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2020年8月27日から30日の3日間、オンライン上で開催されたgamescom2020にてデモが公開された作品を【gamescomの気になるデモ版プレイレポ】としてピックアップ。今回はポーランドのインディー・デベロッパーAnshar Studiosの新作RPG『Gamedec』のデモ版プレイレポートをお送りします!
サイバーパンクな世界を「ゲーム探偵」として生きる
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本作は、22世紀の世界を舞台にしたサイバーパンクRPG。プレイヤーはバーチャルワールドのなかで起こる事件を解決する「Gamedec」として、様々な事件の調査を生業としています。「Gamedec」とは「game」と「detective」を組み合わせた造語で「ゲーム探偵」の意。ある日、主人公は大企業の経営者ジョフリー・ハギスから息子フレドがバーチャルワールドにダイヴしたまま、何日も戻ってこないため調査をしてほしいという依頼を受けます。
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まず最初に目をひくのは、はるか遠い未来を舞台にしたSF的サイバーパンクな世界観でありながらも、同時にレトロフューチャリズムを感じさせるユニークな世界観です。ハイテクとローテクの絶妙な組み合わせを持つ多種多様なインテリアやデバイスが、冒険心をくすぐりますね。
個性豊かなNPCたちから、巧みに手がかりを引き出す
操作はポイント&クリック方式で、画面上の様々なオブジェクトやNPCにインタラクトして情報を集め、事件の真相へと迫っていくというものです。冒頭から非常に豊富なテキストが用意されており、様々な固有名詞が矢継ぎ早に飛び込んできて、その世界観の深さに圧倒されます。
ゲームは主人公の自宅からスタートし、まず「Gamedec」としての設定を決めていきます。ここで選択する項目がすでに一風変わったもの。通常の作品ならば、名前を決めたり容姿を決めたりとなるのが一般的でしょうが、本作の場合、舞台となる都市のなかでも上流階級か下層階級の出身なのか、前職はどのようなものだったのかなどを決めていきます。
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ここでどのような職を選択するかで主人公が行使できるスキルが決定され、今後の捜査での選択肢が異なってきます。体験版で選べるのは「スリーヴス」「インフォテイナー」「グレイジャー」「スカルペル」の4つでした。
説明文によると「スリーヴス」が「闇世界とのつながりをもつ人物」、「インフォテイナー」が「バーチャルワールドで活躍するタレント」、「グレイジャー」が「バーチャルワールドの手品師でありエンジニア」、「スカルペル」が「豊富な医療知識を備えた医師」とのこと。それぞれが得意な専門分野を持ち、それらを駆使して操作を進めていくという流れのようです。
大量のテキストと豊富な選択肢が用意されていて、ゲーム展開の幅は多彩なものであることが予想されます。ただし、この点を魅力に感じる方もいれば、面倒臭く感じる方もいるのではないでしょうか。正直なところ、膨大なテキストを読んで内容を整理していくだけでもひと苦労で、一定の根気が必要かもしれません。しかし、実際に探偵になったような気分で、自分ならどうするかを考えながらゲームを進めていくRPGらしさを楽しめます。
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個性豊かなNPCたちとの対話を通じて情報を集めて、事件の真相を推理していきます。しかし、情報を集めるほど謎が謎を呼び、事件の全貌がどのようなものなのか、その謎がどこへつながっていくのかという先の展開に引き込まれます。
「Gamedec」としてサイバーパンク世界を冒険する一方で、それなりの量のテキストを読んでいくため、RPGでありながらビジュアルノベルとしての側面もあります。筆者個人の印象としては、「The Game Awards 2019」で「Best Independent Game」などをはじめ四冠を果たした『Disco Elysium』とゲーム性の類似を感じました。
総評
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デモ版の大きな欠点は、依頼主から情報を集め息子を探しにバーチャルワールドへダイブしたところで、何の前触れもなく唐突にプレイが中断してしまったところです。最初はゲーム自体が落ちたのかと思ったのですが、海外のデモ版プレイ動画でも同様の事が起こっていたため、そういう仕様のようでした。それまでは普通に楽しんでいただけに、歯切れの悪い終わりとなってしまい大変残念です。
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しかし、「探偵」という古典的な物語のデバイスを、サイバーパンクな世界観と「Gamedec」というユニークな設定へと落とし込んでいるという点で、非常にそそられるものがあります。また、NPCたちとの会話における選択肢の多さも魅力で、事件の真相を追いかけながら、その途上で出会う人々の群像劇としても楽しむことができるでしょう。
『Gamedec』はPC(Steam/GOG.com)/ニンテンドースイッチ向けに2021年発売予定。記事執筆時点では日本語未対応となっています。