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「中華ゲーム見聞録」第60回目は、ろくろを回して粘土の形を整え、色や模様を付けてオリジナルの陶磁器を作製できる陶芸シミュレーションゲーム『陶芸マスター(陶芸大師)』をお届けします。
本作はAZGamesによって、11月11日にSteamで早期アクセス版が配信されました。AZGamesは個人デベロッパーで、会社勤めをしながらゲーム開発をしているとのこと。開発者は高校生のころからゲーム開発を志し、『XOPE』というFPSゲームの開発に取り組んでいました。その過程はbilibili動画で観ることができます。
開発者によれば、勤めている会社の仕事が忙しくなり、ゲーム開発に割ける時間が少なくなったそうです。また開発中の『XOPE』で作り直しレベルの大きなアップデートも行われ、さらに時間が無くなっていきました。
この二つの問題を何とか打破するため、「比較的短時間で作れるライトなゲームを開発し、その資金を『XOPE』の開発に当てられないか」と画策しました。最初は物体を変形させるゲームのデモを作ったそうですが、そののち中国の伝統文化である陶芸から多くのインスピレーションを得て本作を開発し、Steamでの早期アクセスに漕ぎつけたとのことです。
本作の内容ですが、プレイヤーは陶芸家となり、オリジナルの陶磁器を作っていきます。その過程は実際の陶磁器作成と同じく、まずろくろを回して粘土の形を整え、そののちに窯で焼き、色や模様、釉薬を付けてから再加熱して完成させます。
出来上がった陶磁器を展示会に出品し、入場料を得たり、来場者に売ったりなどといった経営シム要素もあります。得たお金は、陶磁器をカスタマイズするための色や模様の購入に利用可能。人気が出れば展覧会の来場者も多くなっていきます。さっそくプレイしていきましょう。
ろくろを回して陶磁器を作ろう!
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本作はミニゲーム的なものかと思っていましたが、ゲームをスタートすると映画のオープニングを思わせるようなムービーが流れ、本作に対する開発者の熱意や作り込みが感じられます。グラフィックもリアルできれい。これはかなり期待できそうです。
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机の上に置き手紙がありました。おそらくこの陶芸館の館長からでしょう。日本語が変な部分もありますが、意味が分からないレベルのものはないのでプレイに支障はないかと思います。館長は長い間帰ってこないようで、その間の経営をプレイヤーに任せるとのこと。任されましょう。
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まずはチュートリアルから。指の形をしたポインタを使って粘土を上方向へ何度もドラッグすることで、粘土が形を変えて上へと伸びていきます。
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高さが出てきたところで、今度は横方向にドラッグ。何度もドラッグすると粘土にくびれが作られていきます。画面右に並ぶ形状を変更すれば、角ばった形など好きな形に変形させることもできます。
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へこんだところを、今度は逆にドラッグして膨らませてみました。直感的に操作できるのがいいですね。なんだか変な形になりましたが、「とても良い!」と褒められました。
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形ができたら、次は窯で焼き上げます。ここはミニゲームになっており、画面下にあるバーの菱形マークが左から右へと動いていきます。プレイヤーはバー上の炎マークを動かし(右クリックで右移動、左クリックで左移動)、菱形マークを追いかけます。
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菱形マークはバー上の3カ所で止まります。そのときに炎マークを菱形のそばに長くとどめられれば、仕上げ時の評価が高くなります。ただ炎マークを動かすときに慣性が働くのでコントロールしづらいです。
作品を展示しよう!
