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2022年6月23日、スパイク・チュンソフトより『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』が発売されました。本作は『ZERO ESCAPE』シリーズを手掛けた打越鋼太郎氏がシナリオを務める新作アドベンチャーゲームです。
本作では、2つの時代、2人の主人公の視点を行き来しながら奇怪な事件を捜査します。オーソドックスなポイントアンドクリック方式のアドベンチャーパートと、夢の世界でキャラクターを動かし気になるものにインタラクションして捜査するソムニウムパートの2つのパートを行き来して事件の解決を目指します。
一筋縄ではいかない奇怪な事件や、コザキユースケ氏デザインのかわいいキャラクターなど見るべきところの多い作品なのですが、シナリオの本筋にまったく関わらないであろう不条理なシュールギャグや突然ブチ込まれる下ネタなど、テキストのコミカルさも大きな魅力のひとつ。
そこで本稿では、ゲーム開始から約1時間のプレイでどれだけシナリオ本編と関係のない不条理ギャグや下ネタが登場するかを検証。プロローグから、最初のソムニウムパートまでをプレイします。なお、ネタバレになる要素は極力省いていますが、序盤の展開や仕込まれたギャグなどに触れるため、「新鮮な気持ちでプレイしたい!」という方はご注意ください。
不条理その1・インドクイズ
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本作では新たにゲームを開始すると、クイズ番組に出演している場面から物語が始まります。主人公もプレイヤーも困惑する中、関西弁で話す『かまいたちの夜』のような青い影の司会者が「インド神話に登場する楽団の種族で、匂いを食べて生きるとされる精霊は何でしょう?」と出題されます。
このクイズはカーソル操作や選択肢のチュートリアルという面もありますが、クイズのチョイスが絶妙に難しい。不勉強ながら筆者はわからなかったので前作の主人公である「伊達さん」と回答したら、司会者に「は?」と冷たくあしらわれてしまいました……。
不条理その2・顔が四角すぎる司会者
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場面が何度か転換すると、再びクイズ番組のシーンに。今度は他の人の青い影がちゃんとキャラクターモデルになっています。まず最初に目につくのが、司会者の男性。彼の名はアンデス米治(芸名)。お笑い芸人として活動しています。
彼の顔ですが、何故か超真四角。「ちょっと四角っぽい骨格の顔」という次元ではありません。しかし、筆者がプレイした範囲ではこの「四角さ」にはツッコミも説明もありませんでした……。事件に完全に無関係というわけではなさそうですが、メインキャラでないにも関わらず、キャラクターモデルを作るのに地味に手間がかかっていそうです……!
不条理その3・やけに渋声の強面刑事
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ゲーム序盤の事件現場にはもうひとり、妙にキャラの濃い刑事「牛寺」という人物がいます。警視庁刑事部捜査一課に所属する彼の特徴は、サブキャラクターとは思えないやけに渋い声。ボソボソとダンディーに喋る仕草が、妙にインパクト大です。主人公が所属する警視庁内の極秘組織「ABIS」は捜査一課からは疎まれており、牛寺は主人公に対し皮肉や嫌味も口にします。
口ひげやサングラス、パンチパーマなど強面な外見をしているため、下手すればメインキャラクター並みに印象に残るかも……?
不条理その4・元気2倍、半パンマン!
