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今回は2020年5月2日にKirisame JumpよりPC(Steam)向けにリリースされた『Iwate Mountain Dance』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Iwate Mountain Dance』とは
本作は、岩手県を舞台にしたアクションゲーム。ザコ敵は存在せず、マップ上に存在しているエリアごとのボスを次々と倒し、岩手の山の頂上を目指していく作品です。ボスの攻撃はとても激しく、いわゆる「弾幕」系の難易度の高いものばかりです。
同デベロッパーでは『東方Project』シリーズを題材にした『RAIN Project - a touhou fangame』も配信しており、こちらもドット絵を生かしたアクションゲームになっています。戦闘途中に現れる「スペルカード」演出など、本作も基本的なフォーマットは同じものを使用しているようですが、オリジナルの題材であることと複雑なボス戦のみで構成されているのが大きな違いです。
『Iwate Mountain Dance』の実内容に迫る!
プレイヤーである若い巫女は、ある日強大な力を持つ司祭に呼ばれて一つの仕事を命じられます。それは「岩手県に向かえ」というもの。5世紀前の岩手県には偉大な支配者がおり国を治めていたのだが、今ではその頃の姿を見ることができないため、土地の精霊たちを解放することが目的のようです。
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もちろん精霊たちを解放するというのは力づくで倒すということではなく、彼らの存在や記憶を尊重することであるというアドバイスを受けたあと、主人公は問答無用で岩手県へと向かわされることになります。
到着した岩手の大地で巫女は100年ぶりにこの土地に現れたという奇妙な大男と出会います。巫女に対し「ここの土地の精霊は手強いから戦う準備がないなら帰るといい。もしできていると言うなら……ようこそ!世界で最も美しい場所岩手へ!」などと告げた男は姿を消し、代わりに灯籠から巨大な火の玉が登場して戦闘が開始されます。
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シンプルで奥深い避けの美学!
本作はすべてのボス戦が複数ライフ制で、ライフゲージを破壊することで次の形態へと移行して新しい攻撃方法をしかけてきます。多数の弾を発射する範囲攻撃から追尾攻撃、地面にいるとダメージとなる地震攻撃など攻撃方法は実にさまざま。プレイヤー側は3回ダメージを受けるまでにボスを倒すことが目的となります。
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操作方法はシンプルで、「移動」と空中2回までの「ジャンプ」、時間の流れを一時的に遅くする「ダッシュ」、そして「攻撃」の4種類。攻撃は範囲内に入ったボスを自動的に追尾するため、基本的に押しっぱなしで構いません。敵の攻撃はとても激しいため「ダッシュ」で弾の移動を遅くして攻撃を見極め、確実に攻撃の波から抜け出すのが重要な攻略のポイントです。
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本作には主人公のパワーアップなどの、プレイを楽にしてくれる要素は一切ありません。ボスに何度も挑み、攻撃パターンを体で覚えてプレイヤー自身が確実にスキルを磨いていく必要があります。セーブポイントは各地にあり、ボスに負けた場合は即再開になるので心置きなく「死んで覚える」ことができます。
敵の攻撃は確かに激しく、バラエティ豊かなものですが、プレイしていくうちにだんだん見極められるようになる絶妙なバランスのゲームデザインで制作されています。プレイ感覚としては「どうやって避けるか」ではなく「この行動だけはやってはいけない」のを理解することで、明確に成長を感じられる印象です。
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手強いボスが多数登場!自由な順番で挑もう
火の玉を倒したことで「SPIRIT RELEASED(精霊解放)」となり、岩手の土地を進むことが可能になった主人公。そこには温泉に浸かっている人、酒を飲んでいる人、遊んでいる子供やその子を心配しながら家事をしている母親など、のどかな生活風景が広がっていました。ただし一部の人は少しばかり時代が合わないような感じもあります。
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岩手の土地は自由に探索することが可能で、そこら中に鳥居や大きな温泉などが用意されています。特定の場所を訪れることで、最初に出会った大男と「河童」や「大蛇」などの精霊との会話シーンが始まります。イベント後はマップにインタラクトすることでボス戦が発生し、彼らを解放するための戦闘が発生します。
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最初の方にいるボスは自由な順番で挑むことができるため、少しずつ戦いやすい相手と戦って腕を磨いていくのがおすすめです。ある程度のボスを倒すと新たな道が解放され、今まで以上に手強いボスも登場。ボス戦だけながら数が非常に豊富なため、ボリューム不足に感じることはありません。
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ところで、ボスを倒して精霊を解放することでその場にいた人たちが消えてしまうことがあります。まるで最初からそこにいなかったかのように。蛇と大男の会話の冒頭も、最初はそこまで大きくない蛇でした。どうやら主人公が体験していることには大きな謎があるようです。倒したボスの説明をしてくれる語り部の女性などもおり、世界観をじっくり楽しみながらのプレイにもおすすめです。
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知らなかったなあ!
