注意
本作はテキストアドベンチャー的なアプローチのタイトルなので、初見だからこそ味わえる演出に溢れています。そのため記事の性質上、どうしてもネタバレに触れざるを得ません。もし事前情報無しに本作を遊ぼうと考えている方が本記事に迷い込んでしまったのであれば、この時点でブラウザバックを強くおすすめします。
今回はDeconstructeamがデベロッパーを、Devolver Digitalがパブリッシャーを担い、2023年8月17日にWindows PC(Steam/ GOG.com)、ニンテンドースイッチ向けにリリースした『The Cosmic Wheel Sisterhood』をご紹介したいと思います。
『The Cosmic Wheel Sisterhood』とは?
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本作は、小惑星に流刑となった占い師の魔女フォルトゥーナを通して、自分だけのカードデッキを作りつつ、彼女のまわりに集まる個性豊かなキャラクター達との交流を重ねていくアドベンチャーゲーム。背景となるカードに、用意された絵柄パーツを自由に配置することでオリジナルのカードを作れる楽しさ、それらが及ぼす未来への影響に震えるプレイフィールは逸品です。
それと同時に、どんなに親しい友人間でもちょっとためらような話題すらぶっこんでいき、プレイヤーを考えさせる内容がストーリーへふんだんに盛り込まれてもいる本作。極端な忌避感とまではいかないものの、そういった内容は人によってかなり苦手なトピックかもしれません。
ともあれフォルトゥーナの占いが見せる世界はいったい何を意味するのか、彼女の選択は世界に将来どのような影響を及ぼすのでしょうか。早速紹介してまいりましょう。
操作・設定・言語
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本作の操作系はコントローラおよびキーボード&マウスどちらにも対応しており、どちらで遊んでもプレイフィールに大きな差は有りませんでした。個人的には、タロットカード作成時における絵柄の微調整が楽という点で、キーボード&マウスで遊びましたね。その他の調整項目については、画面サイズなどオーソドックスなものが並びます。テキストの表示速度を調整できるのがありがたい。
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そして言語については、ばっちり日本語に対応しています。翻訳を担当されたのは伊東 龍氏。個人的に大好きなタイトルのひとつである『The Red Strings Club』でも翻訳をされており……って、ちょっと待ったこの作品もデベロッパーがDeconstructeamですか……繋がってますね。すべて答え合わせになってますね(錯乱)。あちらも上質な翻訳で、本当に面白いゲームだったので、もし興味のある方はそちらも是非遊んでみて下さい。
本編開始
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のっけからパンチの効いた絵面ですが、画面右側におりますはエイブラマーと呼ばれる存在で、その召喚は禁忌とされています。そして今度は画面左に目をやると小さな女性が立っているのが見えます。彼女こそが本作の主人公フォルトゥーナで、コミュニティでのやらかしから宇宙島流し1000年を絶賛受刑中の魔女であります。
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名前からして神話的なもんを感じます。その後すぐ、意外とフランクで俗っぽいエイブラマーとの会話で本作の全体的なトーンが整えられます。このいい感じに肩の力が抜けた雰囲気が、冒頭で右も左も分からぬプレイヤーとゲーム世界とのギャップを埋めてくれていますね。
レッスンを受けよう
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まずはチュートリアルということで、エイブラマーによるレッスンを通じて儀式を行い、魔法を構成する4つの基本的な元素(エレメント)を履修していきます。空気、水、土、火……時折冗談を挟んでくるエイブラマーと会話を重ねながら、自分の運命に影響を及ぼす決定的な質問に答えましょう。
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ちなみにこのレッスンだけでなく、その後のイベントや他キャラクターとの会話にも選択肢が現れることがあり、そこでの選択がゲーム進行における分岐などに繋がっていくので、最初は結構悩んでどうしたもんかと選んでいました。しかし今こうして執筆しながら思うのは、初見ではあまり深く考えず、ただ楽しめば良いのかなと。
ゲーム的なアプローチで「攻略しよう」と構えて、どれが分岐で何がトリガーか云々とは考えずに、ただ先の展開にわくわくしながら本のページをめくるイメージと言いましょうか。筆者がこう感じたのは、おそらく本作を構成する要素の中でテキストアドベンチャーな部分が強いからなのかもしれません。
カードを作ろう
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そうして次に教わるのがカード作り。背景となる「スフィア」に主役となる「アルカナ」、そしてこれら2つに魔力を付与する「シンボル」……これらパーツを組み合わせて1枚のカードを作っていきます。ここは本作におけるコアのひとつですね。真面目に格好良さを目指すもよし、ネタに走るもよし、枠にとらわれない自由な発想でパーツを並べていきましょう。
