最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2020年12月18日にLittle OrbitよりPC(Steam)向けに早期アクセスでリリースされた『Unsung Story』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Unsung Story』とは
ファンタジーと機械が混じった世界「Lasfaria」を舞台にしたターン制ストラテジー。プレイヤーはとある人物の護衛の仕事を受けた傭兵となり、世界の命運を握る戦いに巻き込まれることになります。ストーリーは「破滅から時間を遡って世界を巡る物語」となるようです。
本作は、2014年にKickstarterキャンペーンを開始、目標額60万ドルに対し、66万ドルを集めて順調なスタートをきったものの、リリースの延期や主要スタッフの離脱などの問題を抱え、2017年には開発の全権利をPlaydekからLittle Orbitへ移譲したことが発表されています。
また、Kickstarter開始段階では開発に松野泰己氏、吉田明彦氏、崎元仁氏らが参加することも発表されていましたが、開発を巡るゴタゴタの中で松野・吉田の両氏は離脱。松野氏は先日自身のTwitterで本作にはすでに関わっておらず、自身が提供した世界観やプロットがどのように使用されているかも不明な状態であることを明らかにしています。
紆余曲折の開発経緯を経てついにリリースとなった本作。早期アクセスでは第一章の7つのミッションがプレイ可能です。
『Unsung Story』の実内容に迫る!
ゲームはまず、キャラメイクから始まります。現在のビルドでは、プレイヤーの職業(傭兵か医師)、髪型とひげ、肌や髪などの色、そして名前です。設定項目には種族もありますが、現在では「人間」のみ選択可能です。プレイヤーの分身を作成したらいよいよ物語が始まります。
物語は、巨大なモニターで「Greymore」と「Serena」2人の会話シーンから開始。Lasfariaで長らく続く戦争を集結させるべく、とある都市で平和サミットが開かれようとしています。しかし、皇帝をはじめ各大陸の代表者が集まる舞台を狙う存在もあるようで、情勢は不安定です。
Greymoreは、代表団の安全を確保するためSerenaにサミットへの参加を要求。Serenaも快諾し、彼女をサミットが行われる都市にある「School」まで護衛するための人材を派遣することになります。主人公はこの役目のために雇われた傭兵となり、Serenaが住んでいる機械兵士が守る空中施設から都市へと護衛する任務に就くことに。
しかし、突然現れた飛行船によって施設の一部が崩壊し、防衛の機械兵士も暴走を始めてしまいます。プレイヤーはケガをしたSerenaを守りながら、暴走している機械兵士と戦わなければなりません。
「スキルが音楽になる」システムが面白い!
ゲームは「カットシーン→キャラクター配置→戦闘開始」を繰り返して進んでいきます。筆者がプレイした範囲だと配置できる人数は3人まで。初期段階で主人公の他に傭兵と医師が2名ずつ仲間にいるので、バランスよく配置しましょう。戦闘はオーソドックスなターン制シミュレーションRPGで、順番が来たキャラクターは移動とアクションを行います。
攻撃やスキルなどのアクションと移動は完全に独立しており、動いていない場合は攻撃後の移動も可能。対象の横や背後を取ることで攻撃の命中率が上昇するほか、高低差がありすぎる場合は近接武器では攻撃不可能なので立ち位置には注意が必要です。スキルはMPを消費する形式で、範囲攻撃や攻撃後に金を盗むなどさまざまな効果を持っています。また、本作で一番汎用性が高いのは「防御」で、防御態勢のキャラクターは敵が攻撃範囲に入った際に自動で攻撃してくれます。
また、本作最大の特徴として「Harmony Songbook」というシステムが存在します。本作のスキルはそれぞれ「赤・青・緑」色の特性を持っており、使用した段階で味方共通の譜面にその色を音符として記録。音符が6つ譜面に揃うことで音楽が発動、プレイヤーにさまざまなサポート効果を発揮するというものです。スキルは空振りでも発動可能なため、ステージ開始時にとりあえず譜面を作り出すという戦略も重要になります。
パーティーに50%のステータスバフが付くなど、この「Harmony Songbook」の効果は絶大。なるべく早めに狙っていきたいのですが、スキルの無駄打ちは肝心な場面でMP不足になる危険性も。行動の順番や敵の配置などを考えた駆け引きも重要です。
