システム・描画もコンパクトに安定
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2019年のタイトルとしては手堅いレベルのグラフィックですが、アートワークの色彩でプレイヤーを飽きさせず、単なる描画性能では測れない価値を生み出しています。結果として本作は動作が軽く安定しており、あまりにもおかしなバグに出会うこともまずありません。
ユーザーインターフェースやメニューも使いやすく、特に『バイオショック』と比較されることも多いように、妥協しないアートスタイルでデザインされている点は好印象でした。敢えて注文を付けるとすれば、アーカイブにあたるメニューの未読を管理しにくい点でしょうか。
反対に、システムをコンパクトにしたことで犠牲となってしまった側面もあります。特にアイテム・装備類は驚くほど切り捨てられており、愛着を持ちづらいのです。見た目を重視した装備も用意されてはいますが、性能的には厳しいものとなっています。戦闘に適した装備ともなると、宇宙映画にでてくる一般兵のような風貌になってしまい個性が生まれません。
生活系コンテンツを薄くしているため、そもそもそうした遊び方が適していないといえばそれまでですが、名前のある武器の性能がたいていの場合オマケのような状態で、コレクションの域を出ていないのが残念でもありました。
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サウンドとミュージックはあまり印象に残りません。そもそもカットシーンも極めて少なく、映画的な手法を取っていないので必要ないとも言えますが、ちょっと寂しいところですね。タイトル画面からしてほとんど音がない状態に近いので、仕方ないのでしょうか。
とはいえ、やはりメインコンテンツたる会話音声は圧倒的です。日本語では字幕のみの対応であり、翻訳はあまり褒められた品質ではないのですが、サブクエストで見られるブラックジョーク満載のイベントはぜひ体験してもらいたいと思います。
愉快な仲間達でも、ハードボイルドでも
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仲間達と宇宙を駆ける物語の中では彼らとの会話も多く発生します。その内容が実質的に一本道であったとしても、プレイヤー自身の話を聞く態度さえ選べるのは嬉しいところです。
いっつも軽口を叩いて飄々と難局を切り抜けてしまうキャラクターを演じることだってできます。でも、いざ真面目な話となるとじっと黙って聞きに徹する……そんな設定だって活かせる訳です。
仲間以外には怖い態度を取るキャラクターでもいいですし、またその逆で仲間に厳しい自分でいることもできます。どんな態度を取ろうと、仲間のひとりひとりは抱えている問題へ力強く進もうとしていることには変わりありません。
物語を通して矛盾なく自分のキャラクターを演じることも面白いのですが、身近なキャラクターとの深い会話から、主人公がどのように影響されていったのか……と想像を膨らませるのもまた、贅沢な遊びではないでしょうか。
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様々な背景を持つ仲間と出会い、共に旅をし、時に意見をぶつけ、時に互いの為に戦い、譲れないところは貫き通す。そんな彼らの旅は、またそれぞれの孤独な道へと枝分かれしていきます。
少年漫画を読み終えたかのような印象すら覚えるほど、その構成は王道だったと言えるかもしれません。そう言った意味でも古典的RPGらしさを感じさせてくれるのが『アウター・ワールド』という作品なのです。
総合評価: ★★★
良い点
・プレイヤーの意図を反映する良質な会話の選択肢
・上手に割り切られたシステム
・戦闘に理由を持たせられるスキル構成
・現実的ながら前向きな可能性を残したプロット
・「取り返しがつかないもの」を楽しめる余地
悪い点
・最序盤の苦しさ
・サウンドの印象が薄い
・翻訳の品質が良くない