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中華を題材にした中華圏以外の海外作品を紹介する「中華ゲーム見聞録外伝」。今回は『Total War』シリーズ最新作、三国志をテーマにしたストラテジーゲーム『Total War:THREE KINGDOMS』のプレイレポートをお届けします。
本作はCREATIVE ASSEMBLYが開発、SEGAによって5月23日にSteamで配信されました(Mac版、Linux版はFeral Interactiveが担当)。以前から「『Total War』のシステムで三国志のストラテジーゲームが出たらいいよね」と筆者は思っていましたが、とうとうそのものズバリが出ましたね。
『Total War』シリーズは、2000年に発売された日本の戦国時代を舞台にした『Shogun: Total War』から始まり、中世やローマ、ナポレオンなどをテーマにした歴史ものや、「Warhammer」シリーズをテーマにしたファンタジーものがリリースされ、幅広い多くのファンを獲得してきました。ただ残念なことに一部作品はSteamで日本から購入することができなくなっています(筆者は『Total War: Shogun 2』が好きなので、多くの日本の方に遊んで欲しいところです)。幸い本作は、日本語サポートはないものの、日本から購入可能です。
本作の内容ですが、基本的にはこれまでの『Total War』シリーズと同じで、内政を行ったり部隊を敵の都市へ送って占領したりといった、ターン制+リアルタイム制のストラテジーゲームです。本シリーズの大きな特徴は、何と言っても部隊がぶつかったときに展開される集団戦闘です。多数の兵士たちが意思をもっているかのように一人一人動き、実際の戦場さながらのバトルを繰り広げます。相手に勝つことよりも、戦いのリプレイを後で見返して「面白い戦場になった」とニヤニヤする楽しみがあります。本作は三国志がテーマになっていますが、その戦場はどのようなものなのか。さっそくプレイしていきましょう。
頭を悩ませる勢力選択から
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ゲームは中国語(繁体字)でプレイします。というか、本作を英語でプレイすると、人物名を一度脳内で中国語発音に変換しないといけないのでわかりにくいかと思います。ゲームには中国全体を舞台にした戦役モードと、戦場を楽しむ戦闘モードがあります。
戦役モードでは連軍(反董卓連合軍)、太守、匪徒(盗賊団)、黄巾賊(要DLC)と大きなカテゴリーあり、それぞれの中に使用できる武将たちが並んでいます。連軍では曹操、劉備、孫堅、公孫サン、袁紹、袁術と名の知れた者たちがいますね。それぞれの人物には部下がいて、劉備なら関羽と張飛です。曹操のもとには夏侯惇と夏侯淵、公孫サンのもとには趙雲がいます。ゲームの難度は曹操が「簡単」、袁術が「困難」、それ以外が「普通」。やはり曹操有利ですね。
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太守の項目には、孔融、劉表、馬騰。劉表のもとには「老いてますます盛ん」な黄忠が、馬騰のもとには馬超とホウ徳がいます。筆者的には馬騰ら西涼の騎馬隊を『Total War』シリーズで使ってみたいですね。どの人物もゲーム難度が「困難」なので厳しそうですが。
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匪徒には張燕と鄭姜。「誰やねん」という感じですが、張燕の方は「黒山賊」という大盗賊団を率いた人物で、動きが俊敏なことから「張飛燕」と無駄に格好いいあだ名を持っていました。のちに朝廷に帰順し、反董卓連合軍にも加わった人物です。
盗賊女王・鄭姜の方は本当に「誰やねん」でして、筆者が調べたところ、正史『三国志』の魏書・方技伝に、鄭と姜という女盗賊たちが反乱を起こし、討ち取られたという話がありました。おそらくこの2人が合わさって作られたキャラクターかと思います。
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DLCによって追加される黄巾賊勢力は張角3兄弟ではなく、その部下の何儀、キョウ都、黄邵。反董卓連合軍の時代なので、黄巾賊の残党という形の登場でしょう。キョウ都は正史では盗賊団を率いていましたが「三国演義」では黄巾賊として戦っており、のちに劉備軍に加わっています。当然のように難度はどの人物も「困難」。使うのはゲームに慣れてからの方がよさそうですね。
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誰を使うかかなり悩みましたが、一番わかりやすい劉備にしました。劉備の能力は「公共秩序+4」「義勇歩兵維持費-50%」。しかしそれよりも、関羽・張飛という2人の猛将がいるのが劉備の強みでしょう。
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ゲームをそのままスタートさせてもいいのですが、画面右下にある「演義様式」というところをクリックすると、「演義様式」「史実様式」を選ぶことができます。演義様式は「三国演義」のように武将の超人的な強さが強調されるようです。ヒーローユニットが強いというのは、『Total War』シリーズでいうと『Total War: WARHAMMER』に近い感じになるのでしょうか。関羽と張飛がいますし、今回は「演義様式」でいきましょう。
いきなりバトル開始!
