Piranha Gamesは、「バトルメック」もしくは「メック」と呼ばれる巨大歩行兵器を操るメカアクションシリーズの最新作『MechWarrior 5: Clans』を、PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoftストア)/PS5/Xbox Series X|S(Game Pass対応)向けに10月17日に発売予定です。
2019年にリリースされた『MechWarrior 5: Mercenaries』から約5年ぶりとなる『MechWarrior』シリーズの最新作である本作では、クラン(氏族)と呼ばれる勢力が、シリーズのもうひとつの大勢力圏「中心領域」と呼ばれる世界へ侵攻を行っていく様が描かれます。プレイヤーはスモークジャガークランの新任メックパイロット兼小隊長となり、メックのカスタムや部隊員の強化を行いながら、さまざまな作戦へと参加することになります。
かつて日本でも『メックウォリアー』『メックウォーリア』、あるいは『バトルテックセンター』として愛されたシリーズではおよそ30年ぶりにクラン側をメインテーマにした『MechWarrior』のゲーム作品となるという本作。激しい戦闘だけでなく、作り込まれたキャラクター達による葛藤などのナラティブ要素が盛り込まれています。もちろん細やかな部隊の管理も可能で、物語とゲームのどちらも楽しめるようになっています。
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本稿では、公式な日本語対応も含むシリーズ最新作『MechWarrior 5: Clans』の先行プレイレポートをお届けしていきます!なお、本記事の執筆にはPiranha Gamesより提供されたSteam版を使用しています。
新任パイロット達に訪れる過酷な試練
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本作の物語は、主人公であるジェイデンと仲間たちが、スモークジャガークランのパイロット試験を受けるシーンから始まります。厳しい教官コマンダーからの教えを受け、まずは最初の試験として基本的な操作や周囲のスキャン、インタラクト、修理施設の使い方などを学んでいきます。いきなり敵機との戦闘などもあり本格的です。
次はそれぞれのパイロットが個別で行う戦闘試験へ。3体のメックとの戦いで、ジェイデンは最低でも2体を倒して【スターコマンダー】という階級を入手して小隊(スター)のリーダーを目指すことになります。この試験は相手のメックとの連戦となるのですが、チュートリアルの続きと思って戦うと簡単に破壊されてしまうので要注意です。
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試験で使用できるメックはレーザーとミサイル、地形を乗り越えたりするために緩やかに飛行することができる「ジャンプジェット」を装備しているので、戦闘距離を見定めて戦わなくてはなりません。また、同じ場所に攻撃を受け続ければパーツが破壊されて武器が使用できなくなるので、適切に回避運動や距離の確保を行う必要があります。筆者は2回目の挑戦で無事にクリアしました。
なお、本シリーズはコックピット視点が有名ですが、今作や前作では3人称視点を使うこともできます。
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こうして無事に【スターコマンダー】となったジェイデンは、生き残った仲間とともにベータ銀河隊司令官コルデラ・ペレスの旗下に。その一方で、クラン長による議会では、宙域内に現れた船の発見をきっかけに、クラン達が中心領域への帰還を目指す提案が受け入れられ、歴史的な戦い【リバイバル作戦】が始まろうとしています。
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ジェイデン達は、スモークジャガークランの作戦の一環として、宙域内に巣食う海賊ヴァラセックの討伐部隊に組み込まれます。ここからクランによる、壮大な宇宙での戦いの歴史が刻まれていくのです。
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固有名詞や専門用語は多いですが話はわかりやすいですよ
ボードゲーム『BattleTech(バトルテック)』の世界を原作としてアクションゲームとして展開する『MechWarrior』シリーズですが、『MechWarrior 5: Clans』では西暦3050年頃の歴史が描かれます。前作『MechWarrior 5: Mercenaries』は西暦3012年から始まるので、およそ40年くらい未来の物語です。ゲーム内では冒頭からクラン(氏族)を始めとした固有名詞が続出します。
そこで、非常に簡単に『メック』シリーズの舞台を説明すると、描かれるのは人類が宇宙への進出に成功したことで大きく発展した遙か未来。しかし、人類は数百年にも及ぶ惑星間戦争を起こし一度大きく科学は衰退してしまいます。しかし、インナースフィア(中心領域)と呼ばれるいくつもの惑星や星系を含む広大な宇宙領域では、各勢力による争いは形を変えつつ今も続いています。
