パブリッシャーHawthorn GamesとデベロッパーStumbling Catは、新作パズルアドベンチャーゲーム『ポーションズ:不思議な物語 Potions: A Curious Tale』をPC(Steam)向けに3月8日よりリリースしました。
本作は、魔法薬マスターを目指す少女・ルナを操作して戦闘や謎解きに挑んでいく作品。世界を冒険してレシピや材料を集めたり、ボスキャラクターとの戦いなどを通じて少女の成長の物語が描かれます。ゲーム内には孫悟空などのおとぎ話や民間伝承のキャラクターも登場し、ルナと交流します。
ルナが調合するポーションは、マップ内のオブジェクトやモンスターに投げつけたりすることで、さまざまな効果を引き起こします。敵をただ倒すだけでなく、特別な効果を引き起こすことで特別な素材を入手できたり、戦闘を回避できたりするのも大きな特徴です。
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2014年にプロジェクトをスタートし、2016年のKickstarterキャンペーン成功などおよそ10年間の開発期間を経てついにリリースされた本作。本記事では、『ポーションズ:不思議な物語』のプレイレポートとともに、開発スタッフへのインタビューもあわせてお届けしていきます!
偉大な祖母の元で調合生活スタート!
本作の物語は、主人公の少女ルナが目的地に向かう船中で目を覚ますシーンからスタート。まずは移動方法やオブジェクトへのアクセス、ポーションの使い方を学びながら甲板へと向かいます。甲板では、巨大な怪物クラーケンと「千夜一夜物語」のシンドバッドが戦っているようです。
クラーケンとの戦闘ではポーションがないため、甲板にあるオブジェクトを利用して戦うことになります。本作はほとんどのイベントバトルで「ポーションを使わなくても対処する方法がある」ので、そのチュートリアルも兼ねた内容になっているようです。
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戦闘後は、祖母の住むオールドヘイブンの町へ到着。祖母からはポーション調合と材料集めといった冒険の基本を学びながら、さまざまな住人との出会いやエリア探索を行っていきます。いくつかのクエストをこなしたところで、いよいよルナの冒険が始まります。
本作は基本的に偉大な魔女である祖母の家を起点にストーリーが進み、提示されるクエストを進めていく方式。ゲーム内で出会ったキャラクターからは、それぞれ特別なサイドクエストを受けられることもあります。
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ゲーム内の説明は親切で操作関連も難しくありません。日本語翻訳の品質も高いのでゲームの雰囲気を楽しみながらしっかりと遊び方を学ぶことができます。
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ポーションの可能性は無限大!
ゲーム内で最も大切なアイテムであるポーションは、祖母の家やマップ内にある大きな釜から調合可能。調合に使う各素材には火・水・風・土の4つの属性があり、釜に入れた3つのアイテムの組み合わせによってポーションが完成します。完成するポーションは属性によって決まるほか、特定の組み合わせのものも存在しています。
このポーションはゲーム内の試練に立ち向かうために欠かせないもの。ルナは装備したポーションを投げつけることで、モンスターに攻撃したり、道を塞ぐ障害物を破壊したり、隠された道へのルートを開拓したりもできます。ただし、モンスター相手には無闇な攻撃だけではダメなところも本作の特徴です。
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モンスターの中には、4つの属性や衝撃や切断などの効果を与えることで、特別な素材を落とします。入手しづらい素材であれば複合した属性を持っているものが多く、より高度な調合がしやすくなります。発見したモンスタードロップは自動的に図鑑に登録され、以降の素材集めはやりやすくなります。
また、壁を作り出すポーションで道を塞いだり、砂のポーションで敵の視界を奪ったりと、戦闘を回避することも。もちろん、防御力や移動力アップ効果、毒や炎での継続ダメージなどを駆使して敵と戦ったりすることもできます。色々な効果を試すことが、そのまま新たな素材の入手にも繋がるのです。
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ポーションのレシピはクエストや隠された書物などで新たに発見できます。また、自身で色々な組み合わせを探し出すことも可能です。例えば基本の回復ポーションは属性が「水・風・土×1」の組み合わせで完成しますが、属性値の高い高級な素材を使えば、より回復効果の大きいポーションも作れます。
なお、ゲーム内で同じポーションは10個までしか持ち歩けません。釜を見つければ補充もできるのですが、色々なポーションをやりくりしながら立ち回るのも楽しい部分です。
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不思議で魅力的な世界を探索!