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三国志のストーリーですが、黄巾賊の乱については「中華ゲーム見聞録」第37回の『呑食孔明伝』で触れていますのでそちらを参照してください。本作は張角が死んで黄巾賊の乱が収まったのちの話で、190年秋のスタートです。都では董卓が権力を握って朝廷を私物化し、それに対して曹操や袁紹らが反董卓連合軍を結成しました。漢王室の血筋である劉備は、漢王朝復興と天下の民のために打倒董卓を目指して戦います。
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操作可能になりました。いきなり劉備の前に黄巾賊らしき男が立ちはだかっていますね。『Total War』シリーズのルールですが、全体マップのときはターン制になっていて、ユニット(画面中にある人物)を移動させることができます。ユニットは将や兵を持っているので、外見だけで「あいつ弱そう」と思わずに、必ず戦力をチェックしてから戦ってください。
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敵ユニットとぶつかると互いの戦力が表示されます。劉備軍の兵力1263に対し、黄巾賊は721。しかもこちらには関羽と張飛がいるので楽勝かと。戦闘に入るとリアルタイム制になります。そういうのが苦手な人はオート戦闘を使うこともできます。
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戦闘が始まる前に布陣をします。ユニットにはそれぞれ特徴やアンチユニットがありますので、敵の動きを予測して配置を考えましょう。「騎兵は弓兵に強く、長槍に弱い」ので、「騎兵で敵の弓兵を叩く」「逆に自分の弓兵は敵の攻撃を受けないようしっかり守る」ことが重要です。
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ユニットを選択したときに、敵側のユニットの上に「!」マークが付いているのはアンチユニットです。ぶつからないように気を付けましょう。正面の敵を歩兵で止め、その間に左右の騎兵が回り込んで背後の弓兵を叩くという戦術でいきます。
三国志の醍醐味は一騎打ち!
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敵将の趙伯が関羽相手に一騎打ちを申し込んできました。何という身の程知らず。もちろん受けましょう。こういうのがあると「三国志のゲーム」という感じがしますね。三国志の醍醐味はやはり武将同士の一騎打ちです。
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両将が馬で駆け寄り、すれ違いざまに関羽の青龍偃月刀が一閃。趙伯は馬から投げ出されて地面を転がります。さすが関羽。しかし趙伯は死んでいないようで、関羽は律義に馬から下りて戦いを続行。
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一騎打ちの動きは武術映画のように格好よく、なかなか見ごたえがあります。しかし一騎打ちしている間も弓兵は弓を射るわ、他のユニットは前進するわで、「ちょっと止まって戦いを見届けてあげて」と言いたくなります。
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一騎打ちをしている間に騎兵を左右に散開させ、ガラ空きになった敵背後にいる弓兵を狙わせます。突撃をかけようとしたときに関羽勝利の報告が。敵将もいなくなりましたし、もうこれは勝ったでしょう。
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そして勝利。こちらの兵力は1225なのでほぼ損害はありません。ちなみに『Total War』シリーズはこのリアルタイム戦場が売りなので、先ほどの戦いを保存して後で見返したり、戦いに納得がいかなかったらやり直したりなど、心行くまで戦場を楽しむことができます。自分にとって最高の戦場を作り上げましょう。
敵の砦を攻めろ!
