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最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2021年8月27日にHamish Dunnより、Steamにてアーリーアクセスが開始された『Sprocket』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Sprocket』とは
『Sprocket』を一言で表すと、戦車ビルドゲーム。制作できる車両の技術年代としては戦車黎明期の車両からWW2戦後の第1世代主力戦車程度と幅広くカバーしています。分かりやすいユーザーインターフェースで、車体の角や面などをドラッグするなど直感的な操作が行えます。
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想定されている早期アクセス期間は2年で、2021年8月現在で本作の開発期間は15か月が経過。早期アクセス開始当初では戦車設計の基本的な部分のほか、戦車、対戦車砲、対戦車地雷、迫撃砲、天然の障害物と人工的な障害物が登場する、7つ以上のセミランダム生成の戦闘シナリオが実装済みのようです。
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なお、正式版までに、設計ツールのバージョンアップ、さらなる戦車パーツ、設計の選択肢、戦闘シナリオ、Modサポート、協力型マルチプレイ、マッチメイキングなしの小規模PvPの実施や実現が予定されています。
君も今日からポルシェ博士!設計の第一歩はコンセプト決定
突然ですが皆さん、「戦車」好きですか?装甲と砲を備え無限軌道であらゆる障害を突破していく様はまさに戦場の守護天使にして死神。筆者は大好きです。どれぐらい好きかというと、小学4年生で初めて戦車のプラモデルを作って以来模型を作り続けて、大学に入ってからは模型誌で戦車模型の作品制作を担当するほど。青春時代のほとんどは戦車と共にあったと言っても過言ではありません。
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そんな戦車マニアが一度は夢見るのが、自分のオリジナルデザインの戦車を作ってみたいな~という夢。そんな、「ぼくのかんがえたさいきょうのせんしゃ」を実現できるのが本記事でご紹介する『Sprocket』なのです。今日からポルシェ博士、あるいはミハイル・コーシュキンとなり、自分だけの戦車を作っていきましょう!
ポルシェ博士:ティーガーI戦車や超重戦車マウスを設計した、一般的にはフォルクスワーゲンのビートルを作ったことで知られる。
コーシュキン:ソビエトの伝説的な戦車、T-34を設計した。T-34は75年以上経っても使用され、イエメンでは2019年にも戦闘での使用が確認(リンク先、実戦映像のため注意)されている。
まず確認したいのは、自分がどのような戦車を作りたいかというコンセプトです。今回は戦車の中でも変わり種「突撃砲」を作っていきましょう。
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実は「突撃砲」は厳密に言うと戦車ではありません。戦車と異なり回転する砲塔は持ちませんし、ドイツでは戦車を運用する機甲科では無く、歩兵支援用の砲兵科に属していました。(1943年からは装甲部隊の補強のため、機甲科にも配属)また、突撃砲は他国では駆逐戦車に近い役割も担いました。
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戦車とは基本的に「装甲に守られ、不整地を突破でき、回転する砲塔を備える」兵器の事を指すのですが、時代や国によってこうした分類は変わる為、どうか細かな用語についてはご容赦頂ければ幸いです。
さて、先ほども述べたように、突撃砲は回転する砲塔を持ちません。『Sprocket』は戦車を設計するゲームですが、しっかり突撃砲用の設定が用意されています。まず、突撃砲用にターレットリング(砲塔旋回用の基部)を無くしてしまいましょう。
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突撃砲用にターレットリングを無くしたら、車体と砲塔のシルエットを調整していきます。このシルエット調整に関しては極めて直感的に操作できます。
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ただ、砲塔を車体の何処に移動させるかはわかりづらいので、注意しましょう。
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装甲については後述します。
足回りは地味に重要!沈み込んでしまう場合は?