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……って、『The Red Strings Club』のドノヴァン!ドノヴァンじゃないか!ブランダイスやアカラはどうした!?よく見るとスフィアにもお馴染みのバーがあります。いやあ記事冒頭でも少し触れましたが、好きな作品とのコラボがこういう形で存在してくれるのは嬉しいですね。
ともあれこれらのパーツを使用するには、それぞれ対価となるエレメントを必要分差し出す必要があります。レッスンをすべて終えるまでは全てのエレメントが揃わないため、作成できるカードもやや限定的。とはいえこれはチュートリアルも兼ねているので、学習のための誘導でもあると言えましょう。
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カードの編集はこんな感じ。最初からカード内に置かれた必須パーツは削除できませんが、それ以外の画面枠に並ぶ各パーツは自由に足し引きできます。サイズも角度もレイヤーの遠近も複製も調整可能で、さらには背景も動かしてベストなロケーションを探すことができちゃいます。ここらへんの操作感としては、お絵描き系のアプリに馴染みが深い人にとってはお茶の子さいさいなことでしょう。
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そんなこんなでこちらが最初に作ったカードです。「巻物を落っことしそうになって慌てて口に加えたハーピーの下、さらに別の何かが羽ばたいている」という構図。カードを完成させると、言葉と象徴するものが付与されます。こんな感じにレッスンを受けながら、他にもこのようなカードを作り続けました。
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個人的にお気に入りなのが酒瓶を抱えたこちらのカード。お日様を眺めながら皆で呑みましょう。カードの閲覧は、ゲーム内または起動後のトップ画面からギャラリーで行うこともできます。またその際、画像として保存することも可能です。
他キャラクターとの交流
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ゲームが少し進むとエイブラマー以外にも、この流刑地へ面会しに(遊びに)やってくるキャラクターがちらほら現れます。様々な展開を見せる会話選択肢ですが、最終的に彼女らを占うことになり、これまでに自分が作ったカードを使用することになります。
シャッフルしたカードを場に置くとき、予め「過去のこと」「未来のこと」等の指定された範囲がある場合もあります。その際、占いがどんな内容になるのか簡単なサマリーが表示されるので、それを確認しながらカードを配置すると良いでしょう。
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各カードには「空気が3つ、水が1つ」など、それぞれエレメント生成のパラメータが設定されています。占いによって生成されたエレメントは、さらなるカード作りの対価(コスト)として使用されるため、4元素のいずれかが枯渇しないよう気を配りつつ、エレメントを貯金(?)していく必要があります。
ここがゲームデザインの妙で、しばしば占い結果として選ぶには内容が冷酷ともいえるカードがありますが、そういったカードに限って生成されるエレメント数に旨味があるという……!もっとコストを掛けてカードを作りたいけど、相手に優しくあろうとして、当たり障りのない占いにした結果、じわじわとエレメントに不自由していくような……そんな焦燥を感じさせる設計は見事でしたね。
おわりに
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今回ご紹介したのはまだまだ序盤で、初見時のインパクトが強い演出のいくつかはあえて伏せてあります。テキストが主体のアドベンチャーではありますが、本作はとても自由なゲームデザインで、こちらを飽きさせません。ただ強いて言うなら、セーブデータを小分けできるよう、現状の3つよりもう少し多めにスロットが用意されていたら、フルコンプリートを目指す時に少し楽になるかな……?と思ったりします。
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ともあれ『The Red Strings Club』の頃から、自分の操作でカクテルを作るなどのゲームデザインで培ってきたものが、本作ではひとつの完成形としてまとまっていると個人的には感じました。ゆっくりとページをめくるように、引き続き楽しみながらプレイしていきたいと思います。
タイトル:『The Cosmic Wheel Sisterhood』
対応機種:Windows PC(Steam/ GOG.com)/ ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
発売日:2023年8月17日
著者プレイ時間:2.5時間
サブスク配信有無:記事執筆時点においては、無し
価格:2,000円(2023年8月24日まで1,800円のセール中)
※製品情報は記事執筆時点のもの
スパくんのひとこと
カード作りが展開に影響するという新しいプレイフィールに、遊んでてわくわくが止まらないスパ!