最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”をモットーに、ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回はVoolgiが開発を、HypeTrain Digitalがパブリッシャーを担い、2021年07月15日に、SteamならびにEpic Games ストアにて、PC(Windows)向けに早期アクセスリリースした美術活動シム『SuchArt: Genius Artist Simulator』について生の内容をお届けしたいと思います。
日本語にもばっちり対応しており、その翻訳のレベルは申し分ありません。本当にありがたいことです……!
『SuchArt: Genius Artist Simulator』とは?
世界観が演出に説得力を生み出している
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時は2130年、場所は地球周回軌道上の国際宇宙都市。主人公は、DNA検査による職業適性が「芸術への才能」を示したことから、とあるスタジオに配属されることになりました。この世界におけるアート分野は、長らく人工知能による首位独走が続いてる状態。ここから主人公は、自身の才能を武器に、その牙城へ切り込んでいく……のか?という世界観に沿って進行する本作。それと同時に地球のロボットたちの間で反乱の機運が高まっていたり、地球外知的生命体が海水を欲していたりと、SF物語としてもなかなか奥行きがあります。
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個人的に、本作の世界観は、ゲーム全体の味付けとして良く機能していると思います。ストーリー、スタジオ、身の回りの品々そしてやり取りする相手……そういった舞台装置をひとつのトーンに馴染ませ、また同時に、演出に説得力を持たせるという意味においても、見事な塩梅だと感じます。
親切な操作設定
さて操作系について触れておくと、本作はFPSスタイルで、コントローラーとキーボード&マウスに対応。設定可能な項目は多く、特にカメラ周りの感度は、酔い防止、そして各プレイヤーそれぞれにとって最良の描き心地が得られるよう、細かく調節できます。
例えば、大きいキャンバスに絵を描くとき。筆を走らせ始めると、カメラが追従してゆっくりと動き、視界が傾いていきます。ところが描くという操作の都合上、どうしても筆は上下左右に移動せざるを得ず、視界が振り回されてしまうのです。そのため慣れないうちは画面酔いしやすいでしょう。実際私も、あともう少しで、お昼に食べたチキンサラダを芸術作品(ソフトな表現)としてぶちまけてしまうところでした。
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そこで、操作中の追従カメラを緩やかするのがこちらの「塗装中のカメラの移動」という親切な項目。初期値は1。バーを左へスライドさせ値を減少させることで、追従を弱めにできます。0にすると操作時のアングルは固定されますね。ただそこまで下げてしまうと、それはそれで突然の制動に違和感を覚えてしまうので、私は少しだけ追従性を残しています。(わがまま)
今後のアップデートで期待したいこと
設定まわりの話でもう少しだけ。今後のアップデートで、もし可能であれば、オンオフ機能として是非追加してもらいたいのは、「筆の位置から線を描けるようにする機能」です。
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現状、たとえば筆で線を引こうと操作すると、画像のように、筆先の位置から始まるわけではなく、画面上における中心点から始まります。モニター越しに画面を見ている私からすると、これは「想定と実際の差」という違和感に繋がりました。お絵かきソフトであれば、自分と筆の間にはマウス(またはペン)が存在するだけで、ほぼ直接的な操作感です。しかし本作は「主人公を操作」して「筆を操作」するので、自分と筆の間にもうひとつ「主人公の存在」が挟まり、そのラジコンのような操作感覚に一瞬戸惑うことがありました。
もちろん慣れると、画面中心を目標地点にまで移動させてから、線を引く操作をするようになったので、この違和感が問題だとは思いません。なので「可能であれば」という前述の言葉に繋がるのです(見事な予防線)。ともあれこうした感覚は、普段からペンタブなどで絵を描いている方にとっては、慣れっこなのかもしれませんね。
ストーリーモードをはじめよう
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だいぶイントロが長くなってしまいましたが本編開始。名前と性別を選び、モードを決めましょう。モードには「ストーリー」「お急ぎ」「クリエイティブ」があり、「ストーリー」と比較すると後ろ二つはそれぞれ、「ゲームの進行が早い」、「最初からすべての要素がアンロック済」という違いがあります。今回は主に「ストーリーモード」を紹介していきます。画家スパくんのサクセスストーリーの幕開けです。
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……冒頭のムービーからして地球まわりはキナ臭い感じですが、主人公はあくまで一介の芸術家。人類の存亡は脇に置いて、明日の銀河系芸術家として名を馳せるため活動です。しかし明日を迎えるためには、そもそも今日を生きなければならず、そのためには何よりもお金が必要(クレジット、ゲーム中ではCという通貨単位で表示される)。画材だってタダじゃないですしね。そういう訳で、まずは依頼をこなして収入と知名度を上げ、ビジネスとして成功させていきましょう。本作の基本的な流れは、このように描いては納品して描いては納品しての繰り返しですね。
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場面はエレベーターから始まり、既に操作可能。手持ちの付箋や、書物系のアイテムは、ボタン操作で「目の前に持つ」ことが可能です。コンバットFPSで言うところの、「腰だめ」と「スコープ覗き込み」の切り替えみたいなものですね。
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スタジオに入ってすぐ左の扉をあけたら独房がありました。
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……よく見たら掃除用具入れでしたね。このモップやスポンジを使って、絵の具等をふき取り、汚れたスタジオを綺麗にできます。
