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【eスポーツの裏側】誰もが挑戦できる『オーバーウォッチ』「OWCS」が創る多様性とeスポーツの未来とはーキーマンインタビュー

『オーバーウォッチ』公式eスポーツトーナメントシリーズの現状、各国での活動、そしてシリーズとして目指している姿について、その裏側に迫る!

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【eスポーツの裏側】誰もが挑戦できる『オーバーウォッチ』「OWCS」が創る多様性とeスポーツの未来とはーーキーマンインタビュー
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eスポーツに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのeスポーツシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【eスポーツの裏側】。前回の連載では、高校生eスポーツ大会「STAGE:0」を開催・運営するテレビ東京の藤平 晋太郎氏。テレビ東京がeスポーツに参入した経緯や「STAGE:0」の現状、そして目指している姿について、お話を伺いました。


第47回目となる今回インタビューしたのは、Blizzard Entertainmentの『オーバーウォッチ』eスポーツトーナメントシリーズ「オーバーウォッチ チャンピオンズシリーズ(Overwatch Champions Series)」でシニアプロダクトマネージャーを務めるベイリー・マッキャン(Bailey McCann)氏と同シリーズAPACリージョンのプロダクトリーダーを務めるクレイグ・チョン(Craig Cheon)氏に、『オーバーウォッチ』公式eスポーツトーナメントシリーズの現状、各国での活動、そしてシリーズとして目指している姿について、その裏側に迫りました。

ベイリー・マッキャン(Bailey McCann):
Blizzard Entertainmentの「OWCS」部門でシニアプロダクトマネージャーを担当。「OWCS」立ち上げにおいても重要な役割を果たし、ゲームの競技性を高めるとともにファンとプレイヤーの参加を促進する取り組みに参加している。また、彼女が携わった「オーバーウォッチ」の"Calling All Heroes"企画は、アマチュアeスポーツシーンにおけるジェンダーの参加率を劇的に向上させ、約300%の増加を達成し、より多用なジェンダーのコミュニティ参加を促すことに成功した。

クレイグ・チョン(Craig Cheon):
『オーバーウォッチ』eスポーツAPACリージョンのプロダクトリーダー。入社以来、オーバーウォッチリーグ、コンテンダーズ、そしてワールドカップに関連する『オーバーウォッチ』eスポーツプロジェクトの監修を担当。2023年には、その実績が認められ、APACリージョン全体の『オーバーウォッチ』eスポーツプロダクトリーダーに抜擢され、OWCSアジアプログラムの立ち上げを主導。プライベートでも熱心な『オーバーウォッチ』プレイヤーであり、競技モードは累計2,000時間以上プレイ(主に使用するヒーローはレッキング・ボールとD.Va)。ゲームだけでなく、バスケットボールも趣味としている。

――『オーバーウォッチ』並びに『オーバーウォッチ 2』について、歴史やゲーム内容について教えてください。

ベイリー『オーバーウォッチ 2』は競技的な対人的なゲームとして2022年にリリースしました。リリース以降、競技シーンがかなり充実しているかと思います。最初の『オーバーウォッチ』の時代からも「オーバーウォッチリーグ」としてeスポーツに貢献していて、最高峰Tier 1リーグ、大会に参加できるチームを育成させるという意味合いで「コンテンダーズ」というリーグがありました。今年から「OWCS」になって世界中のみなさんを一つに繋げることができたと思っているのでそのことについてこれからお話できることが楽しみです。

――本タイトルの競技シーンの変遷について教えてください。

クレイグ2024年になってオーバーウォッチリーグから「OWCS」に変更したことによって今まで以上にプレイヤーのみなさまにeスポーツを体験してもらえると思っています。リージョン的には北アメリカ(NA)とヨーロッパ・中東・北アフリカ(EMEA)、アジア(APAC)、アジアの場合は、韓国と日本とパシフィックという3つのサブリージョンに分かれています。さらにそのサブリージョン毎に適した大会を提供できるように調整しているので、より体験しやすいようになっていると思いますし、そこで各リージョンが大会を行って、そしてその勝者たちが大会で戦って、そこから更に世界大会「DreamHack」で戦うという構図を作ったので本当にいろいろな人が世界の頂上を目指せるようなシステムになっていると思います。

