Valve社から海外ですでに発売中の携帯用ゲーミングマシン「Steam Deck」。先日の東京ゲームショウ2022で実際に触れ、そのポテンシャルの高さに感心した人もいるのではないでしょうか。
しかし東京ゲームショウ2022の会場で実際にプレイ出来たのは20タイトルほど。そしてどのタイトルもModは導入されていないバニラのものでした。コアなゲーマーであれば「やはりPCゲームはModを入れてこそ」と思う方もいるでしょう。
そこで今回は「Steam Deckで遊ぶべき定番作を探せ」特別編として、Modを導入するゲームの代表格である『The Elder Scrolls V: Skyrim』のModをSteam Deck内でも導入出来るかどうか試してみたいと思います。本記事を読めばSteam DeckでのMod事情がわずかにわかることでしょう。
『The Elder Scrolls V: Skyrim』とは
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本作はベセスダ・ソフトワークスが2011年に発売したアクションRPGとなります。プレイヤーはスカイリムに生きる存在の1人となり、自分自身(プレイヤー)のありのままに世界を駆け巡ることになります。
オープンワールド・アクションRPGとして圧倒的な自由度、NPC同士の交流や時には対立、さらにRadiant Storyシステムにより今までプレイヤーがどの様にスカイリムの世界で生活してきたかによってフレキシブルにクエストの内容が変化したりと、まさにその世界で生きる一人の存在を「ロールプレイング」(役割を演じる)するゲームとなっています。
その人気は全世界に波及し、2012年の段階で1000万本を売り上げる大ヒット。また本作は有志によって知識があればゲームそのものも自分好みに改造出来る大量のModが制作されており、日本国内にもModの文化を根付かせる切欠となったタイトルとも言えるでしょう。
なお、本作のSteam Deck対応状況は「プレイ可能(表示が一部見づらかったり、一部設定や操作に追加の作業が必要)」となります。
Mod自体の導入は難しくはない
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後述する理由のため、最初は「Legendary Edition」からチェックしていきましょう。さて、本作でModを導入する場合簡単な方法はワークショップを利用することです。Steam Deckのメニューから『Skyrim』を選択し、「ゲーム情報」のタブを選択→「ワークショップ」を押すことでSteamに登録されているMod一覧を表示することができます。
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自分の好みにModを検索しページを開いたあと、「サブスクライブ」を押します。そうすると「サブスクライブ中」に変わります。これで準備完了。
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あとは通常通り起動するとメニュー画面でサブスクライブしたModがロードされます。その後に「DATA FILES」で使用したいModにチェックを入れます。そして「PLAY」を押せばModが導入された状態でゲームが開始されます。至って簡単ですね。
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実際、今回はグラフィックス関係のModをスクライブが多いものから30点ほどダウンロードしてゲームをプレイしてみましたが、Steam Deckのデフォルト設定でFPSが60を下回る瞬間はほぼ存在しませんでした。またMod自体もしっかり動いており、画像の様に空や水の質感がよりリアルに描写されていることも確認いたしました。
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これがMod無しの場合の空の様子。
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こちらがMod「Pure Weather」を入れた場合。青空がくっきりと表記され明るい印象を受けます。
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こちらがMod導入無しの水面。
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こちらはMod「Pure Water」を導入した場合。浅い場所では水が透き通り地面が見えるようになっています。極限まで大量のModを導入した場合の動作はともかく、ちょっと「味付け」をする程度であればDeckでも十分でしょう。
Windows機でやるほどのModの自由度と気楽さは無い
しかし、今回紹介したSteamのワークショップを利用した『Skyrim』へのMod導入には大きな問題点が2点あります。
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まず1点目は、ゲーム特有のもので、広く既存ユーザーには知られているでしょうが、言語設定で日本語に設定しているとワークショップ経由でのMod導入が不可能ということです。
言語設定が日本語のまま『Skyrim』を導入しModを入れようとしても、エラーが表示されModを導入することができません。これはTESV.exeや一部のFlashのファイル、ユーザーインターフェースが日本語設定の場合独自のものになっている為。『Skyrim』のModは言語設定が英語の状態をベースにして制作されていることが大半な為、言語設定が日本語の状態には対応していないのです。
その為、Modを使って遊ぶには、必然的に言語設定を英語にして遊ぶ必要があります。本来ならば、Skyrim String Localizerなどの外部ツールを利用して英語表記を日本語に翻訳するという手段もあるでしょうし、実際多くのユーザーがそうやって日本語翻訳とModを両立してきました。
しかし、今回はその手段を取ることは簡単ではありません。
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そこで立ちはだかるのが2点目。本題と言ってもいいでしょう。これは現在主流のリマスター版『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition(通称Skyrim SE)』を用いなかった理由でもあります。この『Skyrim SE』にはそもそもSteamワークショップが存在していないので、ワークショップ経由のMod導入ができません。
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ならばNexus Mod Managerなどを用いてのModを導入すれば良い、と考える人もいると思いますが、そこが問題なのです。Steam Deckはデスクトップモードと呼ばれる従来のPCと同様の動作をするモードが存在しています。しかし、Steam DeckのデスクトップモードのOSはArch Linuxをベースにした独自OS「Steam OS」です。
LinuxではWindowsの常識とは色々異なる部分もあるため、筆者のPCスキルでは外部ツールの導入というWindowsでは当たり前のようにやってきた作業ですら対応できませんでした。ツールがそもそもLinuxに対応しているのかの問題ももちろんあります。Steam Deckを改造してWindowsを導入するという手段も無くはありませんが、OSをわざわざ変えるようなことは余程の動機に恵まれなければ行いづらいでしょう。いずれにしても、Deckに多くの人が求めるであろう、コンソール機のような手軽なフィーリングでのPCゲーミングからは離れるばかりです。
現状Steam Deckで遊ぶ場合はバニラがベター
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ということで、今回の総括としては
Mod自体はSteamワークショップで導入可能で動作も安定。だがLEしかワークショップは存在しない
言語設定を英語にしないとModは使えず日本語化も困難
外部ツールの利用には、ツール自体の対応に加え、最低限のLinuxの知識が必要になる
となります。その為、個人的な感想として『Skyrim』においてはSteam Deckで遊ぶ場合はMod無し、バニラでのプレイを推奨するという結論になります。
一方で、Steamワークショップが問題なく動作したということは、外部ツールが不要なワークショップのみで完結するようなタイトルでは非常に気軽にMod文化にも触れられますね。Deckの普及次第では、余りPCゲームを遊ばない層にもMod文化がより広く浸透していくのではないか、という希望も感じました。