イザナギゲームズとアクワイアは、横スクロール憑依アクションアドベンチャー『雨魂 - AMEDAMA -』をPC(Steam)向けに2023年に発売予定です。
本作は、和とドットが融合した新たな2D表現が特徴的な作品。主人公・ゆうしんは番傘屋として妹・ゆいと暮らしていたある日、何者かに殺されて妹を攫われてしまいます。魂だけとなったゆうしんは他人の体に憑依する力を得て、魂が消えるまでの7日間を繰り返して妹を助けるのが目的です。
ゆうしんが憑依する対象により、使用できる武器や戦い方は大きく異なります。また、憑依する相手によっては戦う相手が変わることもあり、プレイごとにさまざまな展開が用意されています。キャラクターデザインに『Fate/Grand Order』『刀剣乱舞』などで知られるlack氏、音楽に『モンスターハンター』シリーズの小見山優子氏を起用するなど、豪華スタッフにも注目です。
本稿では、期待の新作和ゲー『雨魂 - AMEDAMA -』の試遊プレイレポートと、主要開発メンバーであり同社代表の梅田慎介氏へのインタビューの様子をお届けしていきます。
静かで美麗な世界観が魅力的!憑依の可能性も楽しい
今回の試遊ではゲームの冒頭シーンをプレイ可能でした。物語は兄妹が厳しい生活ながらも仲良く暮らしているのですが、その平和は家に押し込んだ謎の集団によって突然破られてしまいます。ここで戦闘のチュートリアルが始まり、何人かの敵を倒したものの健闘むなしく主人公は殺されてしまいます。
しかし、殺されたはずのゆうしんは、気がつくと魂だけの存在になっていることに気づきます。どうやら近くにあった仏様の加護により、一週間だけ現世に留まる事が許されたようです。さらに魂の状態で他の生き物に憑依することができるようになり、まずは近くにいたカエルに憑依することになります。
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本作は憑依した相手によってさまざまな能力が使用可能で、カエルだったら高くジャンプすることができます。ゆうしん(カエル)は妹をさらった相手を見つけるため、町へと向かうことになります。道中で犬や人間に憑依対象を変えることで、さまざまな情報を得ることも可能でした。なお、カエルや犬でも戦えます。
物語を進めていくと、何かを知っている様子の盗賊団の一行を発見。彼らを倒して憑依し、親分の方に向かうと最初は警戒されずに会話することができました。その後の選択肢で結局戦闘が発生したのですが、上手くやればもう少し穏やかなプレイも可能だったのかな……?と思います。
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率先した攻撃ではなく、防御とカウンター攻撃を軸にした今作の戦闘アクションは、静かな雰囲気のグラフィックやBGMと見事にマッチしています。カウンター発動の猶予はかなり長く、しっかりガードしていれば有利に立ち回れそうです。憑依対象で異なる色々な可能性もありそうで、ループとあわせてかなりやりがいのあるゲームになるのではないかと感じられました。
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『雨魂 - AMEDAMA -』開発スタッフインタビュー
――まずは自己紹介と開発チームの紹介をお願いします。
梅田 慎介氏(以下、梅田氏)イザナギゲームズ代表の梅田です。『雨魂 - AMEDAMA -』ではプロデューサーとクリエイティブディレクターを担当しています。
本作の開発はイザナギゲームズとアクワイアさんの共同で行っています。元々の企画とディレクションをアクワイアさんが、他のプロデュースや開発部分に関してはイザナギゲームズが担当している感じです。両社がしっかりとリスクとリターンを分担できるようなビジネスモデルですね。
(アクワイア代表取締役)遠藤さんと「一緒にやれることがあればいいですね」とお話ししていたのですが、そういった縁で実現したのが『雨魂 - AMEDAMA -』です。
――作品のコンセプトについて教えてください。
梅田氏『雨魂 - AMEDAMA -』は和風のドット絵で、横スクロールの箱庭ものという作品です。世界観のコンセプトとしては時代劇で、魂の憑依と輪廻を繰り替えして妹を救うという目的を果たしていくという設定になっています。
――いつ頃から開発していたのでしょうか?
