―――就任から一年を振り返っていかがでしたか?
あっという間でした。当時はPS4には日本向けのタイトルが無いと言われている状況で、これだけ揃いますという話を一年前にしました。それが年末商戦から年度末にかけて発売され、本体の実売も一段上げる事が出来ました。先日発売された『メタルギアソリッド5』も大いにハードを牽引してくれました。一年前に、こういう状況を目指さないといけない、と考えた事はかなり達成されたと思っています。
―――PS4も爆発的に普及するフェーズに入ったと
そういうところに向けて勝負できる状況にはなったと思います。値下げも、単純な値下げではなく、ラインナップとセットで勝負できるタイミングになったという背景があります。
―――5000円の値下げはどのようにして決めたのでしょうか?
過去の例はもちろん参考にしましたし、普段から様々なユーザー調査を行っていて、どのくらいであれば購入を後押しするかという点からも考えました。値段も手頃になって、ベイカバーのカラーバリエーションもソニーストア限定ですが販売を開始します。自分にあったスタイルで、これまでより多くのお客さんに手に取って貰えるんじゃないでしょうか。
―――コアゲーマーには既にある程度広まって、更に広げていくという考えでしょうか?
コアという定義も難しいのですが、『メタルギアソリッド5』がかなりハードを牽引したのは実は驚きでした。というのも、ターゲットとするお客さんはかなりPS4を既にお持ちなのではないかと思っていたからです。PS4版とPS3版の販売本数を見れば、PS4の構成比が上がってきたのは事実ですが、PS4がコアなユーザーさんに普及し切ったかと言えば、まだまだな面はあるでしょうね。
―――かなり良い状況にもってこれていると感じますが、この一年間、社内ではどのような事が議論されていたのでしょうか?
幾つか目指すべきことはあるのですが、まずはPS3のレベルまでに到達しないといけない、そのために必要なタイトルを揃えて、適切な販促活動をしていかなきゃいけないというのはありました。
ただ、我々が本当に目指さないといけないのはもっと先で、PS2のような普及を目指さなきゃいけなくて、その為に何が必要なのかというのは悩んだし、議論を尽くした部分です。その1つの答えが「できないことが、できるって、最高だ。」というキャチコピーで伝えている一連のメッセージでもあります。
―――PS2なみの普及というのはかなり高いハードルでもありますね
でもそこに向かわないと、ちょっとカッコつけた言い方ですが、日本でのゲーム・エンターテイメントを文化にしたとは言えないと思うんですね。だからやりたいと。
―――そこまでの道筋はある程度見えているのでしょうか?
今回、ラインナップが充実して値下げも行って、PS3のレベルに速く到達しないといけない、という部分に関しては勝負できる状況になっていると思います。それがどれだけ速く実現できるかは販売の勝負で我々次第でもありますが、道筋は見えたと。その先は簡単じゃないので、継続的に粘り強くメッセージを伝えていく必要があると思います。今回のキャンペーンのように、ゲームでしかできない楽しさ、来年のPlayStation VRのようなものも含めて、ゲームの次の可能性を伝えていく必要があるでしょうね。
―――指標は販売台数でしょうか?
普及を測るという意味では台数は考えています。ただ、大きな意味では、PS4だけでなく、PS Vitaや、PS Plus、PSNなどを含めたトータルでのプレイステーションのアクティブユーザー数を向上させていくのが大目標ではあります。もっと言えば、先ほども言いましたが、ゲームを本当の意味での文化にしていく、ここを目指したいですね。
―――ネットワークサービスに言及されたので聞きたいのですが、ようやくPlayStation Nowの日本展開が始まります。既存のPS Plusなどとの関係はどのように考えていらっしゃいますか?
現時点ではPlayStation Nowは単体のサービスとして提供していますが、PS Plusというサブスクリプションモデルもありますので、何かしらの関わりあいをもっていくことは考えられます。まだ現時点ではβサービスですので、どのような形態であればゲームのストリーミングサービスが価値あるものになるのか、見極めていきたいと思っています。
―――様々なデバイスで利用できるという点も特徴ですが、ソニー以外のデバイスへの広がりはいかがでしょうか?
