今回は、Devolver Digitalがパブリッシングを担当しNomada Studioが手掛け、10月16日に発売された『Neva』のPC(Steam)版プレイレポートをお届けします。
本記事はネタバレ要素を含むので、閲覧時にはご留意ください。
圧倒的に美しいビジュアルとストーリー
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本作は、2Dプラットフォーム形式のアクションアドベンチャー。生命が枯れ崩壊してゆく世界を舞台に、プレイヤーは若き女性剣士「Alba(アルバ)」とオオカミ「Neva(ネヴァ)」の成長と絆の物語を追体験していきます。
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執筆時点でのSteamレビュー数は1,926件中94%が支持する「非常に好評」ステータスを獲得。MetacriticではPC版が87と高得点を記録しています。ちなみに、Nomada Studioは2018年のデビュー作『GRIS』でも、革新的なゲーム性と美麗で独特なグラフィックが絶賛されています。
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目を引くのは、その圧倒的に美しいビジュアルと世界観。絵画のようなグラフィック、四季折々の世界を彩るグラデーション豊かなカラーワーク、「もののけ姫」からの影響も垣間見えるクリーチャーデザインや背景美術など、トップクラスの高品質なアート性が評価されています。
それだけでなく、二段ジャンプや空中ダッシュなどシンプルに纏まったアクション、派手さはないが操作感の良い戦闘、頭をひねったパズル要素といった確かなゲーム性も感じられました。
そして何より、ネヴァとアルバの過酷な旅路は、彼女たちの“交流と成長”を繊細に描き出し、素晴らしいサウンドも相まって個人的には「エモさ」を超えた心揺さぶる感動の物語だと実感しました。
コントローラー操作と難易度選択
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操作はキーボード及びコントローラーに対応し、筆者はXboxコントローラーを使用。操作感はとても素直で手触りも良く終始快適にプレイできました。
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難易度は、クラシックな「アドベンチャー」と物語に集中できる「ストーリー」から選択可能。今回はストーリーを選びました。
四季巡る“死にゆく”世界を冒険
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緑あふれる土地に、大きなオオカミと暮らしていた女性アルバ。ある時彼女は、生命を枯らす「闇の勢力」に襲われます。勇敢に剣で立ち向かうも親友だった彼を殺されてしまい、遺児である小さなオオカミ「ネヴァ」を連れ旅に出るところから、物語は始まります。
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豊かな草木が生い茂り、ほのかに差し込む陽光が煌めく森の中がスタート地点。季節は夏模様で、眠る小さな相棒ネヴァを起こします。アルバが明確に言葉を発するのはネヴァの名前を呼ぶ時くらいで、全編を通して非言語的な物語が展開されるのも特徴的です。
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そしてどこへ行っても色鮮やかで美しく幻想的な風景は、本編そっちのけで大量にスクショを撮ってしまうほど本当に魅力的です。オーガニックなサウンドがさらに没入感を高めていて素晴らしい。
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最初のうちはジャンプやローリングくらいしか出来ませんが、そのシンプルさゆえに世界観とマッチしてゲームのテンポを削ぎません。高低差があったり、左右に広がるステージも探索するというより「観光」しているような楽しい感覚でした。
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アルバとネヴァは常に行動を共にします。高い崖を恐れるネヴァに優しく呼びかけたり、そっと優しく撫でて抱きしめたり……小さなオオカミとの絆を深めていく過程はかけがえのない体験として記憶に刻まれていきます.。冒険を重ねていくにつれ、ネヴァへの愛着が深まっていくのでした。
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そして森を抜け、爽やかな空が広がる草原を通っていくと……
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突然地面から、真っ黒い手のようなものが生えてきました。そうです。これがあらゆる動植物の生命を枯らし、死にゆく世界へと変えている「闇の勢力」の正体です。
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闇の存在は禍々しい黒のオーラを纏い、様々な形状で美しい世界を蝕んできます。その姿は「もののけ姫」のタタリ神と「千と千尋」のカオナシを掛け合わせたようなモチーフで、ジブリ作品からの影響を色濃く受けているようでした。
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闇に支配されていく世界ですが、敵を倒すことで花が咲き元の自然が少しずつ戻ってきます。こうした演出自体がストーリーを紡ぐひとつの要素として機能しており、非常に美しいと感じました。
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一筋縄ではいかないダンジョンもアルバに立ち塞がり、クリアすると仕掛けが作動して物語が進行していきます。
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特にゲーム後半に登場する全てが鏡面反射するダンジョンは、トリハダが立つような美しさとアクション操作の難しさが際立った世界で、筆者のお気に入りのステージです。
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仕掛けを作動させて進んでいくと、巨大な闇のボスが姿を現します……!
