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ゲームならではの物語の体験とは何でしょうか。それは、プレイヤーが選択した行為に逐一ゲームが反応することが大きいのではないでしょうか。
東京ゲームショウ2024の2P Gamesブースでは、そんなゲームならではの物語体験にフォーカスしたかのような2作が展示。いまだにさまざまなクリエイターが挑戦するテーマですが、ここではなかなか注目すべきタイトルが揃っていました。
『スルタンのゲーム』残酷な君主が命じる運命から逃れるために、選んだカードから生まれる物語
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ゲームプレイの結果がそのまま独自のストーリーを語るという感動を与えてくれたのが、『スルタンのゲーム』でした。本作の舞台は中世のアラビア周辺と思われる場所。ゲームはある街を支配する君主スルタンに対し、主人公が異議を申し立てることから始まります。
スルタンは主人公の反抗に対し、ひとつのカードゲームを提案。主人公は、スルタンが提示した挑戦をわずか7日の間にクリアすることができなければ処刑されてしまうのです。
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プレイヤーはさまざまなカードを駆使して、スルタンが提示したゲームを攻略し、生き残ることが目的。主人公やその妻、従者といった登場人物のカードの他、お金や本といったアイテムのカードなどを駆使し、街の中で起こるさまざまなイベントをこなすことで、スルタンの暴力的な挑戦に対抗してゆくのです。
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『スルタンのゲーム』の面白いところは、イベントで使ったカードの結果によって、テキストが提示されていくことです。これにより、単にカードゲームの攻略ではなくプレイヤーの行為によって物語が生まれていく感覚があるんですね。
『スルタンのゲーム』はSteamにてデモが公開中。まるでタロットを使って「千夜一夜物語」をTRPGとしてプレイするような、考え抜かれたゲームデザインによる物語体験は本作独自のものでしょう。意外に他にない体験をもたらす一作となっています。
明朝末期の中国で展開される、残虐な現実『飢えた子羊』
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ビジュアルノベルである『飢えた子羊』は、中国の明朝末期を舞台とした緊張感溢れるタイトル。盗賊と仲間はある人買いから依頼され、4人の少女を運んでいく、という物語が展開されます。しかし彼女らを運んでいこうにも簡単ではなく、時には刃先をこちらに向ける獰猛な少女も潜んでいました。
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こちらはビジュアルノベルとしてはかなりオーソドックスであり、主要なゲームプレイは会話選択肢を選ぶシンプルなものですが、一番の緊張感をもたらすのはインモラルなシナリオかもしれません。
復讐や暗殺のほか、飢饉に伴う人身売買といった中世の中国雰囲気を感じさせる展開はもちろん、時には人肉食まで関係していくシナリオが、華麗な絵柄のキャラクターと対照的に展開されていくのです。
『飢えた子羊』はすでにSteamで2024年4月にリリースされて以来、なんと3万件以上ものレビューを獲得しています。おそらく中国のユーザーが主要な客層なのだと思いますが、これだけ遊ばれているのは完成度の高さが理由にあるのでしょう。ある意味で2024年を代表する一作かもしれません。