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1975年にテレビアニメとして放送された「UFOロボ グレンダイザー」が、なんと48年経ったいま単独アクションゲーム化!しかも2024年には完全新作アニメ「グレンダイザーU」も放送されることからファンの間に衝撃が走っています。
この令和の時代にグレンダイザー……だと!?
しかも「グレンダイザーU」は、「機動戦士ガンダムSEED」「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の福田己津央さん、「コードギアス 反逆のルルーシュ」の大河内一楼さん、「新世紀エヴァンゲリオン」の貞本義行さんが、それぞれ総監督・シリーズ構成・キャラクターデザインを担当するとのこと!
そこで本稿では「令和の時代でも昭和スーパーロボットアニメは面白いのか!?」という観点から「UFOロボ グレンダイザー」の、そしてスーパーロボットアニメ自体のおもしろさについて「推し活」をしたいと思います!
◆ダブルハーケン、スクリュークラッシャーパンチを自分の手で放つ!
『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』はフランスの「Microid」が開発し、株式会社3gooが日本ローカライズ版を担当する新作アクションゲームです。ベースは1975年から1977年まで放送されていたテレビアニメ「UFOロボ グレンダイザー」。その序盤ストーリーをゲーム用にアレンジしたものです。
基本的に各話に対応したフィールドが用意されており、そのフィールド内を自由に歩き回りながら収集物を探したり、メインイベント・サブイベントをこなしたりして次の話数(フィールド)へと進むので、原作アニメのストーリーを追体験するというよりは個別のイベントを重ねつつ、なんとなく原作アニメの雰囲気を味わう形となっています。
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ポイントはやはりグレンダイザーを自分の手で操縦できること! グレンダイザーのゲーム作品といえばこれまで『スーパーロボット大戦』シリーズがほとんどで、シミュレーション形式で動かせることはあっても、自分の手で直接アクションさせることはありませんでした。
成長アイテムを集めれば多種多様な必殺技がアンロックまたは強化でき、ダブルハーケンやスクリュークラッシャーパンチといったおなじみの技はもちろん、相手の攻撃を回避する際に発動できるハンドビームほか数々の反撃技も用意されていて、スタイリッシュに戦えば戦うほど「かっこいいグレンダイザー」が見られるというわけです。
操作の感触もストレスがなく、近年のアクションゲームでありがちな入力後のちょっとしたラグもありませんから、まさにグレンダイザーを操作する楽しさを第一に考えたゲームだと言えるでしょう。
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またUFO型飛行ユニット「スペイザー」と合体した姿で楽しめるシューティングステージや、マジンガーZの元パイロット「兜甲児」が駆る円盤メカTFOのシューティングステージも用意されており原作愛にあふれた作品となっています。
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◆おもちゃ先行だからおもしろかったスーパーロボット文化
今回、フランスのメーカーが日本のアニメをゲーム化したのには理由があります。もはや誰もが知っていることではありますが、1978年にフランスで「UFOロボ グレンダイザー(フランスでは「ゴルドラック」)」が放送された際、平均視聴率75%、最高視聴率に至ってはなんと100%という、世界的に見ても信じられないような数字が叩き出されました。
さらにアラブ諸国でも人気で、2022年にはグレンダイザーの巨大立像が建てられたほど!日本では考えられないような過熱ぶりです。商業的にはライトな子供向けアニメしかなかった1970年代当時、人間ドラマやハデなアクション満載の「UFOロボ グレンダイザー」はフランスやアラブ諸国でもさぞ衝撃的だったはず。日本では数あるロボットアニメのひとつではありましたが、世界各国にしてみればまさにカルチャーショック。今でも愛されるのも頷けます。
それでは日本国内ではどうだったのでしょうか?
