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「中華ゲーム見聞録」もとうとう第20回目。今回は絵画と見紛うようなモノクロ調テクスチャーのポリゴン技術で開発された、独特なモノクロゴシック調パズルアドベンチャーゲーム『Iris.Fall(彩虹墜入)』をお届けします。
本作はNEXT Studiosによって、2018年12月7日にSteamで配信されました。NEXT Studiosは「中華ゲーム見聞録」第16回目で紹介した『Bladed Fury』と同じ開発元です。中国の大企業テンセント(騰訊)内のインディーゲーム会社で、スタジオは上海と深センにあります。インディーゲームと言えば小規模のイメージなのですが、NEXT Studiosは大企業をバックにしているだけあって、開発者である菲菲氏の話によれば100人以上の規模だとか。NEXT Studiosの詳細については『Bladed Fury』の記事を参考してください。今回は菲菲氏にコメントをいただけましたので、記事の最後にインタビューを掲載します。
本作の内容ですが、ステージ探索型のパズルゲームです。ゲーム中には「部屋」が用意されていて、謎を解いていくことで次の部屋に移動することができます。絵画のように見えるグラフィックは、モノクロ調テクスチャーを使用したポリゴンによって構成されており、これがただの雰囲気づくりではなく、光と影を使ったパズル要素に関わってきます。菲菲氏によれば、モノクロは光と影を際立たせるのにもっともよい表現方法だとのこと。いったいどのようにパズルとして利用するのか。さっそくプレイしていきましょう。
光と影のパズルゲーム
ゲームを始めると、少女アイリスが悪夢にうなされているシーンから始まります。夢から覚めたアイリスは窓辺にいる黒猫のあとを追い、夜の街へと繰り出します。そして建物の中へと入っていくと、そこには地下につながる長い階段が……。
ムービーの通り、本作はゲーム中も含め、完全な非言語ゲームです。ゲームクリアまでテキストは一文字も出てきません。説明が一切ないので、ムービーや画面情報から自分で推測する必要があります。ストーリーやエンディングはかなり謎めいたものがあり、様々な解釈ができそうです。
ムービー後、移動できるようになりました。操作方法ですが、WASDキーで移動、マウスクリックで調べたりボタンを押したりなど。ちなみにコントローラでプレイしたい場合は、タイトル画面の設定からゲームプレイを選び、入力デバイスを「パッド」にする必要があります。デフォルト状態ではコントローラー操作に対応していないので注意(筆者はゲームクリア後に気づきました)。
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アイリスは地面に落ちている本を調べることにより、影になることができます。これで実体状態では移動できない場所の移動が可能に。もう一度本を調べることで実体に戻れます。これを駆使してパズルを解いていくというのが本作の特徴です。このアイディア自体は『Contrast』というアクションパズルゲームでも使われていますが、本作では主人公がジャンプしたり登ったりできないので、パズル要素が強めです。
多彩なパズル要素
階段を下りたところで、探索パートが始まります。影になって移動するにも、移動先まで影が道としてつながっていなければなりません。そこで動画のようにオブジェクトなどを手に入れたり操作することで、影を付け足して道を作っていきます。
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前述の影を使った移動以外にも絵合わせや数字合わせ、一筆書き、謎解きなどがあり、パズルのバリエーションは多彩です。パズル好きの人は十分楽しむことができるでしょう。
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先へ進むと、椅子の積み上げられた部屋にたどり着きました。このゲームの特徴として、その独特なゴシックアート的世界観が挙げられます。次にどんな部屋が現れるのかも、ゲームをプレイしていくうえでの楽しみになっています。
案外ガチなパズルも……
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壁に映る階段の影の間に棒を置き、影をつなぎ合わせようとしましたが、長さが微妙に足りません。ジャンプしたらいけそうな気はしますが、アイリスはか弱い女の子なので、少しの隙間でもあれば進むことができません。さてどうするかというのが問題。
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絵の中を進んでいくパズル。最初は何をすればいいのかわからなかったのですが、いろいろいじっているうちに法則がわかってきます。このような気づきのあるパズルも数多く用意されています。筆者はこの手のパズルが好きです。
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そしてルービックキューブ問題。こういうガチ系パズルは筆者の苦手とするところ。幸い2x2ブロックなので、いろいろいじっていればなんとかなりました。これ以外にも、この手の本格パズルが登場します。
開発者へのインタビュー
本作は独特なグラフィックにまず目が向くと思いますが、ゲーム的にはしっかりとしたパズルゲームになっています。とにかくパズルの種類が多く、苦戦するものもありました。ただ難しすぎて解けないというレベルではなく、程好い感じに作られています。ゲーム自体は短編の部類で、筆者はクリアまで3時間ほどでしたが、十分に良いゲーム体験をさせてもらいました。以下は開発者である菲菲氏へのインタビューです。
――まずは自己紹介をお願いします。
菲菲氏:菲菲と申します。「NEXT Studios」は現在100人以上の規模の会社で、いくつかの小さなチームに分かれて同時に様々なプロジェクトを進行させています。我々『Iris.Fall』開発チームの中心構成員は6人です。
――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?
