気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Professional Villains開発、PC向けに11月11日にリリースされたタイムループホラーアドベンチャー『Anglerfish』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、山の中にある隠れ家的なバーを舞台にしたホラーゲーム。バーでは結婚する友人のため、仮装付きのパーティーが開かれています。しかしそれは突如として恐るべき一夜に変貌。プレイヤーはショットガンを片手に、怪物やさまざまな危険が待ち受けるバー内を探索していきます。死んでしまうとゲーム内の時間は巻き戻りますが、前回死んだ状況や場所によって世界が変化。立ちはだかる邪魔者を倒し、ときには死を選びながら、恐怖の一夜を生き抜くための方法を探していきます。日本語にも対応済み。
『Anglerfish』は、1,010円で配信中。
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――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Professional Villains私たちはJohnとMariaという2人で活動しているデンマークのインディーチームです。Johnがデザイン、ストーリー、プログラミングを担当し、Mariaが本作すべてのアートを担当しました。私たちはプロジェクトによってチームを大きくすることもあります。本プロジェクトでは他にAstridにすべての楽曲を担当してもらい、ゲームYouTuberのLamNotには日本語版を作っていただきました。他にも本作の開発において、ゲーム業界の様々な人に協力していただきましたよ。
Johnが好きなゲームは『スーパーマリオワールド』『がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~』『ゼルダの伝説 時のオカリナ』『サイレントヒル2』『Heroes of Might and Magic III』『グランドセフトオート 1&3』『ピクミン3』『SUPERHOT』などで、Mariaが好きなゲームは『ポケットモンスター サファイア』『ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章』『サイレントヒル2』『風ノ旅ビト』『龍が如く7 光と闇の行方』などですね。
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
Professional Villains本作の開発を始めた理由は、おそらくMarkiplierが私たちの作った小さな無料ホラーゲーム『The ER』を遊んでくれたことです。このプロジェクトにおいて、私たちはプレイヤーの行動によってゲーム内容が変わるという、リニアなホラーゲームをスムーズに作る方法について実験していました。そのため、プレイヤーに間違った行動というものはありません。何度もエンディングが見られ、その度に新しいエンディングになるというゲームで、楽しさを追求して作りました。前の展開がわかっているので、私たちはプレイヤーの予想を裏切るような展開にしたのです。
Markiplierは私が作った、この何度も同じことを繰り返しながらも、毎回プレイするたびに変化が起こるという点を気に入ってくれました。そしてこの無料ゲームの少しあと、この作品のより大きなバージョンである『The ER: Patient Typhon』を作ったのです。この作品は日本語にも対応しています。この繰り返しを通して、私たちはMarkiplierを恐怖で怖がらせることや笑わせることに何度も成功しました。そしてこの「繰り返し」をメインとする、より大きなゲームを作りたいと思ったのです。
――本作の特徴を教えてください。
Professional Villains本作はプレイヤーが死亡したときにのみ、セーブされます。そして死ぬたび、何かが変化するのです。変化はプレイヤーがどこで、どのように死んだかによって決定されます。すべての変化が手作業でデザインされていますので、ランダム生成というものはありません。つまり、本作は最も退屈なものであるはずの「繰り返し」を主軸として、これがワクワク感とユニークな体験へとつながっていくのです。本作は、プレイヤーがどうプレイするかによって変化するゲームです。ゲームが上手い人も、下手な人も、自分に合ったゲーム体験が可能なのです。また、本作には個性が宿っており、愛のある方法でプレイヤーをからかってきますよ。
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――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
Professional Villains本作を遊んでいただきたいのは、おそらく、私たちが予想していなかったような人で、本作を気に入っていただける人ですね。開発中に私たちが想定していたのは、カジュアルゲーマーの方たちよりも本当にゲームが好きな人たちです。ユニークで、他とは異なるゲーム体験を求めているような人たちですね。そのような人たちはおそらく知らない人もいるようなゲームを大量に持っていると思います。少しだけホラーゲームやダークなゲーム、そして風変わりなユーモアが好きな人にも遊んでもらいたいですね。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Professional Villainsたくさんのものから影響を受けています。私たち自身がたくさんの異なるものによって影響を受け、それがまた本作に影響を与えているのです。しかし本作がオリジナルの言語以外に日本語にしか対応していない理由は、日本のアートから私たちがたくさんの影響を受けたからなのです。私たちは松本人志氏の大ファンです。彼の映画の中で、彼は「繰り返し」を巧みに使い、クリエイティブなユーモアにより、見事ユニークで素晴らしい体験を実現しました。プレイヤーがもし本作の最初で正しいドーナツを選べば、松本人志氏への賞賛を表すいくつかの小さな体験が可能ですよ。
それに、私たちが自分たちでゲームを作りたいと思ったのは、日本のゲームのおかげなのです。私たちはたくさんの日本映画を見て、たくさんの日本のゲームを遊んできました。本作は私たちデンマークをルーツに持つものと、私たちの日本アートに対する愛情のミックスであり、それが本作のユニークな表現を実現しているのです。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Professional Villains本作に新型コロナの影響はあまりありませんでした。コロナ禍以前から自宅で作業をしていたのです。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Professional Villainsはい、配信も収益もご自由にしていただいて大丈夫ですよ。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Professional Villains世界の反対側にある日本に住んだことや訪れたことはありませんが、私たちは日本とのユニークな関係性を感じています。アートという点において、日本は私たちに最も影響を与える国の一つです。そして私たちの一つ前の作品である『The ER: Patient Typhon』において、最も楽しんでくれた人たちの一部は日本人のプレイヤーでもありました。ですので、デンマークと日本はとても異なる国であり、とても異なる文化を持っていますが、ゲームという媒体を通してユニークな関係性を持ちつつ、私たちは同じ価値観を持っていると思うのです。だからこそ、本作を日本語でもリリースすることは、私たちにとってとても大事なことだったのです。
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。