ベイリー一つ付け加えるとするとオーバーウォッチリーグ時代は「西地区」「東地区」と分かれていてみなさんが年間を通して全員と会う機会があまり無かったのですが、今回の「OWCS」のシステムになったことで各リージョンと各サブリージョンがそれぞれ自分たちの選手を育成できるようになりましたし、地域ごとに切磋琢磨し合って、そこから全体的なeスポーツのシステムに組み込まれてDreamHackに行くということで『オーバーウォッチ』だけのエコシステムだったリーグ時代と異なり、今回はもっとeスポーツ全体を網羅するような形になっており、よりアクセスしやすい、より健全なシステムになっていると思います。

――競技シーンの盛り上がりを醸成するにあたり、行っていることや国ごとの違いなどがあれば教えてください。

ベイリーアメリカとEMEAのリージョンとしては「チームファーストではなくプレイヤーファーストである」という目線があるので選手が心地よくプレイができたり存在感を示せるような作りになっています。さらにアメリカではコンテンツクリエイターや配信者でもかなり上手な人がいるので彼らがもっと競技シーンに貢献できるようなコンテンツを作れるようなプログラムもデザインしています。

クレイグ日本についてはチームに焦点をあてるために大会の作りを相当作り込みました。欧米と違ったアプローチで「予選大会は誰でもエントリーできるよ」という形で間口を広くして、予選大会を勝ち抜いた8チームが「日本の8強」ということで彼らをステージ2で総当たり戦にし、見ている視聴者の前で素晴らしいパフォーマンスをしてもらう形にしました。さまざまなストーリーを産み出し、視聴者からは良い反応を頂けたと思います。

リージョン、サブリージョン毎に大会の開催方法も少し変更しています。日本が全リージョンの中で唯一午後7時開始となっています。選手の多くが仕事を持っている方なので、仕事が終わって帰宅をした後に「『オーバーウォッチ』で戦おう!」というニーズに応えるために日本だけ特例として午後7時開始にしています。

ベイリー「OWCS」のシステムそのものが欧米とアジアで違っていて、アジアでは長めのステージを2つ用意しているのに対して、欧米では短めのステージを4つ用意しており予選を多くして勝ち上がる機会をさらに増やしています。また各プレイヤーにサーキットポイントというシステムを導入し、サーキットポイントの成績によって国際大会への出場チャンスも与えています。アジアに比べて欧米ではメンバーの規律がちょっと緩めになっているのでお互いがチーム間を移動してお互いが納得のいくチームを作っていけるシステムになっています。アマチュアレベルの「FACEITリーグ」はランク別にディヴィジョンを作っているので各プレイヤーの現在のスキルに応じたチームで戦えるようになっているので欧米ではそれがかなり人気になっています。「OWCS」に参加できなくてもチームに入ってチーム戦で戦えるということで皆さん楽しんでくれているようです。

クレイグ「OWCS」のシステムの美しいところは各リージョン・サブリージョンに地域の人たちに寄り添った形ができることです。日本についてはエコシステムを創り上げようとしているので、かなり分かりやすく“総当たり戦”から甲子園のような“プレイオフ”にしました。「チームを推す」「チームの勝敗で盛り上がる」というのはチーム間を頻繁に移動する欧米とはまた違ったストーリーが生まれると思いますし、草の根運動的な部分でいくとWDG JAPANもいろいろと頑張っていますし、今回募集をしている「みんなのe運動会」も日本での参加チーム500チームを目指しています。日本のeスポーツシーンが『オーバーウォッチ』を通して活性化していることはすごく嬉しく思います。

――日本リーグが様変わりしたと話題になっていますが、どのように変化させましたか。またその狙いを教えてください。

クレイグ今回の「OWCS」のステージ2で初めてオフラインでの決勝を行うことにしたのが大きいと思います。さらに「esports Style UENOでオフライン大会を開催します」と告知をしたところ、2分でチケットが完売してしまいました。ファンのみなさまに会えるということに対して私たちもとてもワクワクしています。今回勝ち残ったLazuli GamingとNyamGamingの2チームは「OWCS ASIA」に参戦し渡韓してアジアチームと戦うということで日本のチームを海外の大会に招待することも新しい試みかなと思っています。

――韓国の会場はどこになるのですか?

