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RPGの戦闘。これを後回しにできればどれだけ楽か、と考えたことのある人は少なくないはずです。
たとえば、出てくるモンスターの組み合わせによってはこちらがいろいろと有利になったり、逆に不利になったりもします。面倒な組み合わせの戦闘を後回しにして、アイテムが揃った状態で改めてバトル開始……ということができたらどんなにいいなぁと筆者も考えていました。
それを可能にした『このバトルはあとでやります』という作品が、『TOKYO INDIE GAMES SUMMIT』に登場しました!
戦闘後回しシステム
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講談社ゲームクリエイターズラボのブースでは、ゲーム開発者のうりもさんが手掛けた『このバトルはあとでやります』が展示されています。他のブースと比較しても、非常に華やかな雰囲気です。
このゲームの主人公はレンタルビデオ店で働くことになったエクソシストの女の子。「レンタルビデオ店」が出てくるところからして舞台は90年代……ではなく、何と現代です。
呪いのビデオテープを封印するため、悪霊を退治しながらその様子を生配信するという、なかなかどうしてぶっ飛んだ設定。悪霊退治に使う武器もチェーンソーだったりゴルフクラブだったり自動小銃だったりと、まさに王道ホラー一直線の設定です!
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敵の前に表示される3×3のパネルの組み合わせを鑑みつつ攻める戦闘システムもさることながら、このゲームはやはり「戦闘を後回しにできる」という点が光っています。何と、敵とエンカウントしてもその後の戦闘自体を一旦パスすることが可能。その上で、後回しにした戦闘毎のモンスターのパーティーメンバーを交換できます。
たとえば「A・A・B」のモンスターパーティーと「A・B・C」というパーティーがあったとします。その両方を後回しにした場合、前者のBと後者のAを入れ替えて「A・A・A」のパーティーと改めて戦闘する……ということが可能に。そうすることでより合計戦力の低い組み合わせにできますが、一方でモンスターの組み合わせによっては戦闘後に得られる報酬が異なってくるという現象も起きます。
つまり、最初から目当ての報酬を得るためにモンスターを入れ替えるという発想です。なるほど!
嗚呼、平成レトロ!
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もっとも、レアな報酬が手に入るモンスターの組み合わせは合計戦力が高くなりがちのようで、そこはプレイヤーが上手く計算しなければなりません。
そうした戦略性を含みつつ、日本のオタクたちにとっては取っつきやすいポップな雰囲気に仕上げた『このバトルはあとでやります』。筆者としては今後に期待の作品です。
数少ない懸念点として、レンタルビデオ店なるものを設定に加えている部分が挙げられます。いや、これ90年代に少年期を過ごした筆者なら分かるんですが、今のティーンエイジャーに「レンタルビデオ店」なんて言っても分かってくれるかなぁ……?
平成の文化が既に「レトロ」と言われてしまっている令和6年。今の小学生や中学生、それどころか高校生もVHSに触ったことのない子のほうが多いハズ。若者よ、昔の人はビデオテープを店で借りて映画を観ていたんだぞ!
ゲームづくりの「夢と可能性」
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本作は、そんな具合に現代のトレンドと平成レトロが上手く融合した世界観になっています。
これが個人制作のゲームとは思えないくらいのクオリティーで、全て完成されたらどれだけ面白いものになるんだと驚かずにはいられません!しかし見方を変えれば、情熱と意欲と技術があれば、個人でもこれだけのゲームを作ることが可能ということではないでしょうか。
今回の『TOKYO INDIE GAMES SUMMIT』には、「たったひとりで数年かけてようやく形にすることができた」という作品を多く見かけました。その際の制作エピソードを1冊の同人誌にまとめて販売する人もいて、ゲームづくりは今や、大きな夢と希望と可能性に満ちた産業であることが分かります。
その人の発想と工夫次第で、様々なゲームを世に送り出すことができる時代。
バブル崩壊からの「失われた30年」を抜け出した先に、どのような光景が繰り広げられているのか。それを多少ながらも窺い知ることができた、今回のイベントでした。
『このバトルはあとでやります』は、PC向けにリリース予定です。