菲菲氏:2年前、我々のチームは陳星漢氏(『風ノ旅ビト』『Flowery』などの開発者。独特な世界観に定評がある)のようなインディーゲームをずっと開発したいと思っていました。しかしいざ開発してみると、思い通りにはいきませんでした。『風ノ旅ビト』のような砂の表現やカメラの運用は、我々のチームが短期間で到達するにはあまりに困難でした。
思考錯誤の末、私たちは逆に考えることにしました。当時、ゲーム市場のインディーゲームの大部分は視覚効果を狙った色彩豊かなものばかり。ならば我々は違うものが作れないかと。いっそのことモノクロ調のゲームを作ってしまわないかと。『風ノ旅ビト』のような新たな試みは失敗しましたが、チームの能力範囲内で、小さな部屋の中でパズルを解くというゲームはどうだろうかと考えました。
モノクロ調の小部屋でパズルを解くというテーマが決まると、これがゲームを作るコア部分のブレイクスルーとなりました。光と影を表現するのにもっともよい方法はモノクロ調です。これは暗い面や明るい面など視覚美術を際立たせます。光と影とモノクロアートの結合は、ゲームとアートをも非常によく融合、同一化します。我々は「光と影」「白と黒」をゲームの表現として利用し、開始時の舞台を劇場にすることにしました。これが『Iris.Fall』の誕生です。2017年から開発を始め、16カ月ほどかかりました。
――本作の特徴を教えてください。
菲菲氏:本作は「光と影」をテーマにした、アート風パズルゲームです。この「アート風」というのが特徴です。本作では大胆に漫画風モノクロ調を採用し、各ステージには必ず新しい要素を入れ、光と影との独特な視覚体験を創作することによって本作の風格を創り出しました。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
菲菲氏:私はティム・バートン監督や「パンズ・ラビリンス」という映画のファンです。そのため本作は自分がもっとも得意なモノクロゴシックものにしたのです。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
菲菲氏:日本の読者の皆さま、初めまして!本作は私がデベロッパー兼アートディレクターとして初めて開発したゲームです。開発にはかなり苦労しましたが、初めての自主創作ということで非常に興奮しました。
本作がアート風であろうとゲーム的であろうと、概してゲーム市場における大ヒット作の類ではないことを私たちはよく知っています。しかしできれば皆さまに本作を一度遊んでもらいたいと心より願っています。きっとゲーム中、思いもよらない驚きや喜びをたくさん見出せるでしょう。
もしあなたが「パズル要素は苦手だけどデザインは気に入った」と思ってくれたとしても、我々は心よりとても嬉しく思います。またすでに購入されたという日本ユーザーの皆さまには、感謝感激の思いです。
――ありがとうございました。
独特な世界観と多彩なパズルゲームを備える本作。日本語にも対応していますし、そもそもゲーム中にはテキストがないので、誰にでも楽しめるようになっています。光と影を駆使したモノクロゴシックの世界観をぜひとも堪能してみてください。
製品情報
『Iris.Fall』
開発・販売:NEXT Studios
対象OS:Windows
通常価格:1,520円
サポート言語:日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)など14カ国語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/907470/IrisFall/
※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。