気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Hidden Fields開発、PS5/PS4/XSX/Xbox One/スイッチ/PC向けに3月16日にリリースされた鉛筆画ホラーアドベンチャー『Mundaun』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、鉛筆画のタッチで描かれたアルプスの暗い谷間で、迫りくる脅威を退けつつ謎を解き明かしていくホラーアドベンチャーゲームです。主人公は祖父が火事で謎の死を遂げた事を知り、故郷「マンドーン」を訪れます。その村の住人達に古く忌まわしい何かが憑りついていることに気づいた主人公は、その不吉な出来事を解決するためにマンドーン山へと向かい、祖父の死に隠された秘密を解き明かしていきます。記事執筆時点では日本語未対応ですが、日本語ローカライズは架け橋ゲームズが担当し、近日中にサポート予定とのことです。
『Mundaun』は、2,050円で配信中(Steam)。
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――まずは自己紹介をお願いします。
Michel Ziegler氏(以下Michel)スイス・ルツェルンに住むプログラマー兼イラストレーターのMichel Zieglerです。ゲームスタジオHidden Fieldsの設立者であり、ソロ開発者でもあります。つい先日、私にとっては初のフルボリューム作品となる本作をリリースしました。
――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょうか?
Michel本作の開発がスタートしたのは、およそ7年前となる、2014年の夏です。元々、私はソフトウェアエンジニアリングを学び、その分野で数年間働いていました。しかし自分にはあまり向いていなかったので、絵を描くことを学び、マンガを描こうと思ったのです。その少し後、イラストレーションの学士号をルツェルンで取得したのですが、そのコースの終盤で、ゲーム開発に方向転換し、未完成のプロトタイプである『The Colony』というものを作ったのです。その後、私はすぐ本作の開発をスタートさせました。以来、本プロジェクトに全力を注いできたのです。
――本作の特徴を教えてください。
Michel私は絵を描くということに情熱を持っているので、本作のあらゆる要素は鉛筆だけで描かれています。個人的なことですが、すべてのテクスチャーを鉛筆で手描きするという行為と、完成したグラフィックは、私の心そのものにとても近いものがあります。また、私はアルプスとその神話、文化と言った、豊かな歴史に敬意を表したいと思いました。本作を作る中で、リアルさを追求したいという自分の本能に従って行った決断は、正解だったと思っています。例えば本作では、スイスアルプスで比較的少数の人々が話しているロマンシュ語を採用したりしています。
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――本作が影響を受けた作品はありますか?
Michel本作を作るにあたっては、新しいものを作りたいと思ったことから、ホラーというジャンルの中から参考になるものを探そうとはしませんでした。しかし、自分が好きな作品へのオマージュは入れようと思ったのです。キューブリック監督の「シャイニング」の冒頭のドライブシーンは大好きなので、本作のプロローグにも反映されています。本作の憂鬱な雰囲気はイェレミアス・ゴットヘルフの「黒い蜘蛛」のような作品から影響を受けています。
個人的に、メディアやジャンルの垣根を超えてインスピレーションを受けるというのは面白いと思っています。私にとって、ビジュアル面で一番影響を受けたのはアルプスの田舎で撮られた昔の写真です。古い白黒の写真というのは、私にとって別の世界に繋がる窓のようなもので、それらを通してもう一つの世界に入ってみたいと思ったりするのです。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Michel本作の開発において、協力作業はすべてDiscordを使ったリモートで行われましたので、ほとんどパンデミックの影響は受けませんでした。しかし、2020年はいくつかのイベントに参加予定だったものの、キャンセルとなってしまいました。今年になってからは、パブリッシャーのMWM Interactiveと一緒にメディア向けにデジタルプレビューイベントを行うことができ、これは成功しました。パンデミックの影響がそれほどなかったのは、とても幸運だったと思います。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いいたします。
Michelこんにちは!Michel Zieglerです。本作の日本語ローカライズが行われることを発表でき、とても嬉しく思っています。私は日本のゲームと映画の大ファンです。日本で生まれた作品は、どれもとても独創的で、魅力的です。私がこれまでに遊んできたゲームの中で、最も面白いと言えるもののいくつかは日本のゲームです。特にホラーというジャンルにおいて、日本は多くの代表的な作品を作ってきました。
日本のゲーマーの皆さんにも、本作を楽しんでいただけると嬉しいです。本作を作るにあたり、私が最も重要視したのは、まったくもって独特なものを作るということでした。プレイヤーは、手描きのテクスチャーと3Dで描かれる、不安に駆られるアルプスの世界に入り込むことになります。日本の映画やゲームは、雰囲気や環境の描き方をとても重要視しているので、私は大好きです。本作でも、同じような質のものを表現できていれば嬉しいです。
皆さんに本作を遊んでいただける日が待ち遠しいです!
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に400を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。