
ついに来たシリーズ最新作『モンスターハンターワイルズ(MHWilds)』発売、皆さんはどのようにハンターライフをお過ごしでしょうか?『モンスターハンター(以下、モンハン)』は20年を長い歴史を誇る一方、本作は過去シリーズから革新的な新要素も引っ提げているため、既存ファンや新規プレイヤーのなかには“まだゲームを買う決心がついていない…”という方もいるかもしれません。

この記事ではそんな本作のクリア後まで含めた全体のレビューをお届け。筆者は『モンハン』シリーズを外伝含め大半を遊んでいる都合上、経験者としての視点も入りますが、初心者向けも想定してゲームを見ていきます。
筆者の本作プレイ状況として、執筆時点で実装されているメインミッションを完了し、勲章(実績・トロフィー)を86%集めた段階です。
なお、本レビューのネタバレの程度は“ストーリーの詳述は無し”、“ストーリーに直接関わらないシステムは具体的に記述”というレベル。本項以降のスクリーンショットはゲームED後に撮影したものも含まれており、公式から発売前に告知されているシステムやモンスターのほか、メインミッションChapter2までのストーリー部分のものを掲載しているため、最低限にネタバレを抑えたい方はご注意ください。

難易度に関する記述は“「ソロオンライン」で「オトモアイルー」と「プレイヤー」だけの状況”を基準としつつ、過去作との比較は直近のシリーズ作『モンスターハンターワールド(以下、MHW)』と『モンスターハンターライズ(以下、MHR)』を中心に行っています。
記事の内容は“2025年03月05日時点までのPC版におけるプレイ”を元にしており、発売後の大型アップデートなどは反映されていないためご了承ください。
『モンハン』のステレオタイプを打ち破る!?前代未聞のストーリー&難易度設計

まずゲームの物語本編にあたるメインミッションですが、結論から言うと“過去作でもトップクラスの丁寧な描写”である一方、その難易度はシリーズでも“一部は少し難し目”でした。ストーリー展開は“禁足地”という未知の領域に主人公たちが踏み込んでいく設定上、シリーズの中でも『MHW』に近め。しかし本作は、“現地住民がいる”という要素もあって“人同士の交流”もそれなりに描かれています。
従来の『モンハン』で描かれた文化圏とは違う地を舞台にしているほか、現地の集落と狩猟のフィールドが地続きになった影響でモンスターを身近に感じやすく、“そこで生きる人々にとってモンスターがどのくらい脅威なのか”という描写の説得力も増しています。

キャラクター性の観点では極端に濃い人物はおらず、作中における自身の行動を客観視したり、プレイヤーを代弁するかのように他者の行動を咎めたりできる者が大半のため、“特定のキャラにヘイトが貯まらないようにする配慮”を感じました。
おかげでストーリーに集中しやすくなった今作ですが、EDまでのボリュームはムービー等をスキップしなければ大よそ10時間で、各Chapterは新しいフィールドの紹介から始まり、ホッコリからハラハラな展開まで、それぞれメリハリのある1つの物語として楽しむことができ、どこか『モンスターハンター4』をそのままリッチにしたような構成です。

個人的には“過去作や関連書籍を読み漁るレベルのファンほど遊んで欲しい”部分もあるストーリーとなっていました。強いて言えば、ストーリーのシームレス化と重厚化に伴う拘束時間の長さが2、3キャラクター目を作った際の再プレイ時に気になったため、そこを受け入れられるかという点は好みが分かれるかもしれません。

そんなメインミッションのゲーム的な難しさは、シリーズでも少し変わった難易度曲線となっており、ストーリーの起伏に合わせて上下し、“まだChapter1なのに!?”と思ったら“次のChapter開始時で簡単に…”と、モンスターの登場順が強さに直接結びつかないことも。直近のコンソール向けシリーズ作『MHR』や『MHW』と比べると、難易度「下位」の区分にしては局所的に難しくなる場面も見受けられました。
一方、ED後に挑める難易度「上位」やそれに伴うメインミッションに関しては、それまでと比べてせいぜい1.1~1.3倍の難しさです。本作モンスターは攻撃の予備動作が大き目ですが、「上位」も基本的には同じため、この段階まで来ると装備が優秀になる関係で“むしろ相対的に簡単”と感じる人もいるかもしれません。