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焼き上がりはしましたが、このままではさすがに作品として成り立ちません。色を塗っていきましょう。色の濃さが不均質なところがリアルですね。筆を何度も上下に動かすことで、色を濃くしていくことができます。最初は使える色が限られていますが、お金を貯めることによってストアで新しい色を購入することができます。
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完成したら、作品に名前を付けます。日本語入力でも大丈夫のようですね。分かりやすいように「初作品」と名付けておきました。釉薬も何もなしで、本当に色を塗っただけの素焼きの作品です。
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ゲームのメイン画面となる「ショールーム」。ここに自分の作品を展示できるのですが、ブースはまだ一つしかありません。お金を貯めることで買い足していくことが可能です。それと画面左上の「1」はプレイヤーのレベル。作品を作ることによって経験値を得、レベルアップしていきます。
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ブースに先ほど作った作品を飾りましょう。新しい作品を作ったときにブースが足りない場合は、すでに展示されている作品と取り替えることができます。さて、こんな作品で客は来るのでしょうか。
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展示会が始まりました。しばらく待ってもなかなか客が来ない……と思ったら、1人来てくれました。結局この日の来場者は4人だけ。最初なのでこんなものでしょう。
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チュートリアルはこれで終わり。次からは自分でオリジナル陶磁器を作ります。大きめのものを作ってみたかったので、横方向へと膨らませてみました。口の部分は丸みのあるシェイプにしています。また粘土の種類も選べるようになったので、赤色を使ってみました。
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焼き上げたあとは釉薬を塗って表面に光沢を出し、模様を付けていきます。模様の種類もショップで購入することで増やしていけます。
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模様の線の色を変えたり大きさを変更したりなど、かなり自由なカスタムが可能。コピー&ペースト機能もあったりと、やけに充実しています。
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模様以外にも、ワンポイントのマークを付けることができます。あれこれいじり続けた結果、画像のようなデザインで落ち着きました。鳳凰(?)のマークはちょっと色が強いので、もう少し落ち着いた感じの色に変更しています。
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最後にもう一度焼いて完成。釉薬のテカリがいい味を出しています。青いので何となく「青龍」という名前を付けてみました(龍はいませんが)。完成後に評価が出てきますが、技術格付けが4.6点、級別はCランクとのことです。
感性の赴くままに作ろう!
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ゲームには受信トレイがあり、メールが入ってくることがあります。初めてのメールは館長からで、500元もらえました。お金をもらえるイベントが多いので、こまめに覗いておきましょう。
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作り方がわかってきたので、思うままにどんどん新作を作っていきます。先ほどは大きな作品だったので、今回は細めの花瓶状のものを作ってみました。こんな形も工夫次第で作れてしまうのが素晴らしいですね。
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ショップを覗いてみましたが、カスタム用の素材はどれも値段が高いですね。ブースを買うお金も貯めなければならないですし、金策が結構大変です。
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弥生土器にありそうな高杯をイメージして作ってみた作品。釉薬を使わずに素焼き感を出しています。本当にどんな形にもできますね。
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茶器のようなものも作ってみました。しかしちょうどいい模様がなくて日本っぽさを出すことができません。
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複雑な形状にトライしてみた作品。民族工芸品にありそうなプリミティブな雰囲気を意識してみました。
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プレイヤーのレベルが5に達すると、禁断の扉である「外部画像の使用」がアンロックされます。「痛車」ならぬ「痛陶磁器」が爆誕する瞬間ですね。ここで編集部からスパくんの画像を3枚調達。そのうちのひとつでは、陶磁器との一体感を表現してみました。
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2枚目はノーマルなスパくん。イラストの上下に装飾を入れて可愛い感じに仕上げてみました。
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そして3枚目は、何を思って描いたのかわからないイラスト。JPG画像なのでそのまま貼り付けると背景の白い部分も一緒に表示されます。幸いPNG画像の透過が適応されるので、PNGに変換して透過処理をしておきます。
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完成品がこちら。毒々しさを表現してみました。正直目の前にあったら触りたくないですね。
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全部並べて展示会をしてみたところ、来場者150人と思いのほか来てくれました。しかも「2000元でゆずってほしい」というメールも(ゆずりませんでしたが)。どうやら好評だったようですね。このまま「陶芸マスター」を目指して頑張っていきましょう。
自由度の高い陶芸シム
本作を遊ぶ前はネタ的なミニゲームかと思っていたのですが、予想をはるかに超えるクオリティのクリエイティブツールでした。陶磁器の形も自由に変更可能ですし、外部画像も複数導入して組み合わせられるので、自分の理想の陶磁器(があるかどうかは知りませんが)を追い求めることができます。
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完成した陶磁器はデータファイルとしてエクスポート可能。ゲームをインストールしたフォルダ内の「Works」フォルダに「.pottery」の拡張子でエクスポートされます。それを「Collection」フォルダに入れれば、鑑賞モードで鑑賞することができます。フレンドとデータのやり取りをして楽しめますね。
早期アクセスにしては完成度の高い作品で、インディーゲームらしさのある尖った一作。今後の発展にも大いに期待できそうです。陶芸に興味のある方、オリジナルの陶磁器を作ってみたい方は、ぜひとも本作をプレイしてみてください。
製品情報
『陶芸マスター(陶芸大師)』
開発・販売:AZGames
対象OS:Windows
通常価格:410円
サポート言語:日本語、中国語(簡体字)、英語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1160490/_/
※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。台湾在住。母は台湾人。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。