巨大なハーケンを振り回したり、技名を叫びながら必殺技を放ったりするその姿は、巨大ロボットというよりも巨大スーパーヒーロー。リアルロボットというジャンルがまだなかった時代、東映アニメーションと永井豪先生が生み出したマジンガーシリーズやゲッターロボは、「勇者」と呼ばれるような活躍をして多くのキッズのハートを根こそぎ奪いました。
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「UFOロボ グレンダイザー」は、東映アニメーションと永井豪先生による「マジンガーシリーズ」の3作目として放送されたものです。
「マジンガーZ」から始まったマジンガーシリーズは1974年に第2弾となる「グレートマジンガー」を放送。第3弾として「ゴッド・マジンガー」を企画するも頓挫してしまい、まったく異なるロボットアニメとして「宇宙円盤大戦争」を製作し1975年に劇場公開しました。
1970年代といえばUFOブームのまっただなか。本作のみならずピンク・レディーが楽曲「UFO」をリリースしたり、日清焼そばU.F.O.が発売されたりしていました。そのような状況の中、「宇宙円盤大戦争」をリメイクする形で1975年に放送されたのが「UFOロボ グレンダイザー」だったのです。
筆者が再放送で視聴した「UFOロボ グレンダイザー」はダブルハーケンがかっこよく、サポートメカであるスペイザー、ダブルスペイザー、ドリルスペイザー、マリンスペイザーとの合体も幼心に響きました。特に各種スペイザーとの合体は外見をガラリと変える、マジンガーZにもグレートマジンガーにもない要素です。
いま改めて視聴してみるとデューク・フリードの葛藤も胸に刺さります。作画も今ほどカロリーが高くないこともあり比較的安定していました。
なお筆者のイチ推しエピソードは劇場版の「グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦!大海獣」。タイトル通り、グレンダイザー、グレートマジンガー、ゲッターロボGがチームアップするという、ロボ好きにはたまらないエピソードとなっています!
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「UFOロボ グレンダイザー」が放送されていた当時、「マジンガーZ」から始まるロボットアニメ人気は、おもちゃとの連動でさらなるブームを巻き起こしていました。
クリエイターとしては、おもちゃ主導だとストーリーや設定に制限がかけられるため抵抗があったことでしょう。しかしギミックに主眼を置いたロボットは「欲しくなるほど魅力的な存在」と思わせてくれ、作品に彩りを与えてくれました。
たとえば「鋼鉄ジーグ」からはじまった「マグネロボ」シリーズでは各関節が磁石になっており、パーツの換装など「ビルドチェンジ」遊びが楽しめました。「大空魔竜ガイキング」では恐竜型の移動要塞から射出されるドクロ型のボディーと合体する異形のスーパーロボット「ガイキング」が登場。東映本社が制作した「百獣王ゴライオン」では5体のライオンメカが合体しましたし、「機甲艦隊ダイラガーXV」ではなんと驚異の15機合体を実現しました。
いずれも今なお愛され、継続的に新作おもちゃが発売されたりリメイク作が作られたりして人気です。
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現在は「機動戦士ガンダム」をきっかけとした「リアルロボット」の概念が定着し、スーパーロボットらしいスーパーロボットアニメが生まれにくい状況にあります。視聴者に嘘だと見抜かれるような突拍子もないギミックはクリエイター側も納得できず避ける傾向にありますし、おもちゃ主導でなければそこまでギミックにこだわる必要もありません。
そんな時代だからこそ、昭和の自由な発想で生まれたスーパーロボットたちはとてもユニークですし、あらためて注目することで新たな魅力が発見できるのではないでしょうか。
『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』は、その当時のキッズたちが想像の中で楽しんだヒーローアクションが楽しめる作品であり、当時のロボットアニメの熱気が垣間見える作品となっているのです。
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◆原作は東映アニメ版? それとも永井豪のコミック版?
アニメとコミックの関係と言えば、原作つきやコミカライズのように、どちらかが原作でどちらかがその派生展開となることが多いはず。しかし「UFOロボ グレンダイザー」ほか、当時の永井豪作品のほとんどが両方とも原作という、ロボットアニメ黎明期らしい特殊な事情がありました。
そのため「UFOロボ グレンダイザー」以降のアニメ作品は、東映アニメーションがタッチせず、永井豪先生のマンガ原作のみで制作するものがほとんどです。
1984年に東京ムービー新社が制作したテレビアニメ「ゴッドマジンガー」(かつて企画が頓挫した「ゴッド・マジンガー」とは別)は永井豪先生のコミック版に連なる外伝として制作されたものですし、「真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日」や「真マジンガー衝撃!Z編」もコミック版をもとにしたアニメ作品です。
「マジンカイザー」関連も同じく、マジンガーZを登場させる際はアニメ版ではなくマンガ版のデザインで登場していました。
アニメ版もおもしろいのですが、やはりマジンガーシリーズを味わうのであれば、「もうひとつの原作」であるコミック版も楽しまなければもったいないでしょう。アニメ版の要素もありつつ独自に展開することが多く、筆者にトラウマを植え付けたような衝撃的なエピソードもありました。
しかしいざ調べてみると、同じ単行本なのに様々なバージョンがあって戸惑うはず。それはなぜなのでしょうか?
