映画よりは連続ドラマのようなシナリオ
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『レッド・デッド・リデンプション2』など、多くのAAAタイトルが映画的と評される中、本作は連続ドラマのような構成と言えそうです。小まめに配置されたクエスト群は、じりじりとした進行を感じさせます。
また、シナリオの展開も誤解を恐れずに言えば「少年マンガ的」なところがあり、人間模様が複雑であるとか、人間の本当の暗さといったような描写はそれほどありません。むしろ、敵として設定される人物たちは(フリーカー含め)分かりやすいほどに敵役であり、今の時代としてはちょっと珍しいくらいの勧善懲悪な面もあります。
キャンプの信頼度のシステムがシンプルなこともあり、段々と友好的なセリフが増えてくるものの、その段階がやや唐突である印象は拭えません。最終盤は、いかにもなアツイ展開もあり、(筆者はそうした王道も好きなので)単純に感動しましたが「言うほどそんな仲良かったっけ?」と思ってしまうところもあります。
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メインシナリオを完了させ、スタッフロールが流れた後もぜひしばらく遊んでみてください。最も見るべき展開が、最後の最後に用意されています。
本記事のはじめに、ディーコン・セントジョンの生き様というストーリーを体験するのが、本作のゲームとしてのテーマだと紹介しました。では、その生き様とは何だったのでしょうか。
スタッフロールの後のクエストではカットシーンが用意されています。キャンプで仲間が教えてくれるある言葉は、主人公とプレイヤーがゲームを通して行ってきた行動の賛歌となっていました。こちらもぜひ探してみてください。腐っても、苦しんでも、絶望しても、結果として誰かの為に力を使い続けてきた、その姿こそ偉大なものだったのです。
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『Days Gone』は、購入前にイメージしていたゲームシステムとは違っていたという方が多いのではないかと思います。
シナリオもプレイヤー同士で頻繁に話題とするような新しさを感じるものではないですし、ゲームとしては誰にでもオススメできる内容でありながら、なんともジャンルを伝えづらいシステムでした。キャラクター達は「こういう人いるよね」といった感じで、尖った印象はそれほど残りません。
ひょっとしたら、開発者達も最初に目指していたシステムはかなり違ったものだったのかもしれません。そう思うくらいには、どの体験を主軸として作ったのかを探るのが分かりづらい作品です。
それでも、エンディングまで走り切った時には心地よい読後感がありました。色々と変更点があったのであろう開発の現場でも、最後までしっかり作り上げたという実感が伝わってくるかのようです。
シナリオを最後まで走り切れるように、開発者達がプレイヤーへ最後まで寄り添っているという感覚は、愛を持って作られたなと感じさせます。同時に、いろんな要素を上手にあきらめてきたのだろうという切なさも本作にはあるのです。
総合評価: ★★☆
良い点
・シナリオ進行をサポートする細やかなクエスト配分
・幅広くありながら破綻しない戦闘システム
・後半の展開と前向きな収束
・目立たないが雰囲気にマッチした美しい音楽
・特徴のあるAIが設定された一部の「大群」
悪い点
・目立つバグの多さ
・操作性や利便性に難あり
・前半の作業感
・なぜか共闘してこちらを襲うことのある野盗とフリーカー
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