ルナが冒険する世界は、平和な農場からいたずら好きな妖精が住む森、危険な砂漠や火山など多彩なエリアが待ち受けています。各エリアには多くのモンスターだけでなく、豊富な素材や宝物も隠されているのです。
エリアはストーリー進行で段階的に解放されていきます。本作の優秀な点に各エリアの階層それぞれにすぐアクセスできることがあります。「奥地の素材が欲しいけど道のりが遠いな……」と悩まずに素材集めを楽しめるのです。基礎素材を集めやすいエリアもあり、ゲームが進めばどんどん遊びやすくなります。
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即座に帰還できるアイテムがあったり、素材集めにインベントリ制限がなかったりと、本作はとにかく遊びやすさを考えられたゲームデザインの印象です。戦闘や謎解きも比較的カジュアルで、魅力的な有名キャラクターたちの物語に没入できます。
もしポーションが足りなくなっても「敵の攻撃は敵に通じる」というシステムのお陰で、上手く立ち回れば同士討ちさせることもできます。そういったアクションを行うことで思わぬ素材獲得の発見があったりと、ポーションを含めた色々なチャレンジが大きな意味を持っています。
もちろん遊びやすいだけでなく、探索するようなやりこみ要素もあります。ゲーム内の各所には、さまざまな世界のモンスターが描かれた札が隠されています。この札を集めれば体力強化できるのですが、描かれているイラストや伝承も興味深いもの。日本の妖怪なども紹介されており、ついつい集めたくなります。
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孫悟空やシンドバッドなどが登場する不思議な世界を堪能したり、究極のポーションづくりを目指したり、コレクションを楽しんだり、さまざまな楽しみたくなるポイントが用意されています。カジュアルに楽しめて、雰囲気の良い世界観にいつまでも浸りたくなる、とても魅力的な作品です!
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Stumbling Cat開発スタッフインタビュー
ここからは、本作の開発スタッフへのメールインタビューの内容をお届けします。回答してくれたのは、Stumbling Catを率いるRenee Gittins氏です。
――最初に、自己紹介をお願いします。
Renee Gittins氏(以下Gittins氏)Stumbling Catのスタジオ責任者のRenee Gittinsです。10年以上ゲーム業界で活動していて、Stumble Cat設立以前はPhoenix Labsのゼネラルマネージャーや、国際ゲーム開発者協会(IDGA)のエグゼクティブディレクターなどを務めていました。『ポーションズ:不思議な物語』では開発責任者であり、クリエイティブディレクション、デザイン、エンジニアリング、マーケティング、カスタマーサポート、ビジネスオペレーションなどの統括も行っています。
――ゲームのコンセプトと開発経緯について教えてください。
Gittins『ポーションズ:不思議な物語』は、知恵が最大の武器となり、戦闘することが必ずしも答えにならない冒険クラフトゲームです。プレイヤーはルナという若い魔女となってゲームをプレイします。
ルナは生活の中で魔法のポーションを作り出す能力に目覚め、偉大な魔女である祖母に会いに行くことになります。ポーションを呪文のように使ってパズルを解いたり、モンスターから珍しい素材を集めたりしながら、ポーションマスターを目指すというのが目的です。
実は最初はこのゲームを商業的な製品にするつもりはなく、C#とUnityを独学で勉強するために開発していました。しかし、友人や知り合いたちにこのゲームの内容を話したらとても面白そうだと言ってくれて、会うたびに開発の進捗を聞かれるくらい評価してくれたのです。そこでこのゲームを本格的なものにしようと決意しました。
2016年にKickstarterキャンペーンを実施しました。幸いクラウドファンディングは成功し、アートや音楽のアシスタントを雇う資金はできたのですが、開発に集中するだけのお金にはなりませんでした。なので、ゲーム業界でフルタイムで働きながら『ポーションズ:不思議な物語』にも取り組み、キャリアを積んでいました。
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――どのような作品から影響を受けましたか?