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これまでさまざまな出版社がグレンダイザーの単行本を発売しているのですが、永井豪先生のみならず、先生が立ち上げたダイナミックプロの関係で、岡崎優先生、石川賢先生、桜多吾作先生がそれぞれ執筆を担当するバージョンもあり、しかもその組み合わせで収録エピソードが変わったりしますから、どの単行本がどのバージョンか区別がつかないはず。
もともと「マジンガーZ」の時代から永井豪先生によるシリーズと桜多吾作先生によるシリーズがパラレルで展開していましたが、「UFOロボ グレンダイザー」では永井豪先生の多忙もあってさらに複雑になったようです。
永井豪先生が担当したのは講談社のテレビマガジンで執筆していた本家のバージョン。ただし先生が多忙だったことで、連載第9話からは岡崎優先生が執筆を引き継ぐことに。同じシリーズではあるものの、近年までは永井豪先生の担当回と、後半の岡崎優先生の担当回は分けて考えられてきました。
そのため長いこと岡崎優先生の担当回が単行本に収録されておらず、パンローリング社の「UFOロボ グレンダイザー 完全版」ではじめて初回から最終回まで収録されました。
石川賢先生は読み切りや映画版のコミカライズでそれぞれ執筆を担当。バイオレンスな切り口が独特で、筆者もフリード星の侵略描写がトラウマになったほどでした。
桜多吾作先生は「マジンガーZ」と「グレートマジンガー」の時代から独自のコミックシリーズを展開。いわゆる桜多吾作版としてパラレルなオリジナルストーリーを紡いで根強い人気を誇っています。特に「UFOロボ グレンダイザー」では地球滅亡エンドに着地し、多くのキッズに衝撃を与えました。
各単行本では永井豪先生のバージョンを中心に、石川賢先生や桜多吾作先生のバージョンが収録されていたり、カラー原稿の復刻があったりするため同じ「UFOロボ グレンダイザー」でもまったく異なる収録内容となっているわけです。
どれもアニメ版とは異なる魅力を湛えているのでオススメです。
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また2014年には秋田書店の「チャンピオンRED」にて、リメイク作の「グレンダイザー ギガ」を発表。「UFOロボ グレンダイザー」では泣く泣く降板した永井豪先生が積年の想いをぶつけるように執筆したもので、このためにアニメPVが作られる気合の入れようでした。
内容はリメイクらしく随所に大幅な変更が。マントを羽織ったグレンダイザーに、円盤型ユニットから大型宇宙戦艦になったスペイザー、デューク・フリードの妹として人気だったマリアがツインテールのサポートキャラクターとなり、ヒロインの牧場ひかるがなんとキューティーハニーだったという驚きの展開まで!
そのほか1990年に「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた「マジン・サーガ」にデューク・フリードとグレンダイザーが異なる設定と姿で登場しているので、興味がある人はそちらにも手を伸ばすと面白いかもしれません。
そんなコミック版のグレンダイザーおよびマジンガーシリーズですが、筆者が一番印象的だったのは「マジンガーZ」の初登場時、腕を振り回しながら「ドスドスドスドス!」と走るシーンです。あの重量感ある疾走シーンこそマジンガーらしさであり、ゲームの『UFOロボ グレンダイザー:たとえ我が命つきるとも』で一番好きなアクションです。
ゲームの方ではダッシュ移動をすると「ドスドスドスドス!」と走ってくれるのですが、それがまさに自分の中にあるマジンガーシリーズのイメージそのもの!それだけで楽しく、広大なマップを駆け回ったほどでした。
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すでにリリースされたSteam版では、12月20日時点でまだ日本語字幕に対応していないため、立ち絵だけで進行するADVパートの内容まではよくわかりませんが、ダブルハーケンを振るい、走り、最大の必殺技「スペースサンダー」を駆使するバトルアクションは間違いなく愛が感じられるものでした。
2024年には日本語ボイスも追加される予定とのことなので、「グレンダイザーU」でテンションが上がったらまた筆者もプレイすることでしょう。それまでは動画配信でテレビシリーズを観返したいと思います。
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こうして改めてグレンダイザー沼にはまってみると、ヒロイックな活躍をするスーパーロボットアニメ、そして「UFOロボ グレンダイザー」がいかに不変のかっこよさを秘めているかよく分かります。だからこそ、この良さがひとりでも多くの人に伝わってほしいですね。
(C)Go Nagai/Dynamic Planning
(C)Dynamic Planning・TOEI ANIMATION
UFO ROBOT GRENDIZER – THE FEAST OF THE WOLVES.
Developed by Endroad. Produced and Published by Microids. Additional development by Microids Studio Paris.
Published and Distributed by 3goo K.K. in Japan.
(C)Go Nagai/Dynamic Planning-Project GrendizerU