1990~2000年代、さまざまなコンピューターRPGが生まれ多様化が進んだ
コンソールハードが8bitから16bit、そして32bitへ進化し、PCがさまざまな国産PCの群雄割拠からPC/AT互換機、そしてWindowsマシンへと移行する中で、ハードウェアの進化によりゲームからさまざまな制限が取り払われました。
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例えば『ドラゴンクエストVI』(1995年)では「ふくろ」が登場し、アイテムインベントリのリソース管理をほぼ気にせずに長期的な探索が可能となりました。またメッセージを「思い出す」機能が追加されたことで、プレイヤーがメモを取る必要性も減り、プレイヤーの負担は減っています。
但し、そういった負担の面で難易度を下げた分、「戦闘」の難易度は上がっている印象があり、場違いなベギラマを放つストーンビースト、やっとの思いで倒したと思ったら本気モードを仕掛けてくるムドー2連戦、海底宝物庫でプレイヤーを惨殺するキラーマジンガ様2体などが印象に残ったプレイヤーも多いのではないでしょうか。
マスクパラメーターを多用した『サガ』シリーズと攻略本、マニアックなユーザーの熱意が生み出した攻略サイト
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1990年代には野心的なコンピューターRPGも数多く登場しました。『サガ』シリーズはその代表格で、このシリーズにはゲーム内には表示されない「マスクパラメーター」が数多く採用されていることが特徴的です。
特に『ロマンシング サガ2』(1993年)では圧倒的な防御力があると見せかけて実際には特定属性以外にはほとんど機能しないような「最強の帽子」「超銅金の盾」や、技を閃くための条件、魔力以外にも呪文威力に関わる「理力」などこれらの要素をネットを始めて、攻略サイトで初めて知った!という方もおられるのではないでしょうか。
それらの謎や元々のゲーム自体の難易度の高さ、そしてゲーム内では表現されないグラフィック面(キャラクターイラスト、装備のイラストなど)を求めて、攻略本も多数制作された時代でした(特に当時のスクウェア作品では「基礎知識編」「冒険ガイドブック」など、1つの作品に対して複数の攻略本が出ることも珍しくありませんでした)。
また、特にインターネットの隆盛以降、これらの攻略本でも触れられない、あるいは正確な情報が記載されていない「マスクパラメーター」の謎を解き明かすために、マニアックな攻略サイトも多数生まれました。
「ヘイトコントロール」の誕生と、「短期リソース集中」による戦闘傾向の変化
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技術の進歩によって新たに生まれた難易度要素も登場しました。その1つが「ヘイトコントロール」(戦闘中に各キャラクターが取った行動によって、敵の攻撃ターゲットが変化する)で、これを最初に導入したのはPCオンラインRPG『EverQuest』(1999年)と言われています。後にオンラインRPG『ファイナルファンタジーXI』(2002年)に同様の概念が導入され、職業によって「タンク」「アタッカー」「ヒーラー」などのロール(役割)が、より明示的に求められるようになりました。後にこの概念はオンライン・オフラインを問わずさまざまなコンピューターRPGで踏襲され、コンピューターRPGの難易度を決める要素の1つとなっています。
「大量の戦闘」から「1戦1戦の重み」へ
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また、「リソース管理」については「キャラクターの完全回復が可能なエリアまでの往復を前提として、長い探索を見据えた長期的なリソース管理」から、「短期間(戦闘1回)でも持てるリソースをつぎ込んで優位に立つ短期的なリソース管理」を行うように調整されたコンピューターRPGも多数登場しています。拠点と3D迷宮の往復から、3D迷宮内サバイバル(休憩はいつでも可能)へと生まれ変わった『ウィザードリィ Bane of the Cosmic Forge』(1990年)はそのはしりとも言えます。
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国産コンピューターRPGではタイムライン制の戦闘を採用し、いかに敵の行動を防ぐかが重要な『グランディア』(1997年)や、「プレスターンバトル」によって敵の弱点を突いて行動回数を増やす(そして敵の攻撃を耐性で防ぎ行動回数を減らす)のが重要な『真・女神転生III』(2003年)などは、短期的リソースをつぎ込んで戦うRPGの代表格と言えるでしょう。