『inZOI』は2025年3月28日より早期アクセス開始予定のライフシミュレーターです。同ジャンルの中でもリアルなグラフィックが特徴の本作を心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。
本作を手がけるKRAFTONは3月19日に『inZOI』オンラインショーケースと題する生配信を実施し、早期アクセスの価格やロードマップを発表しました。気になる価格は39.99米ドル。さらに、正式リリースを迎えるまではすべてのアップデートとDLCが無償で提供されます。
同時に発表されたロードマップでは、継続的にゲームを完成させていく3ヶ月単位のスケジュールとその具体的な目標が示されました。ただし、現在のロードマップは確定したものではなく、開発はユーザーとコニュニケーションを取りながら進められるとのことです。
ロードマップによると、5月には「Maya」や「Blender」のプラグインといったMod制作の一部機能が提供されます。また、8月8日の“猫の日”には猫をコンセプトとする都市が追加され、同時に地下とプールの建築機能、AIによる自動建築機能が追加されます。さらに、死亡したキャラクターが幽霊になってプレイできるようにもなるそうです。
一方、この発表に先立って行われたインフルエンサー向けの説明会では、様々な追加情報が明らかにされました。生配信で一般公開された情報も含めて、本稿ではその全貌をご紹介します。
なお、記事中の画像はインフルエンサー向け説明会の内容とは直接関係ありません。
動きまで自動生成する“クリエイティブツール”
筆者が後日説明会の様子を収めた資料を見て一番強い印象を受けたのは、“クリエイティブツール”と呼ばれる一連のコンテンツ作成支援ツールでした。
中でも特に驚いたのが、画像からキャラクターのポーズを自動生成する機能です。この機能を使えば、プレイヤー自身がポーズを取っている写真をツールに入力するだけで、AIが自動的に同じポーズを生成してゲーム内のキャラクターに適用してくれます。例えば、プレイヤーが片手をあげているところを撮影した写真を入力すれば、キャラクターも同じように片手をあげるといった具合です。

この機能にはまだ続きがあります。静止画の代わりに動画を入力すると、動画に写っている人間と同じ動きをキャラクターに適用できるのです。資料では、動画の中で踊っている人間と同じダンスをゲーム内のキャラクターが踊っていました。さらに、プレイヤーの動きをカメラで撮影すれば、モーションキャプチャー技術によってキャラクターをリアルタイムで動かすことさえ可能になります。その様子はまるでVTuberのようでした。
そのほか、クリエイティブツールについては次のような内容が明らかにされました。
建築:自由度はかなり高く、30階までの建物が建築可能。地下とプールは開発中。
イベント:パーティなどのイベントを作成可能。キャラクターは自動制御ではない。

キャラクターが生き生きと暮らす“世界”
『inZOI』にはキャラクターたちが暮らす世界があり、画面に表示されていない部分でも常に大勢のキャラクターが活動しています。例えば、あるキャラクターが公園で上手い歌を歌えば、通りすがりの人がその様子をスマートフォンで撮影し、SNSに投稿して街中に噂が広がることもあります。その噂を聞いた人が最初のキャラクターの知り合いなら、仲の良さに応じて褒めてくれたり、悪いメッセージを送ってきたりすることもあります。

説明会では、本作の要求仕様が高いのはそうしたリアルな世界を実現するためだと紹介されていました。また、ゲームエンジンに最先端の「Unreal Engine 5」を採用したおかげで、画面内に大勢のキャラクターが登場しても従来のように動作が重くなることはないそうです。
開発者は、いつか映画「フリー・ガイ」のように、ゲームの世界に入ってキャラクターと相互作用できる“本当の世の中のようなゲーム”を作りたいと壮大な夢を語っていました。
そのほか、世界については次のような内容が明らかにされました。
天候:天気の変化があり、暑い時期に厚着をすると熱中症になる。
自然災害:最近は自然災害が多いので開発を中断した。プレイヤーが望むなら今年中に導入する。

これからの発展が楽しみな“人間関係”
『inZOI』ではキャラクター同士が複数人で会話をしたり、座って会話をしたりすることができます。また、NPCが家を訪問することもあります。しかし、会話をしながら食事をするといったマルチタスクは技術的に難しく、まだ実現していないとのことです。何十年も掛けて開発されてきた『The Sims』シリーズに比べればまだまだ及ばないところがあり、マルチタスクは年内を目標に完成を目指したいと説明されていました。

また、キャラクター同士の人間関係の発展はプレイヤーが詳しく確認することはできず、プロフィールから間接的に推測する形になります。これは人間関係の発展段階をある程度隠した方が神秘的になるからだそうです。人間関係には相性の概念も存在します。
赤ん坊についての説明では開発にまつわる苦労話が語られていました。赤ん坊がいると様々な行動が制限されるため、“育児が大変なのは現実でもゲームの開発でも同じ”なのだそうです。
そのほか、人間関係については次のような内容が明らかにされました。
遺伝:赤ん坊は両親に似る。ただし、現実と同じくすべての特徴が遺伝するわけではない。

食べることには困らない“日常生活”
キャラクターが今日どこに行って何をするのかといった日常生活のスケジュールは自由に編集できます。勤務時間を増減することも、家族とスケジュールを合わせて待ち合わせをすることもでき、イベントシステムを使えばパーティやデートを企画することも可能です。

