気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Studio Fizbin開発、PC/Mac/スイッチ/iOS向けに4月9日にリリースされた風刺コメディアドベンチャー『Say No! More』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、とある企業の新人インターンである主人公を操作して、周囲の無理難題すべてに対して「ノー!」を突き付けるアドベンチャーゲーム。「もっと「ノー!」と言おう」と書かれたテープを聞いて、「ノー!」と言える力を身につけた主人公は、本当は「ノー!」と言いたい同僚たちにも勇気を与えながら、今まで意地悪されてきた会社の上司やCEOに「ノー!」を突きつけます。日本語にも対応済み。Game*Sparkではプレイレポも掲載中です。
『Say No! More』は、1,980円(iOS版は610円)で配信中(Steam/App Store)。
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――まずは自己紹介をお願いします。
MariusゲームディレクターのMarius Winterです。Studio Fizbinはドイツのゲームスタジオで、2011年に設立されました。私たちのデビュー作はポイント&クリックアドベンチャーの『The Inner World』で、この作品は「Best German Game」や「German Computer Games Award 2014」といった数々の賞を受賞することができました。それ以来、私たちは「The Elephant」や「KiKAninchen」といったゲームやアプリをクライアントのために開発したり、ミュンスターの博物館から依頼されたユニークなマルチプレイヤーゲーム筐体を作ったりしていました。
2017年に『The Inner World』の続編をリリースすると、私たちは3つの新規IP開発を開始しました。先日リリースされた本作と、まもなくリリース予定の『Minute of Islands』、そして『Lost at Sea』です。また、これら以外にも「Saftladen」と「Kokolores」と呼ばれる場所をそれぞれベルリンとルートヴィヒスブルクに共同で設立し、創造性溢れるインディー開発者たちが集まれる場所となっています。
――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょうか?
Marius2017年、友人のNicolasと私は次にどんなゲームを作ろうかと考えながら、Unityをいじっていました。私たちは自分たちでも笑えるようなものを作りたいと思い、プレイヤーが横暴な人たちに立ち向かいながら「イエス!」「ノー!」「そうかも!」「面白いね。どう思う?」という少ない選択肢からしか答えを選ぶことしかできないというシステムを作ってみました。私たちはすぐに「ノー!」が一番面白い答えだと気づきました。だってよく考えると、私たちが現実では滅多にしない答えですからね。この時、私たちは「ノー!」だけを使ったゲームを作れば面白いんじゃないかと思ったのです。
そして、私たちはプレイヤーが会社のインターンとなり、「ノー!」ということで周りの人をめちゃくちゃにすると言うプロトタイプを作りました。これだけでも、とても笑えましたよ。
このプロトタイプを周りの人に遊んでみてもらうと、このコンセプトが人々に与える思わぬ影響に気がつきました。実際に遊んでみた人たちと話をしてみると、多くの人はこのプロトタイプのことではなく、私たち開発者が「ノー!」と言うことについてどう思っているのか、簡単に言うことができるのか、ということを聞いてくるのです。その時、私たちは自分たちも「ノー!」と言うことが苦手だということに気がつきました!この時、私たちはやっと本作の「本当のテーマ」が何なのかに気がつき、本作がただ笑えるゲームというだけではないとわかったのです。
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――本作の特徴を教えてください。
BrendenライターのBrenden Gibbonsです。本作は一本のゲームとしてとても特徴的だと思います。私たちは、プレイヤーが「ノー!」と言いたいように言える、ということにフォーカスしたゲームを作りました。プレイヤーは、「ノー!」と「激アツ」に言うこともできますし、「冷え冷え」に言うこともできますし、「省エネ」に言うこともできますし、「クレイジー」に言うこともできます。プレイヤーは「うんうん、そうだよね…」と頷いたり、「ハハハハハ!」と笑ったり、「パチパチパチ!」とゆっくり拍手したり、キャラクターたちが話していることについて「うーん…」と反応してみたりできます。また、プレイヤーは自分の「ノー!」をパワーアップさせ、衝撃的な結果を引き起こすことも可能です!
大事なことは、本作はパズルゲームではないということです。ポイントは、リクエストを聞き、どのように答えるか考え、自分の「ノー!」をカスタマイズして、最大限に楽しむということなのです!
Mariusそれに、本作はとても敷居の低いゲームです。とても簡単にプレイでき、ゲーム経験も必要ありません。本作のテーマは普段ゲームをしない人を含め、あらゆる人を対象としているので、これは私たちにとってとても大切なことなのです。
Nicolas本作のリードゲームデザイナー、アートディレクター、コクリエイターを担当したNicolas Maierhöferです。付け加えさせていただくと、本作ではユーモア、資本主義への批判、ポジティブ、狂ったカオスをミックスさせているので、そういった点も本作を特徴的なものにしていると思います。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Marius『とんでもクライシス!』『塊魂』『マッスル行進曲』といった数多くの日本のゲームから影響を受けています。これらの作品は、私たちの欧米の物の偏った見方を解きほぐしてくれて、説明するのが困難で人の想像を超える「普通じゃない」ゲームを作るんだと鼓舞してくれました。日本のゲームは、「私たちに自分たちが作りたいゲームを作って良いんだ、他のゲームと比べなくても良いんだ」と教えてくれました。
Nicolas本作のアートスタイルは『ロックマンDASH』シリーズとその時代の他のコンソール向けゲームから影響を受けています。シンプルなポリゴンとドット絵のテクスチャーを組み合わせたスタイルは、その見た目と高い生産性から、本作にぴったりだと思いました。
Brenden私たちは世界中のメディアから様々なものを取り入れましたので、もちろん日本のメディアも含まれています。本作のライティングをするにあたり、東西のあらゆるものを取り入れました。魔法少女と戦隊モノの変身シーンの影響は明らかですし、映画一本ほどのボリュームであるものの、本作のストーリーの展開はほとんど少年アニメです。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Nicolas他のあらゆることと同様、様々な面で影響を受けました。1人で自宅から作業をしなくてはいけなかったこともそうです。とは言え、全体的に見れば、あまり影響はなかったと言えるでしょう!
Mariusはい、Studio Fizbinには2つのオフィスがあります。そのため、パンデミック以前からビデオコールやSlackを使って仕事をするのには慣れていました。しかしもう一年以上が経ち、早く実際に顔を合わせたいとも思っています。本作もやっとリリースされましたしね!
――本作の配信や収益化はしても大丈夫でしょうか?
Mariusはい。
Brenden私たちは本作の動画や配信を時々視聴しては、プレイヤーたちの反応を見たりしています。本作を楽しんでいただいている姿を見るのはとても嬉しいことですし、視聴者に本作を紹介してもらえるのも嬉しいですね。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Brenden世界のどこで暮らしていても、相手が親しい人であれ、仕事関係の人であれ、「ノー!」と言うのは難しいことです。欧米でも日本の「Karoshi(過労死)」については耳にすることがあり、私たちの文化ではそれほど起こらないものの、ゲーム業界では多くの人にとって過重労働が問題となっています。
私たちはこれが良いこととは思っていませんので、本作を通して、仕事とそうでないものの境界を作ること、他の人と一緒に現状を変えようとする力、そして命の大切さについて知っていただければと思っています。もちろん、本作で描かれているようなシーンのすべてが、実際の仕事場で起こり得るわけではありません。しかし、他の人と一緒に現状を変えようとすることで、世界はより良く、人により優しいものとなっていきます。ブラック企業には「ノー!」を突きつけましょう。
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に400を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。