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ゲームで示された変な選択肢を選びたくなる、というのはゲーマーの自然な心理ですよね。そのため、シリアスな殺人現場で突然「半パンマン」という謎すぎる選択肢をわざわざ選んでしまうのもおかしなことではないのです。
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「半パンマン」を選ぶと、普段はおとなしめの主人公「龍木(りゅうき)」が突然「元気2倍!半パンマン!!というわけで、元気ですか!」とハツラツな声と絶妙な表情で叫びます。近くの警官からは「なんか心のほうが健やかじゃない気がしますが……」と心配されます。
不条理その5・タマの下ネタ
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龍木(りゅうき)の左目に宿る相棒の自立型AI・タマは、下ネタが大好物。牛寺に枕仕事をしたと揶揄され「どういう意味だよ!」と返した際に「それはもちろんベッドの上での……」と顔を赤らめたり、先輩であるボスに捜査のサポートを任された際にも、「任せて、この私が捜査に関する四十八手を教えてあげるわぁ~」とセクシーボイスで話したりと、とにかく隙を見つけて下ネタをぶっこんできます。
ソムニウムパートで人間の姿になったときなどはドSお嬢様風の外見をしており、序盤以降も思わず気が緩む下ネタが期待できそうです。
不条理その6・麗花ちゃん
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画面上部に表示されている「古ぼけたドラム缶」「巨大な石灯籠」……主人公・みずきの相棒であるアイボゥは、前作『AI:ソムニウムファイル』の主人公である伊達 鍵(だて かなめ)が狙っているキャバ嬢・麗花ちゃんのことをこのように表現します。
筆者がプレイした範囲では麗花ちゃんの姿は出てこなかったため、一体どんな風体の女性なのかは謎のまま……一度、拝んでみたいような気もします。
不条理その7・突然キレるタマ
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アンデス米治に聞き込みを行う龍木ですが、思わず「名前聞いたこと無いし、あんまり売れてないんだね」と漏らしてしまいます。しかしそんな龍木の心無い言葉に対しタマは大激怒。「軽々しく売れてないとか言うんじゃねーよタコ作!!」「テメェに芸人の何がわかるってんだ!!」と語気を荒らげます。
それもそのはず、タマの趣味はお笑い動画鑑賞。一般人の我々にはあまり面白さが理解できない米治のギャグも、タマには最高の爆笑ネタであるようです。
不条理その8・歌って踊れる頼れる相棒
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6年後であるみずき編では、6年前の龍木編で見つかった半身死体の片割れが、腐ってもいない真新しい状態で見つかります。みずきはそのことを龍木に報告しようとしますが、龍木は酒浸りでまともに会話できません。そのため、龍木の意識に潜り込むソムニウムパートに突入します。
龍木の夢の世界にいざ、ダイブ!と意気込みましたが、いきなりポップなBGMが再生。アイボゥが「♪きーみーをーまーもーるーよー!」とアイドルばりの歌とダンスを披露しました。みずきの評価は「捕れたての甘エビみたいだったよ」とのことです。
不条理その9・鏡よ鏡……
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アイボゥを操作してさまざまなオブジェクトを調べるソムニウムパートの大きな魅力は、変な指示を出せること。取調室にあった鏡を見たみずきは、「もちろん私だろうけど、鏡に世界で一番美しいのは誰か聞いてみてよ」と指示します。
一体鏡は誰を映すのか……とドキドキしていると、“とある人物”が鏡に映されます(自分の目で確かめてみてください!)。あまりのくだらなさに気が抜けるシーンです。
不条理その10・夢の中の龍木なら何してもOK?
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ソムニウム世界は夢の世界。ということは、そこでは何をしてみても良いのです。罪悪感に苛まれる龍木を「ヤケになってる時に優しくされると逆に辛い作戦」でなだめてみたり、情に訴えかけてみたり、よしよししまくってみたり……。
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はたまたしつこく往復ビンタで暴行凌辱罪を犯してみたり蹴り飛ばしてみたり。おかしな空間であるソムニウム世界では、本編と関係なく龍木をいじりまくっても問題ありません。
不条理その11・酔うとダルくなるアイボゥ
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ソムニウム世界で見つけたブランデーをボトルごとガブ飲みするアイボゥ。「ぺぃ~」と独特の鳴き声を出しながら酩酊しています。どうやら酔うと面倒くさくなるタイプのようで、変なポーズを取りながら「みずき、なでなでしてくれ」と言ったり、「なでなでしてよぉ~!なで殺してよぉ~!」とみずきに対してダル絡み。現実世界にもたまにこういう人いますよね……。
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検証の結果、1時間でなんと11個も不条理ギャグ・下ネタを発見できました。序盤ということもあり、もちろんシリアスな局面にも出くわしましたが、それでもギャグ要素のねじ込みかたとしてはかなりのハイペースなのではないでしょうか。ゲームが本番になるにつれ不条理ギャグも更に増えていくことが期待できますし、真面目なノリやグロいシーンが苦手な人も、クスっと笑えるギャグシーンによって遊びやすく仕上がっていると感じました。
『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』は、PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチ/PC(Steam/Windows 10)向けに発売中です。