惜しむらくはAIの頭の悪さ。全員背中を狙う猪だ。
本作のAIは少々単調で、基本的には「攻撃範囲にいるキャラクターを狙う」「敵陣に突っ込んででも横や背後を取る攻撃を優先する」ため、高所や狭い通路を利用してば有利に戦闘を進めることができます。ただし、AIの性質は味方側もほぼ変わらないため、遠距離攻撃ができるSerenaがわざわざ敵陣に入って囲まれて倒される状況に陥ることもあります。
ステージ内で倒されたユニットは一時的に気絶状態になり、医師が初期状態で持つ「リバイブポーション」を使用すれば復活可能。ただし、ターンが経過しすぎると死んでしまうため要注意です。Serenaをはじめ、仲間NPCが倒されることがほとんどのステージで敗北条件にもなっています。医師は回復ポーションやリバイブポーションの所有数が多く、通常よりも広い範囲で使用できるため必須キャラクターと言えます。
高低差のあるマップや位置取りによる命中率などは、やはり松野泰己氏の『タクティクスオウガ』をどこか思い起こさせます。しかし、単調なAIの影響で猪のように特攻する味方NPCがいるため、戦略を立ててじっくりと遊ぶというよりもかなりアクティブにならざるを得ません。
なんとかならなかったのか……。
転職や装備システムで最強チームを作り出そう
少しストーリーを進めると主人公が謎の存在と出会い、世界の時間軸から外れた聖域「OPUS」が開放されます。ここはいわゆる本拠地のようなもので、主人公や仲間の装備変更や転職、新たな人材の雇用などが可能です。仲間は初期を含めてランダムでデザインされるのですが、ここで見た目を変更することもできます。
本作は「キャラクターのレベル」と「職業レベル」が分かれており、職業レベルが一定以上になることで新たなスキルを獲得できるほか転職条件にもなっています。戦闘職の初期職である傭兵レベルが5になることで防御職「ガーディアン」、6になることで遠距離職「アーチャー」へと転職可能です。ただし、出撃人数が少ない本作の今の段階ではアーチャーは使いづらい印象があります。
また、ストアではキャラクターにさまざまなボーナスを与えるトリンケットが購入可能。トリンケットにはステータスボーナスのほか、キャラクターが「移動できる高さを上げる」という特殊なものも用意されています。上述の通り味方NPCが放っておくと敵陣へ突っ込む仕様のため、防御の高いキャラを先行させておきたい本作ではなるべく優先したいトリンケットです。もちろんアーチャーや魔法使いなどの職業では、高所を取るのはそのまま有利に繋がります。
現在のビルドでは使用できる職業が6種類のみですが、それぞれ個性は強めです。初期職である傭兵と医師もスキルが強く、そのまま主力として運用することも可能。装備と職業の組み合わせの自由度はかなり高い印象です。また、クリアしたステージは何度でも再挑戦できるためレベル上げもそこまで苦労しません。
ここまで紹介してきた『Unsung Story』ですが、やはりまだまだ早期アクセス初期の作品だという印象です。ゲームを遊べる最低限の要素は揃っているのですが、AIの頭の悪さが足を引っ張り戦略を立てづらい状況になっています。また、序盤の敵のHPが急に上がり泥仕合になってしまうのも多少ストレスを感じさせます。
機械と魔法、そして魔法が歌となる本作の設定は魅力的で、ストーリーはまだ序盤のため細かく判断はできないのですが、プレイできる段階では比較的王道といえそうです。ただ、用語などを含めてかなり説明不足な印象をうけました。主人公のキャラクターはお人好しながらプライドを持った傭兵といった感じでなかなかに好感触です。敵の増援に対して慌てるSerenaに「傭兵の世界じゃ敵の援軍は"ボーナス"っていうんだ」と返すやり取りなどもカッコイイですね。
本作の早期アクセスはおよそ一年半を予定しており、最終的には20種類の職業と150を超えるスキルを実装。ストーリーもサイドクエストなどが追加されるほか、キャラクターカスタマイズ要素も大幅に向上するようです。
ゲーム公開まであまりにもさまざまな事情があった本作。Kickstarterページで紹介されている要素は現段階ではいくつか使われておらず、今後も追加されるかは不明です。早期アクセス開始直後の初期段階ということで、粗は目立ちますが正式版に向けた今後のアップデートに期待したいところです。
タイトル:Unsung Story
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2020年12月18日
記事執筆時の著者プレイ時間:3.5時間
価格:3,090円