界を舞台に、より現実感があり納得できるシリアスなシナリオも含めたものがゲームのメインストリームへと出てきます(90年代特有の世界終末的な雰囲気や、21世紀への期待と不安が混ざったものも含め)。
その中で『メタルギア ソリッド』は、前述の要素を全てまとめ上げて「フル3DCGのゲーム」として完成させたことも含めて「20世紀最高のシナリオ」という評価へ繋がったのではないのかと思います。
■完全版『インテグラル』とリメイク版『ツインスネーク』など後世へ伝えられる「最高のシナリオ」
『MGS』発売後から1年経過した後の1999年6月には、海外版にて追加された要素をひとまとめにVRミッションを大幅に追加した『メタルギア ソリッド インテグラル』が発売(2000年には海外向けにPC版『MGS』も発売されている)。また、2004年3月には、『MGS2』のシステムを使用し演出を大幅にグレードアップしたリメイク作品の『メタルギア ソリッド ザ・ツインスネーク』がゲームキューブ向けにリリースされています。
他にも2008年にはレイモンド・ベンソン氏による小説版『メタルギア ソリッド』、野島一人氏によるシャドーモセス事件を追体験する形の小説『メタルギア ソリッド サブスタンスI シャドーモセス』、グラフィックノベル形式で語られるPSPで発売された『メタルギア ソリッド バンドデシネ』と、映像作品の「メタルギア ソリッド 2 バンドデシネ」に同梱された映像版「メタルギア ソリッド バンドデシネ」など、初代『MGS』は様々な媒体と表現方法で世に発信されて来ました。
GCで発売されたリメイク版の『MGS: TTS』を今現在プレイすることは難しいですが、初めてリリースされた初代『MGS』はゲームアーカイブスにて配信されているため比較的容易にプレイ可能です。20周年という記念に、ゲーム/小説/映像などの何らかの媒体で再び手をとってみてもいかがでしょうか。