注意
本作はテキストアドベンチャーのプレイレポであるため、その性質上どうしてもネタバレに触れざるを得ません。
もし事前情報無しでプレイを考えている人がこれを読まれている場合は、すみやかにブラウザバックなどをおすすめします。
今回はさめさめサメーションが、2023年8月3日にSteamにてWindows PC向けにリリースした『春待ちトロイダル』をご紹介したいと思います。
『春待ちトロイダル』とは?
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本作は、とある架空の島を舞台に何度も高校生活をループするテキストアドベンチャーゲーム。主人公は、10日間の学校という限られた期間で、各キャラクターとの関係性を深めながら真実に迫ります。関係性には対話によるコミュニケーションが必要で、カードバトル形式で行われる相手とのバトルに勝利(?)することが大切です。
ゲームを始めてすぐは勉強や運動をしても手持ちカードの成長は遅く、全体的な能力値は低いかもしれません。しかし周回を重ねるごとに手に入れた経験値で己の各パラメータを鍛えれば大丈夫。個人的に本作は物語、キャラクター、システムが見事なバランスで噛み合った優れたゲームデザインだと感じます。早速やってまいりましょう。
操作・設定・言語
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本作はキーボード&マウスで操作します。Xbox Oneコントローラーの無線接続でプレイも可能ではありますが、ほぼクリック操作になるため、筆者はマウスを選択。
その他設定は画面サイズと音量変更という基本的な項目が並びます。言語はもちろん日本語にバッチリ対応していますね。あとはゲームシステムの解説にもアクセスできるので、ルールがわからなくなった際はいつでもすぐに確認できます。
本編開始
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さぁ始まりました『春待ちトロイダル』……いきなり驚愕した猫がバックに背負ってそうな銀河(?)が現れました。とりあえず軽く記憶喪失ですが、自分の名前が「スパくん」であることは思い出せました。前世で一体どんな罪を背負ったというのか。
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主人公であるスパくんが最初に出会う登場キャラクター「アクマ(悪魔)」。ここから彼女によるざっくりとした状況説明が行われます。とりあえず習うより慣れろの精神で進行する本作ですが、要所要所でアクマちゃんが的確な説明をいれてくれるため、個人的には大変遊びやすく感じました。
というか説明が上手いんですよね……どれだけこんがらがった文章でもその先輩が説明するだけでスッと頭に入ってきた学生時代を思い出しました。
1日を過ごそう
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本作は3月1日から10日間を何度もループしていきます。1日にとった行動が、自身のパラメータや、他キャラクターとの関係性をはじめとする様々な要素に影響を与えます。
また1日における時間の流れは6つに区切られており、朝、始業前、昼休み、放課後、夕方、夜でそれぞれ1回ずつ行動が可能です。つまり1日あたり6回の行動ができるということですが、ここでは先を焦らず、どっしり構えてあれこれ試しながら行動すると良いでしょう。
特にゲーム自体が序盤の頃は、自身の能力値もまだまだ育っていないため、無闇にコミュニケーションバトル(?)をしかけると、ただただメンタルが削られてあまり良い結果には繋がりません。個人的には、何周かは自身のレベリングのためにあてて、ある程度逞しくなってから、短期決戦を仕掛けるイメージでいくと上手くコトが運ぶ体感でした。
行動しよう
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さて、その「行動」についてですが、自宅と学校では選択肢が一部異なりますが、おおよそが寝る、勉強、運動、散歩を基本にしており、選択によって対応する各パラメータが増減し、場合によっては他キャラクターとの関係性にも影響があります。
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パラメータには、「メンタル」「集中力」という、スパくんのステータスに直結するものと、「話題発掘ポイント」「トーク力強化ポイント」という能力値強化に繋がるものがあります。前者については、イメージしやすいように他の例えに置き換えると、HPとMPといったものが近いでしょうか。
行動や対話によってHPが0になると、スパくん(主人公)は力尽きてしまいループが終了して最初からやり直しになります。MPが低くなると能率が落ちてしまい、他のパラメータ上昇にデバフが発生しやすくなります。
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一方で後者2つについては、短期間いかに効率よく手持ちのカード(後述)を強くするか、という点で極めて重要なパラメータです。ループ開始前にアクマと取引することで、これらを上がりやすくするパッシヴスキルを開放できるため、序盤における強化の優先対象はこの2つだと、個人的には感じました。