キャラクターは様々な能力を持っています。例えば、絵を描いたり、プログラミングをしたりすることができ、制作したものを販売することも可能です。描いた絵や中古の家具を売れば特定の職業につかなくても生活できます。
また、スマートフォンを使えば修理屋や掃除代行を呼んだり、出前を頼んだりすることができます。ゲームに登場する食べ物は国ごとに調査を行い、美味しそうにデザインしたとのことでした。
そのほか、日常生活については次のような内容が明らかにされました。
犯罪:罪を犯せば逮捕されるが、発覚しなければ問題ない。監視カメラも登場する。

専門知識なしに楽しめる“カスタマイズ”
キャラクターのカスタマイズはアジアと西洋でユーザーの要望に差があり、ユーザーからのフィードバックを受けて顔の傷やタトゥーの実装に力が入れられました。ヒゲの種類も増え、多彩な体型が作成可能になっています。

しかし、残念ながらキャラクターの身長を調整することはできません。身長を変更するとキャラクター同士の動きが食い違ってしまうためだそうです。また、ファンタジー要素についてはユーザーの反応が良ければ導入したいとのことでした。
さらに、キャラクターが着る衣服や装飾品をプレイヤー自身が描いてカスタマイズすることも可能です。AIによるサポートのおかげで、専門知識がなくても簡単にカスタマイズできるそうです。
そのほか、カスタマイズについては次のような内容が明らかにされました。
Mod:配布予定のプラグインとエディターで開発する。パッケージとして導入することでキャラクターを簡単に変更できる。

あっと驚く回答も飛び出した“質疑応答”
インフルエンサーとの質疑応答ではマルチプレイに関する質問も飛び出しました。開発チームの90%はMMORPGを開発してきた人間なので、当初は『inZOI』にもマルチプレイ要素を導入しようとしたそうです。
しかし、キャラクター間の相互作用が膨大な量になるため、今回はシングルプレイだけに絞って開発が行われました。ユーザーからの要望があればマルチプレイ要素も作りたいとのことですが、その場合でもいきなりすべてを作るのではなく、相手のキャラクターと会って話をするといった基本的なところから徐々に作っていくそうです。

また、別の質問ではキャラクターが遭遇する事故についても語られました。キャラクターには事故死する可能性があり、歳を取るにつれて自然死する可能性も高くなっていきます。
事故には火災や感電、食中毒など様々な原因がありますが、中でもユニークな原因は“承認欲求”でしょう。キャラクターには承認欲求という要素があり、SNSで悪いことをしすぎるとメールが殺到してストレス死してしまうのです。早期アクセスではこうした要素へのフィードバックも期待しているとのことでした。

そのほか、質疑応答では次のような内容が明らかにされました。
仕事:半日だけ働くことも、リモートワークすることも可能。働きたくなければマネーチートもできる。
税金:資産が増えるほど税金も増える。税金を払えなければ家具を差し押さえられる。
お酒:お酒は登場しないがパブは存在する。
料理:材料があれば料理をすることができる。レシピ自体を作ることはできない。
ペット:早期アクセス後に余裕があれば来年の初めまでには導入できる。
宗教:宗教の概念はないが建物は存在する。死後の世界もないが、NPCを通じて幽霊と会話することはできる。
NPCの外見:編集できるのは自分の外見だけでNPCの外見は編集できない。群衆の服装は変更可能にしたい。
子供の身長:身長が連続的に高くなることはない。『ポケットモンスター』の進化をイメージして欲しい。
最適化:グラフィックと最適化はトレードオフの関係にあるが、最善を尽くしている。
ゲームパッド:いずれ対応する予定。PC版と並行して家庭用ゲーム機版も開発している。
BGMの著作権:すべての音源は直接製作した。ストリーミングサイトにもアップロードする予定。
Modマーケット(有料Modの配信支援機能):実装する予定。協力会社も決まっている。

生配信の『inZOI』オンラインショーケースでも質疑応答の時間が設けられ、数多くの質問が寄せられました。その中では、NPCとの対話にAIを応用する機能も開発しているとの回答も飛び出しました。
また、正式リリースはいつになるのかという質問に対しては、「頑張って早くリリースしたいと考えていますが、ユーザーが完成したと認めてくれたタイミングが正式リリースの時になります」と回答していました。
そのほか、質疑応答では次のような情報が明らかにされました。
睡眠:睡眠時は30倍速でプレイできる。早送りするには家族全員が眠る必要がある。
自動車:渋滞しない交通システムを開発するのには苦労した。
飛行機:飛行機が実現できるかはわからないが、滑空を提案した開発者はいる。
アイドル:職業としてのアイドルは未実装。いつかは作りたい。
世界の拡張:拡張は続けるが、単純に土地を広げるのではなく機能的に異なる空間を増やしたい。
イースターエッグ:隅々に隠されているので探してみて欲しい。
コラボ:自動車・家電・ジュエリーなどの会社から問い合わせがあった。

全体を通じて、開発者からは本作への関心の高さに驚いているとの声が多く聞かれました。関心が高いのはありがたいものの、期待が大きいとそれだけ失望も大きくなるため、それが開発のプレッシャーになっているそうです。開発を長く続けていると様々なアイデアが出てきますが、それだけに方向性を見失いやすく、早期アクセスを通じてユーザーからの率直なフィードバックをもらい、改善を進めたいとのことです。
現在の『inZOI』にはまだ足りない点が多く、バグも少なくないそうです。しかし、現在も開発は続けられており、その中には「新婚2人の1階建て住居」といった条件を入力するだけでAIが自動的に家を建ててくれる新機能も含まれています。
本作の将来に関心のある方は、ぜひ早期アクセスに参加して開発者にフィードバックを送ってみてはいかがでしょうか。
『inZOI』は、PC(Steam)向けに2025年3月28日より早期アクセス開始予定です。