先日、米ワシントン州ベルビューにあるValve Corporation本社に招かれたGame*Spark編集部。Steam Deck開発者へのインタビューなどが実施されましたが、本稿ではその後に行われたValve本社のツアーの様子をお届け。あっと驚くものからファンにはたまらないものまで沢山の光景がそこには広がっていました。
3万以上のゲームが集まるSteamを開発しているオフィスの中とは
今回Valve社のご厚意で様々な場所を見せて頂きました。一部は写真撮影NGだったものの、開発現場の中心を見学することが出来、非常に興味深い時間を過ごせました。
受付ホール
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まずは受付ホール。やはりValveといえば会社名にもなっているバルブ。頭にバルブを付けた人物の画像を覚えている方も多いのではないでしょうか。ホールの入口にどんと鎮座しており、いやでも目立ちますね。
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受付の横には階段。上に登っていくとトレーニングジムがあります。話によると社員1人に対して1人の専用トレーナーが宛てがわれており、社員をサポートしているのだそう。流石天下のValve。
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次に目立つのはやはりこちら。Steam VRの体験コーナーの横に置かれている『エルデンリング』の等身大マレニア像。非常に細部まで作られており迫力があります。しかし、なぜフロム・ソフトウェアのキャラが......?
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が、手元をよく見てみると『Portal』シリーズでおなじみのコンパニオンキューブを持っていました。
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さらに階段の下には『Half-Life』シリーズをモチーフにしたPCケースも展示されていました。作品独特の空気感を感じられる非常に重厚な作り。
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出入り口の近く『Data 2』における世界大会「The International」で優勝チームに贈られる優勝トロフィーも展示されていました。筆者は『Dota2』をよくプレイしているので、世界大会の優勝トロフィーの実物をこうして間近で見れて感動です。
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その横にはずらりと並ぶのは金のバールに数々の賞を称えたトロフィーの数々。Valveの栄光の歴史がここに刻まれています。
社長室周辺
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続いては社長室周辺。まずやはり目につくのは『Portal2』で登場した等身大のATLASです。細部まで作り込まれていました。
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そのすぐ横に置いてあるのは『Portal』シリーズでお馴染みのポータルガンと『Half-Life』シリーズで同じくお馴染みの重力銃。ポータルガンの1つにはスタッフ達のサインが描かれています。
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また窓際には航空宇宙企業であるRocket Labとの協賛を記念して人工衛星打ち上げミッションのロケットのミニチュアも展示。色んな会社と協賛・協力しているからこそこの様な展示物も存在しているのだと実感します。
オープンスペース
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次に紹介するのはスタッフ用のオープンスペース。今回2つの階層を見学させて頂きましたが、そのどちらにも写真のような食べ物が置かれているスペースが設置されていました。勿論社員であれば自由に飲食が可能です。
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さらに食事を行うスペースでは、今回訪問した私達のために朝食と昼食を用意してくれていました。朝はパン食で昼は中華風の料理です。特に朝のパンはどれも1つ1つが大きい。これでも話によるとSサイズ、つまり一番小さなものを用意したそう。筆者は1個食べただけでお腹が満腹になりました。
すぐ近くには子供が遊べるスペースも用意されていました。小さな子供は託児所の様な場所で、もう少し大きな子供には小規模ながらゲームセンターが用意されており、ピンボールゲームなどが楽しめるようになっていました。正直筆者も遊んでみたかったです…。
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それとお土産も頂きました。Steamアイコンが刻まれたタンブラーにチョコレート、さらに今回アジアでのSteam Deck販売決定を記念した冊子とノート。特にSteam Deck発売記念冊子は今回のメディア向けのためだけに作った恐らく世界で100冊あるかないかという貴重なもの。本の中身はSteam Deckの魅力を各アジアの言語で書かれたものでした。
ハードウェア制作現場
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ここからはいよいよ開発の現場へ。まず見えたのはVRなどの実験室。ここで色んなハードウェアやソフトウェアの実験を行います。モーションキャプチャーなどの設備も設置しており、あらゆるゲームやゲーム外の試行がこのスペースで行われています。
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さらに進むと、Steam VRやSteamコントローラの試作品が置かれていました。最初は既存のパーツなどを組み合わせて作っただけのものから徐々にバージョンアップを繰り返し、最終的に世に出た製品へと移り変わる流れが一目でわかるようになっています。