もちろん、これが唯一の答えというわけではなく、もう少しゲーム自体の研究を進めれば、また違った攻略法が出てくるはずです。
対話という名のコミュニケーションカードバトル
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新しい環境で初対面の人達と新しく関係を築いたりする際、会話のあと気疲れしたり、心がりんごの皮よろしくショリショリ剥かれる感覚……ありますよね。本作はそういった波にたゆたう心の浮き沈みを、ゲームシステムへと見事に昇華した作品であると思います。
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それでありながらシステム自体は至ってシンプル。4ターン制で進む中で、話題の「種類」と「数字」が割り振られた「トーク」と呼ばれるカードを出し、その数字が相手よりも上回れば得点になるというもの。数字が同じだと引き分けになりますが、その次のターンで上回れば、引き分けの得点込みで総取りできます。
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また種類が同じであればボーナスがつきます。相手がどのカードを出すのか、右上の表情アイコンと主人公の台詞から様子をうかがいつつ手札を切っていき、この駆け引きがたまらなく楽しいですね。
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そして個人的に本作のUIは、特にカードバトルの部分について非常に優れたデザインだと感じています。カードには色、数字、アイコン、文字がシンプルに添えられているため、誰が見ても一発で「どんなカードなのか」がわかりやすいのです。
関係性を深めていこう
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各キャラクターには関係性のレベルが設定されており、最初はゼロ。「はじめまして結婚して下さい」的なコミュを取ろうものなら冷たい眼差しを向けられます。関係性ポイントが100を超えるごとにレベルが1上がって、もう少し突っ込んだ話ができるようになるので、物語を進めるためにも、多くのキャラクターと関係性を深めていきたいところですね。
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もちろん彼らは、ゲームを進めるためだけの駒として登場している訳ではなく、ちゃんと一人ひとりしっかりとキャラクターが立っており、可愛らしいビジュアルもあわさってとっても魅力的です。正直いくつかのループは、物語そっちのけで彼らとのコミカルな掛け合いを楽しんだりしていました。
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その関係性についてですが、学校生活における主人公の行動で、各キャラクターとのポイントが得られることがありますが、1回につきだいたい10ポイント前後なので、ゲーム進行のメインエンジンにはなりづらい。一方で、カードバトルに勝利すると、場合によっては100Pかそれ以上がドカンと入るため、やはり本作の肝は「対話」にあります。
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しかし、ループごとにこちらの手持ちカードは種類も数字もリセットされてしまいます。繰り返しになりますが、本作は如何にパッシヴスキル等を鍛え、学校生活で加速度的に手持ちを強くし、圧倒的なコミュ力で殴りかかるという名の「対話」できるのかが勝負どころだと思います。
おわりに
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時折不穏な空気が漂い、事件も発生しますが、それらをなんとかしようと主人公たちが奮闘していく本作。続きが気になる物語の牽引力もさることながら、魅力的なキャラクターに楽しいゲームシステムなど、久々にすべてが面白いゲーム体験に出会えました。
なお、本作は「SSDにインストールした上でのプレイ」を推奨しています。HDDへのインストールでもプレイ可能とされていますが、快適さを求める方はSSD環境でプレイするのが吉でしょう。
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全キャラクター甲乙つけがたいのですが、筆者はテリナが大変お気に入りです(透き通った目で青空を見つめながら)。
タイトル:『春待ちトロイダル』
対応機種:Windows PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
発売日:2023年8月3日
著者プレイ時間:2.7時間
サブスク配信有無:記事執筆時点においては、無し
価格:800円
※製品情報は記事執筆時点のもの
スパくんのひとこと
コミュニケーションの駆け引き、ループする物語、個性豊かなキャラクター達が見事なバランスで噛み合っているスパ!