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チームを組むことは難しいものです。知らない人たちと協力して、お互いのことを理解して、支え合っていくことは簡単なことではありません。それがオンライン上での繋がりであれば、なおさらです。しかし、「オーバーウォッチ ワールドカップ」の日本代表チームは、その困難に立ち向かい、クラウドファンディングで資金を募りながら世界に挑みました。
しかしながら、10月31日の予選大会で日本代表はイタリアに2勝3敗で敗北。BlizzCon 2019のグループステージまで勝ち抜けなかったものの、来年度の大会や『オーバーウォッチ2』競技シーンでの活躍を期待させる熱い戦いぶりを見せてくれました。
対イタリア戦の2日後、Game*Spark編集部は『オーバーウォッチ』日本代表チームにインタビューを実施。大会の感想やチームワーク構築、試合までの準備、そして発表されたばかりの新作の印象を伺いました。
――対イタリア戦、お疲れ様でした。予選大会が終わって2日が経ちましたが、今はどのようなお気持ちですか。
HaKu選手:もうひと試合できなくて、本当に悔しかったです。
Xeraphy選手:悔しいの一言です。
HaKu選手:勝ちたかったけど、勝てませんでした。ここまで来たのにすごく残念です。
――日本代表チームは、いろいろなチームから集まった選手で構成されていますよね。慣れないことも多かったと思われますが、どのようにコミュニケーションや練習を重ねてきたのでしょうか。
HaKu選手:2ヶ月ぐらい前から、週5日くらいの頻度で4時間ぐらいチームの全体練習を行ってました。チーム外でも、ランクやデュオをとにかくプレイしてましたね。
Xeraphy選手:スクリムが終わったら1~2時間の反省会をして次のスクリムに繋げる、といったこともやっていました。
HaKu選手:日本代表のみんなは優しい人ばかりなので、「今度はプレイスタイルをこう変えよう」みたいな、新しい提案や相談をすごくスムーズにできました。
――Youkコーチにお聞きします。今大会におけるチーム育成の方針について教えてください。
Youkコーチ:僕は「コミュニケーションを大事にする」ということを前提にしていたのですけど、そこがすごく難しかったですね。今回は日本代表ということで、初めていろいろなチームから選手を集めてきたわけで、全員でコミュニケーションをうまくとるのが……はっきり言って難しくてできませんでした。本当に難しかったです。
――具体的にどのようなところが難しかったのでしょう。
Youkコーチ:みんな違った考え方を持っているので、それぞれのやり方を取っ払ってひとつにまとめていくのに、とても時間がかかりました。実現できたことも実現できなかったこともたくさんありました。
――なるほど。オフラインとオンライン、主にどちらの環境で練習されていたのでしょうか。
Youkコーチ:オンラインですね。
みずイロGM:日本国内にいたころはオンラインのみです。アメリカに来てから、29日と30日はネットカフェで練習しました。
――渡米される前に顔合わせをしたり、オフラインで練習したことはなかったのでしょうか。
みずイロGM:ありませんでした。Xeraphyは北海道に住んでいるのですが、hoshimiは沖縄在住で、距離的に難しいところでした。それにHaKuはアメリカに住んでいますし、ただ集まるだけでもすごくお金がかかります。なので、実際に集まってオフラインで練習したことは一切なかったです。
――Haku選手は、アメリカでプレイしているときは主に英語でコミュニケーションをとられていたのですか? 日本語でやりとりする試合や練習には、慣れていたのでしょうか。
HaKu選手:初めてでした。慣れるまでちょっと時間がかかりましたが、チームと毎日練習しているうちに徐々にコツを掴めました。
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――チームとして初めて集まったときの印象について教えてください。
Xeraphy選手:Hakuは……大きかった!(笑) 大きくておもしろくて、めっちゃ良い人です。
HaKu選手:Xeraphyさんの印象は「優しそう」でした。たぶんチームの中で一番優しい人だと思いますよ。
Youkコーチ:他のメンバーはどうなの?