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本作に大きく関連する内容として、その中央領域の戦争において重要人物となったのがアレクサンドル・ケレンスキーと呼ばれる人物です。彼は2700年代に中心人物のひとりとして活躍したものの、その後多くの人々を率いて中央領域から離脱します。そして、数百年後。彼らの末裔は、今回プレイヤーが属することになる「クラン(氏族)」と呼ばれる勢力群となっており、帰還の望みを胸に3050年に中央領域への侵攻を行うのです。
主人公ジェイデンが所属するクラン「スモークジャガー」は、その侵攻の中でも強硬派に属するクランです。なお、かなり平たく説明しておくと、ジェイデン達を始めとしたクランの優秀な戦士たちは基本的に、過去の優秀な人物たちの遺伝子の人工授精で生まれた【トゥルーボーン】であり、その中でも同じ遺伝子を持つ集団は【シブコ】と呼ばれ生活や訓練を共にします。このあたりはゲーム開始直後から突然単語が出てくるので、ある程度覚えておくとわかりやすいかも知れません。
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作戦の中でジェイデンは、それぞれの仲間たちの思想や過去などを知り、チームとしての絆を深めていきます。固有名詞や専門用語は多い作品ですが、ゲーム内ではあくまで主人公達のドラマを中心に物語と作戦が描かれるため、じゅうぶんわかりやすくプレイできますよ。
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わかりやすく遊びやすい『MechWarrior』
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本作の基本的な流れとしては、ストーリーミッションを受けて報酬を獲得し、メックやパイロットの強化を行っていくというもの。ミッションは偵察任務から敵の殲滅、捕虜の救出といった多彩な内容が用意されています。
前作『MechWarrior 5: Mercenaries』では経過時間などと相談しながら自分で自由に行き先を選びミッションを見つけ挑む形でしたが、今作では立場の違いもあり、次に挑むべきミッションは常に一覧の中から選ぶ形です。シミュレーションという設定で、クリアしたミッションの再プレイも可能です。言い換えれば、一般的な日本の「ロボゲー」に非常に近い進行のため迷うことはないでしょう。
ゲーム内では地形や施設などを「スキャン」することが可能で、ミッションで重要なオブジェクトへアクセスするほか、隠れている地雷を発見したり、物資を発見することができます。弾薬クレートを発見すれば武器の弾薬を補充できるので、ミッション中は定期的にスキャンをすることが重要です。
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戦闘は、4つのボタンに割り振られた武器を使い分けて行います。これまでのシリーズ同様にメックの操作では熱の項目があり、オーバーヒートすると攻撃やスキャンができなくなってしまいます。上手く熱を管理することが継戦のコツで、例えば川などの水場を利用すれば強力な攻撃を撃ちまくることも可能です。
なお、メックは腕部や脚部など細かなパーツに分かれていて、攻撃が集中すれば破壊されてしまいます。当然破壊された部分や内部パーツは使用不能となり、ミッション中は修理できません。基本的に敵の攻撃を避け続けることは難しい作品なので、遮蔽物の利用や、上半身を巧みに動かしてのダメージコントロールを行いましょう。
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もちろん、生き残るためには仲間との連携も必須です。本作ではリングメニューから各機に行動指示が可能で、敵への攻撃や指定地点への移動、プレイヤーとのフォーメーションなど、簡単に指示できます。味方のAIもそれなりに賢く、しっかり「部隊」として戦っている気分も味わえますよ。「バトルグリッド」と呼ばれる縮小マップモードでもRTSのような操作で味方により細かい指示を出すことができます。
本作はゲームとして非常に遊びやすく、ミッション中のヒントや弾薬回復など、適切な頻度で行われます。日本語対応なので作戦内容もわかりやすく、これまで以上に遊びやすく作られている印象です。
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クランのメックは強い!カスタムも自由
ジェイデン達が搭乗するのは「オムニメック」と呼ばれる、クラン特有の強力な機体群です。これは前作『MechWarrior 5: Mercenaries』で使用できた中心領域のメックに比べ優れた性能や規格を備えています。大きな特徴としては、「オムニポッド」と呼ばれるシステムで、これはゲーム内で、搭載可能な兵装のバリエーションを簡単に部位ごとに切り替えられるものです。
また、本作で重要なのがメックの耐久値です。メック修理にはミッション後に「作業員」を配置するのですが、1人で回復できる量が決まっているので、部隊全体が大きくダメージを受けると次回出撃時に全快できません。作業員の研究や人数を増やせば回復量も増やせますが、それにはミッションで得る専用のポイントが必要です。