Gittins『ポーションズ:不思議な物語』でインスピレーションを受けた作品は、実は日本のゲームやアニメがたくさんあるんです。代表的なのは『ルセッティア ~アイテム屋さんのはじめ方~』ですね。
このゲームはRPGの世界観の中で商人という別の視点を描いていて、とても感銘を受けました。プレイヤーが目についた敵をすべて倒すことが報酬につながるアクションアドベンチャーというジャンルが多い中で、私にさまざまなアプローチを考えさせてくれた作品です。
また、絵画のような背景にセル画のような陰影のあるキャラクターを描いている、ジブリ映画のアートスタイルからも多くのインスピレーションを得ています。
――『ポーションズ:不思議な物語』の特徴について教えてください。
Gittins『ポーションズ:不思議な物語』は、古典的なアドベンチャーゲームのノスタルジーを感じさせながら、戦闘に独自の工夫を凝らしているのが大きな特徴です。モンスターを罠などの危険な場所に誘い込んだり、敵同士を戦わせたり、特別な戦利品を見つけたりすることで、プレイヤーはさまざまな報酬を得ることができます。
また、主人公のルナたちを中心とした青春物語も大きな魅力です。ゲームの中には世界中のおとぎ話や民話が取り入れられていて、シンドバッド、バーバ・ヤーガ、孫悟空などのキャラクターだけでなく、キツネやタヌキなどもストーリーで重要な役割を持っているのも魅力ですね。
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――10年間の開発を経てリリースされた『ポーションズ:不思議な物語』ですが、これまでの開発で一番苦労した点を教えてください。開発環境の変化もあったと思います。
Gittins開発で最も大変だったのは、本業が忙しかったり、敬愛する開発メンバーを失ったり(開発期間中にグラフィックデザイナーの一人が逝去)、リリースの1ヶ月前に愛猫が亡くなったりしたときでも、開発のモチベーションを失わないように努めることでした。
ゲーム開発というクリエイティブな仕事は、落ち込んでいるときや疲れ切っているときに特につらく感じることがあります。どんな最悪の日であっても、全身し続けるために、多彩な種類の仕事を上手に切り替えることを学んでいく必要がありました。
『ポーションズ:不思議な物語』は10年間の開発期間がありますが、良い開発環境を維持するという技術的な面では大きく苦労はしていません。ただし、ゲームは長らくUnity 5.6で開発していたのですが、最新コンソールにも対応させるために、昨年Unity 2022にアップデートするなどの変化はありますね。
――昨年9月にリリースされた体験版をプレイした方からは、どのような反響があったのでしょうか。
Gittins体験版をプレイした人からの評判は上々で、ゲームのコミュニティの拡大にも繋がりました。このゲームはアドベンチャーゲームと、現在流行しているコージーゲームの中間に位置するゲームです。なので、最も楽しんでくれるプレイヤーへとアプローチするのに苦労しましたが、良い評判を得て嬉しく思います。
正式にゲームが発売された現在は、かわいいグラフィックや素材集め、多彩なパズルや独創的な戦闘システムなど、多くのコンテンツを愛してくれる熱狂的なファンたちの情熱を感じ始めています。
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――複数アイテムの取得や素材の自動保管、インベントリ無限など、ゲームとして遊びやすいゲームデザインですね。
Gittinsゲームデザイナーは、プレイヤーがどのようにゲームへと関わるのかというのをコントロールしたくなる事が多いと思っています。
私としては、プレイヤーがゲーム体験に集中して楽しんでもらうことを一番に考えています。そのため、プレイヤーのゲームへの関わり方というのをよく観察し、彼らのプレイスタイルに合う調整に多くの時間を費やしてきました。
例えばインベントリが無限なのは、プレイヤーがせっかく冒険を楽しんでいるのに、中断して帰るしかなくなるという、悲しい状況を回避したいと思ったんです。
――シンドバッドやバーバ・ヤーガなど色々なおとぎ話の登場人物が出てきて楽しいと感じました。こういった伝承やおとぎ話で、一番好きなものはなんでしょうか?
Gittins「西遊記」ですね。私が幼いころ、母が「西遊記」の登場キャラクターたちの大きな絵を描いて家に飾ってくれていたんです。それを何時間も見つめながら孫悟空たちの冒険をいつも想像してきました。
『ポーションズ:不思議な物語』では、その想像していた冒険を自分の世界で実現できているんです。これは、本当に素晴らしいことだと思います。
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――ローカライズされている言語が多く、日本語にも対応していることをとても嬉しく思っています。ゲームのローカライズについての意義と、作業したことで苦労したことがあれば教えてください。
Gittins『ポーションズ:不思議な物語』というゲームと、そのストーリーをできるだけ多くの人に体験してもらいたかったのです。ゲームはテキスト量が非常に多く、開発面で言えばすべての言語のローカライズ費用を回収できる可能性が低いことは理解しています。それでも、主人公のルナの冒険を多くのユーザーと分かち合いながら、彼女が次世代のヒーローになれるようにしたかったんです。
ゲームの体験版はおよそ2時間以上の内容で、そのデータを購入した正式版に引き継ぎできます。こういった部分も「できるだけ多くの人に体験してもらいたい」という部分からきています。
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――最後に、ゲーマーに向けたメッセージをお願いします。
Gittins『ポーションズ:不思議な物語』という作品の重要なメッセージは「決して早合点しないこと」「他人への共感を持つこと」「自分の強みを活かしながら夢を追いかけること」です。ゲームをプレイした人もしていない人も、このメッセージを忘れず、私達の世界をより良いものにしてくれれば嬉しいですね!
『ポーションズ:不思議な物語』は、カジュアルで親しみやすいゲーム性と色々試すことで知識や理解が深まるシステム、魅力的なキャラクターや世界観が詰まっている作品です。ポーションの調合やモンスターへの効果など、さまざまな“試す”ことが楽しく、素材集めのやりやすさなどがゲームの楽しさを際立たせています。
日本語にも対応しており、主人公ルナたちが多くの人々と交流して成長していく姿を鮮やかに描き出しています。また、コレクション要素の札に描かれている妖怪や怪異、モンスターなども読みものとして面白いため、こちらもあわせておすすめしたい部分です。
調合と素材集め、幅の広いアクションが楽しめる!寓話たちの有名なキャラクターたちも魅力的スパ!