2019年3月21日発売予定のクトゥルフ神話をベースとしたオープンワールドアドベンチャー『The Sinking City』。同じくクトゥルフ神話をベースとしたサバイバルホラーRPG『Call of Cthulhu』の発売などで盛り上がりを見せるクトゥルフ系ゲームですが、今回Game*Spark編集部は『The Sinking City』開発元のFrogwaresにメールインタビューを敢行。気になること諸々を訊いてみました。
――『The Sinking City』ではどのようなクリーチャーに出会うことになるのでしょうか?
Frogwares:本作で戦うことになるクリーチャー・モンスターということでしたら、いくらかいます。彼らは洪水によってやってきたものたちで、一体何者なのか、誰にもわかりません。種類は多くいますが、これまでに明らかにしてきたのはLethianとStygian Harvesterという2種類です。
Lethianは人型のモンスターで、遠距離攻撃をしてきます。倒すのは簡単ではなく、プレイヤーにとって厄介な存在です。Harvesterはこれと全く異なり、小さく、素早く跳び回り、あなたを邪魔しつつダメージを与えてきます。攻撃を当てるのは難しいですが、一発で倒すことができます。
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登場するすべてのモンスターはテレポートやヒーリングといった異なるアビリティを保有しているので、現在彼らがどのようにお互いに影響し合うかテストしています。そのため、プレイヤーは敵のコンビネーションによって異なる戦術を必要とします。優先順位を考え、残弾数にも気を使わなければいけません。弾薬はそれほど多く手に入りませんので。
モンスターたちを利用し、プレイヤーにはプレッシャーを与えつつ危機感を持って欲しいと思っています。もちろん、この他にもラヴクラフト作品からインスパイアされたクリーチャーやモンスターが登場します。中にはフレンドリーで手助けしてくれるのもいますし、数は多くありませんがプレイヤーを攻撃してこないものもいます。
――本作ではどのようなアーティファクトや魔導書が登場するのでしょうか?
Frogwares:ラヴクラフティアンなやつです(笑)。ミ=ゴの脳缶、深きものどもの黄金、そして小説で出てきた様々な魔導書が出てきます。アーティファクトのいくつかは旧支配者たちと密接に繋がっているので、ここでネタバレはしません。そしてもし「あの」魔導書について気になっているようでしたら、それについては今は何も言えません。
――本作にはラヴクラフト作品や他のクトゥルフ神話のキャラクターが登場しますか?
Frogwares:もちろんです!少しネタバレになってしまいますが、謎の旧支配者たちは登場しますよ。ご想像通り、彼らは本作においてとても重要な役割を担っています。本作のストーリーは、メインキャラクターであるチャールズ・リードの物語であると同時に、旧支配者たちの物語でもあります。ここで登場するキャラクターの名前をいくつか挙げることもできます。ナイアーラトテップやシュブ=ニグラスです。千匹の仔を孕みし森の黒山羊(注:シュブ=ニグラスの別名)は街を支配する熱烈なカルトによって崇拝されています。カルトと言えば、ラヴクラフト作品をベースとするものにあるように、本作でも多くのカルトが登場します。
ラヴクラフトファンでしたら、彼の作品に影響を受けたキャラクター、場所、出来事をたくさん見つけることができるでしょう。そのうちいくつかは実際に会うことが可能です。深きものどもはいい例です。彼らはインスマスからオークモントにやってきて、メインクエスト、サイドクエスト両方で重要な役割を担います。
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この他にも、私たちのシナリオチームが作り出した新顔も登場します。新しい非人間の種族がいて、他にも登場する多くのキャラクターたちは、ラヴクラフティアンユニバースにピッタリでしょう。
――なぜ本作の舞台はアーカムではなく、マサチューセッツ州の架空の街なのでしょうか?
Frogwares:本作はH.P.ラヴクラフト作品から多大な影響を受けていますが、彼の作品のコピーではありません。私たちは自ら新しい街を作り出すことで、本作のゲームプレイとストーリーを展開させる自由を手に入れられると思ったのです。
また、多くのラヴクラフトファンに興味を持っていただいているので、アーカムという名前を出しても完璧な再現ができなければ、クオリティの低いものとなってしまいます。例えば、私たちの作り出した「謎の洪水」というアイデアも、アーカムに落とし込むのは難しいです。街の伝承では、街は海の近くにないとなっているので、街が浸水しているのはラヴクラフト作品を知っている人にとって、没入感を削ぐものとなってしまうでしょう。
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実を言うと、私たちが作り出した世界において特定の見方を追求したいと思っています。ラヴクラフトの人類に対する卑下したアイデアや宿命論は本当に魅力的です。しかしだからこそ、舞台やストーリーをそれに合わせたものとしなくてはいけません。本作における洪水はただの出来事ではなく、私たちが冷たく無慈悲な自然に対していかに無力であるかを表しています。
ですので、皆さんがすでに知っているものを再現するのではなく、ラヴクラフト感のある新たな体験を提供したいと思っています。
――これまでに公開されてきたトレイラーではラヴクラフティアン・ホラーな雰囲気が強いですが、オーガスト・ダーレスの影響はあるのでしょうか?
