3月22日、 公益社団法人著作権情報センター(CRIC) および文化庁主催による「ゲーム実況・配信に係る著作権セミナー」が開催されました。
本セミナーでは弁護士・漫画原作者である中島博之氏、サイバーコネクトツー代表取締役である松山洋氏、そしてゲームデザイナーのイシイジロウ氏が登壇。三者の視点からゲーム配信に関して著作権や、その良し悪しに至るまで様々な角度から講義・議論が行なわれました。本記事では、セミナーに関するレポをお届けします。
◆配信可能なゲーム領域とは? メリットとデメリット、双方の立場から行なわれた議論・講義
本セミナーは、まず中島氏による「ゲーム実況による法的整備・企業ガイドラインと実況」講義からスタート。
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同氏は弁護士として、海賊版サイト「漫画村」運営者の特定や映画を無断編集し公開する「ファスト映画」問題に関して捜査協力を行うなど、著作権関係で活躍中です。
ご自身のゲーム遍歴から、ゲーム映像と著作権・各企業が制定しているガイドラインなどを引用しつつ、過去から現在に至るまで、動画配信が盛りあがる中でどのような対応が取られてきたかを紹介されました。
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その中でムービーシーンのみを繋ぎ合わせて投稿するなどの行為について、ガイドライン違反であると紹介したうえで、自身が取り組んだ「ファスト映画」との関連性を指摘。実況と捉えられない動画の問題性を強調します。
本講義では著作権とガイドライン、そしてそれを逸脱した行為についての問題が主軸となりました。弁護士という職業でありつつゲーマーであるという視点から、ガイドラインの重要性などを展開。動画配信において重要なのは、「法律やルールを守ること、そしてゲームへの愛」と締めくくりました。
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続いて行なわれたサイバーコネクトツー代表取締役である松山洋氏の講義では、同社が手掛けるゲームタイトルの紹介から始まり、ゲーム業界の基礎知識を公開しました。デベロッパー/パブリッシャーの違いといった基礎的な知識から、ゲーム制作過程におけるざっくりとした解説から始まります。
世界のゲームコンテンツ市場が現在20兆円規模であり、2030年には100兆円規模にまで成長するかもしれないという論を引用しつつ、動画配信という仕組みについてビジネス的な視点を含め語ります。
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同氏は実況に肯定的な立ち位置を明示した上での参加。あくまでサイバーコネクトツーの考えとしたうえで(他社IP作品は除外し)、「自社作品はオールオッケー」にしていると述べます。
プロモーションの難しさを引き合いにして、どれだけ努力しても伝わらない層がいるとしながらも、善意の第三者に対しては収益という思惑があれど、配信して貰うことを歓迎していると述べました。
(※配信に際しては各タイトルごとにガイドラインの確認をお願いします)
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その一方で、『428 封鎖された渋谷で』などに携わったイシイ氏は、ガイドラインにNGを出している企業側の視点という立ち位置で登壇。
「ゲーム実況をすべてOK」にすると言うことは、実況動画が隆盛する中で好印象ではある一方、そうしてしまうと困るゲームタイトル・企業もあるとします。
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現在はネットミームと化している『ポートピア連続殺人事件』などを例に挙げ、ゲームジャンルの中でもアドベンチャー・RPGなどストーリーを重視しているものは配信によりダメージを受けるとして、「ゲームという存在をひとつにまとめずに、丁寧に対応してもらえないか」と話を締めくくりました。
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講義終了後に行なわれた登壇者による議論では、先ほどの是と非両面の立ち位置を踏まえた中、終始和やかではありつつも熱い議論が展開されました。
松山氏はゲームのインタラクティブ性を指摘し、ムービーパート配信まで含めて、それによってプレイしてみたいと思ってもらえるなら良いのでは、と言った意見を展開します。対してイシイ氏は視聴者がインタラクティブ性を見逃し「プレイした気になる」ということを懸念する、といったやりとりなどが交わされました。
本記事で全てを取り上げることはできませんが、意見の違う両者による「広がるきっかけになればいい」「配信にはないゲーム特有のインタラクティブ性・分岐性がある」などの議論は、ゲーマーにとっても「ゲーム実況・配信」というコンテンツを考える材料になるのではないでしょうか。
本セミナーでは著作権に関するポイントから、配信における「OK」「NG」両方の意見が飛び出す内容に発展。答えの出づらい問題を、制作者サイドから覗けるセミナーとなっていました。
もはやゲームカルチャーの一部と言っても過言ではない動画配信分野。ガイドラインに従いルールを準拠することは大前提ですが、今後どのように発展、または対応していくか。依然注目していく必要がありそうです。