気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、eNVy softworks開発、PC(Windows/Mac/Linux)向けに2月28日にリリースされたギリシャ産パロディビジュアルノベル『Basements n' Basilisks: Storms of Sorcery』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、某有名テーブルトップRPGをパロディにしたギリシャ産ビジュアルノベル。一周は2~3時間で終わるボリュームですが、ストーリーや音楽、そしてそのユーモアが高い評価を受けている作品です。記事執筆時点では日本語未対応。
『Basements n' Basilisks: Storms of Sorcery』は、350円で配信中。
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――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Vasilis Karavasilis氏(以下Vasilis)こんにちは、Vasilis Karavasilisです!友達にはBillと呼ばれていますので、そのように呼んでいただいても構いません!29歳で、ギリシャのパトラという街に住んでいます!本作ではゲームディレクターを担当し、eNVy softworksのマネージングディレクターもしています!
私が一番好きなゲームは宮崎英高さんの『DARK SOULS』シリーズで、特に『ELDEN RING』が大好きです!RPGにある自由度が好きですし、ゲームの世界で見つけることができる様々なヒントやディテールから自分の物語を作り上げるというストーリーテリングも大好きです。これ以上に高い満足感はありませんね!
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
Vasilis私たちeNVy softworksは、常にユニークなひねりを加えたゲーム作りをしたいと思っています。たとえ多くの要素が馴染みのあるものであったとしても、それぞれの作品に私たちならではの独自要素や私たちのスタイルを持たせたいと思っているのです。私たちはテーブルトップRPGを何年もプレイしてきたゲーマーたちですので、その経験をコメディタッチで表現したいと思いました。テーブルトップゲームにしかないこの感覚、仲間意識やファンタジー、ストーリーテリング、純粋な楽しさといった美しいエネルギーをビデオゲームに持ち込みたかったのです!これが、本作の開発を始めた理由です。私たちは、自分たちが大好きなものをあえて笑い物にすることで、同じものが大好きな人たちに、それがいかに特別なものであるかを思い出して欲しかったのです。まぁ、ほぼほぼ意味不明なんですけどね!
――本作の特徴を教えてください。
Vasilis本作は、友人たちと一緒にゲームをするときに得られる「コミュニティの感覚」を大切にしています。伝わるかわかりませんが、つまり本作は、ゲームをテーマにしたゲームなのです。ゲーム画面上ではうまく表現できない、特殊な体験を表現しようとしているので、他のゲームと比べてもかなりユニークな存在だと思います。私たちは、友人たちとテーブルを囲んで一緒に話をし、神秘的な敵と壮大な戦いを繰り広げたり、あるいは単に次に何をすべきかを議論しているような感覚を味わってもらいたいと思いました。本作は、楽しい時間を過ごそうとしている友人たちのグループの一員になるような感覚を体験できる、シングルプレイヤー作品なのです。ビジュアルノベルやゲームブックでおなじみのフォーマットに、複数のキャラクターたちが常に画面上に存在したり、本物のサイコロを投げたりといったひねりを加えました。もちろん、Galskap、Elana、Pavelを操る本物のプレイヤーたちも忘れてはいけません。彼らは時にキャラクターを破壊し、互いに言い争いをしながら個性を見せつけてきます。人間関係というものは完璧ではありませんので、私たちはそれを表現しようとしたのです!
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――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
Vasilis『ダンジョンズ&ドラゴンズ』やその他のテーブルトップRPGのファンであれば、本当に誰にでも遊んでいただきたいです。友人たちとそれらのゲームをたくさん遊んだことを思い出せるはずですよ。また、笑いを誘うような小規模なゲームが好きな方にも本作はおすすめです!RPGやファンタジー全般に関するジョークがたくさんあり、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイしたことがなくても、本作は楽しむことができますよ!
