Steamに続いてPS5でも11月30日にリリースされた『RoboCop: Rogue City(ロボコップ: ローグ シティ)』。1987年に公開された映画「ロボコップ」シリーズを原作としており、「ロボコップ2」と「ロボコップ3」の間の出来事を描く物語としてFPS形式で進行するゲームです。
その人気は2014年にリメイク映画が公開されるほど。現在は新作映画とドラマシリーズがAmazon Studiosで企画されており、そちらの動向にも注目が集まっています。
そこで本稿では、「ロボコップのゲームとして完璧な作品!」とファンに絶賛される本作のどこがそんなにおもしろいのか?そのポイントと、そもそもなぜ「ロボコップ」がこれだけ人気になったのか、またドラマ版を含むシリーズ全作についても解説したいと思います!
はたしてターミネーター化したロボコップとは何なのか……!?
◆映画の世界を聖地巡礼!
本作はロボコップことマーフィー巡査視点で進行するFPS。愛用の銃「オート9」は弾数無制限で、改造を施せばマシンガンのように連射したり、リロードなしで撃ち続けることができたりします。
さらにマーフィー自体も経験値を使うことで攻撃力・防御力・スキル等をアップ&獲得することが可能となっており、育成方法によってさまざまな戦い方ができます。
なお現状においてすべてのスキルを獲得することはできない模様ですが、経験値アップのスキルさえ獲得すれば、必要となるスキルをすべて獲得し、なおかつ少し余裕ができるくらいまでは強化できるでしょう。
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そんな本作が「ロボコップ」ファンに評価されている最大のポイントは「深い原作愛」でしょう。
主役であるアレックス・マーフィー巡査はもちろんのこと、マーフィーのパートナーであるアン・ルイス巡査や、部下たちを見守るウォーレン・リード巡査部長といったおなじみのキャラクターが当時そのままの姿でCG再現されていることに衝撃を受けたファンも多いはず。
しかもシリーズ2作目までマーフィーを演じていたピーター・ウェラーがマーフィーの声優としてカムバック!後続のシリーズ「ロボコップ3(映画)」「ロボコップ ザ・シリーズ(ドラマ)」「ロボコップ プライム・ディレクティヴ(ドラマ)」ではそれぞれ別の俳優がマーフィーを演じたこともあり、33年ぶりの復帰に沸いたのでした。
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また作品世界内の流行や世相を描写するギミックとしてテレビ番組が登場するのが本シリーズの定番でしたが、ゲームではラジオ放送でそれに対応。ストーリー進行に関係のない要素ではあるものの各地にラジオが放置されており、そのスイッチを入れることでシリーズの雰囲気を再現する工夫も見られました。
でも何といっても一番驚いたのがこちら。
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まさかのロボコップ2号機試作モデルが!
そう、「ロボコップ2」でドクロの素顔を見せて絶命したあいつが、量産型治安維持ドロイドとなって登場です!やってくれたぜ開発スタッフ!
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そのほか各マップには見覚えのある場所や人物が……。
まずはマーフィーの勤務地である西分署。
基本的に本作はマーフィーの視点でマップ内を歩き回るわけですが、彼はドシリ、ドシリと歩くため移動速度はさほど早くありません。そのためマップはやや狭めにリ・デザインされているものの、随所が映画そのままであることに筆者の眼はキラキラと輝きました。
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たとえばウォーレン・リード巡査部長の指定席とも言える受付は、見える範囲は映画そのもの!謎のコンピューターも鎮座していますし、奥に入ればシャワー室とロッカールームまで。壁の公衆電話が映画劇中とまったく同じ位置にあったり、映画1作目で見切れていた、謎の上半身裸の警官も同じポーズで立っていたりします。
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オールドデトロイトの街に出れば、クラレンス一家のエミール・アントノウスキー(廃液でドロドロになったあいつ!)に吹き飛ばされたガソリンスタンドが。さらに立てこもり事件があった市庁舎も!