ところで岩手要素はどこにある?
ところで本作をプレイしていると、そこら中で「IWATE(岩手)」の名前を見るのですが、岩手県在住の筆者としては「岩手県要素はどこだろう」と思ってしまいます。タイトルが『Iwate Mountain Dance』のため、「岩手山モチーフなのかな?」と思いましたがそんな様子もありません。ですが、せっかくなので少しでも岩手らしい要素を(ややこじつけながら)探してみたいと思います。
作中でもっとも岩手らしいかなと思える要素に「河童」があります。ただし、岩手県の河童は色が赤いのが特徴ですが、ゲーム中の河童は緑色です。もっとも赤い河童は岩手県ほぼ独特のもので、海外ではほとんど知られていない存在のようです。ちなみに河童などの妖怪は海外でも"Yokai"と呼ばれていますが、日本同様精霊に近しいものとされているため"SPIRITS"でも間違いではありません。
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また、本作では河童が剣を作っているようです。しかし他県ではいくつか「河童から刀をもらった(奪った)」という伝承があるのですが、岩手ではあまり聞くことがない話です。ただし、刀というのは岩手では大きな意味を持ち、日本刀の祖とも言われる「舞草刀」があるため、岩手要素として組み合わせた可能性があります。
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採石場で戦闘することになる巨大蟹を見てみましょう。蟹の妖怪というと有名な存在に「蟹坊主」がおり、これは全国で伝承される妖怪です。岩手県にも一関市に問答を仕掛けてきた蟹を僧侶が鉄扇で退治する伝承が残っています。また、蟹が攻撃に使用してくる巨大な腕は、大男伝説と解釈するべきでしょう。山で巨人を見たというのは全国的に伝わるものですが、岩手県にも目撃の伝承がいくつか残されています(名前が残っているレベルの有名な巨人伝説はほとんどありませんが)。
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作中で「蛇が温泉を作った」という話がありますが、これは大きく解釈すると「蛇が水たまりを作った」とも考えられます。そうなると、秋田岩手青森の三県をまたがる大蛇伝説である「八郎太郎」と「辰子姫」の話が連想されます、元は人間だったものが大蛇へと姿を変え、十和田湖や八郎潟などの水場を作り上げた伝承です。秋田で主に語られる伝説ですが、岩手も関わりがあるためこれをモチーフにしたと考えることもできるかも知れません。
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と、ここまで色々解釈してきましたが限界です。他のボスに関して岩手県の伝説で関連付けられそうなものがもう思いつきません。
目目連のような壁に目が出てくる妖怪に関しては岩手で伝承がありませんし、太陽のようなボスに至ってはモデルも思いつきません。二人組の少女のボスを座敷わらしと呼ぶことも考えたのですが、洋装だったりもしたので断念しました。もっとも、近年の座敷わらしは洋装で登場することもあるらしいのですが、そもそも戦闘するのが屋外なので……。
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しかし、すべてが考察を必要とするようなものではなく、作中のNPCが売っている「岩手の有名なりんご(岩手県はりんご生産量が全国4位)」など、デベロッパーが岩手で有名なものの勉強をしている様子はいくつか発見できます。
もしかしたら筆者が把握できなかっただけで、すべてのものにモデルが有るのかも知れません。在住の人間ながらわからなかった部分が多かったのはデベロッパーの方々に申し訳ないと思わざるを得ません。今後もう少し岩手要素を見つけられるように研究したいと思います。
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岩手要素のさらなる考察はほどほどにして、ここまで紹介してきた『Iwate Mountain Dance』ですが、強力な弾幕バトルで一見無茶そうな戦闘でも、少しずつプレイヤースキルを上げていけばいつかはクリアできるくらいの良好なバランスで作られています。シンプルな操作と自動追尾の攻撃でプレイに集中しやすいのも遊びやすさを支えている大きなポイント。
日本を舞台にした風景も魅力的で、登場する精霊もどこかで見たような妖怪モチーフで親しみを覚えるものが多めです。また、本作にはボス戦ごとに豊富でノリのいいBGMがあり、スピード感のある戦闘を見事に盛り上げる要素として存在しています。デベロッパーが『東方Project』のファンということもあり、得意な分野を生かしている印象です。
ボスを倒して消えてしまう人々の存在や、謎の大男のやっていることなど、多くは語られないながら考えさせられるストーリーもプレイヤーへと訴えかけてくるものがあります。探索中に誰もいなくなってしまった場所へ行くと、なんとも言えない寂しさとどことない美しさを感じずにはいられません。
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弾幕アクションと親しみやすさを両立させている本作は、少し骨のあるアクションゲームが遊びたいプレイヤーにおすすめです。
タイトル:Iwate Mountain Dance
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2020年5月2日
記事執筆時の著者プレイ時間:5時間
価格:1,220円