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2023年4月1日、エイプリルフール真っ只中というタイミングでお披露目となったポータブルゲーミングPC「ROG Ally」が、2023年6月14日より国内で発売予定であることが発表されました。
Game*Spark編集部は「ROG Ally」メディア向け内覧会に参加するとともに、同マシンのサンプルを試用する機会を得ました。本記事では「ROG Ally」シリーズの上位モデルに当たる“RC71L-Z1E512”のインプレッションをお届けします。外出先でも1秒も時間を無駄にせず快適な環境でゲームをプレイしたいというコアなゲーマーが気になるのは「Steam Deckの対抗馬たり得るのか?」という点に尽きるでしょう。その実力のほどやいかに……!?
「ROG Ally」スペック概要
まずは改めてカタログスペックからおさらいしましょう。
OS | Windows 11 Home 64ビット |
CPU | AMD Ryzen™ Z1 Extreme プロセッサー(3.3GHz/5.1GHz) |
メインメモリ | 16GB(LPDDR5-6400) |
ディスプレイ | 7.0型ワイドTFTカラー液晶 (グレア) |
解像度 | 1,920×1,080ドット (120Hz) |
グラフィックス機能 | AMD Radeon™ グラフィックス (最大8.6TFlops FP32) |
外部ディスプレイ出力 | 最大7,680x4,320ドット |
ストレージ | 512GB (SSD、PCI Express 4.0 x4接続) |
サウンド | ハイ・デフィニション・オーディオ準拠、ステレオスピーカー内蔵 (1W×2)、アレイマイク内蔵 |
通信機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax (Wi-Fi 6E) / Bluetooth® 5.1 (有線LANポートは非搭載) |
電源 | Type-C/65W ACアダプター (20V/3.25A) またはリチウムポリマーバッテリー (4セル/40Wh) |
バッテリー駆動時間 | 約10.2時間(JEITAバッテリー動作時間測定法Ver2.0に基づいたもの) |
消費電力 | 最大約65W |
サイズ(突起部除く) | 幅280.0mm×奥行き111.38mm×高さ21.22~32.43mm (スティック先端から計測した厚さは40.58mm) |
質量 | 約608g |
上記スペック概要に加えて、ボタン入力に関しては左右スティック/方向ボタン、ABXYボタン、左右トリガー(計4箇所)、背面ボタン(計2箇所)という設計です。また、画面の両隣に「表示ボタン」「コマンドセンターボタン」「Armouryボタン」「Crateボタン」を搭載しています。
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また、「ROG Ally」も「Steam Deck」も6方向のジャイロセンサーを搭載しています。ただし「Steam Deck」のように触覚フィードバックつきのトラックパッドは搭載していないため、マウスカーソル操作が主体のゲームプレイにはやや不向き。背面ボタンも左右で1つずつ少ないので、「Steam Deck」と比べると操作バリエーションの幅は狭いといえます。
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「Steam Deck」との重量差は約60g軽く、重量では「ROG Ally」に軍配が上がります(とはいえ、人によっては違いが分からない範囲かもしれませんが……)。また、幅・奥行きのサイズは「ROG Ally」のほうが圧倒的にスリムで、グリップ部分が小さいこともあり、かなり手軽。重量の分散も優れている印象で、長時間持っていても手が疲れにくいところは大きな魅力です。時間を忘れて手軽にゲームに没頭したい方には、まさにうってつけな一台です。
ゲームプレイについては後述しますが「AAAタイトルを好きな場所・体勢で長時間ダラダラ遊び続ける」なんてことも可能なので、既に「Steam Deck」を所有している方でもより“PCゲームが身近になった”と感じられるでしょう。
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ABXYボタンの押し心地は少し柔らかくて緩め。トリガーや背面ボタンのレスポンスは“堅実”と言いたくなるような質感で、確かにボタンを押しているという信頼性を感じられます。「Steam Deck」のトリガー・背面ボタンも決して低品質ではありませんが、「ROG Ally」と比べるとチープに思えます。
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「ROG Allly」の目立たないながらも面白いポイントは「指紋認証センサー付きの電源ボタン」。アカウント毎に異なる指紋を登録可能なため、家族や同居人などとラフに「ROG Allly」を共用できますし、カジュアルにPCゲームを遊びたい方には便利な機能でしょう。