梅田氏企画が始まったのがおよそ2021年の暮れくらいですね。かなり世界観についてはこだわっていますし、まだまだブラッシュアップしていきたい部分はあります。
――舞台設定はもちろん、キャラクターデザインやBGMなど超豪華メンバーでワクワクしています!開発チームから『雨魂 - AMEDAMA -』についての魅力を紹介してください。
梅田氏侍もの、ドットもの、ループ、2D新表現、箱庭ものなど、さまざまな要素が揃っているのでゲーマーの方々なら絶対にワクワクしてくれると思います。
一番の売りは箱庭要素だと思います。やはり時代劇物の箱庭に対するノウハウのあるアクワイアさんの協力は僕らとしても非常に勉強になりました。この世界におけるNPCのAIなどにもかなりこだわっています。
lack氏や小見山優子氏の起用に関しては僕が担当しました。こちらも『雨魂 - AMEDAMA -』の世界観にぴったりだと思います。
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――舞台となる江戸時代について、どれくらい時代考証などを行ったのでしょうか?
梅田氏侍ものでアクワイアさんが関わっているということで、下手なものは作れません(笑)。本作のディレクターも『侍道外伝 KATANAKAMI』を制作していたので、刀の鞘などの細やかな考証を担当してくれました。
lack氏も『Fate/Grand Order』で岡田以蔵を描いていることなどもあり、かなり詳しくて細かい部分まで考証してくれましたね。lack氏は元々レベルファイブ所属だったこともあり、とてもゲームにこだわってくれます。一度オフィスに来てテストプレイもしてくれました。
全体的に時代考証でおかしな部分を感じさせないようなゲームになっていると思いますね。共同作品ということもあり、色々なスタッフが関わり、前向きに取り組んでいる作品です。近いうちにSteam向けの体験版も配信されるので、こちらも楽しみにしていてほしいですね。
――トレイラーの最後の「雨と紫陽花の表現」がとても美しくお気に入りです。和とドットの融合という、本作のグラフィック面での工夫について教えてください。
梅田氏ここはアクワイアさんともかなり練った部分ですね。元々あったドットと和の感じで、トレイラーで言えば紫陽花がしっかりと映えるような雰囲気を目指しました。これまでにないような、新しい2Dドット表現を和の世界で作り出していきたいなと思ったんです。
実は『雨魂 - AMEDAMA -』は「雨の7日間」といって、輪廻の世界中はずっと雨が降っている世界観なんです。なので、雨の表現と和のドット絵表現の組み合わせはかなり工夫しました。
例えば水の描写はリアルに、奥の表現は水墨画のような雰囲気にすることで、それぞれの表現を魅せるようにしています。もちろんシェーダーなどもこだわり、何度も試行錯誤して独特の世界を表現できていると思います。
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――本作はいわゆる「ループもの」と考えていいのでしょうか?色々な相手に憑依して、ループを重ねて情報を集めて答えまでたどり着くような印象です。
梅田氏そうですね、本作はループものという考えでいいと思います。誰に乗り移ってどう行動するか、ループして今度は誰から情報を得るのか、単純に7日間を繰り返すだけでなく、答えを見つけ出す物語を進めていくのはとても面白いと思います。
ループものでは最近(やり直すたびにランダムに多くの事柄が変わってしまう)ローグライクのような作品も多いのですが『雨魂 - AMEDAMA -』は、その点ではほぼ純然な箱庭タイプのアドベンチャー作品と言っていいと思います。
――ゆうしんはループで情報を持ち越せるのでしょうか?
梅田氏はい、ゆうしん本人だけは情報を持ち越しています。その辺もいわゆるループものの基本を踏襲していますね。
今作の舞台の時間経過はリアルタイムではなく、箱庭内での特定の出来事の発生に合わせて時間が進んでいくのですが、ループを繰り返すことで「もしあの時に早い段階から行動をしていればあの人を救えたんじゃないか」など、プレイヤーが思いついた行動がまた違う結末を導き出せるようになると思います。
――人間はもちろん、犬やカエルなどにも憑依している姿が確認できます。憑依することによってどのような能力が使えるようになるのでしょうか?
梅田氏作中では何人かのメインキャラクターが存在していて、彼らに憑依することで特殊な攻撃ができるようになっています。
ゆうしんには“魂レベル”というものがある一方で、ボディであるNPCごとの強さという要素もあります。基本的にはボディ側の強さのほうが重要なのですが、ひとつのボディで倒せる敵の総量の限界である「魂の灯火」というシステムがあるので、強いキャラクターを使い続けられないんです。
なので、強そうな敵に挑む際にはなるべく「魂の灯火」が溜まっていないボディを選ぶといった戦略要素もありますね。
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――憑依した対象により戦闘相手が変化するということですが、極端なプレイで言えば戦闘を回避し続けるような解決法もあるのでしょうか?
