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7月19日から21日にかけて、「BitSummit Drift」が開催されました。インディーゲームの祭典として名高いイベントとあって、会場には様々なゲームがずらり。ここではその中の一本をピックアップしプレイレポを紹介していきます。本稿では、集英社ゲームズと墓場文庫がタッグを組んで手掛ける『都市伝説解体センター』プレイレポをお届けしていきます。
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※本レポではゲームの特性上、チュートリアルのネタバレを含みます。
◆“都市伝説好き”の琴線に触れつつも、ストーリー展開の速さやキャラのディープさがプレイヤーを魅了する!
『都市伝説解体センター』は世に溢れる怪異や呪物、異界などの「都市伝説」にフィーチャーしたミステリーADV。妖しくもカッコいいそのビジュアルと『都市伝説解体センター』というネーミングから、すでに印象に残っている方も多いのではないでしょうか。今回の「BitSummit Drift」では製品版に近い形での試遊台を展開。特設サイトも公開され、完成が近づいていると期待させてくれます。
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プレイヤーは「福来(ふくらい)あざみ」として、センター長「廻屋渉(めぐりやあゆむ)」とともに不可解な事件に対応。元となった都市伝説を特定して「解体」していくことになります。先んじて、今回の『都市伝説解体センター』レポにおけるプレイフィールを述べておくと“キャラやストーリーの魅力から、あっという間に引き込まれるタイトル”と思わされました。都市伝説好きはもちろん、あまりそういったものに興味がなく「キャラが気になった」というきっかけでも楽しめそうな一作でした。
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プレイをしてみると、物語は主人公「福来あざみ」の個人的問題から始まりました。彼女は「念視」……普通では見えない奇妙なものが見えてしまう体質に悩まされており、街で見かけた(怪しげな)ポスターを手掛かりに「都市伝説解体センター」へ訪れます。
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そこで待っていたのは「千里眼」を持つという車椅子の男「廻屋渉」……彼は「念視」で見えるのは幽霊ではなく“過去そこにいた人間の残留思念”のようなものと伝え、見えなくするのではなく、むしろ明確に“ピントがあう”ようになるメガネを渡します。困惑する彼女に、慌てないでと目の前にある椅子に誘いますが……ここで推理スタート!
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なんと福来あざみを、座ると死ぬ呪いの椅子に着席させたわけです。ここではチュートリアルとして初めから都市伝説の正体が明らかになっています。ちなみに「呪いの椅子」という都市伝説は、おそらく現実に存在する「バズビーズ・チェア」をモデルにしていると思われます。「バズビーズ・チェア」は現在、誰も座れないように天井に逆さ吊りされているんだとか……。
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とにかく、そんな椅子に誘導した廻屋渉は、死に怯える彼女自身にこの部屋にある「呪いの椅子」の資料を「念視」によって探させ、視点で“なぜ座った人間が死ぬのか”を判明させるように促します。
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操作パートはわかりやすいように「念視」がシステムとして機能しており、プレイにあたって「どこを探せばいいか」が困るということはありません。推理ゲームに慣れていない人間でも操作しやすいシンプルな構造ですが、推理の自由度は高め。“目途が立っているなら解決が容易”ですが、もし誤った推測を立てていた場合は手こずるのではないかと思わせてくれます。
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幸いにも筆者は正解! 事態が解決に向かうと思いきや、福来あざみが調査の過程で誤って椅子を破壊してしまいます。命がかかっているわけなので、必死にもなると思いますが……。
しかし廻屋渉はそれを待っていたかのように、「死ぬ」というのは嘘だけど、椅子は研究用に借りたもので1,000万円の価値があると宣告! 借金返済の方法として「念視」をつかって「都市伝説解体センター」の業務を手伝わせるという流れに話を持っていきました。……「念視」を解決して貰いたくて来た彼女は、いつのまにか借金を背負わされる羽目になったのです。廻屋、なんか色々と手際良くてヤバい……!
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この段階ですでに筆者は、廻屋のヤバ目でミステリアスな性格と、福来の乗せられやすい可愛らしさに引き込まれたわけですが……まだプレイ時間は10分程度! 短い時間の中で濃厚なストーリーが展開されています。先ほどの「呪いの椅子」は廻屋が用意したものとあって名前が初めから開示されていましたが、ここから先はその逆、現場で起きている事象から都市伝説を「特定」するというもの。
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車椅子の廻屋にかわり、福来が「ジャスミン(止木休美)」とともに調査に乗り出します。SNSという現代的な“噂の出どころ”を調査すると、なんと福来の知り合い「美桜」が本件にかかわっているのではと話が展開していき……。
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始めは心霊写真やSNSでの真偽不確かな情報を追うという雲を掴むような状況から、都市伝説が浮き彫りになっていく過程はまさに「解体」そのもの。
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今回プレイアブルとして加わった事件では、「都市伝説解体センター」そのものの活動が体験できました。車椅子に座った「千里眼」持ちの廻屋は、まさに“安楽椅子探偵”……キャラクターの個性がずば抜けていて、非常に読みごたえがあります。もちろん話の軸となる“都市伝説”においてもそれは同じ。「呪いの椅子」資料探しの時に本棚にあった書籍のリストは「柳田國男」「南方熊楠」「水木しげる」「折口信夫」と、重度の怪談・都市伝説好きなら「これが民俗学的な先駆者だよね!」と唸らせてくれるラインナップです。
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最近では「呪物」や「異界」など、また怪談ブームが起こっているとみる風潮もあります。PVなどを見るに、この辺りも製品版ではカバーしてくれるでしょう。都市伝説好きに刺さるストーリーでありつつも、ディープなキャラクター性でプレイヤーの心をがっしり掴んでくれる『都市伝説解体センター』! 気になった方はぜひ、本作の続報に注目しましょう。
Game*Sparkでは「BitSummit Drift」にまつわり多数の現地取材記事を掲載していくので、今後もお楽しみに!
インディーゲームの祭典「BitSummit Drift」特集記事はこちら!