そしてストーリー後半の見どころといえば、やはりオムニ社のマップです。
ロニー・コックス演じるジョーンズ副社長と、ロボコップ開発の責任者であるモートンがバチバチにやりあった役員専用のトイレに入ることもできますし、ED-209が初お披露目された会議室にも入ることができます。
さすがに全階を作っているわけではないので3フロア分しかありませんが、映画の世界をツアーするなら十分すぎるほどツボを押さえたマップでした。
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ちなみに実績には「せめて息子をしまわせてくれ」があり、相手の股間を打ち抜くと解除されるという、まさに原作再現系のものも含まれています。そのほか小ネタが随所に仕込まれているので、映画と見比べながら隅から隅まで探索すると面白いでしょう。
◆1987年に沸いた「ロボコップ」ブーム
ロボコップが劇場のスクリーンに登場して36年。なぜここまで根強く支持されるようになったのでしょうか?
ロボコップが生まれた1987年(日本では1988年公開)といえばハリウッドの黄金期。1977年公開の「スター・ウォーズ」以来、SFX(VFXより以前の特殊撮影技術)は格段に進歩し、好景気も重なってさまざまな映画が制作されました。「ロボコップ」はそんな中で生まれた作品で、1978年公開の「スーパーマン」以来の大作ヒーロー映画でありSF大作映画でもあることで注目を浴びます。
ストップモーションアニメで撮影されたED-209とのダイナミックな戦闘シーンや、アニマトロニクス(ロボット)を用いたマーフィーの殉職シーンは、まさに当時のハリウッド映画界を象徴する映像革命です。
またマーフィーの殉職シーンやエミールの肉体損傷シーンなど、大人も対象とした広い層へのアピールでたちまち話題になりました。
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90年代に入ると原作モノが増えていくハリウッドですが、当時はSFXの進化によってあらゆる映像表現が可能となり、さまざまなジャンルでオリジナル作品が生み出されてはヒットを飛ばしていました。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「インディ・ジョーンズ」「グーニーズ」「ターミネーター」「ゴーストバスターズ」「スペースバンパイア」……。また「ロジャー・ラビット」では実写にアニメのキャラクターを合成するという大胆な映像表現が話題になりました。
興行成績的には日本・アメリカともに16位という結果でしたが、当時のバラエティ番組やアニメではロボコップをオマージュしたキャラクターが登場したり、ロボットダンスを「ロボコップ」と表現したりするなど、ひとつのムーブメントが生まれたわけです。
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進化した映像表現で何もかもが目新しく感じられた時代。ロボコップはその大きな渦の中で我々に新たな刺激を与えてくれ、今なお記憶に残る作品になったと言えるでしょう。
なお当時はCG合成がなく「マットペイント」と呼ばれる書き割りの一種が全盛の時代。オムニ社の高層ビルも、実際に存在するビルに、とてもリアルに描かれた絵の上層階を付け足すという技術が使用されていました。もし視聴する機会があればストップモーションアニメやアニマトロニクスとともに注目してみると面白いでしょう。
◆知る人ぞ知る「VSターミネーター」
映画でスタートした「ロボコップ」シリーズは、ドラマ・アニメ・コミックスなどさまざまなメディアで展開が広がります。その中で多種多様なロボコップが描かれました。
映画1作目でロボコップのオリジンを描いてヒットした本作は、1990年に続編「ロボコップ2」を公開。『ローグシティ』にも登場するヌークと呼ばれる麻薬をめぐり、新型ロボコップとマーフィーのバトルが描かれました。まさに『ローグシティ』の前日譚となる部分です。また「2」にはロボコップ2号機とも言えるロボケインが登場して、「ヌーク中毒のロボット」という独特の個性を発揮していました。
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そんな「ロボコップ」シリーズですが、1993年公開の「ロボコップ3」ではマーフィー役のピーター・ウェラーが降板しロバート・ジョン・バークが新たなマーフィーに。デルタシティと呼ばれる都市開発をめぐる戦いの中で、ガンアームやフライトパックなど新装備を装着したロボコップが活躍しました。