「ROG Ally」でのゲームプレイ
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新世代機向けアップデート後の『ウィッチャー3』はランチャー起動時にコケそうになったものの、「Steam Deck」と同じグラフィックス設定で快適に動作しました。2023年発売の『Atomic Heart』も“中”のグラフィックス設定でスムーズにプレイできるなど、昨今のポータブルゲーミングPC同様、リッチなゲームを様々な状況でガッツリ遊べるスペックです。試用のため時間が限られており数十時間規模のプレイはできなかったものの、これ1台でAAAタイトルをオープニングからエンディングまで遊び尽くすことも充分可能でしょう。
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また、無心で長時間のめり込めるお仕事ドライブシム『Euro Track Simulator 2』をプレイしようとしたところ、何度か起動に失敗するケースがありました。しかし、その後のプレイングは非常に快適だったので、立ち上げの際の最適化向上はゲームプレイにおいて課題となるかもしれません。
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長時間プレイにおける“排熱”に関しては、ゲーミングノートPCなどで培われた技術が存分に発揮されているように感じられました。しかし、2Dドット絵の大人気ローグライクアクション『Vampire Survivors』を遊んでみると、プレイ後半で引き当てた“宝箱”が5個の大当たり演出を表示している最中にまさかのフリーズ。3D・2Dのゲームで処理能力に差異が出ることは海外メディア等でも触れられていましたが、『Vampire Survivors』の演出で停止……というのは、意外な不具合でした。
また、ストアを複数跨いでゲームをプレイするコアなゲーマーであれば、Steam以外のPCゲーム配信サイトを手軽に扱える点は「Steam Deck」との比較に際して重要な点です。「Steam Deck」でもEpic Gamesストアやその他ランチャーも導入できるものの、かたやLinuxベース、かたやWindows PCということで、「ROG Allly」のほうが親しみやすい方が多数派でしょう。「Protonって何?」、そもそも「Linuxって何?」と調べる必要がないカジュアルさは「ROG Allly」の利点であり、ライトユーザーにもオススメしやすいポイントです。
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ちなみに、排気口から出てくる風のニオイは「ROG Ally」のほうがわずかに軽やかで、優しく漂うような芳香に感じました。ただし筆者のゲーミング環境にペットはいないため、“猫が寄ってくる”かどうかについては検証できていません。
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「ROG Ally」は“ROGブランドのポータブルゲーミングPC”です。記事後半で今更何を言ってるんだという話ではありますが、「ROG Ally」は「Armoury Crate SE」によるチューニング&アシストが強い魅力で、「ROG」というプラットフォームでPCゲーミングを体験するためのシステムが、ポータブルサイズの画面内に用意されています。
筆者は「Steam Deck」のみでなく「ROG」ゲーミングノートPCを個人的に利用していることもあり、「ROGブランドで体験するポータブルゲーミング」というだけで、かなりの好印象です。専用ソフトウェアや筐体デザインも「ROG」ユーザーなら親しみやすく、ライティングや動作パフォーマンスも「ROG」らしい直感的な操作で調整できます。
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本稿で試用した「ROG Ally」「Armoury Crate SE」は正式リリース前のものです。試用期間にも配信されていたアップデートで不具合が多数修正されていたため、発売日以降も変更やパフォーマンス向上が見込めます。
今回紹介した「ROG Ally」のAMD Ryzen Z1 Extreme プロセッサー搭載モデルは、希望小売価格109,800円にて6月14日より発売。6月2日より、予約受付がスタートします。また、AMD Ryzen Z1 プロセッサー 搭載モデルは89,800円にて2023年夏に発売・予約受け付けを開始する予定。本記事で比較してきた「Steam Deck」以外にも様々なポータブルゲーミングPCがひしめき合う昨今、“ブランドやメーカーで選ぶ”という考え方も大いにアリ。「ROG」ユーザーや予てから興味を持っていた方は、公式サイトを改めてチェックしてみてください。