さて、良い感じのシルエットになったら足回りを設計していきます。戦車と言えば装甲厚や搭載火砲の威力といったカタログスペックに注目されがちですが、足回りは地味ながらも重要です。
一説によれば、第二次世界時のドイツ軍が重量級戦車に採用した千鳥式や挟み込み式転輪は整備が複雑で信頼性低下にもつながったとされています。(逆にそうした複雑な機構が各国の中でもずば抜けて大重量の戦車を運用する事を可能にしたとも言われています。)また、筆者のような模型制作者の目線から見ると足回りは各車両の個性が出ており、楽しいポイントでもあるのです。
さすが、戦車マニアの気持ちを良く分かっている『Sprocket』先ほど述べた千鳥式や挟み込み式転輪の再現。パンサー戦車やT-34で使用されていた、ねじり棒を利用したトーションバー式サスペンション。M4シャーマン戦車に使用されていたボギー式サスペンション。さらには、サスペンションの角度や細かな転輪の幅、駆動輪の位置、履帯の幅や履帯滑り止めの高さ等、自由に設計できます。
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今回は千鳥式の転輪にして、駆動輪をドイツのIV号戦車等で採用されていた前側に設定。さらに履帯の幅を少し広げ、それに合わせて転輪も調整しました。もちろん、車体に合わせて駆動輪と誘導輪の位置も調整しています。
ただ、足回りの挙動についても本作ではこだわられています。例えば、サスペンションは重量に合わせて沈み込むため、あらかじめ重量に合わせて設計する必要があります。もし、サスペンションがベターっとなってしまう場合は、サスペンションの角度をあらかじめ高く設定しておきましょう。
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ちなみに、こうした沈み込み現象は実際の戦場でも見られ、長砲身の突撃砲が現場判断で予備履帯を前部に大量装着した場合、「前のめり」の姿勢になってしまうことが良くありました。予備履帯は増加装甲としても役立ったため、命がかかっている兵士たちは元の設計などお構いなしに積んでしまったのです。
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転輪の形状は外見上のデザイン以上の違いは確認できませんでした。
足回りが終わったら、車体のシルエットも調整しておきましょう。いよいよ次は火砲を設置していきます。
汝平和を欲さば、戦への備えをせよ
さて、ここまでは車体や足回りを設計してきましたが、これだけであればトラクターと変わりありません。実際、第一次世界大戦で敗れ、軍備を大幅に制限され戦車の保有や開発を禁じられていたドイツでは、戦車を農業用トラクターとして開発していました。(ドイツ軍初の量産戦車I号戦車はクルップ農業トラクター1として設計)
では、戦車とトラクターとの違いは何か。そう、武器です。戦車は基本的に火砲を搭載していますが、『Sprocket』ではこちらもぬかりありません。まず基部を選択します。現バージョンではそれほど多くないものの、なんとなくドイツっぽいフォルムやアメリカっぽいフォルムのパーツが用意されています。
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今回はこの基部を選択。砲身は長さや砲口径の設定に加え、砲身先端に付くマズルブレーキを選択できます。
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砲身の設定をいじると、設定の下部に初速や貫徹可能厚といった情報が表示されていきます。確認しつつ変更していきましょう。
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また、弾薬の量も調整可能です。現実の戦車では、ティーガーI戦車は92発の弾薬格納庫を備え、シャーマン戦車は型により異なるものの50発程度搭載していました。
狭い戦車に乗員を配置しよう!
どれほど優秀な武器であっても、使用するのは人間です。そのため、戦車の運用に際し人間の配置を考えることは欠かせません。実際、フランス軍のルノーB1戦車は乗員配置が適切でなかったため、砲で劣るドイツ軍に対し劣勢を強いられました。
『Sprocket』ではそこまでシビアではないものの、乗員配置も要素として登場します。乗員の位置は設置するペリスコープ(戦車から周りを見る際に使用する展望鏡)を設置することで指定できます。乗員にはそれぞれ役割を与えることができ、複数の役割を任せることもできます。
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また、乗員の居空間の大きさはそれぞれの能力に影響するようです。ただ、戦車はできるだけ小さくした方が有利なため、セオリー通りに作るなら非常に狭い乗り物。乗員の位置には頭を悩ませられます。とはいえ、早期アクセス開始時点の本作においては乗員の要素がそれほど重要ではないので、最初の内は適当で十分だと思います。
いよいよ訓練開始!設計した戦車を動かしてみよう!
