気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Muse Games開発、PC/PS4/Xbox One/スイッチ/Stadia向けに9月24日に正式リリースされた消防士アクション『Embr』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、協力マルチプレイに対応した消防士アクション。プレイヤーは消防士として消火活動や人命救助を行い、シングルプレイおよび最大4人のオンライン協力プレイに対応しています。メインの消防活動だけでなく、「Embr Eats」での食事宅配、ガス会社「Gaslight」社員としてのトラブル対応等を始めとする副業も存在。各々でお金を稼ぎ、装備のアップグレードを行っていくことができます。日本語にも対応済み。
『Embr』は、2,050円(10月8日までは20%オフの1,640円)で配信中。
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――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Matthew Niederberger氏(以下Matthew)こんにちは、本作のディレクター兼リードプログラマーのMatthew Niederbergerです!私の好きなゲームは、面白くユニークな移動システムがあるファーストパーソン(一人称視点)のあらゆるゲームですね。『ミラーズエッジ』や『Portal』シリーズ、『タイタンフォール』や『Tribes』も好きですし、とてもマイナーなものだと『Shattered Horizon』なんかもお気に入りです。競技性が高いFPSも好きですし、一本を選ぶというのはできないですね。
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
Matthew当初、私たちは面白いファーストパーソンの消防士ゲームが作れないか、チャレンジしてみようと思いました。過去に同じような試みはされていたものの、一本のFPSタイトルとして成功しているものはなかったからです。一番近いものが、1999年にアーケード向けにリリースされた『消防士 BRAVE FIRE FIGHTERS』です。本作も、コメディ要素、レスキュー要素などが加わる前は、ただ火とホースがあるだけのプロトタイプでした。
――本作の特徴を教えてください。
Matthew本作の大きな特徴は二つあり、そのうち一つは、ダイナミックでインタラクティブな火のシミュレーションです。素早く広がり、周りのものに燃え移り、それを消そうとするプレイヤーに直接影響を与えます。二つ目は本作のコメディ要素です。ただただ可笑しく笑えるような部分もありますが、よりダークで、大企業が消費者から金をむしり取ろうとする世界への風刺のような要素もあります。
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――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
Matthew私たちのようなプレイヤーの方たちに楽しんでいただきたいです。私たちは本作を作る上で、自分たちが大好きな「マルチプレイヤー・ファーストパーソン・協力ゲーム」のようなものを作ろうと思いました。『Left 4 Dead』『Deep Rock Galactic』『Portal 2』のようなゲームを楽しんだ人たちでしたら、本作もおそらく楽しめることでしょう。しかし逆に、普段FPSを遊ばないような人にも、本作を遊んでみていただきたいと思っています。カートゥーンのような見た目の消防士シミュレーションですので、普段FPSをプレイしない人たちにも楽しんでいただける作品に仕上がったと思っています。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Matthew本作を魅力的な作品にするため、たくさんのシミュレーターではないゲームを研究しました。一般的に、シリアスなシミュレーターだと思われているものほど、余計な要素が付け加えられたりしています。私たちは同ジャンルの少し前の作品から直接的なインスピレーションを受けました。『Surgeon Simulator』『Goat Simulator』『Overcooked』のようなゲームです。これらの作品はどれも、バカバカしさとチャレンジが待ち受けています。私たちは、これらに共通するスタイルをファーストパーソンに落とし込むため、『Left 4 Dead』や『Tom Clancy's Rainbow Six Siege』といった、他のプレイヤーが見えないような状況でも、チームワークがとても重要となるゲームからインスピレーションを受けています。
開発のかなり初期の段階から、笑えるアクシデントでクライアントが死亡しても、即座にゲームオーバーにならない仕様とすることは決めていました。そのような点からも、プレイヤーをビビらせないために、確立したスタイルのグラフィックが必要だと判断しました。私たちは人気のある3Dカートゥーンスタイルの様々なものを見てみました。映画では「Mr.インクレディブル」の環境が素晴らしいですし、ゲームでは『Team Fortress 2』の光の使い方やキャラクターデザインから影響を受けています。また、火と水が2Dと3Dでどのように表現されているか、カートゥーン調のものからリアルなものまで、様々なものを研究し、火は危険であることと力強さを表現するためとてもリアルに、水はプレイヤーキャラの延長線上にあるものとしてカートゥーン調に描くことを決めました。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Matthew間違いなくありました。スタジオで一緒に仕事をしていた時は、ただぶらぶらしたり、ランチを食べながら話をしたりと、いろんなところからたくさんのジョークやアイデアが飛び出してきたものです。新型コロナのせいで、私たちはスタジオのリース契約を解約し、完全にリモートで作業をすることとなったのです。そのため、クリエイティビティを発揮するのがいくつかの面で難しくなってしまったことは間違いないでしょう。自宅から作業をするメリットというのも確かにあります。特にプログラマーやアーティストは、一人で集中する時間が必要です。しかし私たちは以前から自由に自宅から仕事ができるよう、かなり柔軟な勤務体制にしていました。今では自宅からの作業が強制されていますので、この柔軟性も失われてしまったように感じます。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Matthewはい、もちろんです!コンテンツクリエイターの方が本作を遊び、お金を稼いでいただければ、私たちも嬉しいです。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Matthew日本人の方たちと私たちが直接話すのは難しいですが、早期アクセス以来、日本人プレイヤーの方たちが本作を楽しんでいる姿を配信や動画で見ることができ、とても嬉しかったです!正式リリースに合わせ、また本作に戻ってきていただけると嬉しいですし、初めて本作のことを知る方々にも、私たちの努力の結晶をぜひ楽しんでいただけると嬉しいです!
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。