2022年7月16日に配信された『廃村巡り』。個人開発者であるとらんぽ氏が開発する国産ホラーウォーキングシミュレーターです。霊が視える体質の主人公・香織は、旧友から「心霊写真の撮れる廃村に行こう」と誘われます。2000年代の廃村を舞台としており、新しすぎず古すぎもしない雰囲気の村で恐怖体験を味わえます。
本作の魅力はホラー表現にもありますが、そこを紹介しすぎるとネタバレになってしまいますし、何より怖いですよね。そこで本稿では、昭和を感じる雰囲気が魅力的な本作の「廃墟」に目を向け、その魅力に迫ります。
村の入口のバス停
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ゲーム開始直後、村の入口に設置されているバス停です。木の骨組みにトタンの壁や屋根で出来たシンプルな作りのものです。トタンは経年により赤茶色に錆びています。簡素なベンチやその上に置かれた新聞紙など、古ぼけた雰囲気がたまりません……!また、画面右の倒木も、この場所が長らく手入れされず、廃村になったまま放置されていることがわかります。
大きな民家
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高い塀に赤い壁、トタンの倉庫(車庫?)が目を引くこちらの家。手前に見える巨大なタイヤ2つがポイントです。雑草は伸びているもののまだあまり草に侵食されていませんが、廃村になってからあまり時間が経っていないのでしょうか。
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家の中には家具が散乱しており、外も暗いためしっとりとした雰囲気が漂います。台所には緑色の冷蔵庫、花柄のポット、大きな給湯器など昭和を感じさせる家電が多数。壁の模様やドアの形も、今ではあまり見かけないようなものになっています。廃村になる前は高齢者が住んでいたのでしょうか……?
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お風呂場を覗くと、こちらもレトロな雰囲気が漂います(衣類が散乱しているのが気になりますが……)。ダイヤルの付いた浴槽はバランス釜と呼ばれるもので、先述した家電以上に現在ではレアな存在となっているかもしれません。壁から突き出た長い蛇口も良い雰囲気を出しています。
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ちょっと不気味ですが、先が暗くなにも見えない急坂階段もドキドキします。うっかり足を滑らせたら痛い思いをしそうですね。筆者のおじいちゃん・おばあちゃんの家のこうした階段も、妙に怖かった記憶があります。
見逃せない、屋外の人工物たち
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屋外の寂れ具合も見逃せません。村の入口にはコンクリートでできた水路が通っています。人工物であるはずの水路が生い茂る草木の風景に溶け込んでいるのは、所々に見られる劣化や汚れのおかげでしょう。
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村の中央に位置する公園はそこそこの大きさ。地面は苔むしており、遊具も錆びきってザラザラになっています。とはいえ遊具の数はそれなりにあり、公衆トイレも付いているのは、小さな村にしては充実している方なのではないでしょうか。廃村になる前は、子供も多かったのかもしれません……。
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屋外の人工物でも特に目を引くのは、こちらの物件。瓦屋根だけが見える状態ですが、土の下には家が埋まっているのでしょうか……?中に残されているであろう家具などの状態も気になりますね。こうなった原因も気になるところですが、どちらにせよ、草木に侵食されかなり劣化しているようです。
赤い屋根の廃墟
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最後に紹介するのは、赤い屋根が目を引くこちらの廃墟です。4枚の大窓が開放的な印象を与えますが、庭の木は倒木、玄関はツタが絡まっており時の流れを感じさせます。
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玄関に入ってすぐのところが台所になっていて、黄色の巨大な漬物容器が目を引きます。突き当りのドアの先はなんとお風呂場という、ちょっと変わった間取りの家です。
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仏壇も設置された居間を進んでいると、なんと屋根裏に通じる穴が!残念ながら登ることはできませんが、屋根裏部屋は何か良いものが隠れているような気がして、ワクワクします。基本的に真っ暗なのでちょっと怖いですが……。
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この家はかなり広く、離れのちょっとした建物と、母屋と離れを繋ぐ廊下も存在します。廊下にはパッと見、電灯などが見当たらないため、夜はかなり暗くなりそうです。中に侵食し窓にも絡まるツタが廃墟らしさを演出しています。ところで、最近建てられた家には「離れ」というものをあまり見ない気がするのは筆者だけでしょうか。
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離れには大きな部屋が1部屋と、出入り口らしき小さなスペースが1部屋ありました。中には棚やタイヤが置かれていたため、物置として使われていたのかもしれません。
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離れを出ると、裏口に通じています。裏口には井戸から水を汲み上げる手押しポンプが設置されています。家の中には水道があったので廃墟になった時点では使われていなかったかもしれませんが、この家の歴史を感じさせますね。
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そしてなんと、トイレは屋外に!トタン屋根と石でできた開放的な和式トイレです。流すレバーなどが見当たらないので、水洗式ではなく汲取式のいわゆる「ボットン便所」と呼ばれるものかもしれません。手洗い場が用意されているので、意外と衛生的に使用されていたのではないでしょうか。筆者の実家にも昔使われていた屋外トイレがありましたが、台風のときなどはトイレに行くのが大変そうでした。
『廃村巡り』には、ホラー要素だけでなく、昭和を感じる魅力的な廃墟を感じることができました。幽霊や心霊現象を怖がるのも良いですが、廃墟を隅々まで観察し、廃村になる前の暮らしに思いを馳せるという遊び方も楽しい作品です。
『廃村巡り』は、PC(Steam)向けに配信中です。