一通り設計が終わったら一度動かしてみましょう。動かす際はスペースバーか右上の△ボタンからワンタッチで戦車を操縦できます。
上手く動けば、嬉しいですが、最初は上手くいきません。そんな場合はよくある原因を考えていきましょう。
原因その1「えっ、私の戦車重すぎ!?」
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よく陥りがちな問題は戦車が重すぎるケース。というのも、『Sprocket』の初期設定では、装甲厚が全体に満遍なく高く設定されているのです。これでは、動けるものも動けませんね。そこで、必要な装甲以外は薄くしていきましょう。
戦車は基本的に前面で戦闘する兵器。特に、今回作っている突撃砲は敵に対し砲を向けると当然車体前面を敵に向けることになります。ですので、思い切って車体後部や天板は装甲厚を薄くしてしまいましょう。装甲厚を分かりやすく表示するには、左下のパネルを選択して確認できます。また、装甲を薄くしつつ、実質の装甲を厚くする「避弾経始」の考え方も重要です。今作でももちろん「避弾経始」は有効なようですので、装甲を斜めに配置し、見かけ上の装甲厚を稼いでおきましょう。
原因その2「そこの貧弱なエンジン!」
装甲を強力にしつつ、機動性も確保したい場合、エンジンの設定も重要になってきます。エンジンは最大RPMを上げるとすぐ故障するようです。それに限らず、かなりの細かさを誇るパートであり、できれば挙動を詳細にお伝えしたいのですが、いかんせん細かすぎ、筆者も完全には把握しきれていないので、掲載までの速度を重視した爆速プレイレポの記事ではそれも難しく……エンジン挙動の解析は今後の『Sprocket』コミュニティにも期待したいです。
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また、マップに設定された時代ごとにエンジンの性能も相応に低下するため、注意しておきましょう。
動いた!あとは自分の思い通りにOVM(車外装備品)を付けよう
無事に設計した戦車が動いたら、現実の戦車のようにOVMを取り付けていきましょう。OVMはハンマーやワイヤーカッター、予備履帯、履帯調整具といった戦車には欠かせない車外装備品の事ですが、『Sprocket』では装飾品の扱いとなっています。ただ、こうした装飾品も一目でモデルが分かるほどのこだわりぶり。例えばこのハッチはT-34のものですし、このハンマーやワイヤーカッターはパンサー戦車を意識してそうです。
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ちなみに、これら装備品はXでミラー解除、シフトキー+マウスホイールで大きさ調整、Q/Eキーで角度変更となっています。
作った戦車は、シナリオモードで戦おう!
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本作は、ただ戦車を作るだけではありません。作った戦車を使いシナリオモードを戦うことができます。戦うことができるのです。本作の大きな魅力であるこのモードでは、第一次世界大戦の戦場から、砂漠での戦車戦、夜間戦闘と様々なシチュエーションや敵が用意されています。ただ、各シナリオの時代により利用可能なエンジン技術や砲技術が制限されているため、サンドボックスモードで設計した時は動いていたのに、第一次世界大戦の戦場では動かない!という事もあります。将来的にはこの制限の解除の方法も登場するのでしょうか?
ということで、簡単ではありますが、『Sprocket』の爆速プレイレポをお届けしてきました。本作は全世界の戦車好きの夢を実現してくれる楽しいゲームです。本記事でご紹介した通り、戦車の形そのものの設計に加え、駆動系や砲に関する細かな設計も行えます。
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ただ、やはり早期アクセスゲーム。パーツ類が少なかったり、立方体で構成された戦車しか作れなかったりとまだまだ発展途上であることは否めません。ひし形戦車や一般的な戦車の形から外れるサン・シャモン突撃戦車のような奇抜な形の戦車が好きな筆者としては残念なところです。また、敵戦車の挙動がもう少し賢くなればさらに嬉しいです。
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それでも、戦車設計というゲームの根幹部は確立されている本作。現時点で、予定されている2年の早期アクセス期間でさらに良くなると確信をもって断言できるクオリティとなっています。「ぼくのかんがえたさいきょうのせんしゃ」を実現したい方はぜひ購入しましょう!
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※ UPDATE(2021/08/29 16:56):本文中一部映像を埋め込みではなくリンク形式とし、注意書きを追加しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。