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このポイントは、各武器種やシャーシの基礎性能向上を行ったり、部隊ランクで解放される新しいメックのアンロックの入手にも使用します。ミッションで得られるポイント数はある程度決まっているので、どの部門を強化していくのかを考えることが大切です。メックを使用していくことで旋回や移動などのカスタムも可能です。
また、戦果によってパイロットにも個別の経験値が入ります。この経験値で近接戦闘や電子戦、回避性能といった共通/固有のスキルも獲得可能です。各パイロットの搭乗メックも自由に設定できるので、スキル・メック・武器・研究といった項目を自由にカスタムすることで、自分だけの最高の部隊を作っていきましょう。
前作『MechWarrior 5: Mercenaries』では使用可能なパーツはミッションに現れた敵機体のパーツを回収したり、細かいパーツをあちこちで買い集めたりなどで一個一個RPG的に在庫を増やしていきましたが、今作ではそういった要素はなくカスタマイズ面では常にその時点でのすべての選択肢が(いくばくかの費用はかかるものの)使用可能です。
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本作で驚いたのは、初期で主人公が使えるメックから高性能の「ジャンプジェット」が備わっていたことです。また、カスタムで機動性も目に見えて変化するので、前作に比べても序盤からかなり快適な機動戦闘が可能でした。これが「オムニメック」の力か……!と言ってもゲーム難易度は高いので、困ったら素直に難易度設定を下げましょう。
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およそ5年ぶりのシリーズ新作となる『MechWarrior 5: Clans』は、クラン侵攻を描くというテーマを含め、かなりドラマチックなストーリーを現代基準のビジュアルで楽しめます。もちろん醍醐味であるメックのカスタムも自由度が高く、公式日本語対応を含め全体的に遊びやすい作品となっています。DLCのアートなども日本語解説があり、見応え抜群でした。
固有名詞の多さを雰囲気でやりすごせば、今作は深遠な『BattleTech』『MechWarrior』世界の入門としても良いかもしれません。気に入ったらあとで世界設定について調べることでより面白く、その他のシリーズ作品にも触れたくなるかもしれません。
ほかにも味方と敵で機体の系統が全く異なっていたり(敵側の機体には日本のアニメ的なデザインの機体もいたりいなかったりするので探してみるのも良いかもしれません)、味方側の小隊が5機編成のところ敵側は4機編成であったりなどの、世界設定に基づいた細かい部分もメカ物としては見どころです。
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なお、マルチプレイも試してみました。マルチプレイはホストがフレンドを招待するシステムで、Steam版では本作をプレイしたことのあるフレンドがリストで表示される仕様です(招待コードによるリスト登録もあり)。セッション中はホスト以外もメックやパイロットのカスタマイズが可能で、リソースもリアルタイムで消費されました。すごい!と思う一方で、参加したプレイヤーがリソースをいくらでも使えてしまうので信頼できる仲間と遊びたくなるシステムです。
ミッション開始時のブリーフィングやメック変更などもリアルタイムで、ホストでなくても見ているだけでなく、遊びやすい仕様になっている印象です。戦闘中も大きな遅延などはなく、ボイスチャットで連携を取りながらプレイ可能でした。一緒に遊んだフレンドが世界観に詳しい人なので、メックの名前や詳細などの話をたっぷり聞きながら戦えたのがシンプルに面白い……!
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海外では定番ともいえる『MechWarrior』シリーズ。近年の展開では日本語対応がありませんでしたが、今作でついに日本でも気軽に遊べるようになりました。その重厚な世界観やメックの雰囲気など、このシリーズならではの魅力を楽しむ大チャンスです。
開発によれば翻訳類のフィードバックも歓迎しているとのことで、せっかくの日本向けの展開に感謝して、プレイヤーもフィードバックを送る信頼関係が築けることを願いたいところです。同様に、今作の日本地域での売れ行き次第で前作『MechWarrior 5: Mercenaries』の日本語化が検討されるそうで、今後も日本に向けた対象を拡大してくれると嬉しいですね……!
『MechWarrior 5: Clans』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoftストア)/PS5/Xbox Series X|S(Game Pass対応)向けに日本時間10月17日9時に5,500円で発売予定です。(PS5版のみ手違いがあり記事執筆時点で配信が開始されてしまっているようです)