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結構広いスタジオです。今はまだ、ロックされている装置が多いですが、ストーリーの進行やクレジットによってアンロックされていきます。最初からすべてにアクセスしたい場合は、「クリエイティブモード」を選ぶと良いでしょう。
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この端末がゲーム進行の起点になります。上段、左上から順に、
メール:依頼主とのやり取り
BABAZON:通販サイトで道具類の購入
依頼リスト:依頼の進捗状況確認
マネージャー:現在の仕事受付状態を切替
写真:フォトギャラリー閲覧
プロフィール:自分のプロフィール設定
といった機能にアクセスできます。
依頼を受けよう
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最初の依頼人は主人公の妹。年頃の娘さんらしく、時にわがまま。翻訳のセンスが良いので、メール文だけでもお転婆な雰囲気がよく伝わってきますね。とりあえず断りましょう(鬼畜スパくん)。
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ヒッ……その昔、こんな感じのテキストが連打されて未読数十件!的な表示を見たトラウマが蘇ります。
描こう
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とりあえず依頼は依頼、ユニコーンを描いて欲しいということだったので取り掛かります。あの虹色っぽい、ファンシーショップで今どきの女子高生に大人気!みたいなやつですよね?描ける描ける。
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大きいキャンバスです。スパくんより背が高く、ふぇぇ……手が上に届かないスパ~(怒りを誘う安易な語尾)となる場合でも大丈夫。
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床はこのように昇降可能になっています。
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また画材はこの通り、ストーリーモード開始時点でも、十分すぎるほど良く揃っています。
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さてパレットを持って……、
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取り落とす。あれ、マウスの操作が甘かったのかな?もう一度……、
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ああ……。
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そうなんです。本作は画材を手に取って、描いてという「動作そのもの」の操作が求められます。しかも物理演算によって、取り扱いの加減を間違うとご覧の有様。記事冒頭の繰り返しになりますが、この感覚は、プレイヤーがスパくんをラジコン操作して描いているといっても良いかもしれません。
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ちなみに画材はこれ以外にも本当に様々な種類があり、BABAZONで購入することで、自宅に届き、使用可能になります。そのためにはクレジットが必要……より幅広いアプローチによる創作のためにはやはり稼がなければなりません。
納品しよう
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さらさらさらさら……。
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はい、できました。ユニコーンです。どこからどう見てもそれは、紛れもなくヤツです。UCって書いてありますし。
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問答無用。完成した作品はキャンバス横の端末から納品できます。
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良かった、反応も上々。ユニコーンにラグナロクという名前を付けようとするあたり、この妹もなかなかのセンスの持ち主。将来は兄妹で群雄割拠のアート分野を圧巻するのでしょうか。
依頼は断ることもできる
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ちなみに依頼を達成すると評判があがり、さらに人の繋がりなどによって別の依頼が舞い込みます。画像は、妹の友人が連絡を取ってきたパターンですね。ふわっとした希望と安い報酬ですが、それでも対価を支払おうとする姿勢だけは褒めたいところ……ですが、こういうのは断ります。
現実世界でも言えますが、自分を曲げて安い金額で仕事を引き受けることは、ある意味で自分の価値を自ら下げている訳で。これは長期的にはマイナスの結果になりがちです。いやもちろん状況によりけりですし、そもそも自分の基本技能とか社会的立ち振る舞いといった、当たり前のことは呼吸レベルで行っていることが前提ですよ?その上で、自分という存在が生み出すものに価値をつけなければなりません。難しいですよね。私は比較的創作性を求められない「爆速プレイレポ」で一体何の話をしているのでしょうか。
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出品しよう
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画材や内容、金額が指定される依頼の一方で、それらを自分で決めてマーケットに出品することもできます。どこかのお客が気に入って購入、入金となるまでは依頼よりも時間がかかりますが、最初から高額を吹っ掛けることが可能なので、小遣い稼ぎにも丁度良いかもしれません。
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ゲムスパは最高のウェブメディアなので、最高設定額の400クレジット!(ひどいマーケティングですが、後でちゃんと売れました)
なお他には、依頼も含めて以下のような絵を描いてました。
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……という訳で、誠実な仕事を続けていたら知名度が上昇。以降も、このサイクルを繰り返していきます。