総じて“過去作より難易度の上下が激しい”が“最終的な上限はそこまで高くはない”という仕上がりです。これは後述する「サポートハンター」や「マルチプレイ」を考慮せず、“筆者個人の『モンハン』経験値を考慮しなかった”場合の評価のため、使えるシステムを全て活用する予定だったり、過去シリーズの高難度作品を乗り越えてきたりしたユーザーは最後まで楽に感じるかもしれません。
発売前の時点でより手強いモンスターの追加が告知されているため、高難度コンテンツ求めるプレイヤーは4月に予定されているアップデートに注目するといいでしょう。
本作メインミッションはストーリーも難易度設計も、“『モンハン』はこういうもの”というステレオタイプを持つヘビーなファンには驚きがあるかも知れない内容となっており、何も知らない完全新規ユーザーでも遊んでみて欲しい純粋なクオリティの高さです。
優秀過ぎるオトモアイルー!一方で課題を感じるセクレト、評価の分かれそうなサポートハンター

ここからは戦闘に関連した各要素を見ていきますが、最初に触れておきたいのは序盤から狩りに同行してくれる「オトモアイルー(以下、オトモ)」。猫系の獣人族「アイルー」が戦闘をサポートしてくれる、シリーズでは導入から15年以上が経つシステムです。

作品を重ねるごとにサポート力は強化されているものの、今作の「オトモ」はとりわけ優秀な印象を受けました。過去作で例えると『MHW』の「オトモ道具」を全て同時に装備しているような仕様であり、“回復に拘束、攻撃支援そしてモンスター素材収集まで何でもござれ”という具合です。ハンター同様に体力の概念はありますが、防具をあまり更新していなくてもモンスターの攻撃で倒れることは少なく、基本的に連れて行って損は無い頼れる相棒となっています。

一方、狩りに同行するものの戦闘には参加しない乗用動物「セクレト」は移動手段と武器・支給品アイテムの運搬を担当。例えば「セクレト」で移動する際、自動・手動操縦に切り替えられるため、前者はアイテムを使いながらの移動で、後者はフィールドの細かな探索や戦闘中の脱出手段に使えます。

しかし細かい調整が苦手なのか自動操縦の際は狭い通路やその入り口でもたついたり、乗ろうと呼んでもしばらく来なかったり、些細であるものの狩りを重ねるごとに気になる部分も。オプションの設定でその他、改善が確認できた部分もあり、流石に“使わない方がマシ”というレベルではないので、今後のアップデートに期待です。

そして本作では他にも狩りの同行者としてNPCが操作する「サポートハンター」を連れていけるようになりました。こちらは一部のメインミッションに加え、クエスト中に「救難信号」を発信すると最大3人の「サポートハンター」を呼び出せるシステムです。
『モンスターハンターライズ:サンブレイク』では類似の狩りにNPCが同行する「盟勇クエスト」が実装されていますが、本作の「サポートハンター」は比較するとサポート面での自由度が低い印象です。

例えば「盟勇」はプレイヤー側で連れていくメンバーの選択や武器種の指定が可能な一方、「サポートハンター」はオプションから「罠設置」など行動をある程度設定できますが、ハンターが装備してくる武器種は固定となっているほか、2人以上連れて行くと「オトモ」が拠点に待機してしまいます。
本作の、特に各機能を解放した後の「オトモ」は非常に優秀なため、純粋なサポート力で考えると「サポートハンター」2人分よりは「オトモ」が勝るかなと感じました。また「サポートハンター」は倒れるとキャンプに一時帰還してしまったり、不利な地形でもモンスターとしばらく勝手に戦い続けてしまったりすることなども少し気になります。

とはいえ、モンスターに対する状態異常・スタンに加え、攻撃のターゲットを取ってくれたり、ステータス上昇のバフや回復を撒いてくれたりと、ソロでも共闘感を味わえるのは確かであり、特に「ヘビィ・ライトボウガン」を使っている際は「オトモ」を連れていけない以上のメリットを感じました。なお、「サポートハンター」のクエスト参加数を1人に絞ると狩りに「オトモ」も同行させることもできるため、自身のスタイルに合わせて調整できます。

余談ですが、「サポートハンター」を呼び出す際の「救難信号」は元来、クエスト中に不特定多数の「他プレイヤー」に狩りへの参加を呼びかける、「マルチプレイ」の一要素となっているシステムであり、呼び出し対象を「他プレイヤー」と「サポートハンター」の両方にするか、片方だけに絞るかが設定可能です。

固定メンバーで「マルチプレイ」をする際は、誰かが別行動しても合流しやすい「リンクパーティ」や、特定のメンバーだけでロビーやチャットを共有できる「サークル」機能もあるので、実際のプレイヤーと共闘したくなった場合はこれらも念頭に置くといいでしょう。
結局“義務”になった?注目の“集中モード”&“傷”システム

