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「中華ゲーム見聞録」第53回目は、謎の犯人に囚われた主人公たちが脱出を試みる実写映像アドベンチャーゲーム『記憶重構(Memories)』をお届けします。
本作は百恩互娯によって8月15日にSteamで配信されました。百恩互娯は中国の深センを拠点とするインディーデベロッパーで、2017年に設立されました。実写映像を使った作品を専門にしており、一作目のモバイル用脱出ゲーム『活口』では100万人以上のユーザーを獲得しています。開発チームのメンバーはテンセントなどで長年ゲーム開発をしていた経験があり、インタラクティブムービーの発展のために日々研究を重ねているとのことです。
本作の内容ですが、サスペンス映画のようなストーリーのある脱出ゲームです。「内容の一部を遊べる映画作品」を目指して開発したとのことで、本作に登場する背景や道具などはすべて実物を使っています。
光学メディアが普及し始めたころに存在感を示していた実写映像ゲームですが、コストや手間、CGの発展などにより、近年ではあまり見かけなくなってきました。とは言え、Steamでは『Her Story』や『Late Shift』『Visitor』『Telling Lies』などが好評を博しています。本作は実写映像を専門とするデベロッパーなので、内容に期待できそうです。さっそくプレイしていきましょう。
囚われた女性
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嬉しいことに、本作は最初から日本語字幕入り。ゲームが始まると、小説家を名乗る男が登場します。彼は事故で、記憶とともに小説のアイディアも失ってしまいました。しかし小説を書くこと自体はやめず、どんな犠牲を払ってでも今書いている小説を完成させるとのことです。
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タイトル画面が出てきたのち、シナリオ選択になります。現在プレイできるのは最初のシナリオ「禍水」だけ。クリア後に他のシナリオがアンロックされる形式のようです。主人公もシナリオごとに違うようですね。
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「禍水」を選択後、先ほどの小説家が「私たちのストーリーはここから始めます」と言い、物語がスタートします。本作の内容はこの小説家の紡ぎ出したフィクションなのか、それとも小説家と関係があるのかは明かされていません。
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場面が変わり、本章の主人公である女性が登場。ムービー画面が縦長なのはモバイルからの移植だからでしょう。女性はスマホで誰かと話したのち、車に乗り込みます。あくまで「映画作品」なので、細かい説明文などは出てきません。ちなみにこの女優は張咏嫻と言い、主役を務める映画もあるプロの女優さんです。
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乗り込んだのはタクシーではなく、運転手付きの会社の車です。様子からして、主人公は仕事が出来て地位の高そうな女性ですね。女性は「張さんは?」と尋ねます。「張さん」というのはいつもの運転手で、今日は休みのようです。今運転しているのは代理の運転手のようですね。
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座席の前にあったペットボトルの水を取り、飲み始める女性。それからしばらくすると、目を閉じて眠ってしまいました。車のバックミラーには、男性運転手のほくそ笑む顔が映っています。どうやら睡眠薬か何かを飲まされてしまったようですね。ここまで女性のことや会社についてなど一切説明がありません。物語が進むにつれてだんだんと分かっていくのでしょうか。
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場面が変わり、女性は四方をコンクリートの壁に囲まれた部屋で眠っていました。体には鉄の鎖が巻き付けられています。どうやら先ほどの運転手にさらわれ、どこかに監禁されてしまったようです。
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室内には「NANCY」や「MIST」などの謎の文字や、よくわからないオブジェが配置されています。のちのち謎解きに使われそうですね。これらのセットはCGではなく、すべて実物で作られていています。
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突然、室内に水が注ぎ込まれてきました。目を覚ます女性。水かさはどんどん上がっていきます。立ち上がろうにも、腰に巻かれた鎖のせいで身動きが取れません。このままだと溺れ死んでしまいます。
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鎖にはダイヤル錠が付いていました。そしていきなり始まる謎解き。しかも制限時間はたったの20秒です。急いで解かないとゲームオーバー。ヒントも何もないのですが……。あ、そう言えば確かさっき……。
「ゲーム」の始まり
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残り3秒と、ぎりぎりでダイヤル錠の解除に成功。水の勢いが弱まりました。どうやら助かったようです。しかしこの部屋から出られたわけではありません。
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部屋の天井はかなり高く、ドアらしきものはどこにも見当たりません。本作のために結構大規模なセットを造っていますね。登ることもできませんし、ここからどうやって抜け出せばいいのでしょうか。
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天井近くにあるスピーカーから、謎の人物の声が聞こえました。「ゲームがしたい」とのことです。映画「SAW」シリーズのような展開になってきましたね。それとここで女性の名前が「ナンシー」ということがわかりました、
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謎の人物の提示した「ゲーム」の内容ですが、天井からぶら下がっている4つの箱を、順々に開けていかなくてはならないようです。ただ開けるためには謎解きをしなければなりません。
