RPGの醍醐味といえば世界を救うようなワクワクの大冒険、そして、かけがえのない仲間たちとの出会いと絆の物語ではないでしょうか。今から30年前の1995年、そんな醍醐味を備えた、“108人の仲間”が登場するRPG『幻想水滸伝』が登場しました。
2025年3月6日に発売された『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』は、これまで本編・外伝を合わせて合計11作が発売されている同シリーズの起点となる第1作、そしてシリーズ人気の発火点となった第2作をセットにしたリマスター作品です。
HDリマスター版では、背景などをオリジナルのイメージをそのままにHDグラフィック化したほか、フィールドも一新。UIなど一部機能の改善やサウンドの高品質化、倍速機能の搭載やオートセーブなど、さまざまな面で現代向けにリマスターされています。

本稿では『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』のレビューをお届け。なお、内容に関してはコナミデジタルエンタテインメントから提供されたPC(Steam)版でのプレイを基に制作しています。
PS時代の2作品がセットで楽しめる
シリーズ初代『幻想水滸伝』は、その名前の通り中国の「水滸伝」をモチーフにしています。「水滸伝」は簡単に言えば世が乱れ、腐敗した政府を倒すべく108人の豪傑が集まり立ち上がる……という物語ですが、本作『幻想水滸伝』はさまざまな種族や勢力による、よりファンタジックな世界が描かれます。
主人公は帝国将軍の息子として育ち、やがて数奇な運命に巻き込まれて圧政を続ける祖国に解放軍として立ち向かいます。通常のRPGだけでなく、大規模の戦闘イベントや一騎打ちなど、その後に繋がるさまざまなシステムの根幹が築かれている一作です。




続編タイトルの『幻想水滸伝II』は、前作の3年後のストーリーを描く作品です。王国と都市同盟の不毛な戦争に少年兵部隊として参加した主人公と親友・ジョウイの2人が、やがて大きな力を持つ存在へと成長しつつ、それぞれの道を歩んでいくストーリーを描き出します。
宿星に導かれた108人の仲間というシリーズの特色はもちろん、前作から各種システムが大きく進化・改善・洗練されています。さまざまな思いが交錯する印象深いストーリーの良さはもちろん、ゲームとしてのやりごたえも大幅にアップしています。




ナンバリング作品で世界観を共有している本シリーズの中でも、時代設定が近いプレイステーション向けの初期2作では、両作を通じて登場するキャラクターも多くいます。また、この2作品はセーブデータのコンバートによる「おまけ」もあり、もちろんリマスター版でも引き継ぎが可能です。


歯応え抜群の戦闘!出し惜しみは禁物
ゲームは基本的にメインストーリーを進めながらフィールド上の街や施設などを訪れていく、オーソドックスなRPGスタイルです。街で情報を集めたり、買い物をして準備をしながら敵やダンジョンなどを攻略していきます。
パーティー構成は主人公を含め6人で、ストーリーで強制加入や入れ替えが発生します。第1作『幻想水滸伝』では、本拠地を手に入れるまではパーティーが固定されています。各キャラは攻撃距離が異なるので前衛/後衛に適切に配置しましょう。



戦闘はターン制のコマンド入力方式。通常攻撃以外にも「紋章」による魔法やスキル、特定キャラによるコンビ攻撃「いっしょに」なども用意されています。また、戦闘から逃げる際に敵にお金を払って確実に成功させるコマンドも存在します。
本シリーズは敵が強く、特に序盤では複数の敵が出てきたら壊滅状態になることも珍しくありません。紋章による魔法攻撃は回数制ですが、出し惜しみしない選択肢も重要です。また、アイテム補充や装備の強化も忘れてはいけません。レベルアップは早いので、しっかり育成する手応えも得られます。





回数制の魔法と違い、基本的にスキルの方には回数制限はありません(デメリットが存在するものもあります)。いかにして戦いやすい構成やスキル・魔法を使い、そして倒しやすい敵を見つけて経験値を稼ぐかを考えていきましょう。




集めろ108人の仲間たち!
108人の仲間が登場するのが大きな特徴の『幻想水滸伝』シリーズ。ゲーム内では主人公をリーダーとする本拠地を入手することで本格的な仲間集めがスタートします(『II』では序盤からある程度は勧誘可能)。
仲間になるキャラクターは歴戦の戦士から商人、こそどろ、謎のテレポート系魔法使いまで非常にバラエティ豊かです。仲間にするには話しかけるだけでなく、いくつかの手順が必要だったり、特定のキャラクターを編成しておく必要があったり、さまざまな条件が必要な場合も多めです。




仲間には戦闘要員と非戦闘員がいて、一部のキャラクターを勧誘すれば、買い物や倉庫、鍛冶屋、BGM変更、テレポートといった施設がアンロックされていきます。ん『II』では料理要素もあり、さまざまな食材を入手することもできるので、仲間が増えれば増えるほど便利になっていきますよ。

仲間が増えれば本拠地レベルもアップしていき、新たな勧誘者が増えることも。なによりも、仲間が増えれば本拠地もどんどん賑やかになっていくので、視覚的な面でも魅力が上がっていきます。もちろん“すべての仲間を集めるメリット”もあるので、積極的に仲間を探していきましょう。