クレイグ決勝戦は、韓国の国が運営している「釜山eスポーツスタジアム」です。従来の「コンテンダーズ」(北米、欧州、韓国、中国、オーストラリア/ニュージーランド)の韓国の決勝大会も行われていますし、韓国のゲーマーの間ではeスポーツの聖地のひとつとして名が知れ渡っている会場です。

――日本、アジア、そして世界でのさらなる目標について教えてください。

ベイリーまずはどのリージョンに関しても「多くのプレイヤーに参加して欲しい」という想いが第一にあります。『オーバーウォッチ』のeスポーツシーンに何らかの形で触れていただきたいです。参加したい人が参加できる環境をきちんと作っていくことが第一優先になっています。『オーバーウォッチリーグ』からシフトするにあたり「今も『オーバーウォッチ』のeスポーツは健在で、より遊びやすくなり、参加しやすくなった」ということをきちんと発信をして、ユーザーのみなさんとのエンゲージメントをもっと強固なものにしていきたいです。

クレイグ日本も間口を広くして「チームを組めれば誰でも参加ができる」という形で予選に参加してくれるユーザーの数を増やしたいですし、カジュアルなユーザーの方にも気軽に大会に参加してもらって楽しんでもらえるような機会を作っていきたいと考えています。極端な話、友達4人とチームを作って「てっぺんを目指そう!」という簡単な方式にしたことによって、『オーバーウォッチ』の休眠ユーザーや元プロリーガーが戻りやすい環境にもなっているのかなと思います。

ベイリー欧米の元リーガーの方も新しいシステムの中で楽しんでくれていて『オーバーウォッチ』をいろいろなゲーマーの方がまたプレイしてくれていることを実感しています。「コンテンダーズ」や『オーバーウォッチ』リーグ時代に比べると、今の方が競技シーンに戻ってきやすい環境にはなっています。

クレイグ昔はプロチームと契約しないと競技シーンに入れない形だったのですが、現在は障壁なく人を集めれば大会に参加することができます。特に日本に関しては、今までのシステムより断然アクセスがしやすくなっていると思います。日本専用のサブリージョンを作り、日本人のスタッフが運営して、日本語が通じる環境での大会ということで言語の壁がなくなったことで、参加のハードルはかなり下げられたと思います。

ベイリー欧米の場合、一番の違いは“機会”が増えた、ということです。昔のリーグ制の時は「リーグのチーム」か「コンテンダーズのチーム」と契約ができなかったら、長期間競技シーンに関われないような形になってしまっていたのですが、現在は機会が増えましたし参加できる試合数も増えましたので「いつでも大会に参加できるよ」という形に近づいていると思います。FACEITリーグや大学サーキットなどいろいろな戦える場所を用意していますので「プロチーム/コンテンダーズのチームと契約できなかったら、一年間は何もない」といった時代から比べると、選択肢も大会も多いので競技シーン全体が向上されていると思います。

――「オーバーウォッチ チャンピオンズ・シリーズ」として、近年のeスポーツシーンの良いところや更に盛り上げたい点について教えてください。

ベイリーフォーカスをしている部分としては「みんなが参加できる」、そして「インクルーシブ」な世界を創るという点が挙げられます。『オーバーウォッチ』のゲーム自体も多様性が高いゲーム性になっているので「『オーバーウォッチ』は誰でも楽しめるよ。どんな人でも楽しめるところがあるよ」という部分で盛り上げていきたいです。「競技シーンが大好きで、他の人とランクマッチをすることが楽しいんだ」という人が一番楽しめる場所を提供していますし、「上手い人のプレイを観ることが好きだ」という人に対してはトーナメントの配信などを通してトップレベルのプレイを提供できていると思います。「どんな人でも『オーバーウォッチ』を楽しめる」ようないろいろな方法を模索して、提供していきたいと考えています。

