本作のオープンワールドは懐が深く、ゲーム体験に深みを与える
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より豊かになったアクションの幅と、今も変わらない共闘の頼もしさと楽しさ。前作の魅力については、十分以上に受け継いでいます。ですが、もうひとつ避けて通れないのが、オープンワールドに関する手応えです。
プレイした人は経験済みかと思いますが、前作の『ドラゴンズドグマ』のオープンワールドは作り込みこそ悪くなかったものの、「広がり」と「探索」は正直物足りない仕上がりでした。フィールドの広がりが限定的で、そのため探索要素も必然的に少なめ。バトルやポーンなどの魅力を備えていただけに、「世界の狭さ」は実に残念でした。
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そんな前作を経験した身で言えば、『ドラゴンズドグマ 2』のオープンワールドは、期待を上回る仕上がりになっています。まず、単純な意味での広さが大きく改善され、50時間のプレイを探索に充てても、マップの判明範囲はようやく折り返しを迎えた程度。まだまだ先が見えず、嬉しい悲鳴を上げている状態です。
しかも、ただ広いだけではありません。敵とのエンカウントだけでも、通常の遭遇に物陰に隠れた奇襲、モンスターが豚や牛を狩る現場に遭遇するなど、そのシチュエーションはかなり豊富です。中には、牛車で移動中に襲われたり、戦闘中に別のモンスターから強襲を受けるといった状況もあります。
また、普通の攻撃だけが敵を倒す方法ではなく、高所から落としてダメージを与えたり、深い水場に放り込んで即死させる、といった地形を活かした立ち回りも有効です。小型のモンスターなら捕まえて投げ飛ばせますし、大型も揺らして体勢を崩させるという手があります。
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さらに本作では、「吊り橋を落として落下させる」「大岩を転がして坂の下にいる敵を轢く」「せき止められた川の水を放流してダメージを与える」といったアクションも可能。こうしたギミックがフィールド上に組み込まれており、『ドラゴンズドグマ 2』のオープンワールドには懐の深さを感じざるを得ません。
そして、本作が備えるオープンワールドの楽しさは、バトルだけでなく豊富な探索要素にも支えられています。初見の土地を探索すると、素材の獲得をはじめ、宝箱や貴重なアイテムの発見、多数のダンジョンといった出来事が次々と舞い込み、手が空く暇もないほど。探索すればするほど、新たな発見と出会えます。
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ちなみに、メインストーリーの進行に伴い、関所を通って隣国に足を運べるようになりますが、実はそれ以前から自力で隣国への移動が可能です。筆者の場合は川沿いを進み、状況的には密入国のような形で往来しました。探索できるフィールドにゲーム的な制限を設けず、プレイヤーの裁量に任せる本作の作りは、個人的に嬉しいポイントのひとつでした。
前作よりも格段に広くなり、フィールドを活かしたバトル要素や密度の濃い探索要素が、広大な世界の旅路にメリハリを与えてくれます。広さに加えて深さも備えた『ドラゴンズドグマ 2』の冒険は、期待以上のオープンワールドを実現していました。
不便な作りも目立つが、ゲームデザインを踏まえた一面も
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ここまでは、前作から引き継いだ特徴や昇華した魅力について触れましたが、『ドラゴンズドグマ 2』は全く不満のない作品……ではありません。まずフレームレートが高いとは言えず、人によっては3D酔いに繋がります。ただし、今後のアップデートでフレームレートの向上が図られる予定なので、この点はカプコンの対応に注目しておきましょう。
また、UI全般が使いにくかったり、重量制限が厳しかったり、ファストトラベルの選択先が限られていたりと、システムからゲーム性まで不便な面が目立ちます。こうした利便性の低さが気になる人は、本作に対する評価がどうしても低くなることでしょう。
こうした不便について、「それも楽しむゲームだ」とは言いません。快適でない点はやはり気になりますし、無理に我慢をする必要もありません。ですが、現状で感じる不便のいくつかは、単なる配慮不足や洗練の足りなさではなく、意図してデザインされている面も否定できません。
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例えばファストトラベルは、安価だが選択先が限定的な牛車や、貴重で高価な「刹那の飛石」が必須だったりと、それぞれ制限を抱えています。また探索中に、一度街へ戻ってから再開しようと思った時、貴重なアイテムを使わない限り、その往復のほとんどは徒歩による自力移動になります。これを面倒と考える人がいても、なんらおかしくありません。
ですが、本作は道を歩いているだけでも様々な出来事に遭遇し、探索の幅を広げれば容易に新たな発見が訪れます。おそらく本作は、移動を「冒険」として捉え、そこに発見と驚きを積み重ねるゲームデザインを構築したのでしょう。
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移動による「冒険」との遭遇は、ファストトラベルでは得られない楽しさです。そのため、フィールド上で展開する「冒険」と遭遇できるよう、ファストトラベルの使い勝手を調整したのかもしれません。
UIについても、ゲームデザインを踏まえた可能性があります。アイテムによるHP回復がやりづらいのは、ポーンが回復をサポートすることで、その連携を実感しやすくするため。重量制限の厳しさも、こまめに街に戻らせ、ジョブの成長を実感させたり、クエスト受注の機会を増やすため。そうした推測も成り立ちます。
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フレームレートなどの欠点でしかない問題は別として、使いにくいシステム上の不満点は『ドラゴンズドグマ 2』のゲーム性に触れやすくするため、敢えて不便なデザインに留めているとも捉えられます。
あくまで主観的な意見ですが、探索好きが功を奏したのか、ファストトラベルの使いにくさはあまり不満に感じていません。「刹那の飛石」は貴重ですが、プレイを続けていけばいくらかは溜まるので、いざという時に使う分は十分あります。
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UIの使いづらさは改善して欲しいものの、HP回復などはポーン頼りで大きな問題はなし。手ごわいモンスターとの戦いでも、回復を促す指示を行うなり、自分がメイジになって回復役に回るなり、ある程度のカバーが可能です。そのためUI自体は不便ながら、ゲームデザインが補っている面も一部あります。
ポーンが勝手に行動してしまう「竜憑き」といった、ゲームデザインに含まれているものの不便さが過ぎるケースもありますが、不便に感じる要素の多くはゲーム性に誘導する兼ね合いの上に成り立っていました。
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ゲームプレイは快適に越したことはなく、その意味では『ドラゴンズドグマ 2』は“品行方正”とはかけ離れています。しかし、オープンワールド作品の全てが行儀よくなってしまったら、似たような作りばかりで味気なく感じるかもしれません。
ファストトラベル要素の牛車は、敵に襲われることが多く、時には目的地につく前に荷台が破壊されることもあります。利便性だけで言えば、かなり不安定で困った代物です。しかしゲームの体験というのはおかしなもので、そんなハプニングを面白く感じ、記憶に残る場合が多々あります。
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品行方正ではないからこそ広がりが生まれ、様々なゲームスタイルを受け入れる土壌を育んだ『ドラゴンズドグマ 2』。“行儀の良さ”より“多彩な体験”を選んだであろう本作は、減点方式だと総合評価が下がり、加点方式だと名作と成り得る魅力を秘めた作品と言えるでしょう。
良い点
・手応えのあるバトルをポーンと一緒に立ち向かう、共闘の楽しさは不変
・ジョブの組み合わせで広がる戦略
・前作の不満点だったオープンワールドの魅力が格段にアップ
・ハプニングやアクシデントが頻繁に起き、プレイ全般にメリハリがある
悪い点
・人によって好みが大きく分かれるゲームデザイン
・ゲーム性への誘導といえども、不便な部分はやはり目につく
・フレームレートの改善が当面の課題