本作ではハンター側の複数の新アクションが実装されており、その中でも特に注目すべきは武器種を問わず恩恵を受けられる「集中モード」。モンスターの特定部位に攻撃を当て続けると「傷口」ができ、「集中モード」から「傷口」に対し「集中弱点攻撃」という強力な技が使えるようになります。
「傷口」自体にもモンスターの被ダメージ量が増える効果があり、この点は過去作の『モンスターハンターワールド:アイスボーン(以下、MHW:I)』に実装された「傷」と同様です。
『MHW:I』で「傷」を付けるには「クラッチクロー」でモンスターの体に貼りつき攻撃する必要がある関係上、一旦ハンター側は通常の立ち回りを止め、モンスターの体表で無防備を晒し攻撃されるリスクがありました。モンスター側の元々の硬さや強力なハンターの装備スキル「弱点特攻」の追加効果の発動条件に設定されていたこともあり、同作では“使いたいだけ人が使う”というよりは、“使うリスクを鑑みても使わない損が目立つ”、“義務”のような窮屈さもある要素でした。

では『MHWilds』の「傷」や「集中モード」はどうなったかというと、“義務ではあるがそこまで重くはない”というのが結論。第一に「傷口」を付ける条件が“武器で同じ箇所に攻撃を当て続ける”だけなので、普段の立ち回りを維持したまま自然に達成できるほか、ダメージ的に強力な技ではあるものの「集中弱点攻撃」も使うかどうかは自由です。
とはいえ“全く義務に感じない”と言うと嘘になるのも事実、「傷口」は『MHW:I』の「傷」と同じく「弱点特攻」の追加効果の発動条件となっていたり、“「傷口」の破壊”が関係するギミックを備えたモンスターもいたりするため、完全に無視できるシステムではないのも実情となっています。

総じて“達成ハードルが物凄く低い義務”という要素に仕上がっており、筆者としては「クラッチクロー」よりは好み。武器種によっては「集中弱点攻撃」を発動するとモンスターへの与ダメージ以上の恩恵を受けられるので、装備のスキル構成も含めてこの点の感じ方は個人差があるかもしれません。
不自由さが楽しい?先行きが気になるスキル周り

なお、前項でスキル「弱点特攻」に触れましたが、今作の装備スキルは全く新しいものから過去作から似た形で実装されているものまであります。しかし、プレイヤーへの影響としては今作から狩場に武器を二つ持ち込めるようになった影響で武器と防具、それぞれに別種のスキルが割り当てられるようになった点に注目です。
全体的な傾向として、武器側には「ガード性能」や「集中」など、「ガード」「溜め攻撃」といった対応するアクションが必要なスキルが多く、防具側には「回避性能」に「弱点特攻」のような武器種を問わず汎用的に使えるスキルが揃っています。

装備の自由度が低いゲーム序盤では武器選択の際、従来の「攻撃力」をはじめとするステータスに加え、“どのスキルを有しているか”という点も考慮する必要があり、“ある種の不自由さ”を楽しめるような設計となりました。
そしてゲーム中盤からは防具側と同じスキルを追加できる護石に加え、武器・防具それぞれに空いたスロット枠に自由にスキルを付けられる「装飾品」が登場。この装飾品は基本的にランダムにドロップため入手には手間がかかりますが、仮に“この武器はステータスが強いけどスキルが弱い…”となってもある程度は装飾品で好きなスキルを付与できるため、装備選択の自由度が向上します。

一方、装飾品も装備と同じく武器スロット専用、防具スロット専用に割り当てられるようになりましたが、一部の武器種はこの仕様のあおりを受けてしまった印象です。
例えば『モンハン』の装備は“防具は最大5つ、護石は1つ、武器は1つ”という構成のため、本作のビルドは自然と防具専用のスキルは多く、武器専用スキルは少ない傾向になります。

武器スロット用の装飾品、特にゲーム終盤以降に手に入るものは1つで複合的な効果を持つものが多い一方、立ち回りや火力に直結するスキルの大半が武器専用に割り当てられている「ガンランス」や「チャージアックス」、「ヘビィ・ライトボウガン」などを使う際はスロットの空き枠不足を感じてしまうかもしれません。
筆者個人としては、”この不自由さとどう向き合っていくかという点”に”カードゲームでデッキを構築する楽しさ”と通じるところを見出していますが、装備を組む段階で悩む時間が増えたのも事実。今回のスキル仕様の変更はプレイヤーによって賛否が分かれるかもしれません。
『モンハン』としてのボリュームは?相変わらずの寄り道&やり込み、万能とまではいかない「アーティア武器」