HaKu選手:オンライン上とあまり印象は変わらないですね。みんな恥ずかしがり屋だけど。
――初めて同じ場所で一緒にプレイしてみたとき、オンライン上とどんな違いを感じましたか。
Xeraphy選手:表情が見えるから、言いたいことが強く伝わってきます。
HaKu選手:やっぱり、ネットでやってると「したいこと」を伝えるのが難しくなります。レビューをしたくなったら、いちいちWebサイトを見せたりする必要もあるし……。オフラインであれば、PCを持ち出して「ここの部分をこう変えよう」と、身振り手振りでもすぐに意思疎通できますからね。
――コーチとしてはどうだったのでしょう。やはりオフラインでは困難なこともありましたか。
Youkコーチ:ネット上だと難しいですね。実際に会うと、お互いの感情が分かりやすい。実際に触れるし。それだけで全然違いますよ。今まで1時間かかったことが、わずか5分でできることもありますから。
HaKu選手:プレイヤーからしてみたら、オフラインでは監督の指示や評価を直に見られないところが大変です。実際に監督が目の前でレビューしてくれると、プレイヤーとしてのモチベーションは上がります。
――渡米から大会開催前までは、どのように過ごされていましたか。
Xeraphy選手:日本にいるときと同じ感覚で、普通に練習してレビューして……アメリカの「オーバーウォッチ コンテンダーズ」チームのSecond Windや、シンガポール代表チームと練習試合をしたこともありました。
――今回戦ったイタリア代表チームには、これまでどのような印象を持っていましたか。
HaKu選手:イタリア対インドの試合を観ていたのですが、彼らはメイを頻繁に使うし、6人で一気に動くことが特徴的だと感じました。
――なるほど。彼らの動きに対して、どのような対策を考えていましたか。
Youkコーチ:当然、メイ・リーパーはメタの構成のひとつなので、スクリムでも多く対峙し、対処できていました。なので、イタリア代表のメイに対して具体的に作戦をとる必要はあまり感じられませんでした。彼らのメイは際立って見えましたが、タンクの2人がチームを引っ張り、全体的に上手く連携していたので、そこで崩されてしまいました。
――対イタリア戦の2試合目では逆転劇を見せてくれましたね。そのときの気持ちを振り返って教えてください。
Xeraphy選手:「このまま、勢いで……!」と思いました。
HaKu選手:「オアシス」マップのコントロールでは勝てたので、「ネパール」マップでも、これまでやっていたようにやればきっと勝てるという印象でした。
――最後の試合では、どこが敗因になったでしょうか。
Xeraphy選手:一番最後の試合は、特にメイが強いマップでした。一回でも相手を崩せれば自分たちの流れに持ち込めたのですけど、かないませんでした。そこで上手くいかなかったことが敗因だったかなと思います。
――この大会を通して学んだことや、次のシーズンに活かしたい経験はありますか。
HaKu選手:ワールドカップの出場選手はみんな腕が良いので、私達も成長しなくてはリーグに入れないと思っています。
Xeraphy選手:自分の考えを仲間にうまく伝えられたら、もう少し上手くいけたのかな……と思ったりしました。
Youkコーチ:やっぱり、コミュニケーションが一番大事ですね。フィンランドやスウェーデンのチームは、選手たちが円を組んで話し合って、コーチの指示や提案を聞いて、それに対してフィードバックして……といったことをやっているんですよ。私達のチームはそういうところで一歩及ばず、みんな自分の意見を主張するのが苦手だったりします。そういう連携の経験として重ねていくことが、もう一歩先に進むために必要かなと。
――他国のプロチームとの交流はありましたか。
HaKu選手:何人か、オンラインで一緒にプレイしていた友達に会いました。チームUKのKSP選手とボストンアカデミーのMirroR選手、他のリーグの選手とも会えました。
――引き続き、来年もプロプレイヤー/チームとして活動されていくのでしょうか。
HaKu選手:はい、このまま続けるつもりです。来年度のワールドカップも、日本代表として参加したいと思っています。
Xeraphy選手:来年もチームとして「オーバーウォッチ コンテンダーズ」に出場する予定なので、それで良い結果を出したら、また日本代表としてワールドカップで頑張りたいです。
――『オーバーウォッチ2』についてお聞かせください。BlizzConの会場で実際にプレイされましたか?
HaKu選手:僕はまだプレイしてないです。見ている限り、すごく面白そうでしたね。
Xeraphy選手:僕は一回だけプレイしたんですけど、今の『オーバーウォッチ』よりすごく面白くなりそうな予感がしました。
みずイロGM:PvPの「プッシュ」というモードをプレイしました。ルールが面白かったですね。
Xeraphy選手:ヒーローのデザインも変わってますしね。新ヒーローが出るみたいなので、それもすごく楽しみです。
みずイロGM:「プッシュ」は競技シーンにどう影響してきますかね。
Youkコーチ:コントロールの場所が移動するイメージ。ロボットの近くを占領し合うような。
Xeraphy選手:んー……でも一回しかプレイしてないから(笑)。難しいな。競技シーンではすごく難しそうです。勝ちに行くもそうだし、守るのもすごく難しそう。
――『オーバーウォッチ2』ではエンジンも変わったとのことですが、プレイフィールに違いを感じましたか。
Xeraphy選手:結構変わった気がします。
HaKu選手:もっと速くなったの?射撃がいい感じになった?
Xeraphy選手:ユーザーインターフェースがすごくきれいでした。敵のHPとか、画面に表示されている各数値がすごく見やすくなっています。敵がどこにいるかも分かりやすかったですね。
――『オーバーウォッチ2』に期待したい改善点はありますか?
Xeraphy選手:もっといろいろなヒーローを使えるようにしてほしいです。今だったら、オリサ、シグマあたりが必要不可欠になっているから、その幅がもっと広がったらなと。
HaKu選手:自分からは別に特にないのですが、『オーバーウォッチ2』のコンテンツだけじゃなくて、『オーバーウォッチ』としてのゲームプレイも洗練させてほしい。今はメタが固まってしまっていますし、パッチを出すのも遅いと思っています。もっと早く新しいヒーローを出してほしいので、そこにも開発力を集中してくれればうれしいです。
――最後に、日本から応援してくれていたファンに向けてメッセージをお願いします。
HaKu選手:今まで応援してくださり、ありがとうございます。日本の皆様のおかげでここまで来れましたが、勝てなくて申し訳ありませんでした。来年の「オーバーウォッチ ワールドカップ」も出場できるようにがんばります。
Xeraphy選手:支援してくれた皆様ありがとうございます。個人としてもチームとしても、今後いろいろと良い結果を残せるようにがんばるので、これからも応援よろしくお願いします。
Youkコーチ:日本にも「オーバーウォッチ リーグ」の参入チームが出てくることを期待しています。そういう日が来るまで、がんばります!
――ありがとうございました!