展示してみよう
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VR装置が届きました。ここからバーチャル世界にアクセスし、自分の描いた作品を展示できます。とりあえずお見せした方が早いので繋ぎましょう。アクセスコード!グリッd(自制)
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場面は変わりましてはVR空間のバーチャルギャラリーです。VRゲームを遊んだことがある人には、「VRゴーグルで見る雰囲気」が妙に上手く再現されていると感じるかもしれません。実際に私はOculus Questゴーグルを装着しているような気分になりました。オブジェクトの配置や、UIのデザインなど全体的にとても「それっぽい」のです。今更ではありますが、本作ほどVRと相性が良いゲームはないと思います。
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ゴ
ミ
箱
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入り口正面にデカデカと用意されたゴミ箱のマーク。ここは不要な作品を滅却する場所とのことですが、まず一番初めに消えるべきは自分なのでとりあえず突っ込んで飛び降ります(狂乱)
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未帰還者!!……にはならず、ちゃんとリスポーンしました。リスポーン……?
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左右の収納ラックを開くと、自分が今まで描いてきた作品がずらり。世に放った作品はすべてデジタル化され、この空間で収められます。
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また展示室に飾ることも可能で、その方法もまた自由自在。
まさかの訪問者
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びっっっっっくりした……!突然すぃーっと人影が現れたので、一瞬マルチプレイ!?と焦りました。こちらはNPCのお客さん。第一号ですね。ギャラリーの来訪者人数もゲーム内の目標としてタスク設定されています。
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うん……それは魔がさして描いたものなのであまり見ないで……。
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ですよね。
クリエイティブモード
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折角なので、すべての画材がアンロック済というこちらのモードをちょっとだけご紹介。知名度や資金のことは一切忘れて、思いのまま作品を作ることができます。
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お部屋もこの通り。オブジェクトも全て解放されています。
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このように部屋中を使って、様々なもので遊ぶことができます。
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ところでこのふよふよ浮いているメカはペットボット。頭上に表示されたコマンドを選択し、エリアを指定することで、その部分に対して掃除などのサポートを行ってくれます。ちなみにこいつの表面も塗装等が可能。
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おらっ
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バーナーであぶると焦げて、逃げてしまいます。
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こちらは焼却装置。アイテムなどを入れて、勢いよく燃やすことで跡形もなく処分できます。
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……。
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……………。
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おわりに
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本作はとにかく自由。スタジオは、まるごと全てがおもちゃ箱。プレイヤーは、枠にとらわれない自由な発想で、楽しく遊ぶことができるでしょう。これに気づくタイミングは、人それぞれだと思いますが、私の場合は最初の依頼絵で、作業スペースから塗料がハミ出した時でしょうか。「こんなところにも描けるのか……」と、頭の中で凝り固まった発想が、蓋を開いて外に取り出されたような感覚を得ました。トレイラーで、自由であることは知っていたのですが、実際に手を動かしてやってみて、ようやく理解に繋がったという感じでもあります。
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ただしさすがに何も手を加えていないものを、そのまま作品として出すことはできないようで、ゲーム内世界では規則違反だとか(!)。繰り返しになりますが、こういうちょっとしたエラーメッセージすら、世界観に沿って作りこまれているのが好印象ですね。
また、個人的に感じる本作の素晴らしい部分は、「絵がうまい」といった技量を求めず、代わりに、依頼やタスクという形で「いろいろなツールを使って自由に遊んでみてね」と促す作りになっている点です。そのおかげで、いつの間にか楽しく遊んでいる。ここまでガッツリ遊べる高い完成度であるにもかかわらず、なんとまだ早期アクセスの段階である本作。今後のアップデートではどのように遊びの幅を広げてくれるのでしょうか。今からとても楽しみです。
対応機種:PC(Windows)
記事におけるプレイ機種:PC(Windows)
発売日:2021年07月15日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:通常価格 2,055円、セール価格 1,845円(21年07月22日まで)