クレイグ日本については大会を通じた面白い話題、大会を通じたプレイヤーやチームの成長の話がもっと出てくるといいなと思っています。例えばステージ1のナメクジブラザースのNOZL選手は本当に『オーバーウォッチ』が大好きで、会社員と両立して頑張って活動してくれています。会社の一日の仕事が終わった後に『オーバーウォッチ』をプレイしてくれているので、たまに残業をしなくてはいけない状況になり、試合に遅れて1マップ目に間に合わなかったとか、仕事の都合で出張中に「ホテルのとても狭い部屋からノートPCで参加したよ」と彼がXでポストをしたところ、それが世界中でバズったりしていました。このような素晴らしいプレイヤーの物語をもっと作りたいし、もっと世界に発信していきたいと思っています。またta1yo選手やTQQ選手のように参加している全ての大会を配信してくれている方もいます。そういった配信なども通してもっと物語を紡いで、もっとコミュニティとエンゲージメントを増やしていきたいと思っています。

――日本の『オーバーウォッチ 2』競技シーンをどのように盛り上げたいと考えていますか。新規層のプレイヤーや観戦者に向けた施策などがあれば教えてください。

ベイリーやはりTwitchやYouTubeへのドロップシステムです。「◯◯時間視聴するとゲーム内でスキンやグッズがもらえる」といった形で「OWCS」の大会の視聴者を増やしながらも、ゲーマーの方にも楽しんでもらえるような施策を作っていきたいです。競技シーンを視聴することで、今までは観戦勢だったユーザーが「面白そうだから自分もゲームをプレイしてみよう」と『オーバーウォッチ』のユーザーになってくれる可能性もあると思いますし、他人のプレイヤーの上手なプレーを見て、それを自分のプレーにも反映させて、そしてプレイが向上する……といったサイクルも生まれてくると思います。欧米のFACEITではランク毎に分かれているので自分のプレイの良し悪しに対して何も怖がることなく大会に参加することができるようになっています。

クレイグ日本については韓国のサーキットも日本語に翻訳して配信をしています。韓国サーキットで活躍しているZETA DIVISIONとCrazy Raccoonの2チームもありますし、日本のファンとも積極的に交流をしようとしているので、日本での注目度がさらに上がってくれるといいなと思います。また「STAGE:0(ステージゼロ)」の高校生大会で優勝したチームを「OWCS」の総当たり戦に組み込んだことも初の試みでした。それ以外にも「みんなのe運動会」やWDG JAPANのように日本コミュニティと協力しながら毎月オフラインイベントを開催できるように草の根活動も進めています。そういった活動から新しいプレイヤーやファンを増やしていければと思っています。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

ベイリー日本のファンのみなさまは、本当に熱量が高いと感じています。見ている私たちを鼓舞しているように感じます。日本のファンの熱気は欧米でも話題になるほどです。「OWCS」の度に日本チームが参加してくれて本当に光栄だなと思っています。次回の「OWCS ASIA」であなたの推しチームが勝ち残ることを祈っています。GOOD LUCK!そしてなによりも『オーバーウォッチ』のファンでいてくれて本当にありがとうございます。

クレイグ「OWCS」の日本が開催されることによって、日本のファンのみなさま・コミュニティから本当にとてつもない量のエネルギーを頂きました。プレイヤー、配信者、コミュニティからそれぞれ本当に素晴らしい物語がどんどん出てきているので「OWCS」を誇りに思っています。日本は「OWCS」のシステムの中で最も成功しているリージョンのひとつではないかと思っているのでコミュニティのみなさん、本当にありがとうございます。これから先、今回のステージ2の終わりから来年に向けてより良くしていきたいと思っています。日本から「OWCS」の頂点に辿り着ける人たちが出てきてくれることを期待しています。

《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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