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監視カメラを通してナンシーの様子を見ている犯人。ボイスチェンジャーを使っているのか、かなり低い声です。犯人はナンシーに、「なぜここに来たかを考えてもらいたい」と言います。ナンシーは誰かから恨みを買っているのかもしれません。
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操作ができるようになりました。左クリックを押したままマウスを動かすと、周囲を見回せます。また気になる場所や物体をクリックすると調べることができます。水の上に何か浮かんでいるので調べてみましょう。
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玩具のケーキのようですね。ここでムービーが流れ、ナンシーの記憶が蘇ります。過去、元カレに自分の誕生日を祝ってもらったときのことです。
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元カレは誕生日プレゼントとして、ナンシーにブレスレットを送りました。ナンシーも嬉しそうです。幸せそうな二人ですが、なぜ別れてしまったのでしょうか。
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画面右上にあるアイコンをクリックすると、人物関係の一覧が表示されます。それぞれの人物をクリックすれば、その詳細を知ることができます。ムービー中では人物の詳細があまり語られないので、ここで調べておくと良いでしょう。
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ナンシーの元カレについて見てみると、大学時代から付き合っていた人物だということが分かりました。別れたのは少し前のようですね。玩具のケーキは元カレとの思い出を引き出すためのアイテムだったようです。
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画面右にある電球アイコンをクリックすると、ヒント画面に移ります。ゲームに詰まったときに、ヒントをもらうことができます。ただ、あくまで「ヒント」なので、謎自体は自力で解かなくてはなりません。
出口は遥か頭上に
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開けるべき箱ですが、一番下のものしか手が届きません。箱には4桁の数字のダイヤルが付いています。番号がわからないので、周囲を調べて手がかりになるものを探しましょう。
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暗号表のようなものが入ったペットボトルが水の上に浮かんでいました。おそらく箱を開ける手掛かりですね。SteamだとF12キーを押せばスクリーンショットを撮ることができますので、この機能を利用しましょう。手元にスマホがある人はそれで写真撮影するのが手っ取り早いかと。本作はスクリーンショットを活用する場面が結構多いです。
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先ほどの暗号表を利用して、箱のダイヤルの謎を解きます。まだ最初なので簡単ですね。暗号表はこの後も何度か使用することになります。
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箱の中に入っていたのは、元カレからもらったブレスレット。ナンシーが元カレと別れたのは一年前で、ナンシーの方から振ったようです。ブレスレットはそのときに捨ててしまいました。そして箱が開いたのと同時に、部屋の中に水が流れ込んできました。
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足が付かないほどの高さまで水かさが上がります。しかしこれによって、先ほどまで手が届かなかった第2の箱に届くようになりました。
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周囲を調べるだけでなく、水中に潜ることも可能になりました。ただし、画面右下にある酸素メーターが0になるとゲームオーバーになりますので、危なくなったら水面に戻りましょう。
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水に浮かんでいる玩具のボートを調べると、ナンシーの元上司である勝美との思い出が蘇りました。勝美はナンシーの世話をよくしてくれて、さらには仕事でのチャンスを与えたりなどといった良い上司です。しかし少し前に退職してしまったようです。
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2つ目の箱を開けると、そこにはまた思い出の品が。そしてまた部屋に水が注ぎ込まれてきます。これで3つ目の箱に届くようになりました。残りの箱は2つです。
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見上げると、光の射す鉄格子の出口が見えました。しかし南京錠が掛かっていますね。果たしてナンシーはここから脱出できるのでしょうか。そして犯人の目的とはいったい……。この続きはあなた自身の目で確かめてみてください。
映像とストーリーに重点を置いた脱出ゲーム
本作は実写映像と脱出ゲームを組み合わせた作品となっていますが、特に力を入れているのは映像とストーリー部分です。脱出ゲームのついでに映像があるのではなく、あくまで「映像作品」の部分をメインに置いています。ただ謎解き部分もしっかり作られており、ヒントを見ても解くのが難しいものもいくつかありました(よく考えれば解けるレベルですが)。
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ナンシーの章が終わると新たな章がアンロックされ、主人公は別の人物になります。そこでもまた別の人間ドラマが繰り広げられていき、謎解きも違ったものになります。本作は「シーズン1」という位置づけなので、今後続編が出るかもしれません。脱出ゲームやムービーゲームが好きな方はぜひとも本作をプレイしてみてください。
製品情報
『記憶重構(Memories)』
開発・販売:90Games、Coconut Island Games
対象OS:Windows、MacOS
通常価格:205円
サポート言語:日本語、中国語(簡体字、繁体字)、英語など6カ国語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1015020/Memories/
※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。