梅田氏シーンにもよりますが、例えば侍vs盗賊というイベントが有る場合、ゆうしんがどちらの勢力のキャラに憑依しているかで相手が変わると言った状況の変化は起こります。ただし、戦闘を回避し続けるというのは難しいですね。
――トレイラーでは遊郭のようなシーンもありますが、彼女らで戦うのもあまり想像できませんね。
梅田氏そこは普通に戦えますよ。扇子で攻撃したりできますね(笑)。ゲーム内ではほとんどのキャラクターに憑依して、戦うことができます。実は、一見同じような一般の街人でも個々に装備が違ったりします。ちなみにゲーム内には「ボディ図鑑」というものがあるので、色々憑依して図鑑を埋めていくという楽しみ方もありますよ。
舞台となる藍浜の地の7日間をループしていくことで、このタイミングだとあそこに誰がいる、などの状況もわかっていくと思います。そうして情報やより良い憑依対象を見つけていってほしいですね。
ほかにも特徴的なゲームの演出として、7日間の終了後、ループの際にゆうしんが体感する「走馬灯パート」というのがあります。これは今回のループ一周分の出来事を見返すもので、このパートを通じて目的を果たすまでの道筋を見つけられるかも知れませんね。
――アクワイアさんの関連する作品ということもあり、お馴染みとも言える「遊び」の要素はあるのでしょうか?
梅田氏もちろんあります!アクワイアさんはもちろん、イザナギゲームズもゲーム内の遊びの要素は大切にしています。それに、僕もアクワイアさんのゲームが大好きなので、お互いの長所を生かした作品が作れていると思います。
――今作では通常攻撃ではあまりダメージが入らず、ガードからのカウンターを随時狙う必要があるのが面白いですね。
梅田氏2Dのドット絵のバトルでチャンバラ劇の迫力を出すのには苦労しました。どうしても絵面がこじんまりとしてしまうからですね。そこで今作では、バトル面でのゲームとしての面白さとして、ガードからカウンターを決めて大ダメージを与えるような爽快感にフォーカスしました。簡単操作で爽快感を楽しめるということで、2Dならではのわかりやすさと緊迫感を上手く表現できていると思います。
そういった関係もあり今作では通常攻撃でサクサクと敵を倒すのは難しく、カウンターで倒すのが基本の設計になっています。
一方でカウンターの受付時間については相当長めに調整していて、シビアな操作は要求されないようにしています。ストーリーを進めていく過程が面白い作品ですので、バトルは展開の邪魔にならず、その上でゲームとして面白いものにできればと思っています。
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――ところで、「すでに死んでいる」という主人公の設定が物語の着地に対して与える影響が少し気がかりです。
梅田氏確かに、そこに少々引っかかりのある方もいらっしゃると思いますが、僕自身としては読後感の悪い物語が好きじゃない部分があります。なので、すでに魂だけの存在になってしまったゆうしんがどのような結末を迎えるか、それは楽しみにしていてほしい部分です。
――最後に読者の皆様にメッセージをお願いします!
梅田氏色々な人に憑依しながら物語を進めていく箱庭もので、NPCたちがみな自分自身の操作キャラクターになり得るというシステムは非常に面白いと思います。lack氏による魅力的なメインキャラクターや、新表現の2Dドット、アートや和風・古風な雰囲気、『雨魂 - AMEDAMA -』ならではの面白さを輪廻のたびに感じ取りながら、ゆいを救ってもらえればいいなと思います!
さまざまな生き物に憑依して物語を進めていく選択の面白さ、シンプルながら爽快感のある戦闘描写、そして何よりドット絵で描かれる美麗な世界の雰囲気と、梅田氏がオススメしていた部分は、試遊の短い時間でもたっぷりと味わうことができました。「ループもの」ならではの情報を蓄積していく部分など、今後プレイしていくのが楽しみな部分です!
『雨魂 - AMEDAMA -』はPC(Steam)向けに2023年発売予定。体験版の配信も近日中に行われます。