最後にストーリー本編以外も含めた“やり込み・寄り道要素”などのボリュームを見ていきます。発売直後の本作は拡張パック抜きの過去作(以下、無印作品)、特にアップデート前の『MHW』と比べ、モンスター数含めそこまで変わらない程度のボリュームとなっており、勲章(実績・トロフィー)などのコンプリートを目指す場合は最低でも50時間以上はかかりそうな内容です。
ゲーム序盤から楽しめるものだと、フィールド上の環境生物を捕獲して図鑑を埋めたり、過去作からゲーム性が増した「釣り」で珍しい獲物を狙ったりと、没入感が増した本作でのスローライフ的なアクティビティが存在。狩りに直接関係するものでは、『モンハン』シリーズ恒例となっているモンスターの最大・最小サイズ記録を埋める要素も実装されています。

またED後に“上位”の難度が追加されることは上述のとおりですが、それ以外にも防具の性能をそのままに、他の防具の外観に変更する「重ね着」を集められるようになるほか、“ランダムでドロップしたパーツから武器を生産する”「アーティア武器」が登場します。
この「アーティア武器」は過去作における「発掘武器」や「鑑定武器」に近い立ち位置となっているものの、各パーツには“完成する武器に付与されるステータス・ボーナス”が記載。攻撃力・会心率・属性をプレイヤー側である程度調整できるようになっています。

本武器には専用の強化システムがあり、筆者が検証した限り5段階でランダムにステータス・ボーナスが付与されるため、“理想の武器”を作ろうとした場合、確率的に険しい道のりを乗り越えなければいけない仕様です。

さらに「アーティア武器」は“装飾品の空き枠が多い”代わりに“スキルが最初から付いていない”ので、人によっては装飾品のランダムドロップも壁に。執筆時点のバージョンでは、武器種によってはモンスターから生産・強化するものでも「アーティア武器」に匹敵、またはそれ以上に強い武器もあるので、現段階のバージョンでは“やりたい人がやる”程度のバランスに収まっています。
おわりに

本レビューは以上となります。出来れば各武器種の使い勝手も見ていきたいところですが、過去作の傾向から今後のアップデートで大きく変わる可能性があることや、筆者自身、まだ十分に検証しきれていないのもあり、今回は評価の対象外とさせていただきます。
筆者としては、”プレイガイドの内容が薄く、初心者が武器を選ぶ際、その武器種の強みがどこにあり、どんなコンボを使えばいいか、といった情報がわかりにくい”、“アイテムボックスの利用が面倒”、“一人プレイで遊べる「ソロオンライン」や「サポートハンター」が実装されるも、『MHW』のように勲章(実績・トロフィー)のコンプリートに「マルチプレイ」が必須”…といった点が気になりましたが、これらを重く見るかは人によって分かれるかもしれません。

結論として筆者は本作を、“ストーリー本編はシリーズでも高めのクオリティと歯応えがあり、繰り返し・やり込みプレイをする段階で目につく部分が増えて来るかもしれない点や現状ではPC版の最適化不足が目立つ部分もありますが、それを差し引いても無印作品としては十分な楽しさ”と評価しました。ボリューム面は一部の面倒さが無くなった分、プレイ時間自体は短くなるかもしれないものの基本的には『MHW』と同等、”いつもの無印作品”と感じるレベルです。
本レビューで挙げた欠点や賛否のありそうな部分には、アップデートに伴う環境の変化や修正で改善される可能性のあるものも。発売前から既にモンスターだけでなく「追加コンテンツ」も予告されているので、1年後には評価が様変わりしているかもしれません。

特に『MHW』以降の作品特有の、アップデートのたびコミュニティ全体で盛り上がるライブ感は発売初期に遊ぶほど味わえるため、少しでも興味があれば既存・新規プレイヤー共に手に取って欲しいタイトルです。
Game*Spark レビュー 『モンスターハンターワイルズ』 PS5、Xbox S X|S、PC(Steam) 2025年02月28日リリース
細かい不満点は確かにある…それでも十分オススメなボリュームとストーリー体験を味わえる最新作
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GOOD
- リッチなストーリー体験
- 義務感が強すぎない傷口&集中モード
- 無印作品としてはいつも通りのボリューム
BAD
- アップデート待ちのより手強いモンスター
- 繰り返し・やり込みプレイをする段階で気になる要素の数々
- PC版のみ目立つ最適化不足