しかし作品の勢いは以前ほどではなくシリーズはいったん終了に。ガンアームやフライトパックといった外付け装備がメカマニアの心をくすぐるガジェットだっただけに残念な結果でした。
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1994年の「ロボコップ ザ・シリーズ」と、2001年の「ロボコップ プライム・ディレクティヴ」は映画から派生したドラマ版です。映画では都市整備構想として登場していたデルタシティが本作の舞台となっており、映画とは切り離された世界観として物語が紡がれていました。
「ロボコップ ザ・シリーズ」はパイロット版を含む全23話構成(1話完結型)。カナダの制作会社によるものなので映画版のキャラクターは登場せず、ロボコップも新たな俳優が演じています。
また映画とのつながりが明言されていないため、なぜデルタシティが完成しているのか、なぜキャラクターが一新されているかは特に言及されることなくストーリーが進みます。それでもドラマ本編のクオリティーは決して低くなく、ロボコップのさまざまな活躍が見られる楽しいものに仕上がっていました。
「ロボコップ プライム・ディレクティヴ」は、約90分のエピソードを全4話構成にした連続シリーズ。1話完結の「ロボコップ ザ・シリーズ」と違いひとつの物語を4話で描くため、物語を深く楽しめます。時系列は映画1作目から十数年後で、幼かったマーフィーの息子が社会人となって登場するだけでなく、時代遅れになってパーツも手に入らないロボコップの少し寂しい姿が描かれました。そのような状況でマーフィーの中には自殺願望が芽生えたり、親友だった同僚警官と対峙することとなったりと、マーフィーは苦難の時を過ごします。シリーズの中ではもっとも重い雰囲気でした。
見どころは「もうひとりのロボコップ」こと漆黒ボディの「ロボケーブル」の登場です。ロボケーブルとはマーフィーの同僚警官だったジョン・ケーブルがロボコップのボディで復活した姿。マーフィーより高性能なだけでなく、二丁拳銃を扱う面白いキャラクターでもあります。ただしマーフィーとは異なり闇落ちしたようなキャラクター性を持っていました。
物語はそんな彼の視点も交え、ダブル主人公といった形でお互いの警官時代のエピソードやケーブルの挫折、友情などを描いてこれまでのシリーズにはない要素で楽しませてくれました。
映画は3作目で一旦終了したものの、ドラマ版はドラマ版なりのおもしろさやキャラクターもいるので個人的にはオススメしたいところ。特に二丁拳銃のロボケーブルは、あの1作だけで終わらすには惜しいキャラクターでした。
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一方、アニメ版のロボコップも1988年と1998年にそれぞれアメリカで放送されました。1作目は映画の世界観をベースにしたもの。2作目の「ロボコップ アルファ・コマンド」はそれよりさらに未来の世界を舞台にしたストーリーです。どちらもアニメらしく怪人じみた悪役が登場したり、さまざまな拡張装備が登場したりするなど自由な発想が特徴的でした。
映像メディア以外ではアメコミ版が有名なところです。特にダークホースコミックが出版した「ロボコップvsターミネーター」が有名で、何度かテレビゲーム化されました。
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ダークホースコミックといえば「エイリアンvsターミネーター」を実現した出版社であり、かつては「バットマンvsプレデター」のようなクロスオーバー企画も世に送り出したところ。「ロボコップvsターミネーター」もその中のひとつで、人気のあまり玩具メーカーの「ネカ」がその世界観をフィギュアシリーズとして立体化しました。
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1987年に誕生し、今なおさまざまなメディアで活躍し続けるロボコップ。『ローグシティ』はそれら世界観の最新エピソードとして、映画版2.5作目にふさわしい作品だとファンに歓迎されました。
『ローグシティ』ではじめてロボコップの世界を知った、あるいは懐かしいと感じた皆さんは、ゲーム以外の展開でもロボコップに注目し、そのディープな沼にはまってみてはいかがでしょうか?
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