Frogwares:もちろん、ダーレス、ラムレイといった、ラヴクラフトに追随する方達の作品も勉強しています。ネタバレを避けつつお教えすることはできないのですが、ラヴクラフト作品以外の影響もある、とだけお答えします。また、ラヴクラフトが影響を受けたと言うエドガー・アラン・ポー、アルジャーノン・ブラックウッド、ロバート・W・チェンバースといった作家の作品も参考にしています。
――本作にはオークモント以外の場所は出てくるのでしょうか?
Frogwares:オークモントは探索できる場所がかなり広いため、本作はすべてオークモントで展開するということになりました。オークモントの謎の一つに、なぜか人々が飲み込まれそこに留まってしまうというものがあります。どんなにひどい状況でも街から逃れられないという感覚をプレイヤーの皆さんにも感じてもらいたいのです。
それに、オークモントには多くのことが詰め込まれています。街の歴史、文化、独自ブランドのタバコ、アルコール、風変わりな建物や社会階級まであります。
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――本作の一番の特徴を教えてください。
Frogwares:オープン探索システムだと思います。簡単に説明すると、ゲームがプレイヤーの手を引いてくれないということです。ミニマップにクエストマーカーは表示されませんし、クエストで探し物のチェックリストもありません。例えば、誰かが住所を教えてくれたら、プレイヤーは実際にマップを確認し、その場所を探さなくてはいけません。マーカーなどは表示されないのです。
ヒントや探索にも同じアイデアが使われています。謎を解くため、プレイヤーは多くの情報と道具を与えられます。しかし全てが一度に渡されるわけではありません。プレイヤーは自らアクティブに発見と謎解きを行わなければなりません。このシステムにより、プレイヤーはただ単に目的地に行くのではなく、自らアクティブに探索し、考えるようにデザインされています。
――本作のゲームシステムや演出面で影響を受けた作品はありますか?
Frogwares:本作は探偵ゲームですので、『Sherlock Holmes』シリーズから影響を受けています。イベントやマインドパレスなど、私たちが『Sherlock』シリーズで作り上げたものの上に作り上げています。しかし戦闘やRPG要素など、より多くのシステムを追加しています。
また、2005年に発売された『Call of Cthulhu: Dark Corners of the Earth』、『サイレントヒル』シリーズ、『L.A.ノワール』、『The Last of Us』、そして少しだけ『ウィッチャー』、それと「マウス・オブ・マッドネス」といった映画からも影響を受けています。
――本作の日本語版について教えてください。
Frogwares:2019年3月21日の世界発売と同時に、日本語字幕に対応させる予定です。
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――Modはサポートするのでしょうか?するとした場合、どれほどいじれるようになるのでしょうか?
Frogwares:Modについてはオープンな立場です。しかし現時点で何か計画があるわけではありません。
一つ考えているのは、私たちがオークモントを作るのに使ったCity Generatorをリリースすることです。これを使えば、プレイヤーは自分の好きなラヴクラフティアンワールドを作ることができます。City Generatorには多くのオプションがありますし、建物のような新しいアセットを追加することもできます。東京から古代のアレキサンドリアまで、理論的には作り出すことができるのです。もちろん、それなりの作業量は必要になりますが。
詳しくはこちらの動画をご覧ください。
現時点では、City GeneratorがMod職人のためのツールとなるか、スタンドアロンのツールとなるか、いつ出すかも決まっていません。今は本作の開発にすべての時間と労力をかけていますので!
――なぜ近年ラヴクラフト作品、クトゥルフ神話をベースとしたゲームが増えているのでしょうか?
Frogwares:最近は確かにコズミック・ホラーの人気が高くなっています。何か特定の理由があるとは言えませんが、未知のものへの恐怖を感じている人が今日では増えているのかもしれません。そのため、わかりやすい悪役がいるストーリーというものに飽き、人々ははっきりしない、でも目の前にある恐怖、というものを求めているのかもしれないですね。
――日本ではクトゥルフ神話をベースとしたTRPGが人気です。こういった人たちも本作を楽しめるでしょうか?
Frogwares:もちろんです!本作はクトゥルフ神話をベースとしていますし、物語を重視する人には解くべき謎が数多くありますよ。
――最後に、本作と『Call of Cthulhu』がごっちゃになっている読者も少しいるようなのですが、他にそのような声を聞いたことはありますか?
Frogwares:いや、聞いたことないですね(笑)。
――ありがとうございました。