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Vasilis本作が『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のパロディであることは明らかだと思います!ですので、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』から多くのインスピレーションを得ましたが、それだけではありません。『クトゥルフの呼び声』や『パスファインダー』『Urban Shadows』といった他のテーブルトップRPGも、世界観やゲームシステムのデザインに役立ちました。また、「指輪物語」「The Stormlight Archive」「氷と炎の歌」のようなファンタジー本のシリーズや、「ビッグ・リボウスキ」のようなコメディ映画からもたくさんの影響を受けています。私たちがインスピレーションを受けたり、参考にしたりしているものは数多く、あらゆるポップカルチャーから影響を受けているのです。本作をプレイすることで、きっと皆さんが長年楽しんできた様々なものを思い出すことでしょう!
――本作の日本語対応予定はありますか?有志翻訳は可能ですか?
Vasilis残念ながら予算が限られていたため、本作を日本語にローカライズすることはできませんでした。先日、別のゲームのデモを制作していたのですが、こちらは残念ながら中止になってしまいました。こちらの作品は、舟橋大さんの協力のもと、完全日本語化していたのです。さらに、このゲームはRASH A1M(ラッシュエイム)さんにフルボイスで日本語化してもらっていました。このプロジェクトが中止になったことで、本作のローカライズが不可能になってしまったのです。もし予算があり、他言語に翻訳するということになったら、日本語への翻訳は私たちの中でも優先順位が非常に高いものとなっています。
本作をより良く、より遊びやすくするため、ファンの方々と協力することにはとても前向きです。もし読者の皆様の中で、私たちと一緒に仕事をしたいと思う方がいらっしゃれば、とても光栄です!現在、開発陣と翻訳者の両方にとって、有志翻訳をできるだけ簡単に搭載できるようにするための方法を検討しています。もし、本作をより多くの言語に対応させたいという方がいらっしゃいましたら、お気軽にメールでご連絡ください。できるだけ早くお返事させていただきます!
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Vasilisとても難しい質問ですね。本作は3年かけ、すべてリモートで開発されました。もちろん、本作は小さなゲームですから、完成に丸3年かかったわけではありません。本作開発中に生活費に困らないよう、他のプロジェクトもいくつか引き受けなければならなかったのです。誰も本作の開発に携わっていない期間が長く続いたこともありました(6カ月ほど)。しかし、本作はパンデミック中に開発が始まり、すべて自宅から開発されたものです。新型コロナが小さいながらも影響を与えたことは確かですが、開発遅延の最大の要因ではありませんでした。開発チームは非常に困難な時期に並外れたパフォーマンスを発揮しましたので、私は彼らを非常に誇りに思いますし、感謝しています。本作の規模は小さいかもしれませんが、その出来は十分に満足できるものとなっていますよ。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Vasilisもちろん大丈夫です!私たちは自分の情熱を世界と共有することは非常に大事なことだと思っていますし、その情熱でお金を稼ぐというのは、誰にでもできることではありません。それを邪魔する気は一切ありませんよ!私たちの情熱はゲームを作ることですので、あなたの情熱がゲームをプレイし、そのコンテンツを他の人々と共有することであれば、私たちはあなたの味方です!もしあなたが配信者やコンテンツクリエイターであれば、Lurkitキャンペーンを通して、本作のゲームキーをリクエストすることができます!ただ、本作はとても安価ですので、皆様によるサポートには感謝しております!もしLurkitのアカウントを持っておらず、それでもコンテンツを作るためにキーが必要な場合は、メールでお気軽にご連絡ください!
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Vasilis私たちはギリシャを拠点にしていますが、日本のゲーマーの皆さんのことはとても尊敬していますし、もっと多くの洋ゲーを日本の方々に知っていただければと思っています。おいしい食べ物、何世紀にもわたる文化、海への愛、そして親切な人々など、ギリシャと日本には多くの共通点があると思います。私たち開発チームの目標のひとつは、日本に行き、皆さんに私たちのゲームを直接紹介することでもあるのです!日本は史上最高のゲームの数々をヨーロッパに届けてくれました。今こそ、私たちがそれに報いるときだと思うのです!
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に700を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。