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さらに劉備たちを前進させ、黄巾賊の砦を攻めます。攻城戦ならぬ攻砦戦ですね。敵砦への侵入経路は3カ所あり、中央に敵弓兵が集まっています。右側の入り口は守りが薄いので、ここから騎兵を突っ込ませて中央にいる敵弓兵を襲わせましょう。
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劉備3兄弟と歩兵は正面から突入。歩兵の一部を左側の入り口に向かわせ、敵騎兵に横っ腹を突かれないよう壁を作っておきます。矢がすごい勢いで飛び交っていますね。ちなみに画像は戦場のリプレイを使っています。自分の好きな角度で戦場を見直すことができるので便利です。
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たった3人だけで正面から切り込み、敵兵を蹴散らしてしまう劉備3兄弟。強い。味方の兵は彼らの速さに追いついていません。もはや『Total War』というより、ここだけ『真・三國無双』になっています。
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右側の入り口から突入した騎馬隊も敵弓兵への奇襲に成功。このまま進ませれば劉備たちと挟み撃ちの形になります。
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左側の入り口では歩兵が敵騎兵の動きを封じ込めています。この背後に味方の弓兵がいますので、矢による攻撃で殲滅させてやりましょう。
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敵砦の奥にある旗のそばに味方ユニットを一定時間配置すると占領状態となり、戦闘勝利となります。「演義様式」だからなのか、やはり劉備3兄弟は強いですね。
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占領した砦からはターンごとに金銭収入を得ることができます。また金銭を払って施設をアップグレードすることで、収入アップや様々なボーナスが得られます。このあたりの内政要素もこれまでの『Total War』シリーズと同じです。
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外交マップを見ると、周囲を黄巾賊の残党勢力と官軍(董卓)勢力に囲まれています。西の陶謙とは友好関係にありますので、仲良くやっていきましょう。東の孔融とも友好関係が結べそうですね。
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人物関係図を表示することもできます。趙雲は公孫サンに仕えていますが、劉備とは「好友」の関係にあります。いずれ公孫サンが滅びたときにでも、こちらに来ていただければと。
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人物の詳細画面では、スキルをアンロックしたり、武器や防具を装備したりできます。天下統一を目指し、味方武将たちを強化していきましょう。いずれ趙雲、黄忠、馬超を仲間にして、蜀の五虎将を揃えたいと思います。劉備の戦いはこれからです。
三国志の世界を再現した『Total War』シリーズ最新作
本作は、やはり三国志を題材にしているだけあって、一騎打ちや人間関係など、しっかりと三国志の雰囲気が作られています。現在のところ日本語サポートはありませんが、基本システム自体はいつも通りの『Total War』シリーズですので、一作でもプレイしたことがあればチュートリアル無しでもだいたい分かるかと思います。
また本作はヒーローユニットが強いので、武将の活躍が際立ちます。関羽や張飛など猛将の活躍が見られるのは良いですね。ユニット関係もわかりやすく、三国志を知っていれば武将の強さも把握できていると思いますので、『Total War』シリーズを遊んだことがなくても三国志ファンならば取っつきやすいゲームかと思います。
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筆者的には『Total War』シリーズ中、一番戦場が楽しい作品です。できるだけいいリプレイを残したいというのがあって、満足いくまで同じ戦場を繰り返し戦ってしまうため、なかなかゲームが進みません。「戦闘モード」には「赤壁の戦い」など有名な会戦が用意されていますので、RTS好きな人はここから始めてもいいかと思います。筆者としては三国志の『Total War』が遊びたかったので、本作には大変満足しています。今後のDLCによるシナリオや勢力の追加、ユーザーによるModの展開を期待しています(筆者としては南蛮の象兵を使ってみたいですね)。
製品情報
『Total War: THREE KINGDOMS』
開発・販売:CREATIVE ASSEMBLY、SEGA、Feral Interactive
対象OS:Windows、MacOS、Linux
通常価格:6,580円
サポート言語:英語、中国語(簡体字、繁体字)、フランス語など13カ国語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/779340/Total_War_THREE_KINGDOMS/
※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、繁体字を日本の漢字に置き換えています。
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。