海外ですが既にサムスンのスマートテレビへの搭載が決定しています。具体的にお話できることはないのですが、採用したいという話があればもちろん話をしますし、我々の側から提案にいくこともあるかもしれません。
―――PlayStation Nowはどのように進化していくのでしょうか? 既存のビジネスに影響を与える可能性も否定できないと思いますが
まずはPlayStation Nowを利用してくれる方にとって良い方向を迷わず追求していければと思います。5年、10年を考えると、技術トレンドに影響されますし、ユーザーさんがどういうスタイルを望むかによって展開は変わっていきます。同様のことが音楽業界でも起きていますが、抗えないトレンドというのはあるので注視していきたいと思っています。現時点では、VRも含めたコンソールでしか出来ない体験と、気軽にゲームを遊ぶ体験と、全くバッティングがないわけではないですが、棲み分けは出来るのかなと思います。
―――新作ゲームにパッケージ版とダウンロード版があるように、ストリーミング版が並ぶように近い将来なるでしょうか?
今のところは話せないのですが可能性はもちろんあります。既存のビジネスとの整合性はきちんと考えないといけないのですが、適切な形でゲームを提供していくことを考えています。
―――PlayStation VRはソニーグループの戦略商品にもなり得ると思うのですが、どのような展開を考えられていますか?
現時点で言えることはないのですが、おっしゃる通りでPlayStation VRには非常に大きな可能性があると考えています。ゲームショウのデモでもノンゲームを置きましたが、ゲームクリエイター以外の皆さんからのアプローチも非常に多く心強く思っています。最初はゲームだろうと思いますが、定義は広く考えて展開していきたいと思います。映画や音楽などグループには様々なコンテンツがありますので、既に議論は進めています。
―――「コール・オブ・デューティ」最新作をSCEJAがパブリッシングすることになった経緯は?
そこはアクティビジョンさんに聞いて頂いたほうがいいと思いますが、日本でも少なくない「コール・オブ・デューティ」ファンの方がいらっしゃいますので、ちゃんと新作を届けて、今までよりも良い環境を提供するというのがやるべき事だと思います。その上で、『Destiny』や『GTA』など販売状況は変わってきているとはいえ、まだ欧米産のゲームに抵抗がある方も少なくないので、楽しさをきちんと伝えていくという役割も果たしていきたい思います。
―――今後期待しているゲームがあれば教えてください
これは答えるのが非常に難しい質問なのですが(笑)、幾つか考えていることがあります。
まず最初に、先ほどもありましたが、欧米のゲームの楽しさもちゃんと伝えていきたいということです。『コール オブ デューティ ブラックオプスIII』や『Star Wars バトルフロント』(エレクトロニック・アーツ)など非常に多くの方に訴えかけるゲームが続きますので、この機会に拡大していきたいと思っています。
次に、Vitaについては、いま『マインクラフト』が子供たちの間でとても遊ばれています。子供たちがコントローラーを使って遊んでいるというのをとても大事に考えていて、なんならニンテンドー3DSでもいいからコントローラーで遊んで欲しいと。そういう意味で『マインクラフト』が流行っているのはとても大事で、かなり積極的に活動していますが今後も続けていきます。『ドラゴンクエスト ビルダーズ』(スクウェア・エニックス)や『エアシップQ』(Cygames)など子供たちでも楽しめるゲームが続きますので、広がりを期待しています。
最後にPS4は王道タイトルがどんどん出てきます。『ドラゴンクエストヒーローズ2』(スクウェア・エニックス)や『龍が如く 極』(セガゲームズ)など、皆がプレイステーションに期待するゲームが揃ってきました。あ、ファーストパーティからも大型DLCですが『Bloodborne: The Old Hunters』も登場します。広がっていくプレイステーションの世界をぜひ楽しんで欲しいと思います。
―――どうもありがとうございました
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