■「ファミコンゲームの一場面」に宿る競技性の高さ
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本作をプレイして最初に気づかされるのは、「競技性の高さ」です。ファミコンゲームの1場面をただ切り取っただけでなく、タイムアタックという競技の舞台として、非常に質の高い場面が厳選して選ばれています。
多くのプレイヤーが最初に挑むであろう、『スーパーマリオブラザーズ』の「スーパーキノコ早取り競争」が、競技性の高さを特に感じさせてくれる名ステージと言えます。
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お題は「キノコを取るだけ」ですが、ブロックを叩いて出したキノコを右で待つのか、それとも左に誘導させるのか。クリボーは倒すべきか、スルーするのか。キノコは空中でキャッチするのか、それとも上の段まで登って取りにいくのか。
わずか数秒で終わるお題の中に、キノコを取るまでの手順がいくつも枝分かれしており、プレイを通してそのひとつひとつを発見する喜びがあります。そして、最短に近づく道を見つけるトライ&エラーと、光明を見出した瞬間の手応え、その結果辿り着く「最短タイム更新」の気持ちよさが、格別の爽快感を与えてくれるのです。
繰り返しプレイする中で、それぞれのステージははまるで「このお題のために作られたのでは?」と錯覚すると、絶妙なバランスで立ちはだかります。ストレートな解法に挑む場合もあれば、Sランクを達成するには発想とひらめきが必要な状況もあり、反射神経のみが問われるわけではない点にも高い競技性を感じました。
■プレイ意欲を支える、すぐれたリプレイ性
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お題となるファミコンゲームの中身だけでなく、それらを内包する『ファミコン世界大会』のシステムも優れており、そのリプレイ性の良さが繰り返しプレイに拍車をかけます。
タイムを更新できなかった場合、再プレイまでの手順が非常に短く、待ち時間はほぼなし。始まるまでのカウントダウンはありますが、そこも余分な時間とは感じません。「次のプレイではどこを修正しようか」と考えたり、スタートのタイミングに合わせて集中力を高めていったりと、むしろ必要な時間だと実感しました。
また、プレイ中にミスをしたら、クリアをせずに途中でやり直したい場合もあります。そんなプレイスタイルにも本作は対応しており、ZLとZRを同時に押すだけで仕切り直しが可能。あとは決定ボタンを押すだけで、スムーズに再チャレンジを始められます。
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加えて、自機がやられたりクリア不可能な状態になったら、タイムはそのまま進むものの、そこまでのプレイを自動的に巻き戻してくれるお助け機能も備えています。
タイムが嵩むので巻き戻しにならない方がいいのは確かですが、長尺ステージの終盤にワンミスで全てが台無しになるような仕様だと、心が折れるプレイヤーも多いはず。タイムロスはあっても継続してプレイできるため、プレイ意欲を削り過ぎず、そして競技性は保つという、絶妙なバランス感覚にも唸らされました。