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戦闘は、斬撃による通常攻撃とジャンプからの直下剣など派手さはないものの、操作感の良さからサクサクと繰り出せて気持ち良い。
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敵の攻撃にタイミングを合わせ、ジャンプや空中ダッシュで回避していき、隙を見つけては鋭い刃で切り裂いていきます。そして……!
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「ネヴァーーッ!」アルバの叫びに、小さくも勇敢な相棒ネヴァも加わり、見事フィニッシュブローを決めてボスを打倒。まるで映画のようなオオカミと人間の共闘シーンは非常に感動的で、涙腺がゆるいお年頃の筆者は思わず泣きそうになりました。
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それまでの暗闇から辺り一面に花が咲き誇り、周りは生気に満ち溢れ出しています。印象的な光景を目の当たりにしてめでたしめでたし、素晴らしいゲームだった……と思わず感激してしまいましたが、物語はまだ序盤。アルバたちの旅はまだまだ続きます。
「エモさ」の先にある感動の物語
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季節は秋へと移ります。旅の過程を「四季」の変化で表現している点も叙情性が高く、個人的に素晴らしい構成だと思いました。
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しかし時間の経過と同時に、世界はさらなる闇の侵食が進み、道中は過酷さを増していきます。けれども、変わったのはそれだけではありません。
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アルバの膝丈くらいだったネヴァも少しずつ大きくなり、ツノが伸びて体格もたくましく変化していきます。
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小さかった頃のネヴァは、敵に怯えていましたが、今やアルバのサポート役として攻撃も可能になりました。家族として、苦楽を分かち合う仲間としても著しい成長が見られます。
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艱難辛苦を乗り越えながら、オオカミと人間が共に歩み、共に戦う姿は実にエモーショナル。特にボス戦でのフィニッシュシーンは極上のカタルシスを感じました。
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しかし何より驚いたのは、物語の本題が「闇の勢力をやっつけて世界を救う」ことではなく、「アルバとネヴァの絆を描いたこと」が分かった瞬間でした。
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確かに、ストーリーが展開するに従ってネヴァに対してのアクションが増えていきます。撫でたり抱きしめたり、ネヴァに乗って道を走ったり、一心同体となって敵に攻撃してみたり……とどのつまり、すべてはアルバとネヴァの関係性に集約されていたのです。
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季節は巡り、春が来ました。生命の息吹きが聞こえる美しい森で休む、アルバとネヴァ。そして小さな新しい家族「ブロマ」。世界は平穏を無事取り戻せるのか、そしてオオカミと人間の旅路の行方は―。
「エモい」という言葉では表現しきれない、その先にある衝撃の結末と感動の物語は、ぜひプレイヤー自身で体験してください。
本作の良かった点は、息を呑むほど美しく幻想的な世界を、相棒のオオカミと一緒に思う存分冒険できるところ。そして、程よい戦闘と謎解きはゲームのテンポを失うことなく、小気味よく機能していました。
クリア時間はだいたい4~5時間ほどで、サクッと良質な短編映画を見る感覚でプレイできるのもグッド。アルバとネヴァの絆を描いた感情豊かなストーリーは、序盤においてすら感動してしまい、全編を通して心を揺さぶられ続けました。プレイした人間の心と記憶に残る素晴らしい作品で、是非とも実際に体験して欲しいと思います。
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タイトル:『Neva』
対応機種: PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
発売日:2024年10月16日
著者プレイ時間:5時間
価格:2,300円
※製品情報は記事執筆時点のもの
スパくんのひとこと
アルバとネヴァの物語が最高…!最高に感動するスパ…!ぜひともプレイして欲しいタイトルだスパ!