ただし、一部キャラクターはかなり加入条件が難しく、ほとんどノーヒントの対象も。また、選択によっては仲間にならないキャラクターも存在します。苦労して仲間を探し求めるのも『幻想水滸伝』の楽しみなので、各地を巡って出会いを求めていきましょう。



リーダーとしての「戦争」、戦士としての「一騎打ち」
本作では、通常のRPGパートだけでなくストーリー上で「戦争」イベントが発生します。『幻想水滸伝』ではコマンド選択式のストラテジーで行われ、3すくみの戦略といくつかの計略を駆使しながら敵勢力を全滅させれば勝利となります。『幻想水滸伝II』ではシミュレーションRPG方式で行われます。
戦争イベントは、各作品とも仲間の数で大きく戦力に影響します。『幻想水滸伝』では各種コマンドの威力が上がり、『幻想水滸伝II』ではユニットの性能に大きく影響します。重要な要素として、戦争イベントで被害を受けるときに「仲間キャラクターが死亡する」可能性があることにも注意が必要です。




『幻想水滸伝』シリーズは戦闘に秀でた者、サポートが得意な者など、個性豊かな多くの仲間が登場します。その中で、戦争で『I』なら盗賊であれば「こそどろ(敵の行動予測)」を使えたり、『II』なら医者が「治療(味方ユニットを回復)」を使えたりと、キャラクターに応じた能力を使えます。
また、ストーリー上では敵との「一騎打ち」が発生することも。一騎打ちは攻撃・防御・捨て身の3すくみで行われます。ゲーム内では、一騎打ちはコマンドの優劣だけでなくキャラクターのステータスも大きく影響するので、レベル上げや装備などの準備はしっかり考えておかなければなりません。



ストーリー上での重要イベントである「戦争」で、プレイヤーの仲間集めの努力は選択肢の広がりという形で“恩恵”を感じられます。リーダーとして軍勢を率いる「戦争」、戦士として挑む「一騎打ち」は、壮大な物語を彩るアクセントとしても大きく機能しているのです。




現代向けの改善もあるが親切とは言えない部分も
今から30年前に発売されたシリーズ第1作『幻想水滸伝』。108人の仲間という設定を活かした各種システムは印象的ですが、ゲームとしてはやや不親切に感じられる部分も多めです。今回のリマスター版では多くの点で改善されていますが、それでもやや不便に感じることも少なくありません。
アイテム関連は『I』で最も手のかかる部分です。ゲーム内で各キャラクターが持てるアイテムは限られています。倉庫の開放は少し遅いので、序盤はとにかくアイテム枠のやりくりに苦労します。また、パーティー外の仲間のアイテムにアクセスできないので、装備などの調整に少し手間取ります。


また、仲間集めの面白さはあるものの、ストーリー上でのパーティー強制加入が多い、キャラクター自体にも先天的な能力や「いっしょに」の組み合わせなどの要因で本質的な性能差があるなど、意外と編成の自由度が少ないという面も。もちろん誰でも装備や強化、紋章などである程度活躍はできるのですが……。
本作の経験値補正で育成自体はしやすく、敵の強いエリアで数回戦えばすぐにレベル差を埋められるのは遊びやすい部分。ストーリー上の強制加入が多いゲームですが、少しフィールドやダンジョンでレベル上げすれば最低限の戦力にはなってくれます(装備差もありますが)。



システム面では『II』はアイテム袋の実装、宿屋での宿泊時にセーブも同時にできるように、アイテムや技効果が見やすくなるなど、前作から大きく改善されています。リマスター版で宿泊&セーブなどの機能は『I』にも追加してくれると嬉しかったかな、と思います。
エンカウント率がわりと低く、レベルアップも早いので、テンポの良さは抜群。その上でいくつかリマスター版向けの仕様改善で、より遊びやすくなっているのは間違いありません。



108人の仲間を集めるというテーマの『幻想水滸伝』シリーズは、オーソドックスでやりごたえのあるRPGです。その上で独自の「戦争」システムや「一騎打ち」などのイベントにより勢力のリーダーとしての主人公の存在を際立たせています。
オリジナル版の仕様もあり、やや不親切な部分もありますが『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』では、さまざまな追加機能や読み込みの早さでほぼストレスを感じさせません。かなり快適な環境でシリーズの原点とも言える初期2作をプレイできるのは、とても喜ばしいことです。



すべての仲間を集めたり、イベントをこなすのは決して簡単ではありません。世界を巡り、ときには謎を解き、成し遂げた達成感は素晴らしいものがありますし、相応の“結末”も待ち受けています。連続して遊ぶことで、キャラクターとの再会なども味わえるので、じっくりと遊んでほしい一本です!
Game*Spark レビュー『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』 PC(Steam/Epic Gamesストア/Windows)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/ニンテンドースイッチ 2025年3月6日リリース
あの『幻想水滸伝』がリマスターで登場!シリーズ初期2作品をたっぷり楽しめる
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GOOD
- 「108人の仲間」を集めるという圧倒的インパクト
- シリーズ人気作『幻想水滸伝II』のシナリオは必見!
- ゲーム開始時点から倍速機能開放など、現代向けの改善が嬉しい
BAD
- オリジナル版から変わらない不便・不親切な点はやや人を選ぶかも