そしてその横にはSteam Deckのハードウェア部分を開発した部屋。こちらは写真撮影NGでしたので中に入り解説を受けました。部屋の中はいくつかのデスクが存在しており、通電の仕組みを開発する人、制御チップを制作する人、さらには物理ボタンを開発する人など専門のスタッフが数名働いていました。
なお、テーブルの下にはキャスターが付いており、ロックを外すことでいつでも場所移動が可能になっていました。社員は自分が興味があるプロジェクトに自由に関わることができ、臨機応変に移動する必要があるためこの様なテーブルを用意しているとのことです。
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次に通されたのが試作品を展示している部屋。ここには今までSteam Deckを制作するにあたり参考にしたもの、あるいは試作したものが大量に置かれていました。
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まず基盤とコントローラーだけでも膨大な数が試作されています。これでもほんの一部であり、実際にはもっと沢山試作したそうです。開発途中のものではコントローラーだけの状態ものや、トラックパッドのエリアが丸形になっているものもあります。
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持ち手となるコントローラー部分や外枠に関してはこれだけの試作品が作られています。ユーザーが最も長く触れる場所のため、徹底的に人間工学に基づいて何度も試作したことがここからでも理解できます。
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写真のように人間の手がどれくらいの角度までなら楽に触れられるかなどの資料も壁に貼られています。こういった1つ1つの調査や研究の積み重ねを経て、現在のSteam Deckの形になっていったそうです。
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別の壁には開発スケッチも大量に貼られています。コントローラーがフレキシブルに取れるタイプもあれば、ある程度前後左右に稼働するタイプのアイディアもあったようです。
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そして最終段階で作られたのがこの試作モデル。こちらのモデルはなんと試作品としてValveの社員約100名に制作し配布。徹底的なテストを実施したそうです。1つの試作品を作ったり、あるいは何千何万と大量生産することはあっても、試作のために高級な電子機器をふんだんに詰め込んだ端末を3桁以上量産するところを見ると、Steam Deckに対するValveの本気度が垣間見えます。
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そこから開発を続け、最後には画像右の形に落ち着くことになりました。数百の試作品の果てに完成したSteam Deckのハードウェア面は、すでに販売されているアメリカユーザーから絶賛されています。
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また、ケースについてもこだわりがあります。Steam Deckは携帯機のため、本体を守るケースも重要な役割を果たしています。これも何度も試作品を作り、そして現在の形に収まりました。
Steam Deckは本体と電源アダプタ、そして電源アダプタを入れる袋だけで完結しています。なので、Steam Deckを開封した時に捨てるものは外枠についている白い包み紙だけ。ゴミの量を最小限にしているのも、自然環境を大切にしたいという願いがあってこそでしょう。
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そして、最後に今後発売予定のSteam Deckの追加アクセサリーである専用ドックを見せて頂きました。このドックにSteam Deckを繋ぐことで通常のLinux PCと同じ様に使用することも出来ます。写真にもある通りBlenderとブラウザを起動しても問題無く動作しています。
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さらにドックに挿している間、Steam Deckの液晶もサブディスプレイとして使用可能。有線LANもドックに挿すことができます。勿論スペック自体はハイパフォーマンスのPCには劣りますが、エントリーモデルとしては十分な性能を持っているので、今後子供向けにPCの作業を覚えさせたい時など色んな用途として使うことが出来ると筆者は考えています。
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ドックを経由することでTVモニターへの出力も可能。PCと同様のシステムを持っているので、現在PCに接続できるゲームコントローラーであればどのコントローラーでも使用可能です。それこそPS5のコントローラーとXboxのコントローラー、そしてニンテンドースイッチのコントローラーがそれぞれ共存した環境での協力・対戦プレイが可能です。
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ついでに、Steam Deck体験会の横に置かれていたのは『Portal』シリーズでおなじみのタレット。いつ撃たれるかどうかちょっとドキドキしてました。
VALVE本社は大きな子供向けのおもちゃ箱の様な世界
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以上、VALVE本社見学ツアーの一部始終でした。こうしてValveの本社を見回って筆者が感じた感想ですが、スタッフ1人1人がものすごく自由に、そして自信を持って働いているなという印象でした。それは同社がまさにゲームを作ること、携わることに心から誇りと楽しさを持っている空気があるからだと感じました。
そして追求するものは極限までユーザーのために突き詰める。だからこそValveは億単位のユーザーを魅了するプラットフォーム「Steam」を制作することが出来たのだと見学ツアーを通じて筆者は感じました。
UPDATE(2022/08/07 12:10):記事タイトルと本文のキャラクター名を修正しました。コメント欄でのご指摘、ありがとうございます。